やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
カレールーを買う人が、必ず同時にじゃがいもを買うわけではありません。シャンプーを買う人が、必ず同時にリンスを買うわけでもありません。逆もまた然りです。
これには商品相互の必要頻度の差やズレと、それによって生じる家庭内在庫の有無が関わって来ます。
けれども「おうちのカレー」というくらしのスタイルやニーズ、「リンスインじゃない」くらしのスタイルやニーズは、必ず存在しています。
ID-POS分析の最重要事項は、そういったくらしのスタイルやニーズを知り、それに応える政策を打ち出すことにあります。
頻度を廃し、ID数ベース(レシート枚数 = ID数 ✕ 頻度)で併買を集計するということは、そのようなくらしのスタイル、ニーズを持つ人たちがどれくらい居るのか?という「マーケットサイズ」に着目することです。
これはまた、ID-POSならではの指標「期間併買(非同時併買)」が、一般的にID数で算出されることから、各併買間で視座と理解を統一するためでもあります。
よってBiZOOPeでは、読みは同じであるものの、販促の言葉・売り手の言葉である併売(併せ売る)では無く、くらしの言葉・買い手の言葉である併買(併せ買う)を使うようにしています。
併売は本来、プラス一品を狙う「同時併売」を指す言葉ですが、併買における「同時併買」は、くらしやニーズのあらわれの中の、一つの事象(一緒にカゴに入る = 両者間で取捨選択が発生しない = どちらも必要)です。
折角のID-POS分析ですから、「同時」あるいは「販促」という枠だけに囚われずに、「くらし」「ニーズ」の中における併買/非併買が示唆しているものも、汲み取っていただけましたら幸いです。
【表】併買の考え方の違い
BiZOOPe には開発順に、以下の3つの併買分析メニューがあります。
「逆引き併買」のみ、単品一品の指定しかできないという制約があるため、以降の例ではすべて、併買のキーとする自商品を「味の素CookDo青椒肉絲3−4人前」一品としています。
基本となる分析設定については、ID-POS分析の勘所 を参考としてみてください。操作方法については各章末尾に記すマニュアルをご覧ください。
「商品併買」はオーソドックスな分析ですので、以降で解説するLift等の基本となる考え方は、「逆引き併買」についても共通です。
併買、中でも同時併買は、確率的に発生するものです。
よってその発生確率は、自ずとマーケットサイズの大きい商品同士(ex.もやしと牛乳)の間でより顕著なものとなります。
一方で、このようなマーケットサイズの大きい商品同士の組み合わせは「特異性」に欠けています。
オーソドックスな併買分析は、この発生確率の特異性に注目したもので、Lift(リフト値)という指標を用います。
次の図は「商品併買」の分析結果画面を、一番右端まで横スクロールさせ、列見出し「相性分析」に着目したものです。
本稿のテーマはクロスMD(同時併買)ですので、図の右端の列見出し「内同時 > Lift」をクリックし、降順にソートしています。
まず図(再掲)の列見出し「全顧客 > 相 > 購買率」は、全顧客を母集団とした一般的な相手商品の購買率です。
それに対して列見出し「共通顧客 > 併買 > 併買率」は、「味の素CookDo青椒肉絲3−4人前」を買った顧客を母集団とした相手商品の購買率です。
一般的な相手商品の購買率に対して、「味の素CookDo青椒肉絲3−4人前」を買った顧客の相手商品の購買率が、何倍くらい特異か?という母集団の特異性を表す指標がLiftです。
購買率の分子を、同時併買をした顧客に限定して算出し、同じように一般購買率の何倍か?を計算したものが、今回ソート対象とした、同時併買のLiftです。
※1.「Lift」は倍率を表す数値で、様々な場面で使われます。一方「リフト値」という呼称は、併買特有のもののように認識されています。単に「倍率である」という共通認識のため、BiZOOPeでは敢えて「リフト値」という呼称を用いていません。
※2.生鮮はSKUがバラけてしまいますが、クロスMD適正があれば、図中の「ピーマン」のように複数SKUが表示されることで、それと分かります(インストアコードの使い回しはまた別問題として)。
以下を参考にしてみてください。
Liftが高いこと
極力併買ID数=関心のある人の多い、拡大解釈した際に政策ボリュームが期待できる組み合わせ
併買ID数が少ない場合、複数の相手商品を選抜、組み合わせることによって、政策ボリュームを担保する
「当たり前」と提案却下される特異性 < 提案相手商品 < バイヤー/顧客の認知を超える特異性
図(再掲)からは、CookDoシリーズが、「今夜は青椒肉絲」「今夜は回鍋肉」のように取捨選択(非同時併買)される事以上に、同時に必要とされていることが伺えます。
ここから例えば、「まとめ買いで、一週間分のメニューを予め揃えておく」というニーズがあるのでは無いか?という仮説が生まれます。
