やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
他の販促手法とは異なり、店舗との接点が全く無い顧客にもリーチできるのがチラシ販促の強みです。
さて、例えば「今度のチラシ、菓子部門で裏面の21コマお願いね!」と言われたとします。
チラシの役割は、チラシを手に取ったできるだけ多くの人に「おっ!?」と思わせること、すなわち個別に異なる価値観に響かせること。それによりできるだけ多くの人の来店(新規来店/再来店)を促すことにあります。
ですから、例えば菓子部門の商品選定・チラシ掲載は、菓子部門のみに留まらず、「来店そのもの」を左右するものです。
その前提で、チラシ商材選定の技術と実務 では、どのカテゴリーから何SKUを選定するのか?どのSKUをチラシ商材とするのか?迄を決めました。
ここではチラシの確率を更に高めるために、掲載が決まったSKUを、どのように紙面配置すれば良いのか?をBiZOOPe の 『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』使って解説します。基本的な考え方についてはレイアウトとスペース分配の基礎 に準じます。
まあ、21SKUの紙面配置くらいそこまで厳密にせずとも、勘と経験で充分だと思うのですが、紙面全体に適用すれば更に確率を高められること、このくらいのスケール感の方が、レイアウトの理屈としては分かりやすいことから、この予め割り当てられた21コマを例に解説をさせて頂きます。
チラシ商材選定の技術と実務で決めた、掲載21SKUでの分析結果が以下の通りです。
顧客による選択肢の束が、4つの「目的範囲(くらしのスタイル)」と、10の「選択範囲(ニーズ)」に分かれました。
これをそのまま紙面枠とできれば何の問題もないのですが、枠は決まっており、それぞれの範囲のSKU数もバラバラですし、そうは行かないことは明白です。
そこでまず、これを列見出し「採用順」で昇順に並び替えます。
「採用順」は、最も多くの人に(ID数高)、最も価値観の重複なく(代替性低)響かせるための順番ですので、この場合採用順3位までを、アイキャッチの3枠に採用します。
一方で、この3商品の枠への並びについては、「関連順」の昇順または降順で、左から右へ当てはめて行きます(左上が優位地と想定)。
関連順最小のアイキャッチ商品と、最大のアイキャッチ商品の採用順を比べ、前者の採用順が小さければ昇順、大きければ降順に配置します。
これを当て嵌めると、チラシ枠は以下のようになります。
後述しますが、必ずしも採用順1位を優位地(左上)に置かないのは、個々の単品が目に止まる確率よりも、単品「群」として目に止まる確率を高めるためです。
列見出し「関連順」をクリックすることで、昇順に並び替えて最初に戻ると、アイキャッチである「ロッテラミー3本入」は選択範囲「f1_n2」に属しています。「江崎グリコポッキー極細2パック入」は、選択範囲「f2_n6」 に、「稲葉ミックスナッツ8個入」は「f3_n8」に属しています。
「選択範囲」は併買/非併買から導き出された、同じような価値観を持った人達による、文字通り「選択肢の束」です。
よって次は、アイキャッチと「同じ選択範囲」に属する商品を、関連性の高さを示す「関連順(≒ 並び順)」を見ながら、アイキャッチの下に固めて行きます。
なぜなら、アイキャッチ商品を先週買って家庭内在庫がある人でも、少ない視線移動で「これはいらないけど……あっ!こっちなら♪」という確率を高めるためです。
これを行うと、チラシコマは以下のように埋まります。
並べ方について厳密に言えば、基本はコマ6、7の例のように、関連順で左→右のように並べて行くのですが、それ以外のコマが埋まらないケースについては、次のステップのため、外側のコマ(ex.)コマ4、コマ9)を空けておくようにします。
アイキャッチ商品の所属する選択範囲よりも、分析表の上下外側にある商品は、他のアイキャッチ商品との関連性が「遠い」、処分に困る商品です(図の太枠内の商品)。
よってまずはこれらを、縦の枠を意識しながら関連順で這わせ、処分して行きます。
次の図は分析表の上方、関連順1〜2の商品ならびに下方、関連順16〜21の商品を、関連順で這わせて行ったものです。
関連順でギザギザと這わせることによって、「ニーズの塊」が保たれます。
いずれもチラシ内他商品との関連性が「遠い」ため、外へ外へと逃して行きますが、チラシコマ14に「関連順:17」を配置したのは、縦の並びから一品だけはみ出る「関連順:21」を、チラシコマ19へと綺麗に逃がすためです。
そうすると、割り当てられていない商品は、図の太枠内の商品となります。
最初に2SKUしかない、選択範囲f2_n7の商品を割り振れば、以下のようになります。
最後に残された商品を割り振れば、以下のようになります。
これもチラシコマ16に「関連順:6」を配置したのは、縦の並びから一品だけはみ出る「関連順:8」を、チラシコマ18へと綺麗に逃がすためです。
このように、ややパズルめいた部分はありますが、枠さえ固定されていればルールは存在しますので、AIに一発で割り振りしてもらえるようにできるかもしれません。
さて、これで完成ですが、「あれ?チョコはチョコで固めなくて良いの?気持ち悪くない?」と思われたかも知れません。
次の図を見ればお分かりいただけますが、「ラミーとガーナを選ぶような人(f1_n2)」と、「クランキー袋とチョコでもない蒟蒻畑を選ぶような人(f1_n5)」は、それぞれ「別の価値観」を持っています(下図では選択範囲の違いをフォント色で表現)。
「不二家のピーナッツ、ハート、アーモンドの中から選ぶような人(f4_n10)」に至っては、価値観どころか「くらしのスタイル」「売り場の利用目的」からして、「ラミーとガーナを選ぶような人(f1_n2)」からかけ離れており、「名糖とカバヤとフルタを選ぶような人(f4_n9)」の方が、価値観はまだ「近い」のです(下図では目的範囲の違いを外枠の色で表現)。
当然ながらチョコを買う人が、「チョコなら何でも良い(代替可能な)」訳ではありません。それぞれ異なる顧客のニーズが、このように「まだら」な文様になるのは必然なのです。
それを「個」ではなく「群」とすることで、「商品の価値訴求」ではなく、「顧客の価値感に訴求」しよう、明確なメッセージを伝えようと言うのが、販促にせよ、MDにせよ、ID-POS時代のレイアウトの考え方※です。
※.棚割のように作業効率が関連する「物理配置」については、必ずしも「まだら」なレイアウトを優先することはできません。棚割については本来、極端な「まだら」さを解消するようなカテゴリーの細分化が必要と言えます。
分析画面上部の「AIエージェント」から「目的範囲・選択範囲のニーズ要約」を選ぶことによって、それぞれの枠が、おおよそどんな顧客のライフスタイル(目的範囲)、ニーズ(選択範囲)を表しているのか?を、次の図のようにAIが推論・要約してくれます。
これを参考に、例えば先程のラミーに代表される左端・縦のブロックであれば、「気軽に気分転換」、その隣のポッキーに代表される中央・縦のブロックであれば「楽しくシェア」のようなキャッチコピーを添えることで、チラシが響く確率を更に高めて行きます。
「目的範囲」「選択範囲」は、「コトPOP」で言うところの顧客個々の「コト」を表しているとも言えます。
このように組んだチラシは、まさに「コトチラシ」と言えます。
以上、チラシ紙面配置の技術と実務でした。