売り場利用者の ”ニーズが見える” ID-POS分析
ニーズ、マーケットと、元来ややこしいマーケティング用語に、新分析メニューニーズの見える化 で、選択肢、選択範囲、目的範囲という用語を加えた為、一度これらの関係性を整理してみます。
個々の顧客の状況と価値観が、個々のニーズに繋がっています。
具体的な商品やサービスに対するものだけでは無く、スーパーマーケットに求める「駐め易い駐車場」のように、ニーズは多岐に渡ります。
状況には社会的状況と個人的状況があります。
社会的状況は、猛暑であったり、円高であったり、米不足であったり、コロナ下であったりといったある程度共通した状況です。
個人的状況は、世帯人数であったり、可処分所得であったり、居住地であったり、困り事であったりといった個々に異なる状況です。
売り手が顧客が置かれた状況を慮る事は、競争上かなり重要ですが、状況そのものを変える事はできません。
お得、便利、美味しい、新鮮、安心、安全等々が嗜好によって入り組んだ優先順位です。
車には何より安心・安全を求め、食品のそれには無頓着な人も居ますし、その逆もまた然りです。
状況が価値観を変化させる事はありますが、必ずそうとは限りません。
世帯人数が少なくなって、お得より美味しいを重視するようになる人も居れば、お得に拘り続ける人も居ます。
いづれも程度の問題であり、そこにも個人差が生まれます。
ある程度共通する社会的状況に、各人各様の個人的な状況、価値観が掛け合わされたのが個々のニーズです。
加えて状況も価値観も変化して行くものですので、具体的政策に足る程の共通項を導き出すのは容易ではありません。
顧客ニーズと売り物が出会う場がマーケットです。
売り物、場の範囲は売り手が定義します。
ID-POS分析で言えば、いつ?どこで?なにを?の分析条件が、売り物とその範囲の定義です。
その意味でマーケットとは、対象を売り物に限定したニーズの集合体です。
ニーズの向かう先が明確である為、状況や価値観といったものより遥かに単純です。
「接客が売りです」なんて事もありますが、結果として記録に残るものを売り物とするならば、図のようにレシート上に印字された いつ?どこで?なにを?といった項目が、顧客が現に選択したものです。
一枚のレシートは、顧客にとっての選択の一つ=選択肢を羅列しています。
ニーズの全貌は計り兼ねますが、その発露の一端である選択肢なら、接点記録であるID-POSデータから容易に取得できます。
選択肢はニーズの発露ですが、レシートが2枚以上になる事で、図のようにニーズの概観が見えて来ると共に、その存在の ”確からしさ” が高まります。
更にはそれが一人では無く、一定の顧客に共通して見られる傾向であったならば、「マーケットにはそのようなニーズが存在している」と考えられます。
選択範囲は、マーケット中で平均以上に選択されている選択肢の範囲であり、マーケットにおける ニーズそのもの 、ライフスタイルの一端 を示していると言えます。
選択=ニーズ有 があれば、非選択=ニーズなし があります。
マーケット中最も相互非選択な選択肢同士並に相互間にニーズがない = 各々が別目的と化している事から、この選択肢の範囲を目的範囲と言います。
要は完全に異なるニーズという事ですが、これをマーケットの側から見れば、マーケット・セグメントと言えます。
このようにニーズの見える化 におけるニーズとは、厳密にはマーケットニーズの事を指し、ライフスタイルの一端とも、マーケット・セグメントとも捉える事ができます。
一つのカテゴリーを見れば、なんとなく「安いから」「トップブランドだから」と、漠然と利用している人が多数派です。
その為売上No.1や売上ランキング上位とは、おおよそそういった類の、漠然の集積です。
一方で、そのような人たちの多くが、別のカテゴリーに多少或いは特段のこだわりを持って利用している少数派の一人でもあります。
複数のカテゴリーが一つ屋根の下にあり、一人の顧客が複数カテゴリー利用者である以上、来店してもらう為にも、十分な買物をしてもらう為にも ”漠然” 、”こだわり” どちらのニーズも大事です。
マーケットをニーズで分けるのはその為です。
①2:8の法則で漠然の集積へと走る店、②逆張りしてこだわりの集積へと走る店、③広い売り場に漠然/こだわり見境無く積み上げる店、今どんなお店が伸びているでしょうか?御社はどんなお店にこれからの活路を見出しますか?
以上、ニーズとマーケットの関係性についてでした。