” ニーズが見える ” ID-POS分析
基礎となるアンケートとその集計方法の考え方、セグメントの解釈方法を示す為に、複雑になり過ぎると判断して前回集計から除外した設問項目<部門別の利用目的>ですが、これを含んだものが当初目論んでいた本来の完成形でしたし、多くの方々のご協力を無駄にしたく無いとも考え、改めましてここに発表させて頂きます。
ここでは集計方法の考え方や細かい注釈については割愛させて頂き、断定的に物事を記述して行きます。
加えてセグメントの解釈もより複雑になりますので、まずは前編である<顧客接点を活かしたアンケート>あなたがその食品スーパーを選ぶ理由 をお読み頂かないとチンプンカンプンかと存じます。
悪しからずご了承願います。
特にメイン使いでは無い店舗を利用する際の利用動機として、「あの店には肉を買いに行く」といったものがあるかと思います。
その理由として「質が良いとは言えないが、自分的には十分美味くて、安い大量目の扱いがあるから」或いは「夕時の見切りの思い切りが良いから」のようなものがあります。
逆に「肉はそうだけど、他の部門についてはまあまあなんで、わざわざ出向く程でも無いから」こそ、焼き肉時のサブ使い店舗に甘んじていると言った側面もあります。
網羅性、相対性は大事ですが、「肉の質が良いから」「肉が美味いから」「肉が安いから」「肉の品揃えが良いから」「肉の見切りが魅力的だから」と一々売り場部門毎に設問を設けていたのでは、設問数が多くなり過ぎ、回答とアンケートの信憑性が疎かになる恐れがあります。
また「近い」や「接客」、「クリンリネス」のように、売り場部門毎とするにはナンセンスな、店舗全体に掛かって来る設問項目との数、粒度の偏りも懸念されました。
そこでアンケートの末尾に図(一部抜粋)のような形で、売り場部門に関する設問項目を部門数分だけ掲載してみました。
クラスター分析に掛けた際に、これら売り場部門がどこの利用目的クラスターに属するかによって、「肉を利用目的とする人が主に重視するのは安さか?品質か?」逆に「安さを重視する人が特に重視するのはどの売場部門か?」が分かるかもしれないと考えたからです。
このやり方が最善かどうかは分かりませんが、結果を見て解釈してみない限り何も始まりませんので、以下集計結果を概観して行きたいと思います。
アンケートの集計により表出して来た利用目的の大分類であるf1、f2、f3、f4、4つの塊毎の、設問項目と顧客(回答者)との関係を主に利用目的となる売り場部門について概観して行きます。
4つの利用目的の分類は「4人の異なる人の、それぞれ異なる来店動機」とも「1人に訪れる代表的な4つのシチュエーションとその際の来店動機」とも捉えられます。
集計する設問項目が増えた事によって、利用目的の大分類の分かれ方が前回の3つから4つになり、それを構成する店舗の利用メリットの位置取りにも多少の変化が生じていますが、前回同様まずは最も強力な利用メリットである「近さ」を価値観として含む利用目的f4、次いでその対極に位置する利用目的f1、前回集計で重点利用メリットとした「綺麗なトイレ/授乳室等」を含んだニッチな利用目的f3、最後に今回表出して来た利用部門マターな利用目的f2の順に見て行きます。
前回集計における利用目的f3に該当する「近さ」を含む利用目的です。
売り場部門としては3部門、流石の生鮮三品が含まれていました。
中でも重点レコメンドが付いたのは「野菜」です。
このセグメントの価値観の優先順位は「近さ」>「豊富で楽しい品揃え」>「野菜」の順です。
読み解けば、近所のスーパー利用において顧客が最低限求めるものは生鮮三品、取り分け野菜における品質の高さと美味しさのようです。
顧客の期待上スーパーにおいて”当たり前”とも言える生鮮三部門にありながら、特にレコメンドされて来たという事実が重要です。
逆に言えば野菜の品質の高さと美味しさ(次いで”近い”ものとしては品揃え)に劣る店舗は、如何に近くにあろうとも素通りされ勝ちだという事になりますが、それも営業時間次第で緊急避難的に利用されるシチュエーションもあるといったところでしょうか?
