やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
「小売業さんにID-POS提案をしたいのですが、簡単な方法を教えてください。」というご質問をメーカーさんからいただきました。
ここでは例として幾つか制約はあるものの、非常に簡単に実施でき、効果も期待できる提案を2つ挙げさせていただきます。
提案の鍵は細かな説明を排し、バイヤーの認知流暢性を如何に高めるか?にあります。
BiZOOPeの『ニーズの見える化』で、自社商品を含むカテゴリーを分析に掛けます※1。
図で色分けされている「選択範囲」は、顧客によって平均以上に選択されている「選択肢の束」です。
その「選択肢の束」の中で、最大の利用者数(ID数)を集めている選択肢には「重点レコメンド」※2が振られています。これらの商品が、選択肢数を極限の「1」にまで絞り込んだ場合においても、「顧客ニーズ」を満たすために最低限必要な「最低品揃え商品」です。
顧客は「ニーズ」の無い売り場を利用しませんから、これらの商品は、売り場の代表的※3「利用動機商品群」更に拡張して捉えれば「来店動機商品群」とでも言えるものです。
※1.システム設定や詳しい理屈については、ID-POSの技術と実務 中の最低品揃えの技術と実務 をご覧ください。
※2.ここでは詳細を避けますが、「2nd」が「最低品揃え」、「1st」がその中でも「超最低品揃え」とでも言うべきものです。
※3.最もそうである確率の高いもの
※.図は「AIエージェント」⇨「目的範囲・選択範囲のニーズ要約」から、ニーズ名を推論、要約済のもの。
列見出し「採用順」をクリックすることで、この「最低品揃え商品」が次の図のように、顧客にとっての重要度順(昇順)で、上に固まって並びます。
この中から「最低品揃え商品」である事を示す「重点レコメンド」の付いた自社商品を見つけてください。
ご自身に振り返ってみればおわかりいただけるかと思いますが、顧客のニーズ全体(バスケット)の中における所謂「売れ筋」商品の割合は20〜30%程度に過ぎませんので、殆どの場合その中に自社商品を見つけられる筈です。
自社商品が見つかったら、図の右端の列見出し「販売状況|店舗数」に着目し、「マーケット計」の店舗数と比較することで、全店で販売されているかどうかを確認します。
例えば図の「採用順」3位、「キリン一番搾り糖質ゼロ350ml」は、「マーケット計」の店舗数が234であるにもかかわらず、229店舗にしか販売実績が立っていません。すなわち、何らかの理由で5店舗で販売されていない※ということです。
このような商品が見つかったら「販売状況|店舗数」のリンク状に表示された店舗数(この場合229)をクリックします。
※.直近13週で集計していますので、最近リリースされた新商品でも無い限り「売れていない」ということは無いはずですし、「売れていない」にしても、「売れるはずのものが売れていない状況」が疑われます。
すると下図のように販売している店舗/販売していない店舗(販売日がFrom To共に空白)を確認することができます。
※.図では、マスキングのため店舗名に店舗コードが表示されています。
提案は ―
「御社提供のID-POS分析において、弊社商品『一番搾り糖質ゼロ350ml』が、顧客の来店/利用動機となる『最低品揃え』に位置付けられています。一方でこの5店舗では、何らかの理由で販売実績が立っていません。これは当該各店舗における顧客の来店/利用動機の欠落、すなわち売り場のニーズ欠落を意味します。是非品揃えましょう。」
「顧客ニーズを満たす最低ラインが『最低品揃え』ですから、品揃えを絞り込まなくてはならない店舗ほど、このような商品の品揃えが重要です。」
といったものとなります。
これは自社の売上が増える「メーカーよし」な提案ですが、顧客が自身のニーズをその店内で充足できるようになる「顧客よし」、更にはそれによって利用/来店が増える「小売よし」の「三方よし」な提案でもあります。
※.「AIエージェント」を使って、最低品揃え商品と、それが売れていない店舗の組み合わせを、一覧として抽出することもできます。詳細はID-POSの技術と実務 中の最低品揃えの技術と実務 をご覧ください。
自社商品に「最低品揃え商品」が無かったり、あってもそれが全店で販売されていた場合、単品クーポンの提案※が、簡単で効果の高いID-POS提案の一つです。
