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近未来のマーケット構造を予測するコツ

近未来のマーケット構造を精度高く予見できれば、チラシやクーポンと言った、意思決定後実施に至る迄のリードタイムが長い販促政策における商品選定に役立ちます。

具体的には”鉄板”であろう商品、”ハネる”であろう商品が分かります。

ここでは実際に散々分析を行って来た知見を元に、近未来のマーケット構造を予測するコツを備忘録的に記しておきたいと思います。

長文化を避け、要点だけをかいつまんでいる為「Tapir_MKを使った事がある人にだけ分かる」ような内容となってしまいましたが、悪しからずご容赦願います。

■予測の本質

予測の本質は拡大解釈の適用にあります。

・来月の顧客は当月の顧客と同じような動きをするだろう。

・カード会員の来店目的は非会員、未利用者にとっても来店目的足り得るだろう。

・好調店の売れ筋商品は不振店活性化に繋がるだろう。

といったものです。

マーケティングにおいては、基本的に商品をもって既知/未知の人の利用行動の変化を企図する為、拡大解釈を適用するに足るだけの多数のマーケット参加者、充分に大きなマーケットの定義が必要です。

また統計の性質として、大きな単位である程当たりやすいという側面もあります。

検索条件=マーケット定義

検索条件を商品Aとすると、マーケット参加者は ”商品Aの利用顧客” という極めて少数の人達に絞り込まれてしまいます。

商品管理、成績管理であればこれで構いませんが、マーケティングにおいては利用/未利用、出来るだけ多くの顧客から見た商品Aのマーケット中における立ち位置を俯瞰したいところです。

期間や店舗についても同様で、検索条件を絞り込めば絞り込む程、マーケットは拡大解釈の適用が困難な矮小なものとなってしまいます。

分析においてはマーケット参加者を極力多く取る事を念頭に、期間、店舗、商品等の検索条件を工夫する必要があります。

定義

論を進めるにあたって幾つか言葉の定義をしておきます。

マーケット構造

簡単の為大分類で表すと、マーケット構造とは下図のようなものです。

図ではドラッグストアの売場の利用目的が大きく左側赤線のHBC系と右側青線の食品・雑貨系に分かれている事が分かります。

時流や季節で来店動機や利用目的が変わって行く事で、マーケットはこの”形”変えて行きますので、それを極力正確に予測するのが本稿の目的です。

これを”形”という曖昧なものでは無く、下表のように具体的に帳票で表すと、”形”と購買者率の変化からもたらされる

採用順=売場を代表するもの順/チラシやクーポンに選びたいもの順

レコメンド=中でも売場を代表する利用目的

の変化を当てる事を意味しています。

マーケット構造

期間

期間に関する用語を下図のように定義します。

黄色で表された近未来13週のマーケット構造(採用順、レコメンド)を直近13週または前年13週から当てに行きます。

(日付はイメージです)

チラシの場合、実施迄のリードタイムがおおよそ7週間程度ありますので、予測期間の真ん中より未来に1週ずれた8週目がチラシ実施週となります。

商品分類

商品分類に関する用語を図のように定義します。

売り手が定めた管理単位の、買い手から見た位置付けの変化がマーケット構造の変化です。

”ハネる”ような変化は小分類から掴めます。

マーケット構造予測のコツ<”縁”を大切に>

マーケット構造予測のコツを以下に4つ挙げますが、いずれも”縁”がキーワードです。

あくまでもより正確な予測においてのコツであり、用途次第でこれ以外の分析手法がNGと言う訳ではありません

1.親子関係 > 親孫関係

同じ大分類を分析する際に、リーフを中分類として分析した方がリーフを小分類として分析するよりも近未来のマーケット構造との近似度は上がります。

これはリーフが細かくバラける程、リーフ相互の相対的縁遠さがより顕著に現れる為と考えられます。

但し、予測の厳密性以上に意思決定のスピードや、簡便性が求められる場合、親孫関係のような分析手法も充分あり得ます。

我が子のみ よその子編入

図のように、同一分類配下のリーフのみで分析した方が近未来のマーケット構造との近似度は上がります。

そもそも売り手側が分類している段階で、買い手側にとっても利用目的が”遠い”事はほぼ自明ですので、より縁遠いものを同列に加え解析する事で、マーケット構造にブレが生じるものと考えられます。

