やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
ここでは何を「重点」とすべきか?ID-POSによる、重点カテゴリーの選定の仕方について記します。
BiZOOPe の 『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』を使ったものですが、BiZOOPeをお使いでないみなさまにも、「重点とは何か?」の定義において、大いに参考にしていただけるものと思います。
ID-POS分析の主眼は、単品分析であれカテゴリー分析であれ「売り場の利用を増やす」ことに留まらず、「店舗への来店を増やす = 店舗全体の売上を増やす」ことにあります。
そのためには何より、顧客の根本的利用行動である「併買(ワンストップショッピング)」のネットワークの中において、多くの顧客が共通して通過する買い物の結節点 =「ハブ」となるカテゴリーが、特に重要です。
【定義】重点 = 併買ネットワークのハブ
図は菓子部門のカテゴリーを、大小2つの併買のネットワークに分けた、「お買い物地図」とも言えるものです。
図の各カテゴリーの「利用者率」を見ていただければ分かりますが、その単純和は100%になりません。これは顧客が各カテゴリーを併買している為です。
では、誰もがすべてのカテゴリーを併買しているか?と言えば、当然そうではありません。
例えば図の「目的範囲」において、「催事・ギフト」は独立した併買ネットワーク(f2)を形成しています。
これは端的に言えば、大きく「日常的に菓子売り場全般を併買しながら利用する人(f1)」と、「通常菓子売り場を利用することはない(非併買)が、『催事・ギフト』用途では菓子売り場を利用する人(f2)」といった、菓子売り場に対する「異なる利用スタイル」を持った人たちが居るということです。
一方で図中、平均以上に併買されていることを示す「選択範囲」を見れば、「催事・ギフト」だけでなく、「季節・その他」、「珍味・豆菓子」もそれぞれ独立した併買ネットワークf1_n2、f1_n3を形成しています。
イメージしやすいように、これを端的なお客さま像として見れば、菓子売り場には「『和焼き菓子〜洋焼き菓子』の範囲内で菓子を選んでいる人(f1_n1)」「『季節・その他』で珍しいものがあれば利用する人(f1_n2)」「『珍味・豆菓子』にしか用がない人(f1_n3)」「『催事・ギフト』時にしか用がない人(f2_n1)」といった、菓子売り場と4つの「異なるニーズ」によって接点を持った人たちが居るということです。
顧客は併買をする存在ですし、それは人によってまちまちですので、勿論全員が必ずこの4つのどれか一つに分類されるということはありませんが、統計的に全体の傾向を区分すれば、大きく2つ、小さくはこの4つの併買ネットワークに分けられるということです。
「選択範囲」が平均以上に併買されている併買のネットワークであるということは、逆に言えばその併買ネットワーク内の利用者にとって、その外のカテゴリーは、平均以上に非併買、極端に言えば「用無し」だと言う事です。「目的範囲」ともなれば尚更です。
となれば、菓子売り場にそれぞれの「用」を持ち続けてもらい、利用者数を維持 ⇨ 増加させて行く為には、併買ネットワークごとに「重点」を決め、顧客接点として強化して行く必要があります。
冒頭で定義した通り、「重点 = 併買ネットワークのハブ」すなわち「最も多くの人が通過する結節点」です。
この定義に従えば、大きな併買ネットワークである目的範囲f1のハブは、利用者率58.04%の「ポケット」であり、f2のハブは「催事・ギフト」です。
これらには「最重点」カテゴリーとして、重点レコメンド「1st」が振られています。
次に、小さな併買ネットワークである選択範囲中のハブに、重点レコメンド「2nd」が振られています。
重点レコメンド1stと2ndの「利用者率」の単純和、すなわち利用顧客のカバー率が100%に満たなかった場合、重点レコメンド「3rd」が振られる場合もありますが、図の例で言っても、7カテゴリー中4カテゴリー、約57%が重点カテゴリーであり、これでは「重点」とは何か?という話になってしまいます。
「全てが大事 = 全てが大事ではない」と同義である上、人間には認知限界すなわち物理的な管理制約があります。
その場合、次の図のように列見出し「採用順」をクリックし、昇順に並び替えることによって、管理可能な数に一致する順位のカテゴリーまでを「重点」カテゴリーとしてください(一部門につき、重点カテゴリーは3カテゴリーと決めたなら、採用順3位まで)。
「採用順」は、併買のネットワークを、1つ〜カテゴリー数まで「数」で変化させながら、その都度表出する「ハブ」としての重要度を数値化したものになります。
尚理想としては、重点カテゴリーを絞るのではなく、製配販による「協働」を模索することで、カテゴリーキャプテンの協力により、バイヤー一人の管理力(認知限界)を突破するという方向を目指したいところです。
ここからは応用編です。
ここまでの説明を読んで、「理屈は分かるけど、肌感覚として『催事・ギフト』が『スナック』よりも『重点』と言われてもしっくり来ない」と思われる方も、正直多いのではないでしょうか?
