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顧客接点は数か?深さか?
<離反の科学>

「店を継続して利用してくれる顧客は、離反する顧客に比較し幅広い部門を満遍なく利用している」という事実が知られています。

が、これは単に事実であるという事に過ぎません。

だってそりゃそうです。

あなたのお店の殆んどの部門が自分にとって「競合を利用するよりメリットがある」と思うような奇特なお客さんはそりゃ離反しません。


ところが「店を継続して利用してくれる顧客は、離反する顧客に比較し幅広い部門を満遍なく利用している」Then「買っていない人に対して幅広い部門を満遍なく買って貰おう!」となってしまうのが、マーケティングとは「買い手が喜ぶ事をし、嫌がる事を避ける」事と見つけたりでも書いた「売り手の儚い願望」であり、逆効果です。

問題の本質は、そもそもあなたの店の殆んどの部門が、多くの来店客にとって本当に「競合を利用するよりメリットがある」のか?そうでは無いから離反=他店利用が起るのでは無いか?という点にあります。

今回は売り手と買い手の関係においてより重視すべきは、果たして接点の数なのか?接点との絆の深さなのか?について考察して行きたいと思います。

集計と解釈のレギュレーション

多くの離反と呼ばれるものはライフステージの変化による自然減耗であり、それは突然起こります。

食べ盛りの子供の手が離れ、遠く迄「肉のビックリパック」を買いに行かなくて良くなれば、近くの他店に行くようになります。

通勤経路が変わり、帰路に寄れる他店があったなら、その店に行くようになります。

マーケットというものは常に前に進み続けている「生き物」であり、商品も顧客も非同期で変化し続けます。

これは自然現象のようなものなので、売り手にこれを押し止める術はありません。

よって、売り手がなるべく防ぎたい離反というものは、ライフステージの変化によらない他店利用へのスイッチ = 自分の手で防ぎ得る可能性のある、売り手起因による離反となります。


本稿では、ライフステージ変化の影響を極力抑える為集計期間を13週と短めに設定し、前前期、前期、当期という各13週いづれかの”継続来店”を担保する事で、以下のような新規、継続、離反の三種類の顧客を定義してみました。

新規顧客:前前期の来店が無い顧客の内、前期、当期共に来店している顧客

継続顧客前前期、前期、当期のいづれも来店

離反顧客前前期、前期のいづれも来店しながら、当期未来店


ここではこの三態の顧客の接点数、接点利用の違いと変化を見る為に、部門を接点と見て、その実績を集計してみました。
各部門の実績については以下のように解釈されます。

利用者数の減少/増加:部門が競合に奪われた/競合から奪った利用者数

利用回数の減少/増加:部門の競合でのつまみ食い回数/自店でのつまみ食い回数

新規顧客

買い手が何をもって「カード会員になろう!」と決めたのか、その決め手は人それぞれですが、少なくとも当初「会員になるメリットがある」と考えたからこそ、そうした訳です。

前期利用者率からは、それが決め手となったかどうかは別しても、新規会員の半数以上が一般化粧品、日雑、一般食品といった部門に期待を寄せ、接点を持った事が分かります。

「前期」には期の初日に会員になった人も、期の最終日に会員になった人も含まれますから、利用回数についてはどの接点も軒並み「当期」に向けて上昇している=利用者については少なくとも競合からのつまみ食いを徐々に増やし、各接点との繋がりを深めている事が分かります。

利用者数は当初から偏っており、最高でも62.52%と決して「満遍なく」とは行きません。

更には買い手各人が、自分の欲しい物の有無/その価格の高低/ワンストップの利便性等「私にとって本当に他店より利用メリットがあるのか?」を比較、吟味しながら、「当期」へ向けて、徐々にその利用態度をめて行きます。

その過程の中で利用者数において当初の期待を上回った接点は、くすり、ベビー・シルバー、一般食品、日配食品であり、これらは新規顧客から見て、対競合において強いと判断された接点と考えられます。

その他の接点については既に他店利用の姿勢を示し始めた顧客が1%前後出始めている事から、これらは新規顧客から見、対競合において弱いと判断された接点と考えられます。
中でも来店回数に迫る利用回数を持つ惣菜が、母数小さにも関わらず最大の利用者数減を記録しているの痛いところです。

弱い部門の存在は、ワンストップの利便性(幅広いカテゴリーをそこで買う)という買い手の利用メリットを阻害する為、全部門の利用に影響を及ぼしかねません。

さて、あなたはこれらの新規顧客に対して接点を増やす(買っていない人に買わせる)事を選びますか?個々の接点を強化する(買わなくなる人を少なくする)事を選びますか?

言い換えるならば、ワンストップさせる事を目指しますか?ワンストップできる事を目指しますか?