1と合わせて、要は綺麗な親子関係が予測に際しては重要だと言う事です。

全リーフ < ほぼ共通リーフ

一部店舗のみで取り扱われているリーフを混ぜてしまうと、物理的に利用が叶わないその他大多数の店舗利用者の視点からは評価のしようがない”縁遠い”ものが混じってしまう為、マーケット構造にブレが生じます。

あまり厳密にしてしまうと、マーケットが矮小になり過ぎてしまう為、”ほぼ”共通リーフとしました。

マーケットを極力矮小なものとしない事と単純化の為、本稿では店舗の検索条件を全店舗と想定していますが、店舗の選択条件によってもこの”ほぼ”が変わってしまう点にご留意下さい。

前年実績 直近実績

前年とでは、縁を結び合うマーケット参加者と構成商品群が別物のようになっている為ブレが生じます。

特に単品についてはレコメンド付商品が前年比55%前後、前月比でも11%前後入れ替わる為、直近に頼る他ありません。

マーケット参加者についても、1年で10%前後が入れ替わるだけでなく、残った参加者についても1年を経て、新たなライフステージへと進んでいます。

季節は巡りますが、マーケットは常に前に進んでいるのです。

以上のコツを守る事により、特に大分類、中分類レベルのマーケット構造であれば、100%に近い確率で近未来に近似させる事が出来ます。

■”ハネるについて<前年実績を利用する唯一のケース>

前段で大分類、中分類レベルのマーケット構造であれば、100%に近い確率で近似させる事が出来ると書きましたが、小分類レベルになると、所属中分類の性質次第ではこの確度が50%近くに落ちて行きます。

但し、1stレコメンドレベルの的中率は高い為、それを理解した上で予測を業務に活かせば事は足ります。

これも前段でマーケットは常に前に進んでいる=その為未来のマーケット構造は、前年よりも直近に近似すると書きましたが、小分類レベルになると、1stレコメンドであっても、一部季節や催事による繰り返しパターンを示す小分類(ex.)アレルギー性鼻炎薬)が出て来ます。

この場合についてのみ、直近データは未だ”ハネ”ていない事から、前年データを使う必要が出て来ます。

この際、表のように直近でレコメンドされていないものが、前年では1stレコメンドされていた場合のみを、”ハネる”と判定し、前年の購買者率、採用順、レコメンドを予測値として採用する事で、マーケット構造全体の近似度がより高まります。

以前に ”ハネる”商品とは何か?という記事を書いておいて何ですが、実際に実証実験を行った結果、単品レベルで”ハネる”を予測しても、商品入れ替え等の要因から実用性に欠ける事が分かって来ました

基本的には”ハネる”は小分類レベルで予想し、”ハネる”と予想された小分類中の単品から、直近で1stレコメンドがされているものを採用します。

まとめ<販促商品選抜の箇条書き

1)直近データを使い、全体⇨大分類大分類⇨中分類 と、どの大分類中分類から商品を選抜するかを採用順とレコメンドに則り決めて行く。


2)直近データ前年データを使い、”ハネる”(直近レコメンド=null ∧ 前年レコメンド=1st)小分類のみ前年データに置き換え、商品を選抜する1stレコメンドの小分類を予測する


3)直近データを使い、小分類中の単品のクラスター分析結果から1stレコメンド(∧条件が出せる)商品を予測期間の販促商品として採用する

選抜する販促商品数決めたい場合には、別項 ”頻度”の無い世界 も併せてご参照下さい。

【2023/05/12追記】

Tapir_MK と合わせて使う事で、適切な販促商品が選抜できるEXCELテンプレート集を公開しました ⇨ ID-POSの書庫