” ニーズが見える ” ID-POS分析
ID-POS分析の勘所 については書きましたが、ID-POSあるあるとも言える禁忌事項について言及していなかった為、以下に記してみたいと思います。
特に最初の3項目は最重要ですので、是非お目通し頂きたくお願い致します。
商談はメーカーと小売の間で行われますから、全ての政策がそれなりに”双方よし”の状態に落ち着いている事が通常です。
それに対し顧客は、最大のステークホルダーでありながら商談室に入る事が叶いません。
顧客の購買代理人たる小売業は、商談において店の顧客の声なき声を必ず代弁すべき/メーカーに求めるべきです。
単純な問いですが、商談時には
その政策を店の顧客は喜ぶか?
喜ぶ顧客に向けた政策設計になっているか?
をメーカーも小売も必ず問いかけてみて下さい。
ID-POSがあっても、その問いに答え得るもので無ければ何の意味もありません。
「何故ID-POSが必要なの?」「何故ID-POS分析を公開するの?」と感じるのは、”三方よし”の原則が欠けているからなのかもしれません。
道具(データ)が変われば、その使い方(パラダイム)も今までとは変わります。
商品ドリブンな今までの使い方、考え方(パラダイム)が染み付いてしまっている事が、ID-POSを難しく感じさせている最大の要因です。
しかし、ID-POSの理解は顧客理解そのものです。
大多数を占めるサイレントマジョリティーの声はアンケートで掬い上げる事ができません。
BiZOOPeの分析メニューTapir_MKの分析結果を見れば、数字に表れてしまう程強い顧客の声を、避けて通る訳には行かないと感じる事でしょう。
ID-POSは難しい = 顧客理解は難しい と言っている事と同義です。
難しいからと言って、顧客理解を放棄し続けますか?
方や余りに顧客志向と言われすぎ、顧客に言われたものを仕入れては、カットもできないというような意思決定が時に見受けられます。
最大のステークホルダーと言いながらも、相手は多勢である上個々に異なる為、完全な利害関係の一致というのは有り得ません。
買い手には買い手個々の都合があったとしても、売り手にだって売り手の都合(ex.標準化)があります。
また、やはり顧客の購買代理人として声の大きな少数派に屈し、大多数であるサイレントマジョリティーの利益を損なう訳にはいきません。
CGCソングではありませんが
「作る人 売る人 食べる人 互いに役立て ありがとう 助けられたり 助けたり」
ですから、前出の商談のように互いの中に買い手を挟まない事も問題ですが、互いを超えて買い手に阿り過ぎてしまうのも等しく問題です。
できるだけ偏り無く、両者の都合が重なる接点に集中する事=マーケットドリブンを心掛ける必要があります。
余談ですが、CGCソングって新しくなってたんですね。私個人の都合で言えば旧ソングの方がキュートでエモくて良かったなぁ(殆どの人はそうでは無い?人はそれぞれ異なっていますし、売り手には売り手の都合がありますw)。
お客さんとの打ち合わせの帰路、私の頭の中に鈴与グループのCMが流れる事がよくあります。
「見たこともないもの見てみたいな クジラのダンス 北の国のオーロラ ありんこの涙 いつかきっと見れるよね」
現状比較的新しい道具であるID-POSでは、売り場や顧客への具体的な影響よりも、ついつい関心が先走ってしまう事がままあるからです。
関心を持つのは良いことですが、その中に影響すなわち具体的な政策適用/政策目的を見出さなければ、仕事では無くサークル活動、数字遊びのようなものです。
影響では無く関心に注意を向け続けた結果、POS分析が歩んで来た轍を振り返ってみて下さい。
マーケットを分けるのはプライスか?ABCか?
正しいのは売上順か?相乗積順か?在庫日数順か?
今日に至る迄正解を見る事無く、時の上長/担当次第であり続けている事は企業の意思決定上大きな問題です。
時の上長/担当の思惑で分析メニューと指標ばかりが増え続け、徐々に「難しい」ものとなって行きます。
今「何故それが必要なのか?」と問えば「前からやっているから」というのが現実です(新しい事を始める前にまず止める事を決めなければ、仕事、コストは増えて行くばかりなのですが。。。)。
何で分けるべきか?正しい順位とは?少なくともマーケティングに関する答えはココにあります(思い込み?)。
ただでさえ難しいと思われているID-POS分析で、POS分析と同じ轍を踏みたくは無いものです。
ロイヤル顧客が良い店を作る訳では無く、その店を(距離も含めて)他店よりも良いと判断した一部の顧客がロイヤル顧客です。
飛び道具でロイヤル顧客を増やそうと試みる企業は多いですが、これは本末転倒で良い店が無ければロイヤル顧客は増えません。
良いの基準が人それぞれである所がミソですが、人一人の消費量にそれ程大きな個人差が無いとするならば、おおよそ非ロイヤル顧客とは(距離も含めて)他店の方を良い店だと判断した、他店のロイヤル顧客に過ぎません。
「顧客を育てる」なんて言う企業もありますが、どちらが育つべきやら。。。
例えば図のゴールデンカレー中辛の併買分析の結果を見て「ウチもカレーにシーチキンを入れるから、みんなまぜて作ってるんだ!きっとそうだ!」と希望的観測に取り憑かれてしまう人が結構います。
シーチキン(青フォント)の数値を見てみると、同時併買よりも非同時併買のID数が多い事から、どちらかと言えば普通の買い回りの一環、ゴールデンカレー中辛を手に取るような人に垣間見る事のできるライフスタイルの一端(NB、調理)と見ることが出来ます。
同時併買ID数の方が多い(赤フォント)テイスト違いのカレーであれば、まぜている可能性がシーチキンよりも高いですが、両者ともにまぜている人もまぜていない人もきっと居ます。
いづれにせよ併買は自+相の商品利用者(2商品から成るマーケット)中の数%ですから、尚更自分がそうであったとしても、殆どの人がそうでは無いと言うのが現実です。
まぜてばかりいては、わさびソフト や うなぎコーラ のように突飛でニッチな提案ばかりになってしまいますが、うなぎパイ の成功例もありますので、併買提案、クロスMD提案そのものが悪いと言う訳ではありません。
人はそれぞれ異なっていて、軽々に類型化する事は出来ない、例え同時に買っている人であってもそれぞれが最終それをどう使っているかは異なっている ⇨ 思い込みは廃すべきだという話です。
以上、ID-POS7つの禁忌でした。