やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
商品利用において、顧客は商品を「併買(選択)」する存在です。
それはID-POSのレシート上に記録されます。
それと全く同様に、顧客は利用年月日/曜日を「併買(選択)」する存在です。
それもID-POSのレシート上に記録されます。
商品も年月日(曜日)もどちらも同じ、顧客にとっての「選択肢」なのです。
下図が分析結果の例です。
その範囲外との「非選択」が卓越、すなわち他の年月日をほとんど利用していない閉じた範囲(期間)が、図中の「目的範囲」です。
その範囲内での「選択」すなわち利用が平均以上に発生している範囲(期間)が、図中の「選択範囲」です。
<図:日付ごとの併買(選択)の多さで、クラスタリングした結果>
※.図は「AIエージェント」⇨「目的範囲・選択範囲のニーズ要約」から、各期間に対するそれぞれのニーズを推論、要約済のもの。年月日はその相互関連性の高さ(図中の「関連順」)に基づき並んでいるため、必ずしも綺麗な昇順/降順に並ぶ訳では無い。しかし、各範囲毎の最小値と最大値を取れば、多くの場合、重複しつつもほぼ週のFrom〜Toで表すことのできる期間範囲を形成している(図中で言えば、選択範囲=f1_n1の11週、f1_n2の19週)。
「目的範囲」は、年末年始や連休といった極限られた年月日を除き、殆どの場合同一曜日の年月日から形成されます。
これは多くの顧客が買い物をする曜日を、ほぼ固定しているという事実であり、裏を返せば「毎週土曜日ポイント5倍デー」や「毎週火曜はお肉の日」といった曜日固定販促は、一部の限られた顧客にしか「お得」をもたらしていないということです。
このような利用日に対する「ニーズ」は「状況 ✕ 価値観」の発露です。皆様もご自身の置かれた状況(週末しか買い物できない/平日しか買い物できない 等)と、価値観(まとめ買いしたい/頻度高く買いたい 等)を振り返ってみてください。
当然「目的範囲」を細分化したニーズである「選択範囲」も同様に、殆どの場合同一曜日の年月日から形成されますが、ここで着目すべきなのは、「選択範囲」が範囲内での「選択」が平均以上に発生している範囲(期間)であると言うことです。
顧客が平均的にリピートする期間がこの範囲内であるならば、この範囲を超えれば、平均以上の非選択すなわち離反/未利用化が発生しはじめるということです(選択範囲 = 離反発生のスパン)。
勿論、顧客は併買をする存在(色々な曜日を選択する存在)であり、買い忘れや、急な入り用もありますから、全員が全員完全に決まった曜日にしか買い物をしない訳ではありません。
しかし、図の「マーケット計」1,682,831人の母集団の利用傾向が、これほど明確に曜日という塊と、ほぼ共通するスパンの「選択範囲」を為している様を見れば、これが統計的に「確からしい」傾向、すなわち政策実施にあたって「確度の高い」傾向である事は、ご納得いただけるかと思います。
この2つの事実がもたらす年間販促カレンダーにおける、基本骨子は以下の通りです。
極力多くの各曜日の利用者に、不公平感無く、広く「お得」を享受してもらうこと
離反を極力防ぐため、次のスパンの利用へ、次のスパンの利用へと「お得(利用動機)」をリレーして行くこと
そう、「販促スパン = 顧客の離反スパン」が大原則であり、思考のベースを「モノ」を売るための販促から、「ヒト」を喜ばせ続け、それによって繋ぎ止め続ける(LTV)販促への、パラダイムシフトが必要だということです。
これは決して従来からの販促を「やめるべき」だという事ではありません。従来からの販促を続けるにせよ、このような日、そして考え方と手法を、加えた方が良いということです。
そうは言っても「毎日ポイント5倍デー」とするような綺麗事は経済合理性に見合いませんし、レッドオーシャンへの誘いそのものです。
だからこそ、この販促スパン = 顧客の離反スパン である「選択範囲」を利用するのです。
図(再掲)の各範囲中、最も多くの人が利用している日、すなわち確率的に最も多くの「選択範囲」の利用者に「お得」を享受してもらえる可能性が高い日に「重点レコメンド」が振られています。
