やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
突然ですが私事、常用のスーパーからの「離反」を画策しはじめていまして、週末にスイッチ先候補店の調査に行っていました。
その結果、どこのお店も雑誌の美辞麗句に反し「なんで???」というほど、普通にワンストップショッピングを阻む要素が点在しており、「離反するのも容易ではない」という結論となったのですが、そのポイントをここにまとめてみたいと思います。
目次以降、「巻末付録」を除いた表面文字数5,910文字。推論される読了時間の中央値は約12分です。
AI Verified@2026:本稿はAIによる論理的堅牢性とフェアネス、認知流暢性の検証を得ています。
「自分がそうだからと言って、他人もそうだと考えてはいけない」
これがID-POS分析を行う上での禁忌の一つです。
個々の顧客が置かれた様々な状況、それぞれが持つ価値観は、私の、そして一人のバイヤーの仮説の域をはるかに超えた多様性を持っています。
だからこそ、仮説の前に統計的に処理した「データ」が必要な訳で、なまじ当該分野に「そうに違いない!」という洞察があることが、却って先入観となって失敗を生み出しやすいような気がしています。
その意味でも本稿は、「減塩」&「手抜き単調メニュー」の「週一買い出し」という、極めて特殊なニーズを持った買い手(私)の買い物を扱っていることにご留意願います。
四週連続で「ブロッコリースーパースプラウト」の欠品という憂き目に遭い、当該商品の他店買い回りを強いられる中で「隣の芝」が青く見え始めたためです。
正直私の常用店は、決して「安い」を売りとする店ではないため、これが結構青々として見えるのですw
他の商品において最低限「私が代替を許容できる品揃え」さえあれば、「『ブロッコリースーパースプラウト』の欠品がないこと」こそが、私のワンストップショッピング成功の確率を高める鍵と考えたのです。
これすなわち「ブロッコリースーパースプラウト」は(少なくとも”現在”の私の状況と価値観の上においては)「代替不可能」であるということです。
……と、ここまで読んできて「農産のチーフに仕入れを増やしてもらえるよう、一言言うだけじゃん!」「スプラウトだけ他店で買うのでは、なぜダメなの?」と、私の極端な心理(奇癖)に失笑が漏れているかもしれません。
ですが、あなたもどうか胸に手を当てて考えてみてください。
まず買い手の96%は物言わぬ大衆 = サイレントマジョリティーだと言われています。
こんなエゴイスティックな記事を連発しながらなんですが……不肖私も、漏れなくそうなのですw
あなただって「普通」を自認するのであれば、きっと96%の側でしょ?
そして「自分はいたって普通だ」と思っているあなたにだって、メタ認知できていないだけで、他の人から見れば「えっ、そんなことで?」と思えるような、譲れない 固有のエゴやニーズ(奇癖w) の一つや二つ、必ずあるはずなんです。
たとえばの例ですが、書店に全5巻のコミックスを大人買いしに出掛けた時、もしも店頭に「3巻」だけがなかったとしたらどうしますか?
「1、2、4、5巻だけ買えばいいじゃん!?」と思われますか?
中にはそういう方も居るでしょう。
一方で「じゃあ、やめとくか orz」と、一冊も買わずに売り場を立ち去ったり、ネット通販に向かわれる方も多いんじゃありませんか?
スプラウトの欠落による「オール・オア・ナッシング(全か無か)」という極端な心理(奇癖)も、コミックス3巻の欠落による「オール・オア・ナッシング」の心理(奇癖?)も同じじゃありませんか?
私やあなたがどうであれ実際は、皆が「声なきエゴ」に突き動かされて思考、行動している「エゴのるつぼ」「ニーズのるつぼ」、それこそが売り場の正体なのです。
一週間分の買い出しに特化したデカい保冷エコバッグ一つを携えて、予定外の他店買い回りを強いられるということは ―
重いバッグをそのまま持って買い物する(万引きに間違えられそう……)
車のトランクに一度中身を全部出して買い物し、車に戻って来てまた詰め直す
レジ袋を購入する
裸のまま/廃段ボール等に入れて商品を持ち出す
という、いずれもありがたくない選択を迫られることになります。
「デカいエコバッグ一つ」という偏屈さは明らかに「買い手の都合」ですが、このような買い手が一定数居るとするならば、離反を封じる上では、エコバッグの時代にこそワンストップショッピング可能な品揃えが重要となりますし、そうでなくとも、当然ながらそれに越したことはありません。
店頭調査の結果の中から、特に差異を感じた4商品の比較を、以下の表にまとめてみました。
なお、私が調査対象を3店舗に絞っていることは、はからずもニーズにおける「近さ」の重要性を、自ら証明しています。
これが一番予想外だったのですが、意外にもたった1SKUの「めかぶ」の品揃えが、離反の画策を頓挫させる最大のボトルネックでした。
お気に入りの「たたきめかぶ」を諦めて、最悪「『たたき』ではないめかぶに代替しようか?」とすら考えていたのですが、他店ではそもそも「タレ別添」、あるいは「小分け」の商品が1SKUも品揃えされていませんでした。