・継続顧客

マーケットというものは常に前に進み続けている「生き物」であり、それは利用者率、利用回数共に飛び抜けて高く、安泰に思える継続顧客についても例外ではありません。

売り場は常に比較、吟味に晒され続け、顧客はその利用態度を変化させ続けます。

少なくとも利用者率が100%となる接点は無く、全体傾向としては各接点との関係時間と共に減耗に向かう事を、下図は示しています。

この時、ライフステージの変化等買い手側の変化が極小に抑えられていると仮定するならば、マーケットに起こった変化は、商品の変化(商品の有無/価格等の競合比)=売り手が起こした/起こさなかった相対的変化によるものです。

継続来店する中で、最も多くの顧客が見限った部門が予防・健康、最も競合でつまみ食いするようになった部門が日配食品です。
特に前者は来店していながら買わない事を選択させた訳ですから、顧客から見て対競合で、最も見劣りする事が疑われます。

離脱者が最も少ない日雑は、当期では一般食品を抜いて利用者率のトップに躍り出ています。
「競合耐性の高い部門」「最後まで来店動機として残りやすい部門」と言えそうですが、どうでしょうか?
「どこで買っても大した違いが無い部門」とも言え無くもない気もしますが、兎に角店に来て貰わなければ何も始まらない訳ですから、最も多くの顧客に、結び付きを維持してもらえているという点において、最も重要で、最も深めておくべき顧客接点なのかもしれません。


さてあなたなら、予防・健康から流出して行った808人に「戻って来てくれ!」とばかりにクーポンを撒きますか?

それは何もし無いまま追試を受けるようなものでしょう。

それとも「幅広い部門を利用してもらう為」に、利用者ですら808人が見限った部門のクーポンを、その808人が見限る前から、そもそも接点を持たないという選択をした11,564−5,031人=6,533人にクーポンを撒きますか?

・離反顧客

さて、問題の離反顧客です。

継続顧客同様、全てが減耗しています。

全体としては新規顧客とさして変わらない利用者率、利用回数を示しながら、まるで崖を迎えたかのように2,600人が忽然と姿を消しています。

こればかりは俄に「商品の変化」が原因とは言い難い気もしますが、継続顧客にすら起こっている減耗を見れば、熟年離婚のようにこれ迄それを積み重ねて来た結果のように思われますが、如何でしょうか?

利用者率では一般食品に劣るものの、ここからも引き続き日雑の減耗耐性が窺われます。

継続顧客では最大の利用者数減であった予防・健康は既に多くの離脱を招いた後でしょうか?惣菜が最大の利用者数減を記録しており、最大のつまみ食い回数を記録している日配と揃って、特にこの二部門が断末魔のように顧客を吐き出しています。

まあ、何を言っても「妻が突然家を出て行った!」「何の心当たりも予兆もない!」のと同じですorz

相手は心に「決めていた」のですから、この期に至ってどの接点を、どうしようと無駄なのです。

結論

ここまで見て来て推察される通り

接点との絆 > 接点の数 です。

雑貨のように粘り強く利用してもらえる強い接点があれば、少なくともギリギリ迄来店はしてもらえる訳ですから、ここを何処よりも強くしておくに越した事はありません。

その先徐々に他の接点を強化して行った際に、少なくとも来店してくれている限りは「見てもらえる」からです。


もしも強化した予防・健康の売り場を再度見てもらう為にクーポンを出すとしたならば、雑貨の利用者には雑貨のクーポンを出して来店して貰うべきです。

喜ぶ人に喜ぶ事をせず、自分のエゴばかりを通すから、知らない内に関係がおかしくなって来る訳です。

一つ一つの接点の強さ、接点と顧客との繋がりを磨いて行く事が、接点の数を一つまた一つと増やし、いづれワンストップの利便性=接点の数へと繋がって行きます。

【メモ】

一般に利用者率が100%となる部門はありません(ここ迄の最大は継続顧客の当期一般食品利用者率81.95%)。
顧客は個々に多様な価値観を持っており、利用する/しないの判断は、基本その価値観に委ねられています。

利用を選択している=少なくとも価値を見出している
利用を選択していない=価値が見出だせていない と考えられます。
売り手はこれを「価値に気付いていない」と捉えたがりますが、万一そのような買い手が多いのであれば、売り手は寧ろ自身の売り場をこそ見直すべきです。

販促とは単に呼び込む為のものでは無く、喜んでもらう為のもの、良いもの/良くたものを再び見てもらう為のものです。

自然と離れて行き、引き止められない顧客を気にするよりは、自分で何とかできる自分の売り場をこそ気にしよう!

さて、今回は接点=部門として考えて来たわけですが、部門配下にも利用されている小分類とそれほど利用されていない小分類があり、その小分類配下にも利用されている単品とそれほど利用されていない単品があり、と実はそう単純な話でもありません。

また、ある人にとって重要な接点が、別の人にとってもそうであるとは限りませんし、「それほど利用されていない」=重要では無いという事もありません。


極論「一つ一つ全ての接点を育んで行く事が重要」と言う話なのですが、接点とは何でしょうか?それが一品一品の単品であるならば、到底管理する事はできません(全部大事=全部大事じゃない)。


接点を明らかにし、それを利用できるようにするのが BiZOOPeTapir_MK です。

どんな感じなのか?興味のある方はTapir_MKによるマーケティングの教科書も併せてご覧になってみて下さい。

ありがとうございました。