ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
ID-POSのすゝめ

「ID-POS活用をはじめるにあたって、何故ID-POSが必要なのか?バイヤーに端的に伝えるには?」と聞かれましたので、私なりに書いてみたいと思います。

内容的には前回書いた商品選定の為の数値(個客視点と商品視点から)と重複しますが、ID-POS初心者向けに「よりシンプルに」を心掛けてみたいと思います。

マーケティングの為のデータ = ID-POS

マーケットとは「商品を利用する事で得られるメリット」と、「買い手の価値観」とが出会う接点です。

よってみなさんの仕事の内、商品が買い手の視線・琴線に触れる、品揃え棚割と言ったMD政策、チラシクーポンと言った販促政策、接点に働き掛ける政策はすべてマーケティングです。

ID-POSデータがあれば「買い手の価値観」は一人ひとりの買う/買わない、選ぶ/選ばないという利用行動によって表明され続けています。

「商品の利用メリット」が近い商品同士は「選ばれ」ますが、独自の「商品の価値」は(単価/回転は低くとも)買い手の多さ中でも「それしか選ばない」買い手の多さに表れます。

ID-POSデータはレコード中に商品コードと顧客コードを含みますので、文字通り商品と買い手との間の接点記録です。



マーケティングにはID-POSデータが必要です。


何故ID-POSなのか?

1)ID数が分かる


極端にデフォルメした例ですが、同一カテゴリー内にどちらも同じ3万円/月を売り上げる商品1と商品2があった時、どちらか一方をカットしなければならないとします。


どちらの商品をカットしますか?


ID-POSデータはレコードに顧客コードを含みますので、同じ3万/月を売り上げる商品が、例えば図のように見えて来ます(ID数が分かる)


どちらの商品をカットしますか?

※.BiZOOPeではID数による平均値を”ID〇〇”と呼びます。ID金額、ID点数、ID回数があります。


マーケティングの原則として、利用ID数の多い方の商品を採用し、少ない方の商品(商品1)をカットします。

売上金額は個々の商品に紐付く実績に過ぎませんが、ID数=顧客は「その商品だけ」接点を持ち、「その商品だけ」を買っている訳では無いからです。


商品2は店頭にせよ、チラシにせよ、クーポンにせよ、「より多くの人に響く」販促チャネルとしての価値も持ち合わせています。

ここ迄で納得行かない点がある方は、以下を開いてお目通し下さい。

  【読み飛ばし可】戦いは数だよ兄貴!」by ドズル・ザビ※

顧客Aがロイヤル顧客だとしたら?
そもそも顧客Aは商品2も利用していますが、その場合のロイヤル顧客比率は商品1が100%、商品2が33%となります。
顧客BとC共に閾値に1円足りずにロイヤル判定を逃した可能性もあります。
ロイヤル顧客というだけで趣味嗜好が一致する訳でもありませんので、そもそもそこまで時間を掛けられますか?時間を掛ければ結論は出るのでしょうか?
私たちが実際に選り好み/取捨選択できるのは商品だけであり、顧客ではありません。
また買い手側の都合にばかり配慮していては、売り手の都合が立ち行きません。

商品1の方がID回数(頻度)が高いとしたら?
客数 = ID数 ✕ ID回数 の、根源的ボリューム(ID数)よりも内訳(ID回数)を重視しますか?
ID回数が高い商品が、近隣住民の来店動機となり易い(ex.牛乳)事は確かですが、ID回数が低い商品の方が距離さえも越えるような強い来店動機となっている場合(ex.手作りおはぎ)もままあり、これらがミックスされた”品揃え”あってこその業態、その業態への来店動機です。
一概にどちらか一方が良いとは決め切れません。
決め切れない要素があなたを惑わすのであれば、寧ろそれら一切合切を除外してしまうというのも一つの考え方です。
ID数は純然たる民主主義の投票結果であり、「決め切る」に足る数値です。

商品1の方が粗利率が高いとしたら?
ID-POSがあろうと、どこ迄行ってもチェーンストアの基本は”マス”です。
まず顧客の存在がなければ、店舗売上も店舗粗利も生まれません。
部門担当者は自部門の成績だけに囚われがちですが、各部門が利用ID数増を最優先に考えてくれれば、結果として来店客数増によりお互いが潤う筈です。