同一の利用目的(小)=f4_n18に属した肉も野菜と同様ですが、セグメントを異にした魚介(f4_n20)については、その品揃えの豊富さや珍しさが「楽しさ」に繋がると感じる人が多いようです(正直”ロス”にも繋がっちゃいますが。。。)。
特定の売り場部門を含まずに単独でアンケート回答者の100%を包含する、「近さ」を含んだ利用目的(小)=f4_n19は相変わらず超強力な来店要因ですから、弱者の戦略としては後述のアンケート順位に依らず、このマーケット・セグメントf4だけに絞って、徹底的に戦うというのも有効な手(オオゼキさんのCVS版のようなイメージ?)です。
前回集計における利用目的f1に該当する「停めやすい駐車場」を含む「近さ」の対局にある利用目的です。
対極とは言え当然近い店にもこれらは求められており、例えば近くても駐車場が停めにくいのであれば、遠くの停めやすい店に行きますよという裏表の構図です。
売り場部門としては6部門が含まれ、近くの店に行く利用目的であるf4から離れる程、特徴的な売り場部門が利用目的として含まれる(◯◯を目的に買いに行く)傾向がありそうです。
因みにf1(6部門2レコメンド)、f2(7部門3レコメンド)、f3(2部門1レコメンド)、f4(3部門1レコメンド)という結果でした。
f1で重点レコメンドが付いたのは、こちらも生鮮三品とは対極にある(?)「惣菜・弁当」「パン(ベーカリーを含まない)」の2部門です。
このセグメントの価値観の優先順位は「停めやすい駐車場」>「パン」>「惣菜・弁当」>「決済手段」>「チラシ」>「使い易いカート」>「チェックアウト手段」の順です。
「惣菜・弁当」は「冷凍食品・アイス」「菓子」と共に売り場部門だけで利用目的(小)=f1_n4を形成していますし、「パン」についても「米」「スイーツ・デザート」が含まれる利用目的(小)に属していますから、この両部門はわざわざ遠く迄買いに行く動機付けの代表格と言えるかもしれません(惣菜についてはヤオコーさんの手作りおはぎの例もありますし。。。)。
「重点」の意味の再確認にもなりますが、これは支持人数の多い「惣菜・弁当」が平均以下であれば、それより支持人数が少なく併買される率の高い「冷凍食品・アイス」「菓子」が頑張っても無駄になる率が高くなり、同じように「パン」が平均以下であれば「米」「スイーツ・デザート」が頑張っても無駄になる率が高くなるという事でもあります。
「惣菜・弁当」「パン」が平均超に頑張れば、残りの部門は平均点でも”ついで”に上手く回って行くというのが「重点」の「重点」たる所以です。
人によっては/時によっては「酒」は距離を超えさせる、或いは近くで我慢させるような性質を持っていそうです。
どちらにせよ酒部門を強化する事は、”マス”の狭間を埋めるニッチな人たちの来店を逃さない事に繋がります。
利用目的「果物」は「ベーカリー」「その他食品」のついで買いを呼び、利用目的「和チルド」は「食品以外」のついで買いを呼ぶ傾向にあるようです。
「卵」を目的にスーパーに行くなんて、個人的には祖母がスーパーの巡回バスに乗って「1円卵」を買いに行っていた昭和の昔を思い出しますが、これがアンケートから導き出された令和の(54.93%の人に共通する)真実です。
前回記事でも触れたように、”最低限”を満たしている事を前提に、競合に勝つ為、そのレベルを超えて力を注ぐべきポイントが重点政策や重点部門です。
その為「やっていない」のであれば、まずは最低限を満たす為に「やるべき」政策ですし、「やっている」のであれば、それを他店を超えるレベルに昇華すべき政策です。
特異な結果に映るかもしれませんが、顧客にとって普通では無い特別な位置付けを占めているからこそ”重点”として表出して来ている訳です。
利用部門中重要度順で3〜5位を占める「酒」「卵」「パン」は、「近さ」と「駐車場」以外の出店、インフラ、システム政策を上回る、遠方の顧客を惹き付け、近場の顧客を獲られない為の明確な来店動機となる部門です。
それに次ぐのが「惣菜・弁当」「和チルド」「野菜」「果物」と言った部門ですが、利用人数の多い部門に対し、例え最低限+αであっても、+αを付加してあげる事は、大きなレバレッジとなります。
今回記事の元とした資料です。
前回資料については<顧客接点を活かしたアンケート>あなたがその食品スーパーを選ぶ理由 巻末より御覧下さい。
個人情報を含みませんので、いづれも、どなたにでも自由にダウンロードして頂けます。
【サンプルアンケートページ】
実際に使用したアンケートページの複写サンプルです。
今回アンケート設計について細々と解説する代わりに、実感を掴んで頂く為、実物の複写版を掲載させて頂きます。
以下のリンクをクリックする事で開きます(Google Form製)。