” ニーズが見える ” ID-POS分析
苦しい時程販促頼りになり勝ちですが、呼び込んだ顧客が現実に接する接点=売り場 に買うべきものが無ければ、そのコストパフォーマンスは著しく低いものとなってしまいます。
ここでは販促部、商品部それぞれの役割を、ID-POSから明確に見える化する事によって、商品部が販促偏重に走らないよう、改めてそれぞれの仕事のあり方を見つめ直してみたいと思います。
図はベビー・シルバー売り場の3年間の月別利用者数推移で、一番上の連続する青い折れ線が売り場利用者全体の推移、それ以外の山の顕著な折れ線が、各月の売り場利用者を母集団とした推移です。
育児/介護中の人にとっては毎月必要なベビー・シルバーですが、実際には毎月平均46%の利用者が非継続利用化(未利用化もしくは飛び石利用化)している事が見て取れます。
一方で残り54%の継続利用者数も、翌月以降緩やかに減耗して行っています。
図を見ると、どの月の利用者が母集団の継続利用者数もほぼ線形に、比例して減耗して行っている事から、この減耗については育児/介護の終了等による自然減耗だと考えられます。
販促部であれ商品部であれ、育児/介護の終了という顧客の置かれた状況そのものを改変する事はできませんから、自然減耗に対して打つ手は基本ありません。
非継続利用者の発生と継続利用者の自然減耗については、その率こそ違え他の売り場でも毎月起きている事です。
以上を前提に、販促部の役割、商品部の役割を考えて行きます。
図のように月の利用ID数の山が高くなれば、確率的に山の54%である継続利用の開始点も引き上げられ、継続利用ID数が増えます。
次の図の①分の底上げは一過性のものですが、②分の底上げは自然減耗のラインに乗り、翌月以降の利用ID数も底上げし続けます。
もしも非継続利用者の100%が、翌月も売り場を利用したと仮定すれば、翌月の利用ID数は次の図のように約146%!となります(同時に継続利用の開始点も引き上げられます)。
これらの顧客が育児/介護という状況にある事は明白なので、その状況に当て嵌まる確率の低い全くの新規を増やそうとする試みに較べれば、これは歩留まりの高い方法です(但し、顧客を取り巻く状況は変化して行きます)。
翌月利用を促す事も含め、販促部の役割は「利用ID数を増やす事」です。
利用ID数を増やすには、顧客の置かれた状況とその変化に寄り添う事が有効です。
ところがこれは、仮定や理屈通りには機能しません(理由は後述します)。
更には利用ID数が増えても、売り場の作り方がそのままである限り、継続利用者の歩留まりは確率的に平均54%に留まります。
・この54%は自然減耗と同じく自然で、改変不可能な割合なのでしょうか?
・競合他社のベビー・シルバー売り場も、継続利用者の割合は同じく平均54%なのでしょうか?
人口の減少が進めば、利用者数推移のグラフの山も低くなる一方ですから、その時に自社の確固たる収益基盤となってくれるのが、継続利用者です。
商圏人口にも、一人の顧客が消費できる量、支出できる金額にも限度がありますから、商品部の役割はこの54%という毎月の継続利用者の歩留まりを、改善し続ける事にあります。
ベビー・シルバーは育児/介護中の人にとって毎月必要なものですから、毎月発生している46%の非継続利用者は他店を利用しています。
確実に育児/介護という状況にあり、一度は売り場を利用しながらも、46%の顧客は何故売り場の継続利用を選択しなかったのでしょうか?
