やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
マーケティングにおける仮説とは、マーケットの拡大解釈 にあります。
そもそもID-POS分析自体が「会員※にとっての利用メリット = 非会員、未利用者にとっても利用メリット」と捉える拡大解釈に依拠しています。
※.統計上有意な会員比率については、過去記事『統計的に有意な標本ID数とID-POS会員比率等 』をご参照ください。
それに対して「分析メニュー」の選択や、期間、商品、店舗等の所謂「分析条件」の設定は、マーケット参加者数(ID数)=マーケットサイズを規定することと同義です。
矮小なマーケットからの仮説と、それに基づく政策では、矮小な成果しか得られません。
大きな成果を上げるためには、単品に留まらず、マーケット全体を俯瞰するような「分析メニュー」を用いることが大事ですし、拡大解釈 に相応しいマーケット参加者数(ID数)を確保するような「分析条件」の設定が大事です。
これは従来の、成績評価を中心としたPOS分析にはなかった考え方です。
ここではこういったID-POS分析を行って行く際の「勘所」について記載していきますが、これはあくまでも基本となる理論上の考え方であり、ある意味「理想論」です。
現実問題は、品揃えや棚割の標準化ができている企業も、現状棚割を正確に押さえている企業も限られており、現場ではその他にも、季節性等様々な要因が渦巻くからです。
厳密を求め過ぎてマーケットサイズ・政策が矮小なものとなったり、「やらない」ことを選択することになってしまっては、本末転倒です。
「マスマーケット」で「やる」ことのほうが遥かに重要ですので、どうかおおらかに捉えてみて下さい。
ID-POSで、みなさまが大いなる成果を挙げられることを祈念いたします。
【参考】ID-POS分析における「勘所」を示すベン図。基本的にはベン図の積集合を狙う。
「理屈はいいから、手っ取り早く設定だけ教えて」という方向けに、最初に早見表をご用意しました。
マーケット全体を俯瞰する分析メニュー『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』で、商品カットや棚割、販促商品の選抜を行う際のおすすめ設定で、理想的な設定と現実的になされている設定の一覧です。
※.網掛けは特段の意図の無い限り、デフォルトから変更する必要のない設定です。
ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPeでは、分析メニューごと最後に分析した設定が残るようになっていますので、一度設定→分析していただけると便利です。
マーケットは生き物であり、常に前に進み続けています。
一年間の内に利用顧客の約10%が入れ替わりますし、残りの90%の継続顧客にしても、一年も経てば子供の誕生/就職等、ライフステージは大きく前に進みます。
マーケットを構成している単品も、カテゴリーによっては約半数が入れ替わります。
部門やカテゴリーの数値が、あたかも毎年繰り返しているだけのように見えたとしても、その中身については、不可逆的に変化し続けているのです。
未来は過去の繰り返しではありません。
そのためマーケットをキャッチアップし続けて行く為には政策に依らず、少なくとも一度は直近で集計する事が、今現在のマーケットを理解することに繋がります。
ID-POSデータは顧客の「私はこれが好き/これは好きじゃない」という、選択/非選択という利用行動を介した、顧客の意思表明です。
例えばカテゴリー内であれば最低限、商品Aを2回買えば「Aが好きなのかもしれない」、商品Aを1回、商品Bを1回買えば「A、Bどちらでも良いのかもしれない」といった仮説を立てることができますが、こういった利用行動を極力多くの人から得るためには、相応の利用期間が必要です。
また長い利用期間をとることは、政策のマーケットサイズを大きくし、統計的「確からしさ」を高める為にも約立ちます。
一方で期間を長く取れば取る程、せっかくの直近性が、過去データの比重によって薄まって行く為、基本となる集計単位のユニットを13週とし、カテゴリーの回転特性や政策意図によって、集計期間を伸ばして行きます。
例えば回転が遅い為、棚割実施期間である26週(13週✕2)で集計してみる。ターゲット販促でターゲット人数を極力多く取りたい為、52週(13週✕4)で集計してみるといった具合です。
尚、52週集計でも意味有り気な分析結果が得られないカテゴリーについては、無理にID-POS分析を適用する必要の無いカテゴリーであるとお考え下さい(前述のように1年経つと、ライフステージや世情といった、顧客を取り巻く「状況」そのものが変化してしまうため)。