クロス(部門跨ぎ)ではありませんが、単純にCookDoシリーズのミックスマッチ提案が、最も調整に手もかからず、効果も期待できる(メーカーも小売も顧客も嬉しい = 三方よし)ということです。
ここに、「1週間分のメインディッシュはもう決まり♪」のようなコトPOPを立て、「週のはじめ、月曜のスタミナ補給は『回鍋肉』!ビタミンB1で快調なスタートを」のような、曜日別献立表POPを掲示するといった政策が考えられます。
システムの「オプション」で設定するしきい値(Liftと購買率)は、同時併買に掛かるものではなく、併買全体に掛かるものです。これは、以下2つの理由によります。
確率の非常に低い同時併買にしきい値を掛けてしまうと、相手商品が一切表示されないケースが多発するため。
クロスMD候補が無い場合でも、それ以外の併買政策を導き出す参考としていただくため(ex.類似用途機能品の集積提案)。
デフォルトのしきい値(Lift ≧ 2)は、実証実験と研究成果から定められたものです。
一般にLift > 1と言われていますが、「Lift = 1 = 特異性なし」ですから、母集団を絞っていることを考えても、相性が良いとは言い難いものがあります。
現に今回分析結果のように、Lift ≧ 2 であっても候補過多の傾向があります。
一方で、商品によっては相手商品が一品も表示されない(分析結果が空)= 特異的に相性の良い商品がない場合もあります。
本分析メニューは、「商品数 ✕ 商品数」の膨大な計算を要するものであるため、他の分析メニューとは異なり、バッチで実行されています。そのため、以下の制約があります。
期間の指定は、単月指定のみです。
商品は1商品しか指定できません。
店舗は全店舗集計固定です。
さて、次の図は「逆引き併買」の分析結果画面で、列見出し「内同時 > Lift」をクリックし、降順にソートしたものです。
ID-POS分析の黎明期、「食品スーパーと言えば生鮮。御社の生鮮部門に貢献するために」と「生鮮クロスMD」の提案が流行ったことがあります。
例えば先の「商品併買」の分析結果から言えばー
「ウチの『CookDo青椒肉絲』と、オタクの『ピーマン』。相性抜群なんですよ!クロスMDしましょう!」
という形です。先の「商品併買」で「ピーマン」の最初の1SKUは、全体で11番目に相性の良い(Liftの高い)商品でした。
ところが下図「逆引き併買」の結果(再掲)を見てみると、少なくとも画面内に「ピーマン」は1SKUも見当たりません。「ピーマン」が出てくるまでスクロールしながら確認してみたところ、最初に出てきたピーマンの列見出し「順位」は261位でした。
「確かに相性は良い(Liftは高い)みたいですけど、ウチの『ピーマン』から見れば、オタクの『CookDo青椒肉絲』さんは261番目のお友だちなんですよ。これからも仲良くしてあげてくださいね。」
という事です。
相性が良い(Liftが高い)と言っても、自分から見てLift上位でも、相手から見て自分のLiftが上位とは限らない = 相思相愛とは限らないのです。
「青椒肉絲」には「ピーマン」が必須でも、「ピーマン」にとって「青椒肉絲」は、その利用範囲の、ごく一部に過ぎないからです。
このように「併買」には以下のような一般則があります。
マーケットサイズの小さな方が、マーケットサイズの大きな相手を必要とする。
マーケットサイズの大きな方にとって、マーケットサイズの小さな相手は「必須」ではない。
クロスMDとは一般的に、マーケットサイズが小さな商品が、マーケットサイズの大きな商品を利用することで、認知/マーケットの拡大を図る政策である。
よって、生鮮三品に対して相対的にマーケットサイズの小さいドライグロサリーが「貢献する」ことは難しいのです。
実際に「生鮮三品に貢献」することを目指すのであれば、順位が一桁(3位)であり、先の「商品併買」でも1位であった、「たけのこ細切り」や、「たけのこ水煮」とのクロスMDを検討します。
「たけのこ細切り」にとっては、「青椒肉絲」は大きな利用用途先であり、まさに「相思相愛」だからです。
※.図は再掲。
実はこの分析メニューは、生鮮クロスMD提案の加熱を受け、小売業さんからの依頼で製造したものですが、メーカーさんにとっての政策ボリュームに欠ける※1ため、余り使われていません。
現在は主に、チラシ掲載が決まっている目玉商品に対して、紙面周辺にどんな商品を散りばめるか?の検討※2に、小売業さん中心に使われています。
※1.「たけのこ細切り」に関して言えば、どうしても「ピーマン」と較べてしまいますが、イメージに反しマーケットサイズは決して小さくありません。後述の「カンタン商品併買」においても、同日併買で1位になるほどです。
※2.チラシについては、チラシ商材選定の技術と実務 、チラシ紙面配置の技術と実務 もご覧ください。
「逆引き併買」を開発したのは「自社に貢献して欲しい」という小売業さんのエゴからです。
「逆引き併買」が使われないのは、「わざわざやるほどの政策ボリュームに欠ける」というメーカーさんのエゴからです。