一部の例外を除けば、単純に言って利用した売り場が自分のニーズにマッチしなかったからだと考えられます。
販促部が当月利用者に翌月利用を促す、状況に沿った販促を行っても、状況だけでは理屈通りに機能しないのは、なまじ売り場を利用しているが故に売り場が自分のニーズにマッチしない事を知ってしまっている(或いは単に”見つけられなかった”事で先入観を持っている)からです。
ニーズ = 状況 ✕ 価値観 ですが、育児/介護という状況は一致していても、それ以外の状況や価値観は人それぞれです(育児と介護ですら、顧客の置かれた状況としては、全くの別物です)。
例えば「遠くに住んでいる」と言う状況により、売り場が自分のニーズに競合他店の売り場よりマッチしないと感じる顧客がいます。
この場合「遠くに住んでいる」という状況に寄り添う施策を考える事はできても、状況そのものを変化させる事はできない為、ニーズを100%満たす事は現実問題不可能です。
また「遠くに住んでいる」は、数ある状況の一面に過ぎません。
一方で遠くに住んでいても「兎に角経済的なものを」、「多少高くても産院で使っていたものと同じものを」といった価値観は、人によっては状況を超越するものであり、商品部が経済合理性の範囲内で応える事ができるものです。
少なくとも物理店舗同士の地理的な競争においては、遠くの顧客にその状況を超越させる事、近くの顧客にその状況を超越させない事が重要です。
これは具体的には品揃えと価格であり、その存在を誤解なく認識させるようなディスプレイですから、商品部の役割は、ベビー・シルバーという共通する一つの状況の範疇で、できるだけ多くの人の価値観に応える事 ⇨できるだけ多くの人の「 ニーズに応える事」にあります。
商品部ができるだけ多くの顧客のニーズに応え得る歩留まりの高い売り場を作り、そこに販促部が状況に適ったIDを大量に流し込めば、売上は上がります。
その意味では販促より先にまず売り場があり、販促部から顧客へのメッセージの本質は「変化した売り場を是非(もう一度)見に来て下さい」というものです。
結局のところ競争力の差は ー
【販促部】
商品の販売促進 VS 育児/介護中といった各状況を慮った利用促進
【商品部】
流入を売り手の価値観で出来た目の粗いザルで受けている VS 流入を買い手の価値観で出来た目の細かいザルで受けている
といった、モノを売り込もうとしているのか/顧客ニーズに応えようとしているのかの差、言ってしまえば企業の価値観と優先順位の差にあります。
販促対象の接点粒度が 部門 > カテゴリ > 単品 と細かくなればなる程、利用対象となる母集団も小さくなって行く為、価値観が色濃く顔を覗かせ始めます。
最安値のオムツを買う人たちと、最高値のオムツを買う人たちの 状況 ✕ 価値観 = ニーズには大きな隔たりがあるからです。
チラシにどの単品を掲載するのか?安価な売上上位のオムツ2品を掲載するのと、安価と高価の1品づつを掲載するのとでは、どちらがより多くの集客を見込めるのか?掲載品数は2品で良いのか?
競争環境が苛烈になればなる程、販促部も状況だけで無く、ニーズとそのマーケットサイズを理解して行く必要があります。
あるニーズに対する選択肢は10SKUもあって却って選び難い状態の一方、別のニーズに対しては選択肢が1SKUしか無い、もしくは1つも無いといった状態が、売り場には往々にして有ります。
これはひとえにニーズが見えていないからです。
ニーズを見る事、ニーズにどれだけ適っていないのかを見る事は、企業の価値観と優先順位の変革(真のDX)にも繋がって行くものと考えます。
如何にニーズが鍵とは言え、チェーンストアが一人ひとり個別のニーズにきめ細やかに応えて行く訳には行きません。
状況 ✕ 価値観を類型化する事で、できるだけ多くの人のニーズに応えて行くという姿勢が必要です。
状況、価値観は人それぞれですが、その掛け算の結果である”似たようなニーズ”を持った顧客が、似たように交互の商品を選択している事を利用し、ニーズを見える化するのが、サイバーリンクスのID-POS分析 BiZOOPe です。
自店を利用する顧客のニーズに競合以上に応え、顧客を受け止める売り場のザルの目をより細かくする為には、製配にも同じく顧客ニーズに応える意識を持って商談/提案に臨んで頂く必要があります。
BiZOOPe は製配への分析開示にも対応したクラウドサービスです。
販促部、商品部どちらの仕事にも貢献します。
何より増して御社の売り場を利用する顧客に貢献します。
”三方よし”のID-POS意思決定支援クラウドサービス、BiZOOPeを是非ご検討下さい。