ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
【ロジック】商品を採用すべき順番とは?
意思決定とは畢竟 ①分ける事、②優先順位を決める事 の2つです。
POS分析では伝統的に ①商品分類やABCランク、②売上順や点数順や粗利順
ID-POS分析では伝統的に ①顧客属性や顧客ランク、②頻度順やリピート率順
を用いて来ましたが、これらはそれぞれにあやふやな欠陥があり、前者が顧客不在、後者が一部商品不在と、双方がリンクしていない事が、特に顧客が介在する商品政策=マーケティング上の意思決定の大問題です(参考:POS分析がマーケティング足り得ない理由)。
そこに顧客による商品分類という全く新しい視座を提示するのがBiZOOPeです。
①分ける事 については マーケット・セグメンテーションの原理 等各所で解説させて頂いていますので、そちらをご参照下さい。
②優先順位を決める事 についても マーケット構造とその利用方法 等やはり各所で解説しているつもりなのですが、ロジック中一番説明が厄介なのがこの採用順です。
本来ロジックをアニメーション化して解説したい位ですが、そんな技術もお金も無いので、極力商品数を絞って6商品から成るビールマーケットへの採用順の振り方について、紙芝居方式で解説させて頂きます。
商品数が少ない為「当たり前」っぽく見えてしまうかもしれませんが、その辺割り引いてご覧頂ければ幸いです(逆に「当たり前」に思えたのなら、勘と経験を数字で説明出来た訳で、標準化にとって素晴らしい事だと思いませんか?w)。
①マーケットが1つ=選抜商品が1つの時(POS分析の世界)
顧客視点が一切介在しない世界であり、マーケット構造に関わらず「顧客にとっての利用メリットはあくまでも”ビール”であって、どれにも大した違いはない」という視座に立つものです。
売り手側の分割しか存在しない為、これはマーケットと言うよりも商品カテゴリーであって、POS分析に収束します。
但し、ID-POS分析では利用ID数が分かりますから、選抜商品は極力利用を逃さない為にも、より幅広い人への訴求効果の為にもマーケット中で利用ID数が最大の「アサヒスーパードライ350ml×6本」を抜き出し、採用順=1を振ります(ID数は必ずしも客数、点数等と比例するものではありません)。
②マーケットが2つ=選抜商品が2つの時
マーケット構造(デンドログラム)を2つに分断すると、顧客の中にはざっくりと「スーパードライ」と「スーパードライ以外」という大きく異なる2つの利用メリット認識が存在している事が分かります(余談ですが、スーパードライがマーケット中でブランドスイッチから断絶された特異な地位を形成している事も分かります)。
POS分析的に数値だけに則れば、次は2番目に利用ID数の多い「アサヒスーパードライ350ml」が選抜されるところですが、それでは商品的には利用メリットが、顧客的には価値観が一方のマーケットに偏ってしまいます。
よってID-POS分析的には「2つの異なるマーケットが存在するのであれば、それぞれからその利用メリットを代表する商品を選抜して来るべき」、逆説的には「商品を2つ選ぶのであれば、マーケットを2つに分割して選ぶべき」と考えます(売り手がチラシに同じカテゴリーの商品ばかりを載せないように、買い手側の”同じ”が見えているのであれば、買い手に対してもそうすべき)。
一方のマーケットからは「アサヒスーパードライ350ml×6本」が既に選抜されていますから、もう一方のマーケットを代表する=利用ID数の多い利用メリット「キリンビール一番搾り生350ml×6本」を選抜し、採用順=2を振ります。
これはMD的には「もしも売り場を2品だけで作らなければならないなら、この2品」、販促的には「チラシ/エンドに2品を載せるとするならば、この2品」という意味合いになります。
以降も同様なイメージで図表を見て頂けると良いかと思います。
③マーケットが3つ=選抜商品が3つの時
マーケット構造は、結節点の”高さ”=”距離”が遠いもの程、利用メリットとしても”遠く”、”異質”である事を示しています。
利用メリットとして”異質”であるとは顧客視点ではより代替が効きにくい事を、商品視点ではよりカニバリゼーションしにくい事を意味しています。
マーケットが3つになる”高さ”でマーケットを分断すると「スーパードライ以外」というマーケットの中から「サントリープレミアムモルツ350ml」という顧客にとっての利用メリットが枝分かれし、表出して来ます。
