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Tapir VS ランチェスター

「雑貨部門を強化したい。」「ひいては重点カテゴリーを決めてテコ入れして行きたい。」というお話を頂きました。

重点カテゴリーについては重点カテゴリー設定とカテゴリークーポン  や 店舗の利用目的と重点カテゴリーの役割 でも書いて来ましたが、

「雑貨の顧客の94.15%を占めるseg_n=f2_n5から「紙・ティッシュ」しか重点カテゴリーが選ばれないのはどうなんでしょう?「衣洗」や「柔軟剤」も選んだ方が良いですかね?」

と問われました。

図のようにTapirでは採用順5位迄のカテゴリーに”重点”の目安であるレコメンドが振られましたので、同じように5位迄を重点と位置付け、試しにID数順でカテゴリーを採用してみると、一桁台の順位は全てseg_n=f2_n5に集中し、そこには「衣洗」「柔軟剤」も含まれました。

尚、seg_n=f2_n5の顧客(1,097,145人)に働きかける事は、当該セグメント外の顧客に”全く働きかけない”事を意味する訳ではありません。顧客の一部は併買により別セグメントと重複しているからです。これは重点カテゴリーとその他カテゴリーの関係にいても同様す。それどころか顧客ですから、他部門の商品とも関係を持っています。

TapirについてはTapir_MKによるマーケティングの教科書 も併せてご覧ください。

Tapir VS ランチェスター

正直焦りました。

seg_n=f2_n5の中からだけ重点カテゴリーを選抜して来る事は、ランチェスターの弱者の戦略に叶っているからです

ランチェスターの弱者の戦略では競合に勝つ為にマーケットをセグメントし、どのマーケット・セグメントでNo.1になるのかを選択する事で局地戦に持ち込み、そこに敵の√3倍シェアを目指して戦力を集中させる事で、小が大を各個撃破する事を目指します。

ですから、そのマーケット・セグメントに集中して重点カテゴリーを選抜して来る事は理に適っています。

それに対してTapirは、マーケットをセグメントする所迄は同じですが、極力多くの顧客に来店/売り場利用をしてもらう為に顧客のカニバリを避け、幅広いマーケット・セグメントから満遍なく重点カテゴリーを選抜して来る事を狙ったロジックとなっています。

同一seg_n配下のカテゴリー間では、併買による顧客重複が発生していますので、各seg_nから1カテゴリーがレコメンドされて来ます。

選択と集中 VS 幅広く満遍なく

ランチェスターと矛盾します。

すわ対立発生か!?



ランチェスターなんて有名なものが間違ってる筈も無く、そもそも私が食品スーパー、ドラッグストアのID-POS開示というニッチ極まりないマーケットに絞って全集中しているのも、ランチェスターに依拠しての事です(勝ててないけどw)。

となると、我が愛しのTapirアウト!なんでしょうか。。。orz

マーケットは売り手による商材範囲の定義からはじまる

マーケットはまず売り手による商材範囲の定義から始まります。

その上で、その商材範囲の何処かにメリットを見出した買い手の参加をみる事でマーケットが成立します。

マーケットを「ドラッグストアマーケット」と定義するならば、「雑貨部門を強化したい」の段階で、既にランチェスターで言うところの主戦場となるマーケット・セグメントを決めているなります。

戦うと決めたマーケットを敵さんより効率良く戦えるよう、そこに更にマーケット・セグメンテーションを行い、重点カテゴリーを極力幅広く選んで来るのがTapirあり、冒頭の図の結果です

これすら敵さんの及びもつかぬです。

「雑貨部門を強化したい」と言っても、商材の幅が広すぎて、主戦場とするに何処か漠然としたところがあります

マーケットを「雑貨マーケット」と定義し、Tapirによるマーケット・セグメンテーションの結果を見た上で、ランチェスターに則り決戦の場を買い手の94.15%が集中する、先のマーケット・セグメント「seg_n=f2_n5」に絞り込むと考える事ができます。

組織の単位が部門である事を考えれば、こちらの考え方の方が汎用的かもしれません

その場合、再定義されたマーケットseg_n=f2_n5」を敵さんより効率良く戦えるよう、そこに更にマーケット・セグメンテーションを行い、重点カテゴリーを極力幅広く選んで行くなります。

マーケットseg_n=f2_n5」なんて尚、敵さんの及びもつかぬです。

マーケットを構成する商材範囲が 雑貨部門 ⇨ seg_n=f2_n5 と変わるのであれば、マーケットの定義そのものが変わますので、改めて「seg_n=f2_n5」というマーケットを対象にマーケット解析であるTapirを掛け直すのです。

そうなるとマーケット=雑貨部門の1セグメントに過ぎなかった時とは違った景色が見えて来ます。

冒頭の「衣洗」や「柔軟剤」も選んだ方が良いですかね?の「柔軟剤」については選ばれますが、「衣洗」や「食洗」はここでもやはり「紙・ティッシュ」の顧客との重複が多いようで、選ばれて来ません。

そこを選ばずに、「生理用品」、「芳香剤」のようにマーケット参加者の中でも利用に偏りがあるようなカテゴリーをちゃんと選んで来る事で「できるだけ多くのマーケット参加者に響かせよう/喜んでもらおう」とするのがTapirの採用順とレコメンドの真骨頂です。

勿論このマーケット中でも更に「seg_n=f1_n2でNo.1を目指す!」と意思決定するならば、「衣洗」「紙・ティッシュ」「食洗」が重点カテゴリーとなります。

絞るからこそ、その中では幅広く、豊潤に!戦いの舞台である商材範囲を決めて後、その中における”重点”、”幅広い選択”という訳です。

大団円

Tapirには店舗、部門、カテゴリーから単品迄一貫して、マーケットをセグメントするロジック、採用の順番、重点を決めるロジックがあります。

ランチェスターには商材範囲を決め、No.1を目指すマーケット分野を決めるという戦略的思考モデルがあります。

マーケットをセグメントするロジックTapir、その中からセグメントを選択する思考モデルがランチェスター、ランチェスターで選択したセグメントを改めてマーケットと見てセグメントし、採用順を振り、重点を決めるのがTapirです。

これは重点部門を選ぶ、重点単品を選ぶといった、この前後に必要であろう流れにおいても同様です。



当初「ランチェスターに矛盾する!?」と感じた時には「作り直し?」と相当焦ったTapir VS ランチェスター」ですが、真剣に考えてみよう!シリーズにしようかと思う程思索を重ねた結果、双方は対立するもので無く、補完し合うものだという事が分かりました。


やっぱマーケティングは技術と精神!道具も使い方次第ですね。

まずは一安心!!!めでたし、めでたし。