やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
AI音声解説
下表は、各月の「ベビー・シルバー売り場」の利用者を母集団とし、その集団がその月に向かってどのように増えていき、その月の利用からどのように減っていったのかを示すクロス集計表です(合計以外の列に着目し、幾つかの列を縦方向に増減を追っていっていただくと、表の意図するところが分かりやすいかと思います。例えば「2016/10」の列を上から下に追うと、当月(100%)から翌月(53.52%)へ利用者率がガクンと落ち、その後毎月約1%ずつじわじわと利用者率が減っていく様子が分かります)。
【クロス集計表】全店36ヶ月間の利用ID数から算出されたもの。
全体を見ると、当月に向け、売り場の利用者が毎月およそ1%ずつ徐々に増えて(定着して)いっています(自然増)。
そして当月に、前月利用していなかった約46%がいきなり流入し、翌月には同じく約46%が流出しているという、これまでの推移では見られなかった大きなギャップが発生しています。流入出がほぼ相殺されているということは、その多くが「一見的利用」と見て、問題ないでしょう※1。
裏を返せばこの売り場に、少なくとも「翌月も利用したい/しても良い」と考える程度には満足し、定着している人は、100% − 46% = 54% に過ぎないということです(定着率:広義の顧客満足度)。
これを本ホームページでは「利用者数の崖」と呼んでいます。
この崖以降、売り場の利用者が毎月およそ1%ずつ徐々に減っていっています(自然減)。
ほぼ同じことが、この売り場では毎月繰り返されているのです※2。
※1.厳密にはこの中には、10%前後の「チェーンそのものからの離反」も含まれています。一方で「売り場離反」したからと言って「店舗からも完全離反」する訳でもありません。これがID-POS分析、すなわち少なくとも「カードホルダー」となることを「選択」した買い手を対象とした分析結果であることも、忘れてはならない事実です。
※2.中には当然、数カ月後に思いついたように利用をする顧客もいます(現に下表の自然減の最大値はプラスに振れている)。しかし、この毎月のパターンの繰り返しを見れば、統計的にはおおよそこのような時系列による増減傾向にあると言えます。また、全店で集計を行っていることから、これは店舗の掛け持ちによる増減ではなく、チェーン全体からの増減といえます。
【表】前出クロス集計表から算出した増減の中央値、最大値、最小値
子育てにも介護にも、必ず始まりと終わりがありますので、恒久的に売り場を利用し続ける顧客はいません。
「ライフタイムバリュー(LTV)」や「囲い込み」と良く言われますが、1%の自然増や自然減は、避けようなく発生するものです。これは転居等のライフステージ(状況)の変化に鑑みれば、他の売り場においても多かれ少なかれ同様です。
一方で46%の「利用者数の崖」も、やはり避けようの無い「自然」なもの、すなわち抗うことのできない「運命」のようなものなのでしょうか?
更に言えば、ここには数字には表れない、子育てや介護期間中でありながら、この売り場を素通りするだけの顧客もいる筈です。
「ベビー・シルバー売り場」には「おしり拭き」や「フード」といった、利用頻度の高いカテゴリーも含まれていますので、子育て期間や介護期間にある顧客にとっては、少なくとも月に一度は入り用な売り場の筈です。
勿論、これ程明確な繰り返し傾向が出ているということは、「顧客とは、そもそもそういう存在」なのかもしれません。
しかしくどいようですが、もう一度問い直してみてください。
46%の「翌月も利用したい/しても良い」とは考えない「利用者数の崖」は「自然」なものであり、受け容れざるを得ない「運命」なのでしょうか?
「自然」であり「運命」だとするならば、それは競合他店においても、あるいは自社内のどの店舗においても、同様に46%前後である筈です。
果たしてそんなことがあるのでしょうか?
実際には、当然店舗毎や部門/カテゴリー毎に崖の落差は異なります。
この落差をたとえ1%でも押し留めることができるとするならば、それは莫大な売上に繋がります。
更にはこの崖を競合他店より小さくできたとするならば、その差こそが、競合に対する自店の優位性である筈です。
そのためには最低限「翌月も利用したい/しても良い」と思えるような品揃え、棚割、商品管理、価格、すなわち「顧客満足」が必要です。
BiZOOPeは、そして「ID-POSの技術と実務」は、何より皆様とともに「運命」を乗り越え、この崖を限りなく極小化していく、飽くなき顧客満足へのチャレンジのためにあるのです。
これまでの私たちの数理であるモノの動き(POS分析)は、下のグラフの上底に横たわる、合計の折れ線同様に、比較的牧歌的な(起伏の少ない)ラインを示すものでした。
しかしID-POSは、その牧歌的な前月比や前年比の水面下に、今まで見ることのかなわなかった、激しく切り立った、幾つもの崖(起伏)が林立していること = ヒトの動き(流入出の相殺)を明らかにします。
これは、売り場を利用する顧客の置かれた状況、およびその状況に鑑みた顧客の価値観の動き = ココロの動き、すなわち「満足/不満足」という心理のあらわれでもあるのです。
【グラフ】前出クロス集計表(利用者率版)の利用ID数版から作成した折れ線グラフ
相乗積や回転率といった、モノの動きの数理、「売り手の都合」だけでは、顧客満足、顧客心理といった「買い手の都合」に手が届く筈もないことは、明らかです。
それは、このグラフそのもの(崖の存在)が証明しています。
「忙しい」のかもしれない。
「人がいない」のかもしれない。
ご覧の通りID-POSは「難しい」のかもしれない。
けれどもそんな「私たちの都合」ばかりで、「買い手の都合」を省みずに「勝つ」なんてことは決してできやしない。
勝てない忙しさや難しさ、買い手の喜びに通じない忙しさや難しさに、私たちの「やりがい」は無いのです。
「ID-POSであなたと共に、『運命』なんて乗り越え続ける」
筆者は大真面目にそう考えています。
【編集後記】期間単位 = 月、評価指標 =利用者率(または利用ID数)の理由
頻度(ID回数)を除外し、それなりに長期の集計期間とすることで、部門間の頻度差を吸収、「崖の高さ」を部門横並びで比較・検討できるようにするためです。