やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
商品利用において、顧客は商品を「併買(選択)」する存在です。
それはID-POSのレシート上に記録されます。
それと全く同様に、店舗利用において、顧客は店舗を「併買(かけ持ち)」する存在です。
それもID-POSのレシート上に記録されます。
商品も店舗もどちらも同じ、顧客にとっての「選択肢」なのです。
距離をベースとしたGIS(地理情報システム)による、物理的なドミナント※エリアとは異なり、ID-POSから得られる、顧客による実際の店舗の「かけ持ち」という実態は、「リアル・ドミナントエリア」を示唆しています。
※.ドミナント(形)=「支配的な・優位な」
一方でID-POSというソースデータには、商品にせよ店舗にせよ、顧客の「競合とのかけ持ち」までは含まれていませんから、自社のレシートデータのみから「エリアドミナンス※」を推論する必要が出て来ます。
※.ドミナンス(名)=「優勢・支配(している状態)」
ここでは BiZOOPe の 『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』を使った、重点店舗、出店政策、競合店対策の考え方について記します。
尚「リアル・ドミナントエリア」と言っても、ソースデータに地理情報は持っていませんので、実務上はGoogleマップやGISと見比べながらの推論を、おすすめいたします。
下図が分析結果の例です。
その範囲外との「非選択」が卓越、すなわち「かけ持ち」がほとんど発生しない閉じた範囲(地域)が、図中の「目的範囲」です。
その範囲内での「選択」すなわち「かけ持ち」が平均以上に発生している範囲(地域)が、図中の「選択範囲」です。
その意味では、前者が所謂「広域商圏」を、後者が所謂「ドミナントエリア」です。
※.越境してまでの店舗の「かけ持ち」は極めて稀ですが、例えば自宅ー実家間や、自宅ー旅先間でのかけ持ちが発生し得ます。あくまでも顧客による実際の店舗の「かけ持ち」を利用している都合上、特に広域に展開しているチェーン店の場合、このようなかけ持ちの影響によって、「目的範囲」の構成店舗が、地理上のそれとはかけ離れてしまう場合が発生し得ることに、ご留意ください。極端な例としては、各都道府県間のかけ持ちが0件の中で、北海道と沖縄県にだけ「かけ持ち」が1件発生した場合、北海道と沖縄が商圏的に「近い」形に解析されます。実務上は先の「設定早見表」にも記載の通り、現実の政策単位毎に分析をすることで、これを極力回避することができます。
図(再掲)では「目的範囲」すなわち広域商圏の中で、最も利用ID数を集めている店舗に「重点レコメンド」1stが振られています。
「選択範囲」すなわちドミナントエリアの中で、最も利用ID数を集めている店舗に「重点レコメンド」2ndが振られています。
これらの店舗は、各ドミナントエリアにおけるチェーンのイメージリーダーであり、「顧客にとっての旗艦店」とも言える存在です。
よって、エリアドミナンスを高めて行くためには、まずはこれらの店舗を「重点店舗」として位置付け、足元の強化、すなわち「地域一番店」を狙って行くことが先決です。
とは言え、一時に重点店舗すべてに手を打つわけにも行かないでしょうから、強化の順番は、基本的に図中の「採用順」に従うこととなります。
図の例で言えば、まず「藤枝小石川町店」を優先的に強化し、地域一番店とすることが、エリアドミナンスを高めるための、はじめの一歩です。
「採用順」は、「より離れており(かけ持ちされておらず)、より利用者が多い」という観点から統計的に計算された、商圏人口を漏れなくカバーするための、店舗の必要順です。
地域一番店を目指すために必要な具体的な政策の数々については、本稿の親記事『ID-POSの技術と実務 』をご覧ください。
最初に、非選択が卓越する図(再掲)の「目的範囲(広域商圏)」と「目的範囲(広域商圏)」の帳票上の行間、「選択範囲(ドミナントエリア)」と「選択範囲(ドミナントエリア)」の帳票上の行間には、データ上最も相対的な出店余地があると考える事ができます。
これは商品で言えば「ブルーオーシャンマーケット」の存在余地を示すものですが、こと地理的制約が絡んで来る店舗においては、「出店する商圏ポテンシャルがない(山地である等)」が故に非選択が卓越しているケースも多々あります。
よって、物流の効率化等の面において、十分検討には値するものの、まずはやはり足元商圏のエリアドミナンスを盤石にすることから考えはじめるのが第一歩です。
図中の「重点レコメンド=3rd」は、商圏人口をカバーするために、1st、2ndの旗艦店にプラスして、最低限必要な店舗群です。
具体的には、採用順昇順での利用ID数の単純累計が、マーケット計に達するまでの店舗(1st、2ndを除く)に3rdが割り振られています。
「採用順」の「より離れており(かけ持ちされておらず)、より利用者が多い」という算出特性上、特に1stレコメンド店舗を含む「選択範囲(ドミナントエリア)」内の、3rdレコメンド店舗の前後の行との行間には、かけ持ちはあるものの、相対的な商圏距離の離散、または競合による商勢圏の分断が、他より強いと考えることができます。
そこを出店により埋めて行くというのが、エリアドミナンスを高めて行くための、出店政策の考え方となります。
図の例で言えば、採用順2位の店舗を含むドミナントエリアである「選択範囲f3_n4」の、1stレコメンド店舗である「静岡用宗店」と、3rdレコメンド店舗である「静岡手越店」、「静岡高松店」の間を埋める出店が、まず重要になって来ます。
これも一気に出店攻勢を掛ける訳にも行かないですし、出店をすればこの分析結果自体が当然変化して行く※ため、この中では特に、より「採用順」の高い、「静岡高松店」との間に出店用地を探すことが先決です。
※.オープン直後に関しては、新店が新店効果で1stレコメンドに躍り出る場合もありますので、先の「重点店舗」の考え方含め、留意が必要です。当然新店が新店効果以降も、そのまま1stレコメンドの地位を占め続ける場合もあります。
リアル・ドミナントエリアである「選択範囲」は、競合の出店により、顧客の「かけ持ち」に影響が出る範囲とも言えます。
よって、どの「選択範囲」内に競合の出店があるかによって、「選択範囲」単位で競合の新店を迎え撃つといった、範囲を絞った深い対策を講じることが可能です。
出店後の競合の影響は、「当該選択範囲(ドミナントエリア)における利用ID数の減少」だけでなく、「選択範囲(ドミナントエリア)」そのものの境界や、重点レコメンドの変化としてもあらわれて来ます。
数的影響は当然のことながら、ドミナント構造の変化も併せて逐次追跡し、対策を練り続けて行くことが肝要です。
このように「目的範囲」、「選択範囲」、「重点レコメンド」、「採用順」と言った、実際の顧客の利用行動から得られる数値を利用するのが、商品政策に限らず、店舗政策においてもID-POS分析すなわちマーケティングの基本となります。
特に商品政策以上に大きな予算を必要とし、一朝一夕には行かない店舗政策においては、これらを利用した「選択と集中」こそが、その鍵となります。
以上、エリアドミナンスの技術と実務【重点店舗、出店政策、競合対策】でした。