これにはカテゴリーという「拡大顧客接点」が、人為的なものであり、粒度もまちまちであるという理由もありますが、みなさまの勘と経験が、無意識の内に菓子部門というマーケットの中の「戦うべきマーケットセグメント」を、目的範囲f1ないしは選択範囲f1_n1に置いているからです。
これは「ランチェスター戦略」の「局地戦」の考え方であり、当然の感覚です。
他のマーケットセグメントを捨ててでも、一点突破、No.1を目指すのが、より大きなマーケットセグメントである利用者率99.50%の目的範囲f1、ないしは利用者率96.01%の選択範囲f1_n1であるという考え方も、また理に適っています。
そこで、例えば選択範囲=f1_n1というマーケットセグメントで、局地戦を「戦う」と決めたならば、その他のカテゴリーの選択を除外して、再度分析にかけます。
すると次の図のように、重点カテゴリーもまた変化し、「ポケット」と並んで「スナック」が、最重点カテゴリー1stとしてレコメンドされて来ます。
一方で決して忘れないでいただきたいのは、大きなマーケットセグメントは、同時にレッドオーシャンなマーケットだということです。
競合もまた多くの方と同様に、「理屈は分かるけど、肌感覚として『催事・ギフト』が『スナック』よりも『重点』と言われてもしっくり来ない」からです。
逆に言えば「催事・ギフト」で地域No.1になるという発想は、多くの競合が考えにくいものでしょう(差別化)。
単に思いつきによる差別化に留まらず、「催事・ギフト」と「ポケット」は、顧客の相容れない2つのくらしのスタイル、4つのニーズの中において「ハブ」となる存在です。
圧倒的No.1のハブに引き寄せられ、入店した顧客はどうするでしょうか?
菓子部門に限らず、全部門がこのように圧倒的No.1のハブを持っていたとするならば、来店はどうなるでしょうか?
顧客は「併買」をする存在です。
「マーケットをセグメントする」という発想は完全に正しいものですし、実際に選択範囲f1_n1で戦うという判断も充分有り得るものです。
けれども各マーケットセグメントの中で、確率的に最もレバレッジ(てこ)を効かせることのできるカテゴリーを重点とするという発想も、弱者の戦略としてまた「正」と言えます。
なぜなら、菓子部門においてマイナーなセグメントであるf2=「催事・ギフト」の利用者が、他部門においてもマイナーなセグメントの利用者である訳ではないからです。
例えるならば個々の顧客においては、部門やカテゴリー次第で「高質」一辺倒でも「ディスカウント」一辺倒でもなく、そのスタイル、ニーズは、個の中においてすら、この2つが「まだら」に入り混じったものだからです。
どこまで行ってもマーケットシェア、すなわちマスを目指す、勝つということは、この個々に「まだら」なニーズをカバーする、「まだらな顧客たちのワンストップショッピング」という、利便性への挑戦に他ならないのです。
ベストセラー「ザ・ゴール」を書いた、故エリヤフ・ゴールドラット博士によるマーケットセグメントの定義はー
「一方のマーケット分野における価格変化が、他方のマーケット分野における価格変化を誘導しない場合、この二つのマーケット分野は互いにセグメンテーションされている。」
というものです。
この定義を実務的な視点で意訳すると、これは同時に「マーケットの境界線 = カニバリゼーション(顧客による選択)の境界線」を意味しています。
よって併買/非併買から算出された「目的範囲」「選択範囲」は、顧客の「くらしのスタイル」や「ニーズ」であることと同時に、戦略上の「マーケットセグメント」と言えます。
最後に「差別化」という意味において、競合には「併買のネットワーク」が見えているでしょうか?各併買ネットワーク中の「ハブ」は見えているでしょうか?
更に言えばこれらは、何もカテゴリーに限らず、「いつ、どこで、なにが」の全てに存在するものです。
以上、重点カテゴリーの設定の仕方についてでした。