「目的範囲」中最も利用者が多い日の「重点レコメンド」が1st、「選択範囲」中最も利用者が多い日の「重点レコメンド」が2ndです。
ですからこの「重点レコメンド」が付いたような日に、多くの顧客に「お得」を享受してもらう(1st > 2ndの販促強度で)と共に、次のスパンの利用へとなるべく繋がるようなリレー販促を打つ訳です(選択と集中)。
ここまで分かりやすいように「お得」と書いてきましたが、誤解なきよう申し上げておけば、それは決してマイナス値入を連発し、一見さんから最大瞬間風速的な売上を上げる事ではありません。
確率的により多くの顧客に、次回も来店したいと思えるような「満足」を体験してもらう事、そこに次回来店(これも必ずしも計算高いスパンで、もったいぶらなくとも良いのです)への動機づけとなるような「仕掛け」を施しておく事です。
顧客に満足を感じてもらう「仕掛け」や、粗利ミックスの「仕掛け」といったハックこそが、商人の腕の見せ所です。
具体的な販促政策については、本稿の親記事である『ID-POSの技術と実務 』中の各記事も参考にしてみてください。
一方で、ここまでのデータが示す販促日は、すべて過去のものに過ぎません。
ここから例えば来年の販促カレンダーを立てて行くためには、最低限「その重点日が、来年で言えば何月何日何曜日にあたるのか?」を決める必要があります。
勿論、勘と経験をお持ちの方であれば、自身の推論と責任の上でそれを決めていただくことがベターなのですが、それを持ち合わせている方ばかりとは限りません。
ここでは『ニーズの見える化 』の分析結果をEXCELに出力し、それを各社お使いのAIチャットに読み込ませた上で、未来の重点販促日を推論させる簡易的なプロンプトと、その手順をご紹介します。
※.プロンプトは各社のAIチャットで動くように作ってあるつもりですが、検証はGemini-Flashで行っています。AIの言い回しや出力についても各社各用であることをご理解ください。プロンプトが上手く機能しない場合、お使いのAIにご相談の上、上手く動くようなプロンプトの生成を依頼してみてください。推論精度についてはあくまでも、各社AI(Gemini/Copilot等)と、お使いのモデル(Flash/Pro等)の性能に依拠します。
①下表上段左のドロップダウンリストから「業態」を選択し、「計画開始日」に、作成したい販促カレンダーの開始日を入力してください(「3rdレコメンド」については、その意味が分かっている方以外「含めない」のままで結構です)。
②①の選択/入力内容がプロンプトに反映されていることを確認(下表ハイライト部分)したら、下表上段右の「プロンプトをコピー」ボタンをクリックし、プロンプトをコピーします。
※.誰もが簡単にプロンプト一発で「お試し」できるように作ったものですが、意図しないハルシネーションが発生します。本来はAI(特に軽量AI)に複数の役割と複数の推論、複数のデータ操作(計算や結合)を任せるのは、ハルシネーションの観点から望ましくありません。
データ操作(計算や結合)は、AIよりも正確・高速に行えるプログラムやSQLに任せるべきですし、役割と推論は、「一度のプロンプトに一つの役割と一つの推論」とした方が、俄然精度が高まります。これらの特性を連携させ、一連の動作として結びつけるものが「プログラム」です。
蛇足ながらこれを設計するのがSEであり、開発するのがプログラマーです。少なくとも現時点において、AIは決して「万能」では無いのです。
【お試し用ファイル】
BiZOOPeユーザー様以外で試してみたい方は、下表をクリックしてブラウザで開いたら、「ファイル」>「ダウンロード」>「Microsoft EXCEL(.xls)」を選択し、ローカルにダウンロードしてお使いください。
③予め『ニーズの見える化 』の分析結果をEXCELに出力※しておき、それをお使いのAIチャットに添付します。
④ 先にコピーしたプロンプトをチャットに貼り付けて、推論を開始させます。
※.ファイル名は任意。プロンプト内でデフォルトのシート名「分析結果(顧客接点)」を指定していますので、シート名は編集しないでください。
<図:Gemini Flashの例:前出お試し用ファイルの添付と、プロンプトの貼り付けが終わった状態。分析結果のEXCELに含まれない「月日」の範囲は、ハルシネーション予防の観点から推論を禁じていますので、ご留意ください。>