強い競合と品揃えをズラさないと?
強い競合が居てすら/競合より価格が高くてすら、現にあなたのお店で買う事を選択(近いから?)した多くの顧客を尚更裏切る訳には行きません。

ですから「戦いは数だよ兄貴!」です。

※.TVアニメ機動戦士ガンダム劇中でジオン軍のドズル・ザビ中将が、直轄する宇宙要塞ソロモンの危機に際し、超巨大モビルアーマー1機を援軍に寄越した兄ギレン・ザビ総裁に向けて言い放った言葉。

併買が分かる


ただ単純に「戦いは数だよ兄貴!」一辺倒では陥ってしまう罠があります。ここではそれを考えてみます。


やはり商品1と同一カテゴリー、同一売上の商品3があった時、利用ID数迄同じでは判断が付きかねます。


商品1と商品3ではどちらの商品をカットしますか?


ID-POSでは併買が分かります。

顧客Aは期間内・同一カテゴリー内において商品1と商品2を併買しています。
もしかしたら顧客Aにとってこの利用は選択購買であり、両商品は最低限代替可能な「類似利用メリット」なのかもしれません。


それに対して顧客Dは商品3一択の非併買顧客であり、商品3は顧客Dにとって他をもって替え難い「独自利用メリット」なのかもしれません。

顧客B、顧客Cにとっての商品2も同様です。


そうなると商品1のカットにより顧客Aが未利用化/離反するリスクより、商品3のカットにより顧客Dが未利用化/離反するリスクの方が高いと見積もる事ができ、商品1がカット対象となります。


ここ迄と逆の考え方が、「できるだけ多くの人にカニバリせずに響かせる」販促商品等の”採用”の方の考え方になります。

※.この例ではクロスMD等に使われる「同時併買」では無く、ID-POSからしか分からない「期間内併買」を指しています。

「ID数が分かる」「併買が分かる」事だけがID-POSのメリットと言い切ってみる

「ID数が分かる」「併買が分かる」事がID-POSの二大メリットです。

この2つを利用して、熟考せずともすぐに判断ができるよう、商品を採用すべき順番カットすべき順番を計算するのがBiZOOPeTapir_MKです。

同時にTapir_MKカテゴリー中の商品を顧客から見た「類似利用メリット」に分類してくれます。

これはランチェスターの弱者の戦略で言うところの「マーケット・セグメンテーション」にあたるものです。

ID数併買を組み合わせる事で、自社/自部門は競合に対してどのセグメントにおいてNo.1戦略を採るべきか?の知見迄もが得られます。

ID数と併買だけをID-POSのメリットとする事に納得が行かない方は、以下を開いてお目通し下さい。

  【読み飛ばし可】あえて言おう!カスであると!by ギレン・ザビ※

あれ?ID回数やID金額といった指標が分かるのはメリットじゃ無いの?

年代や顧客ランクと言った顧客セグメントは?

トライアル/リピート、クロスMD、ブランドスイッチと言った分析は?と思われましたか?

「見たことの無いものを見てみたい」気持ちも分かりますが。。。

指標はID数が分かる事によって生まれる副産物、要素であり、従属的なものです。

顧客セグメントは”秘密のケンミンショー”と同じで「40代は〇〇が大好き」のような過剰な拡大解釈による誤謬、失敗を招きます。

例に挙げた分析も、小売業の業務にとってはメインストリームから外れる分析、どちらかと言えばメーカーの為の分析です。そもそも商品利用者の過半がトライアラーですから、小売業があえてそれを分析する意味に乏しいですし、その他の分析も併買の一形態です。

ただでさえ「ID-POSは難しい」と思われ勝ちなのですから、シンプルに実利の得られるID数と併買に集中するのが得策です。

ですから、ID-POS活用の成功の為、士気高揚の為「あえて言おう!カスであると!」と言っておきます。

※.TVアニメ機動戦士ガンダム劇中でジオン軍総裁ギレン・ザビが最終決戦に向けた士気高揚を図るため、敵である地球連邦軍を指し演説中に発した言葉。

【2024/01/17追記】

戯言から昇華させ、なぜID-POSなのか?なぜBiZOOPeなのか? にまとめてみましたので、こちらもどうぞ。