やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
近所の店に自身の「来店動機」となるような商品があれば、そして最低限「代替可能」な商品が欠品なく品揃えされていれば、多くの人は、他店と余程メリットの差がない限り、そこでワンストップで買い物を済ませてしまいます。
個々の顧客の品揃え要望に応えていてはキリがありませんが、最低限「代替可能」な品揃えすら無い場合、遠くの他店にみすみす来店機会を与えています。
逆に自店が、他店が「来店動機」「代替可能」と認知できていない商品を品揃えしていた場合、それは遠くの他店の顧客が、自店を利用する来店動機となります。
一方で「来店動機」となるような商品、最低限「代替可能」な品揃えは、顧客個々に異なる上、必ずしも「売れ筋」ではないため、売り手側から認知することが、一般的に不可能であることもまた事実です。
ここでは全店で最低限必要な商品とは何か?ID-POSによる、最低品揃えの考え方と、それを徹底するための実務について記します。
BiZOOPe の 『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』を使ったものですが、BiZOOPeをお使いでないみなさまにも、最低限の「ニーズを満たすことで来店を増やす」という考え方は、大いに参考にしていただけるものと思います。
顧客にはそれぞれ、売り場の特定の範囲の中から選択を行う「選択肢の束(ニーズ)」があります。
併買していれば「選んでいる(選択範囲)」。非併買であれば「選んでいない(選択範囲外)」。
個々に異なるその併買/非併買の、全体的な傾向を計算することで、顧客の「選択肢の束(ニーズ)」を可視化することができます。
図の「目的範囲」は、この選択肢の束を大きく捉えたもので、顧客の当該カテゴリーにおける、「くらしのスタイル」の違いを表しています。
図の「選択範囲」は、文字通り選択肢の束そのもので、顧客の細かなこだわり、「ニーズ」の違いを表しています。
※.図は「AIエージェント」⇨「目的範囲・選択範囲のニーズ要約」から、ニーズ名を推論、要約済のもの。
「選択肢の束(ニーズ)」があるのであれば、その束の中の1つが、最低限売り場に存在していなければ、そのお店の利用者には、そのニーズにおける選択肢が1つも与えらていない事になります(ニーズ欠落 = 用が無い売り場)。
よって、選択肢の束の中で最も多くの顧客に支持されている選択肢一つが、小さなお店であってもなるべく揃えておきたい、選択肢(ニーズ)を代表する「最低品揃え」です。
これはなるべく多くの顧客が、売り場に「用がある」ようにする。すなわち来店を増やすための品揃えです。
図のように、そのような選択肢には「重点レコメンド」が振られています。
「目的範囲」という選択肢の束の中で、最大派閥に支持されている選択肢に1stが、「選択範囲」という選択肢の束の中で、最大派閥に支持されている選択肢に2ndが振られます。
売り場面積のような物理制約がある店舗の場合、1stを最低品揃え、それ以外の場合、1stと2ndを最低品揃えとします。
列見出し「採用順」をクリックすることで、重点レコメンドの付いた最低品揃えが、顧客にとっての優先度順(より非併買で、他には変えられない)で並びます。
図の1stレコメンド、採用順3位の「キリン一番搾り糖質ゼロ350ml」の、一番右端の列見出し「販売状況|店舗数」を見てみると、マーケット計の販売店舗数が234店舗であるのに対して、この商品の販売店舗数が229店舗であることが分かります。
すなわち234 − 229 = 5店舗が、何らかの理由でこの商品を品揃えしていないということになります。
このリンク様に表示された「229」をクリックすることで、下図のように販売している店舗/販売していない店舗(販売日がFrom To共に空白)を確認することができます。
※.図では、マスキングのため店舗名に店舗コードが表示されています。
この商品を品揃えすることは、そのようなニーズ(糖質ゼロ単缶ビール:健康志向・手軽)を持つ顧客の最大派閥にとって、売り場を「用があるもの」とし、同一ニーズを持つ人の代替利用を促します。
すなわち「来店動機」あるいはワンストップショッピング性を高め、来店客数を増やすのです。
最低品揃えとその取扱有無を一件ずつ調べて行くのも骨なので、原理が分かったら「AIエージェント」から、これを一気に取得してしまいます。
分析画面上部の「AIエージェント」から「重点商品実績なし店舗一覧出力」を選択します。
開いてきたダイアログで「店舗一覧を出力する」をクリックします。
(1st〜2ndまででのカバー率(利用者率の単純和)が100%に満たなかった場合、それが100%になる商品まで3rdがレコメンドされる場合があります。)
これにより下図のように、最低品揃えと、それが売れていない店舗の組み合わせが、採用順昇順>店舗コード昇順で、CSVファイルとしてダウンロードされます。
※1.AIエージェントでは「分析条件で指定された店舗」の店舗―商品の組み合わせについてはすべて取得しに行きます。そのため、分析画面上では表示されていない店舗―商品の組み合わせが出力されることがあります。ご留意ください(例えば「全店舗」の中に物流センターが含まれているような場合、物流センターに販売実績は立ちませんので、物流センターとすべての重点レコメンド商品の組み合わせが出力されます)。
※2.図では、マスキングのため店舗名に店舗コードが表示されています。
個々の単品をバラバラに評価し「売り込む」という発想から、併買のネットワークから「ニーズを満たす」⇨「来店を増やす」という発想へ。
最低品揃えである重点レコメンド商品は、売価政策、物流政策の上でも鍵となります。
おまけに「あなたの店の顧客ニーズ」を、競合が知ることは不可能なのです。
以上、最低品揃えの技術と実務でした。