” ニーズが見える ” ID-POS分析
2024年も残すところ後一ヶ月を切りましたので、ここまでの取り組みで得られた知見の総決算です。
ID-POSが全方位的にバイヤー業務の効率を押し上げる事を、シンプルに概観して頂く為のバイヤー業務大全2024です。
ID-POSデータは顧客が”いつ”接点を持ったのか、”どこ”で接点を持ったのか、”何”と接点を持ったのかという、顧客の選択を記録した接点記録です。
接点を結ぶと図のように、顧客が選択している”いつといつ”、”どことどこ”、”何と何”の組み合わせが分かります。
これは”いつ”政策を打つべきか、”どこ”に政策を打つべきか、”何”に政策を打つべきかというバイヤー業務に常に付きまとう悩みに、≒答えを与える魔法の情報です。
選択した顧客が平均以上に多い日付同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の日付の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の日付が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
図の目的範囲からは、顧客が曜日を利用目的としている事が鮮明に見て取れます。
選択範囲内の顧客の、選択範囲外の利用は平均未満という定義上、選択範囲は顧客の未利用化周期です。
未利用化の防止策を打つのに最も適した日が、目的範囲内で一番利用者の多い1st=最重点日と、選択範囲内で一番利用者の多い2nd=重点日です。
日にちが離れており、重点日だけではカバーし切れない顧客が多く出る場合、3rd=最低対策必要日がレコメンドされます。
※.図は365日中から一部を抜粋。
範囲が無い状態で利用者数降順で重点日を決めた場合、その殆どが土日やお得な曜日に偏ってしまい、幅広い顧客をカバーし切れません。
選択した顧客が平均以上に多い曜日同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の曜日の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の曜日が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
図の目的範囲からは、顧客の利用目的が土日+お得な水曜日と、平日に分かれている事が鮮明に見て取れます。
全ての図表で共通ですが、目的範囲は顧客が置かれた状況と価値観、選択範囲はその制約下でのニーズとも捉えられます。
お得な曜日にお得を享受できる状況にある顧客は一部だという事です。
市場を範囲に分割できるという事は、No.1戦略を採る範囲を選べるという事でもあります。
全てが大事=全てが同じ(特段大事にするものはない)ですので、幅広くカバーするにせよ絞り込むにせよ、分割で得られるメリットを活かすという考え方が必要です。
選択した顧客が平均以上に多い店舗同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の店舗の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の店舗が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
平たく言えば、顧客の実際の選択に基づいたドミナントが分かるという事です。
目的範囲内で一番利用者の多い店舗に1st=最重点店舗、選択範囲内で一番利用者の多い店舗に2nd=重点店舗である事を示すレコメンドが振られています。
地理的に離れており、重点店舗だけではカバーし切れない顧客が多く出る場合、3rd=最低エリアカバー店舗がレコメンドされます(ドミナント密度が薄い事を示唆します)。
レコメンドされた店舗は、エリアの住人のコーポレートイメージに直結しています。
※.図は一部抜粋。
範囲はドミナントの密度形成の為の出店政策や、MD/販促のエリア標準化、競合店対策に使われます。
採用順は改装優先度や閉店判断に使われます。
選択した顧客が平均以上に多い部門同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の部門の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の部門が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
これは顧客の業態に対する価値認識と利用態度のデフォルメであり、マーケット計に対する各部門の利用人数の差分は「私の来店目的には入っていませんよ」という顧客の意思表示です。
レコメンド1st&2ndが、業態を代表する重点部門です。
範囲は売り場レイアウト、スペースアロケーションに使われます。