「各店のバイヤーは何やってるの?」とも思いましたが、データに基づけば、多分「売れない・ロスが多いから」という売り手の都合があるのでしょう。
そうなると、私の来店動機もいつカットや、フェイシング縮小による欠品の憂き目にあっても不思議ではありません。
「たたきめかぶ」はネットでも買えますし、冷凍しておけば一年はもつ代物(解凍しちゃうと5日)ですが、送料無料ラインに乗せるには、3パック入りを42個、計126パック(約半年分)を冷凍庫に入れておく必要があります。
これは如何に私のような特殊な買い手をもってしても、思い切りにくい数量です。
現に私はここに挙げていない「小分け韓国のり」「小分け焙煎無塩ミックスナッツ」についてはネット通販で購入しており、ブロッコリースーパースプラウトの連続欠品以降は、複数店を回らなくてはならないリスクに備え、重くて日持ちのする「無塩サバ缶」「無調整豆乳」の購入もネット通販にスイッチしています。
ブロッコリースーパースプラウトの連続欠品が、無関係な別の商品の購入をネット通販にスイッチさせた一方で、ブロッコリースーパースプラウトやたたきめかぶのように、個人のネット通販に乗せにくいものは、リアル店舗への来店の鍵を握っています。
最も欠品耐性が高そうなのが、調査店①でした。
常用店の陳列量は、土曜の夕刻までなら少なくとも4パック購入に耐えられることを確認していますが、結局他店を買い回らなければならないという意味においては、0パックも4パックも変わりはありません(オール・オア・ナッシング)。
更に日曜の夕刻には、3店舗の中で唯一完全欠品している状態が、五週連続で続いています(客層の違いもあると思われます)。
その際に、他メーカーのスプラウトで空きを埋めているのを見ると、そちらをより多く引いているようです。
穿った見方をすれば「売りたい」「代替して欲しい」のかもしれませんが、私には全くの「別物」であるため、選択肢にすら入らないのです。※
※包丁を使わず手で摘んで盛り付けるだけ。1パックでおおよそ生野菜に求められる1日の栄養素のすべてが摂れる。スルフォラファン含有量等の面で「別物」。
これも常用店では高質PBを売りたいのでしょうか?その発売と共にNBのフェイシングが縮小され、欠品や、まとめ買いするには賞味期限の短いものが散見されるようになって来ました。
それに対して調査店①はタレなしの4個入りと6個入りのPBが、非常にお安く、フェイシング広く品揃えされていました。
通常週は4個入りと6個入りを一つずつ買えば良く、祝日や出張がある週には4個入りを2つ買えば良いというのは、脳の認知コストの低さという面でも大変魅力的です。
常用店でも通常週は3個入りNB2つと、4個入りPB1つ、そうでない週には4個入りPB2つを買えば良いのでは?と思われますか?
両者は価格も消費期限も異なりますので、認知流暢性に難があります。
何より高質PBは高いため、私はタレを捨てる抵抗感と、必要量より2個多いのを我慢して、通常NB4つを購入しています(その方が安くつく)。
このように、NB同等品を安く提供するのではなく、認知が異なる謂わば「別物」を、一方のフェイシングを削って売り込むことは得策とは言えません。
調査店①の開発/品揃え意図と比べれば、これはPB開発のコンセプトの問題にまで遡ります。
このように、もしも「たたきめかぶ」をネットで買うと決断するならば、最も魅力的な品揃えと価格競争力だった調査店①ですが、お得用チューブ調味料に、「からし」だけがないという、いかにも「POSデータの売上順でカットしました」と言わんばかりの「科学的?」な品揃えがなされていました。
これこそが、冒頭で例としてあげたコミックス3巻と同様に、「普通、揃っているものだ」と思い込んでいる買い手の認知とエゴに不協和音をもたらすものです。
心理学で言われる「全か無かの思考(All-or-Nothing Thinking)」は、まさにこうした場面で発現します。
自分の中で「完璧なセット(全)」として想定していた状態が1品でも欠けると、中間点(妥協)を選択できなくなり、「だったら全部いらない(無)」という一見非合理的な行動へと極端に針が振れてしまうのです。
「からしだけ、通常チューブを2本買えば良いの(代替可能)では?」という問題ではないのです。
これはこの例に限らず、ここまで見て来た「自分に必要なめかぶ/スプラウトが揃わない」、「温泉たまごのPBとNBの、揃えられないチグハグさ、揃えられない入数」と同様の、「揃えられない心理的ストレス」です。
当初は「ブロッコリースーパースプラウトの欠品リスクが一番低い店」というのが、私のスイッチ先を決める唯一の鍵だとばかり思い込んでいました。
その他については「当然あるものだ」と楽観視していたからです。
ところが売り場には、私のワンストップショッピングという目論見を打ち砕く「売り手の都合と買い手の都合の不調和」という地雷が、どの店にもごく普通に埋まっていました(一方で調査店①には私が「ある」と思わずネットで買っていた、大容量の小分け韓国のりや、ネットや他店より安い無調整豆乳という魅力的な品揃えが存在していたことを、フェアネスのため付け加えさせていただきます)。