「◯◯マーケット」 の ◯◯ の定義は、売り手の都合次第です(食品スーパーマーケットに衣料品部門を含むか否か。海産乾物マーケットに中華干しエビを含むか否か等)。
よって商品の指定とは、商品と顧客とが出会う接点であるマーケットの定義そのものです。
この接点中、私たちが実際に手を触れてコントロール可能なのは、顧客(ヒト)ではなく商品(モノ)ですので、ID-POS分析と言えども、分析軸の基本は商品となります。
商品の集計単位を「部門とするか、カテゴリーとするか、単品とするか」は、顧客との接点をどの単位で持つ事を想定した政策なのかによります。
ex.1)フロアレイアウト政策:顧客接点 = 集計単位 = 部門
ex.2)カテゴリークーポン政策:顧客接点 = 集計単位 = カテゴリー
ex.3)棚割政策:顧客接点 = 集計単位 = 単品
但し部門やカテゴリーは、人為的にその粒度がコントロールされた「拡大顧客接点」と言えますので、その扱いと解釈には注意が必要です(一般的に所属単品数が多い商品分類の方が、利用者数 = マーケットサイズが大きくなりますが、これは粒度による見え方の違いです。)
クロスMDを目的とした同時併買の分析のように、商品分類の横断を前提とした特殊なケースを除き、カテゴリーの分析であれば部門を跨いでカテゴリーを指定しない、単品の分析であればカテゴリーを跨いで単品を指定しないで分析するのが基本となります。
既に売場レベル/ゴンドラレベルにセグメント済のマーケット同士は、買い手の感覚的にも、相互が「選択」の対象とはなり難い為です。
その為「親」となる商品分類を跨がずに分析した方が、仮説の精度がより高まります。
一方で、買い手の都合も絡む売り場レベルではなく、純然たる売り手の都合によって細分化されたカテゴリー(LSPのための、ハンバーグ作業、おはぎ作業等に細分化されたカテゴリー)の単品分析については、必ずしもこの限りではありません。
基本は、標準政策実施店舗群毎に分析をします。
日配品、米等の分析の際には、エリアを考慮に入れる必要もあります。
ID-POS分析では、商品Aを買っていて商品Bを買っていない人が多ければ、「商品Aと商品Bは選択されていない = 別ニーズである」と見做します。
しかし、店ごとの取り扱いの有無により「選択したくても選択できない」店舗の利用者と、商品の組み合わせが出て来てしまいます。
そのため、顧客の意思表明を正確に受け止める為には、棚割パターン別の店舗群毎に分析するというのが理想に思えますが、実際には最大パターン採用店舗群の分析結果を、各パターンの店舗にも適用するというのがベターです。
なぜならば、商品の中にはそれほど売れていなくても、顧客にとっての来店動機となっているような商品が、実際多くあるからです(それほど売れていない ≒ 他の店では扱っていない ≒ その店にしかない)。
少なくとも一度は最大パターン採用店舗群でそのような商品を炙り出し、他パターンの採用店舗群においても、その導入を検討する事は、来店増に繋がります。
最大パターン採用店舗が少ない/各パターンに適用するにはエリアやコンセプト面で乖離がある ような場合には、マーケットサイズを矮小にし過ぎない為にも、思い切って全店で集計してしまって下さい。
買い手には買い手の都合があるでしょうが、当然売り手にも売り手の都合があります。
BiZOOPeでは、店舗コードをテキストファイルから読み込んで分析に用いる事もできます。詳しくはマニュアルのファイル読込仕様をご覧下さい。
POS分析では通常金額や粗利を重視します。
これらはいずれも「その商品だけに紐づく」数値ですが、ID-POSデータにおいて商品レコードに記録された「ID数」だけは、唯一、「その商品だけに紐づく」数値ではありません。
ID数 = 顧客は通常、店全体を買いまわっていますから「その商品だけ」を買っている訳ではないからです。
店の利用 = 各部門の利用は、すべからく「なるべく多くの顧客」に来店して頂く事からはじまりますので、ID数を重視する事は自部門を越え、店全体の繁栄に通じます。
カテゴリー内でも「その商品だけしか利用していない」非併買のID数が多い商品は、来店動機に直結している可能性が高い為、とりわけ重要です。
厳密に厳密を期し過ぎてもキリがありません。
却ってマーケットを矮小にし過ぎる事で間違った判断を生み出したり、時間を掛けすぎる事でチャンスを逃すのが関の山です。
「勘と経験と度胸とハッタリ」の拠り所とするに足る数値、ガイドラインの存在そのもの(誤解を恐れずに言えば多少間違っていようとも)が何より重要であり、あとは「エイヤッ!」の繰り返し(PDCA)です。
以上、ID-POS分析の「勘所」でした。