関連順は数値が近いもの程関連性が高い事を意味します(但し範囲を優先)ので、売り場の配列に使われます。
選択した顧客が平均以上に多いカテゴリー同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定のカテゴリーの中から選び、他を選ばなかったという事は、特定のカテゴリーが利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
レコメンド1st&2ndが、売り場を代表する重点カテゴリーです。
範囲はゴンドラレイアウト、スペースアロケーションに使われ、関連順はゴンドラの配列に使われます。
選択した顧客が平均以上に多い単品同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の単品の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の単品が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
目的範囲が10以上に分かれる場合カテゴリーの粒度が粗過ぎ、全く分かれない場合カテゴリーの粒度が細かすぎる可能性があります。
目的範囲を代表する単品が1st=最重点単品、選択範囲を代表する単品が2nd=重点単品です。
嗜好性が高いカテゴリー程顧客の選択がバラける為、3rd=最低品揃えがレコメンドされます。
品揃えの”良さ”や”安さ”は、これらの単品を介して顧客に印象付けられます。
範囲は棚割やチラシのゾーニングに使われ、重点レコメンドされた単品は、そのマグネット/アイキャッチに使われます。
関連順は棚割やチラシの配列に使われます。
採用順はエンド陳列やチラシ掲載、単品クーポンといった販促品や、カット候補の選抜に使われます。
カットにおいては選択範囲の利用者数に応じ、選択範囲内の選択肢を何SKU迄許容するか(実用品で3±1、嗜好品で7±2程度)が鍵です。
選択した顧客が平均以上に多い価格同士は、顧客の選択範囲にあったと言えます。
特定の価格の中から選び、他を選ばなかったという事は、特定の価格が利用目的化している事になりますので、目的範囲と言えます。
とは言え顧客の真の利用目的は用途・機能であって、価格はそれ前提での選択基準ですから、範囲が価格帯(プライスゾーン)となる事は稀です。
※.図は一部抜粋。
範囲を代表するプライスポイントが分かる事、選択範囲内のプライス数の絞り込みを検討できる事が、価格政策におけるポイントです(カテゴリー粒度が粗い場合が多い為、単品の集計結果と照らし合わせた方が良い)。
期間、店舗、商品、価格以外にも、顧客が店や売り場を利用する/しない理由は多々あります。
代表的なものとして競合や他業態との選択状況、その内訳としての接客やクリンリネス等がありますが、これらをID-POSデータから拾う事はできません。アンケートで拾う事となります。
IDが付けば定性データも、顧客の選択を記録した接点記録となりますので、接点間を結べるアンケート設計とする事で、顧客が選択している”どことどこ”であったり、”何と何”を、ID-POSデータ同様に集計する事ができます。
図表は「あなたが食品スーパーを選ぶ理由」という前図設計例2のアンケートの結果で、「近さ」、「停めやすい駐車場」、「綺麗なトイレ/授乳室等」の3つが、顧客がスーパーマーケットを選ぶ際の最重点利用メリットとなっている事が分かります。
近さという抗い難い利用メリットがあってさえ、駐車場が停めにくかったり、トイレが汚い店だったら、利用に抵抗がある顧客が居るという事です(相互に逆も然りです)。
範囲が無い状態で回答者数降順で重点政策を決めた場合、常に「近くて、安くて、新鮮」という身も蓋もない結果になると同時に、幅広い顧客の深層心理に隠された、真のニーズをキャッチアップする事ができません。
売り場と店にお金を落としてくれている顧客のほとんどが、物言わぬサイレントマジョリティーです。
その声なき声が、集計方法次第で日、曜日、店舗、部門、カテゴリー、単品、価格、アンケートと、いづれも鮮明に滲み出てしまう事は、ここまで見て来た通りです。
これを目にしてしまった以上、本来聞ける筈の顧客の声に、蓋をし続けるという訳には参りません。
最大のステークホルダーである顧客の声に、バイヤーの活き活きとした勘と経験、度胸とハッタリが加われば、バイヤー業務は圧倒的なパフォーマンスの域に到達します。
ここまでの集計はフォーマット加工により、テンポラリーTapirを利用して実現したものです。
アンケート以外の集計については、BiZOOPeの分析メニューTapir_MKとTapir_MDを融合した、シン・Tapir−1.0(仮称)にて翌2025年上期中に無償エンハンス提供の予定です。
2025年を御社のID-POS元年にしてみませんか?
少々早いですが、それでは皆さま良いお年を!