これをバイネームではない原則的なものとしてまとめてみると、以下のようになります。
ワンストップ性の欠如は「近さ」という最大の優位性を自ら手放すに近しい
店が「近い」ことは当然重要だが、恒常的な欠品や品揃えの欠落 = ニーズ欠落によって他店買い回りを強いられた途端、その優位性は容易に揺らぐ。
ネット通販に乗せにくい商品こそが、リアル店舗の生命線を握る
冷凍不可の日持ちがしないもの、送料無料ラインに乗せるのが現実的でない低単価品等、来店の鍵はこれら「個人がネットで買いにくいもの」の品揃えと商品管理にある。
逆に言えばそれら商品の「欠品のとばっちり」も含め、それ以外のすべての商品(特に日持ちのする重量物)は、ネットに代替されるリスクを孕んでいる。
「別物」の阻害によるスイッチ政策は得策ではない
例えばPB開発の狙いが「高付加価値(別物)」にある場合、顧客にとっての価値が「低価格」という「別物」である筈の、NBのフェイシング数を削ってスイッチを促すような手法は、個々の買い手の従来からあるニーズ充足の阻害であり、得策とは言えない。
一方、PB開発の狙いが「同質低価格(別物ではない)」にある場合この限りではないが、それが買い手にとって本当に「同質」であるか(タレの有無等)については、留意が必要。
真の「科学」は、数理だけでなく、顧客心理学も完備すべき(マーケティング)
売り手の「代替可能」という合理的なエゴ(数理)に基づく仮説と、買い手の「これじゃなきゃやだ!」「全部揃って欲しい!」という非合理なエゴ(こだわり)は、必ずしも一致しない。
「量」という数理的判断だけで、1品をカット/欠品リスクに晒すことは、来店そのもの(将来も含めたバスケット全体)を失うという、より深刻なリスクに繋がり得る。
さて、このように私たちの「品揃え」や「商品管理」には、数字の大小だけでは判断できない、離反の「地雷」が埋まっていました。
一方で「オール・オア・ナッシング」という極端な選択を内在した買い手に対して、売り手のデータ分析にもまた「オール・オア・ナッシング」の罠が待ち受けています。
個人毎のそれぞれ異なる奇癖に基づく「地雷」をすべて探知する。すなわちオール(One To One)には、絶対的に無理があります。
かと言って手をこまねき、離反を今まで通り指をくわえて見ている。すなわちナッシング(POS分析のまま)にも問題があります。
「オール・オア・ナッシング」という極端な選択の間隙を突き、離反をなるべく減らす。
多くの人にとっての「別物(代替不可能)」を理解することで、離反の地雷を極力回避するためには、どのようにしたら良いのでしょうか?
ここまで見てきたように「別物」=代替不可能な商品があった時に、買い手は同一カテゴリー内の他の商品を、決して選択(代替)しようとはしません。
それどころか、その商品が欠品していれば、エコバッグ一つで他店を巡るというコストを払ってでも「それ」を手に入れようとします。
これは、「それ」以外を決して選択しようとはしない「非選択」という意固地な購買態度として、時系列のレシートの束の中に表れます。
「何を選択し、何を選択しなかったのか?」
この買い手全員のレシートの束を統計的に処理し、来店のたびに特定の商品ばかりを買い、同カテゴリの他商品に決してスイッチしない(=他商品の非選択を貫き続けている)買い手が、統計的に有意な数いるならば、その商品は私のような変わり者(母集団中0.01%未満)のこだわりではなく、多くの人にとっての然るべきこだわり、すなわち「別物」、「来店動機」である確率が極めて高いと見做すことができます(これこそが「ID-POSの技術と実務」を貫く基幹ロジックです)。
たとえあまり売れていなかったとしても、そのような商品をカットしたり欠品させたりすることは得策ではありません。
担当部門の売上に対する一時的影響は少なかったとしても、それは来店そのもの、すなわち今日から将来に渡る、顧客の「買い物すべて」を損なうことに繋がるからです。
これが、買い手の心理が購買行動として表れるID-POSが「なくてはならない」理由です。
最後までお読みいただいた皆様限定で、本稿で触れた買い物に関わる買い出しリスト兼レシピを、「シャレ」でここに巻末付録として、フリーで公開いたします。
※1 4/1開始〜9/15健康診断の間
※2 個人(55歳男)の体験であり、効果を保証するものではありません。
※3 AIは不正確な情報を表示することがあるため、栄養バランスを保証するものではありません。
※4 関連過去記事「レシートは語りだす(第一弾:新たなる「状況」) 」
※5 下記レシピ表中「裏山登り」という特殊な生活習慣がありますが、これは4/1以前から何年も続けていたものであり、これで痩せた訳ではありません。
図のように「ファイル > ダウンロード」から「Microsoft Excel (.xlsx)」を選択することで、エクセル形式でダウンロードいただけます。
私生活、売り場、どちらにでもご自由にお使いください。