図を見ると「スーパードライ」マーケット中の「アサヒスーパードライ500ml×6本」も近しい”異質”さですが、顧客にとってはより”異質”であり”代替しづらい”事を示している「サントリープレミアムモルツ350ml」に採用順=3を振ります。
(実はこの6品も元々は、もっと大きなビールカテゴリーから採用順で引っ張って来たものですが、スーパードライ、一番搾りが6缶パックから採用されて行くのに対して、単缶から採用されて行くというのが、如何にもプレモルの利用目的を表しているようで面白いです。)
④マーケットが4つ=選抜商品が4つの時
マーケットが4つになる”高さ”でマーケットを分断すると、先程「サントリープレミアムモルツ350ml」に近しい”異質”さと言った「アサヒスーパードライ500ml×6本」という顧客にとっての利用メリットが枝分かれし、表出して来ますので、これに採用順=4を振ります。
段差のあるトーナメント表を決勝戦から逆に辿る感じですねw
⑤マーケットが5つ=選抜商品が5つの時
マーケットが5つになる”高さ”でマーケットを分断すると「キリン一番搾り生350ml」という利用メリットが、6本と24本に分かれます。
6本は既に付番済みですので、24本に採用順=5を振ります。
⑥マーケットが6つ=商品数の時
「アサヒスーパードライ350ml×6本」と「アサヒスーパードライ350ml」がマーケット構造中最も低い位置で結節していますので、顧客から見ればこの組み合わせがマーケット中、最も代替性が高い組み合わせであると言えます。
イメージとしては「平日帰宅時に1本だが、週末車で来店した時には6本」、「通常は1本だが、特売に掛かっていれば6本」といったような利用パターンで、ID-POSにおいては非同時の併買という利用行動に現れます。
この段迄来ると最早採用と言うよりは不採用的な用途が強くなって来ますが、最後に残った「アサヒスーパードライ350ml」に採用順=6を振ります。
これがID-POSがバイヤーに嫌われる理由の一つでして、もしもここから1商品をカットしなければならないとした時に、ID数で見ればカテゴリーで2番目の売れ筋商品をカットしろと言うのです!
商品を絞り込んでいる為これは極端な例ですが、他のカテゴリーでも往々にして、売れ筋上位には顧客視点では同質利用メリットが、商品視点ではカニバリゼーション商品が並ぶのが紛れもない事実です。
私から言えるのは、あくまでも BiZOOPe は意思決定支援システムなので、数字は数字として当然「カットしたくないもの/できない事情があるものはカットしなくていいんですよ!」という事です。
但し「売れ筋という売り手視点だけで絞り込みを行うと、売り場から買い手にとっての利用目的、来店動機そのものが欠落する=他社と同じような、競争力に欠けたつまらない売り場に成るので注意!」という事を申し添えさせて頂きます。
では、どの商品を代わりにカットすべきか?
どの商品にもほぼ必ず「代替は不可能だ!」という顧客が付いていますので、究極はこの図のようにマーケット数=商品数となるのですが、流通業の都合ばかりでは立ち行かないのと同じように、顧客の都合ばかりでも立ち行きません。
BiZOOPeでは実際、どんなに商品数が多くても、マーケット・セグメントをセグメントf(far=遠い)とセグメントn(near=近い)の二種類のみとしています。
また、セグメントfを代表する(セグメント中採用順が最も若い)商品に1st、セグメントnを代表する商品に2ndというレコメンドを付けています。
定義上セグメントnを代替利用=カニバリゼーション必至の塊としていますので、採用順が低い商品中レコメンドが付いていない商品いずれかをカットしてもらえれば、最低限代替可能な利用メリットだけは売り場に担保される事になります。
長文、最後までお読み頂いた方ありがとうございました。
さて、ID-POSの深淵を覗き見た感想は如何だったでしょか?
マーケットを1つとしか見ていない今の考え方、売れ筋主義の今の考え方って「ヤバいな!」と気付いて貰えましたか?
システム屋の社員としてだけで無く、一消費者としても一国民としても「この考え方が流通業のマーケティングにおける意思決定の常識になって欲しい!」と考え、このように特許も取らずに公開しまくっている次第です。
セグメントf、セグメントn、レコメンド等については マーケット構造とその利用方法 を、
そもそもの前提となっているマーケット構造ってどう作られてるのよ?と思われた方は マーケット・セグメンテーションの原理 を、
それをどう業務に活かすのよ?儲かるの?って方は これからの ID-POS活用を真剣に考えてみよう!、これからの商品業務を真剣に考えてみよう 等々盛り沢山のページを併せてご高覧頂ければ幸いです。