一方で政策ボリュームが小さいということは、「一部の顧客しか喜ばない」ということであり、多くの顧客の「喜ばせて欲しい」というエゴに反します。
この三者のエゴの調和を阻む制約条件は、「特異でなくてはならない」という思い込み(高Lift依存)ではないのか?という疑問が生まれます。そもそも特異という事自体が、政策ボリュームを阻むからです。
実際同時併買Liftと間違って、併買Liftを使っているのに気付かず行ったクロスMD実験が、成功した事例もありました。
畢竟「相性が良いからクロスで売れた」のか?「販促したからクロスで売れた」のか?は、分からないのです。
更にはLiftという少々難解なしきい値の存在が、多くのユーザーさんの認知を阻み、「相性の良い商品が一つも見つからない」「バイヤーさんへの説明が難しい」「提案したいのに提案できない」といった嘆きを生みました。
誰でも操作しクロスMD提案ができるよう、しきい値の設定と特異性への執着を捨て、併買ボリュームが平均以上ある比較商品を引っ張って来るよう作ったのが「カンタン商品併買」です。
下図は、同日併買※の「適正flg」で降順に並び替えています。
※.「同日」中の会計(併買)に関して、一回一回の会計(含、買い忘れ)を別物として切り離さず、顧客のその日のくらし/ニーズの、連続したあらわれと見做しています。「同時」併買と比較し、マーケットサイズが若干増加する(クロスMD好適品が増える)ことも、目論見の一つです。
※.実はこの考え方が『ニーズの見える化 』のロジックの元ともなっています(自商品と相手商品の二品からなる小さな「マーケット」が、非併買と併買、更には同日と非同日に、「マーケットセグメント」されています)。
「カンタン商品併買」では政策判断も、カンタンになるようにしています。
平均的な併買者数に対して、何倍の人が併買をしているか?政策ボリュームの大きさを示しているのが「併買マーケット平均倍率」で、当然ここにはこの数値が1超の、政策ボリュームを担保できる商品だけが並びます。また、併せてそのボリュームの「順位」が振られています。
※.図は再掲。
クロスMD提案をする場合、「適正flg」が 付いている比較商品を選んでください。判断基準は以下の通りです。
適正flg =「◯」(本質的): 同日併買者数 ≧ 非同日併買者数 のクロスMD好適品
適正flg =「△」(苦肉の策): 「◯」がない/「◯」での政策実施が困難な場合。同日併買者率が平均超というかなり甘めの基準。無理にクロスMDにせず、以下の適正flg =「なし」のような販促も考慮
適正flg =「なし」:クロスMD = プラス一品では無い、「どれか一品」の集積販促を模索
繰り返しになりますが、ニーズが多様化した現在、商品同士の同日(同時)併買というのは、確率的に非常に稀なものなのです。
※.図は再掲。
「展開適地/ターゲット顧客」は、対象/比較のどちらの売り場でクロスMDを展開し、どちらの商品の利用者をイメージして、利用を喚起するPOPを作れば良いのかを示しています。
これには、非併買顧客がより多い方の商品がレコメンドされて来ます(より多くの未利用者の目に触れるため)。
先の「併買の一般則」の通り「マーケットサイズの小さな方が、マーケットサイズの大きな相手を必要とする」ため、多くの場合ここには「比較」(マーケットの大きい側:図の例では農産品群)がレコメンドされて来ますが、この場合の比較商品への「貢献」は、「率」よりも「ボリューム」で果たすこととなります。
※.図は再掲。
◯が付いた比較商品を見れば、「逆引き併買」同様、やはり「たけのこ細切り」や、「たけのこ水煮」とのクロスMDが、最も「三方よし」な提案になると考えられますし、「商品併買」同様、「CookDo」のミックスマッチ提案も、「三方よし」であるということが分かります。
このように、「商品併買」と「逆引き併買」のハイブリッドのような結果を返して来た「カンタン商品併買」ですが、「商品併買」と「逆引き併買」が、特異なものだけを抽出して来るのに対して、「カンタン商品併買」は特異性を無視しているため、次の図のように、ソートなしのデフォルト表示の状態では、何の変哲もない(マーケットサイズが大きいだけの)商品が、ただただズラリと並びます。
BiZOOPeユーザーさんのお話を聞いてみると、これをもって「使えね―分析!(特殊なものが何もない)」と思われ、引き続き「商品併買」を使っている方が多いようです。
※.筆者個人的には、マーケットサイズだけ見て、「CookDoから新提案、ピーマン切るより10倍ラク!キャベツと青椒肉絲の素で『しゃきキャベロース』」「カンタン!甘くない!シャッキシャキ!」なんてやっちゃっても良いと思うんですけどねw
バイヤーさんへの提案においても「リフト値がですね……」と言うよりも、「同じ日に買っている人が多いんですよ。」「しかもなんと!買ったことのある人の内、同じ日に買った人の方が、違う日に買った人よりも多いんですよ!これは行けます!」って言った方が、カンタンじゃありませんか?
以上、クロスMDの技術と実務についてでした。