推論が走り、以下のように出力結果上段に推論結果、出力結果下段にAIからの報告および総括が上がって来ますので、適宜ご利用ください。
※.以降は軽量モデルであるGemini Flashに、2022/12/1〜2023/12/2の分析データから、計画開始日 = 2027/1/1以降の販促カレンダーの推論をさせた例。
<図:上段:推論結果>
<図:下段:AIからの報告および総括>
<表:上記推論結果を、読みやすいようhtmlに落としたもの>
余談ながら、これを書きながらふと、『ニーズの見える化 』の「AIエージェント」に、エンハンスでこの機能を実装してしまっても良いのでは無いか?と思った次第。
ユーザー様からの「エンハンス目安箱」へのエンハンス要望の投稿をお待ちしております。
フェアネスを期す為、必ずしも曜日で固まらない「目的範囲」「選択範囲」の顕著な例を示すと、下図(目的範囲f2、f3)のようになります。
これらの年月日を顧客が「なぜ顕著にクロスで利用したのか?」については、「周年祭」「オープン記念」等、Web上の一般常識に依らない各社各様の思惑が含まれる場合もあり、その思惑をソースデータとして持たない筆者やAIには、正直推論できません(AIは接客業ですから、「良かれ」と無理くりにでも推論して来ますが…… = ハルシネーション)。
商いがヒトによる、ヒトのための活動である以上、すべてが理路整然と、「綺麗」に科学の範疇に収まるなどという事は決してありません。
このように「まだら」なニーズこそ、ヒトの勘と経験と度胸とハッタリが活きる対象であると申し上げ、逃げておきましょう。
もっと大雑把に、曜日のみで販促カレンダーを決めて行きたい場合、冒頭の「設定早見表」の「顧客接点」を「曜日」に変えるだけで、下図のような、曜日をキーとした分析結果が出力されます。
これを見ると、顧客は大きく平日利用派(目的範囲 f1)と、休日利用派(目的範囲f2)の2つに分かれており、平日利用派はその中で更に、月曜利用派(f1_n1)、火曜利用派(f1_n2)、水〜金利用派(f1_n3)の3つに分かれていることが分かります。
これを「重点レコメンド」通りに販促していては、7日中4日(約57%)が販促日となってしまいます※。
この場合例えば、平日利用派の代表(1stレコメンド)である金曜日と、休日利用派の代表(1stレコメンド)である土曜日の2日を、最低限販促曜日として設定することで、買い手の都合と売り手の都合の、でき得る限りの「調和」を図ります。
※.ある意味EDLPが、利用曜日に制約のある幅広い顧客に対して、有効なことの証明とも言えます。
尚、日、店舗、商品のように、レシート上に印字される「顧客接点」の中でも、曜日のように年月日というキーに付随する顧客接点や、単価のように商品というキーに付随する顧客接点を、「拡大顧客接点」と言います。
「拡大顧客接点」は、顧客が自らの意志で能動的に「選択」しているもの、すなわち「ニーズ」そのものでは無い為、どうしても「拡大解釈」の域を出ません。
但し曜日については、代表的な「拡大顧客接点」である商品分類(部門/カテゴリー)のように人為的な構造ではない事に加え、実際に年月日が曜日で固まる傾向が強いという事実から、ある程度自然に近い分析と考えることができます。
一方でこの「曜日」による販促計画のように、それがたとえ「拡大解釈」に基づくざっくりとしたものであったとしても、買い手に買い手の都合があるように、当然売り手には売り手の都合があります。
しかもこれは「多勢に無勢」の関係です(そのレバレッジを利用するのが、商いですが)。
買い手の都合を慮らなければ商いは成り立ちませんが、売り手の都合を度外視して現場を疲弊させることも、翻って買い手の都合を毀損する事です。
顧客接点である「年月日」での分析結果を政策に採用するにせよ、拡大顧客接点である「曜日」での分析結果を政策に採用するにせよ、すべてにおいて『ニーズの見える化 』は、「売り手−買い手双方の都合」を、「できる範囲で確率高く」「調和」させるためのガイドラインだとお考えください。
以上、年間販促カレンダーと離反防止の技術と実務でした。