但し提案先小売業さまが、クーポン配布先顧客を絞った、POSまたはアプリによる単品クーポンの配布機能を持たれている場合に限定される提案となりますので、ご留意ください。
※.複数商品による「アイテムクーポン」でも結構です。この場合「AIエージェント」を使って、目的範囲利用者の総数や選択範囲利用者の総数を一括して得ることもできます。詳細はID-POSの技術と実務 中のターゲット顧客選定の技術と実務 をご覧ください。
BiZOOPeの『ニーズの見える化』で、自社商品を含むカテゴリーを分析に掛けます※。
図で色分けされている「選択範囲」は、顧客によって平均以上に選択されている「選択肢の束」です。その隣にはその範囲中のいずれかの商品を利用している顧客の人数(ID数)が表示されています(図の最上部の選択範囲=f3_n22であれば、3,362人)。この範囲の利用顧客に、この範囲に含まれている単品のクーポンを出せば、当然それは「選択」の対象として、顧客に影響を及ぼします。
一方でより大きな色分けである「目的範囲」は、顧客がその範囲外のものとの「選択」をほとんどしない、「ギリギリ選択の対象になり得る」範囲です。その隣にはその範囲中のいずれかの商品を利用している顧客の人数(ID数)が表示されています(図の最上部の目範囲=f3であれば、6,579人)。この範囲の利用顧客にとって、この範囲に含まれている単品のクーポンは、影響を及ぼすことは無いにしても、最低限関心(惜しい!これじゃないんだよ)の中に入っています。
※.システム設定や詳しい理屈については、ID-POSの技術と実務 中のターゲット顧客選定の技術と実務 をご覧ください。
※.図は「AIエージェント」⇨「目的範囲・選択範囲のニーズ要約」から、ニーズ名を推論、要約済のもの。
影響も関心も無い顧客にクーポンをばらまいても、メーカーとしてはコストの無駄使いですので、「選択範囲」もしくは「目的範囲」の利用顧客にクーポンを発行することが得策です。
リンク状に表示されたID数をクリックすることで、該当する顧客コードをダウンロード※1することができますので、これをバイヤーに渡して、POSやアプリへの設定をお願いします※2。
いずれの範囲も「カニバリゼーションが起こる範囲」、すなわち「ブランドスイッチが起こる範囲」と言えますので、その範囲内に他社商品が多く含まれるような範囲の利用者を狙って、その範囲内で最も利用ID数の多い(スイッチ確率の高い)自社商品のクーポンを出すことが「メーカーよし」につながります。
無関心な顧客にまで無差別にバラ撒く協賛値引きやノンターゲットクーポンとは違い、単品を「選択範囲」もしくは「目的範囲」の「惜しい!」と感じるターゲットと的確にマッチングさせれば、メーカーは最小の原資(販促費)で最大のスイッチ効果が得られます。
※1.顧客コードのダウンロードについては、別途マニュアルのID数、顧客コレクションからの操作をご覧ください。
※2.ダウンロードされた顧客コードは匿名加工がされた状態ですので、別途小売業様システム担当部署による復号処理が必要となります。
何より重要なのは、喜ぶ確率の高い「惜しい!」の範囲内の顧客にクーポンを撒き、無関心な顧客にクーポンを撒かないことで、最低限の「顧客よし」を担保できることです。
一方で「カニバリゼーションが起こる範囲」ということは、乱暴に言ってしまえば小売バイヤーにとっての単品クーポンは、売上を商品Aから商品Bへと転嫁するようなものです(カテゴリー売上に大きな影響はない)。
肝心の「小売よし」はどこにあるのでしょうか?
それは、クーポン利用者の来店頻度が、客単価はそのままに月0.3〜0.4回増える※ことにあります。
単品クーポンは、店全体の売上に寄与するのです。
※.エンハンスパートナーさまの売り場での実証実験結果による。
提案は―
「御社提供のID-POS分析上で、弊社の競合が強いこのニーズ群(選択範囲)の顧客をターゲットに、弊社商品のクーポンをピンポイントで配信させてください。弊社としてはスイッチが目的ですが、カテゴリー売上が損なわれることはありません。一方でクーポン利用者の来店頻度は、月0.3〜0.4回増えると言われています。」
といったものとなります。
さて、このように自社のエゴを通すためには、まず「三方よし」を考えること。
これが、すべてのID-POS提案における簡単な要諦となります。