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POSの1%、ID-POSの1% 〜 そのパラダイムの違い

「POS分析とID-POS分析の決定的な違いは何ですか?」と質問を頂きましたので、極簡潔にPOS分析とID-POS分析の一般論的違いと、同じ1%の見方=パラダイムの違いについて書いてみたいと思います。

巷で行われているレガシーなID-POS分析のパラダイムにはPOS分析と”決定的な違い”が無い為です。

POSの1%

POS分析の世界において、パーセント表記の点数PI値(点数÷レジ通過客数)が1%を超える商品は超売れ筋商品と言えます。

ここでは菓子売り場の中から年間の点数PI値1%以上の商品を抜き出してみました。

点数PI値1%は、客点数=1とした時に、発生したレシート枚数中の1%にその商品が含まれる事を意味しますので、例えば「カルビーポテトチップスうすしお味60g」は来店客中4%もの人が買う超売れ筋商品と捉えられます。

日に2,000人の店舗であれば、2,000×4%≒80個が1日に売れる計算です。

POSの場合「4%もの人が買う商品なのだから、みんなに売り込もう」と考えます。そして「そのような商品の品揃えを増やそう」と考えます。

尚、点数PI値の合計は各商品の点数PI値の和となります。

ID-POSの1%

ID-POSでは文字通り実際に利用したID数とその割合が分かります。

例えば「カルビーポテトチップスうすしお味60g」は年間来店顧客中18%もの人が買った超売れ筋商品だという事が分かります

但しこの18%の中には、年間1回1点の顧客から、俄には信じがたい利用を行っている顧客まで、全て同じ”一人”としてカウントされています。

要は「どの位幅広い人に響くのか?」の指標と言えます。

顧客の数値である利用者率の合計は、商品の数値である点数PI値と異なり、各商品の利用者率の和はなりません

これは期間内でどちらも買っている=併買を行っている顧客が存在するからであり、これが分かる事もID-POSのPOSには無い特徴の一つです。

よって個々の商品については「幅広い人に響く」と言いながら、4品を合わせた利用者率は単純和である58%を下回る31%となっています。

一般に点数PI値上位の商品同士の併買率は高くなる傾向にあり、これは4商品の間では食い合いが、顧客個人の中では取捨選択が起きている事を示します。

に「菓子売り場」にも関わらず「ポテトスナック」しか選ばれていないのは図からも分かります

ID-POSの誤謬

利用している人が分かると言う事は、利用していない人も分かるという事であり、利用していない人を抜き出して来れるのもID-POSのPOSには無い特徴の一つです。

「カルビーポテトチップスうすしお味60g」で言えば、店舗利用者の実に82%が未利用者です。

ID-POSの場合「18%もの人に支持される商品なのだから、残りの82%にも売り込もう」と考えます。

点数PI値4%の超売れ筋商品、18%もの顧客が利用している商品ですから、訴求すればもっと売れる筈と考えるからです。

これはID-POSならではの併買分析や、年代のような属性やランクによるセグメント分析においても全く同様です。

政策規模を絞り込む/ヒット率を上げる為に「30代の29%もの顧客が利用している ⇨ 30代はこの商品を好む筈 ⇨ 未利用の71%に売りこもう」と考えます。

対象を小さくしているだけで「買っていない人に売り込む」というパラダイムは、セグメントを行わない場合や「みんなに売り込む」POS分析と何ら変わりはありません。

折角未利用者が分かるID-POSですから、POSの延長で18%もの顧客が利用している」と捉えるのでは無く、当然大きい方の数値である「71%もの顧客が未利用である事実を直視すべきです。

モノである商品とは異なり、ヒトである顧客には個々に異なる価値観、自由意志がある為、未利用者についてはPOSでよく言われる「訴求が届いていない/価値に気づいていない」顧客は極一部で、「利用しない事を選択した」顧客であると捉える方が妥当でしょう。

一定数の人がそうであるという事は、点数PI値において昔から「牛乳のPI値は10%」等と言われ続けているように、俄には変化しない事実です。

このようにID-POSならではの特徴があったとしても、「買っていない人に売り込む」パラダイムでは、なまじアプリやクーポンで「利用しない事を選択した」顧客に対して意図的に着弾させる事ができてしまうID-POSは、売り場、チラシといったマスの場で「みんなに売り込む」一本槍のPOSよりも、むしろ良くない結果を生む恐れすらあります。

ID-POSマーケティングのパラダイム

ID-POSマーケティングでは

利用=接点有り(マーケット参加者)

未利用=接点無し(マーケット不参加)

と捉えます。

POSの1%は「1%もの顧客が買う商品」、ID-POSの1%は本来「99%もの顧客と接点が無い商品」です。

マーケティングとはマーケットに働きかける事なので、働きかける相手はマーケット参加者になります。更には「喜ぶ人に喜ぶ事をする」「嫌がる人に嫌がる事をしない」原理原則ですので、例えばクーポン利用者に対して発行します

これを「接点強化」と呼びます。

実際「接点有り」と言っても、通常その内の50%超の顧客にとっては年一回利用の接点に過ぎませんし、接点が深まればそれが来店動機化して行き、別の商品を買ってもらえる可能性も高まります(そうするともう一つ接点が生まれます)から、何の接点も無い「買っていない人に売り込む」よりも遥かに実りある政策と言えます。

では未利用者は放ったらかしなのか?と言えば、当該接点についてはどうぞ放っておいてあげて下さい。

但し、未利用者と言えども来店しているからこそ未利用にカウントされている訳で、それがあなたの担当部門では無かったとしても、必ず「別の接点」を持っています

図のように部門という大きな接点で捉えてすら利用者率が100%になる事はありません。

たった一つの接点で、強いてでも全員を陥落させなければならない道理はどこにも無く、だからこそスーパーマーケットやドラッグストアといった業態が存在し、品揃えという概念が存在する訳です。

顧客との間に複数の強い接点が持てたなら「値段は少々高いんだけど、面倒だから「くすり」もこの店で買ってくか!」と今まで接点の無かったものの利用を選択してくれるかもしれません。

接点接点に応じた多角的な接点強化を図っていくのがマーケティングであり、これこそがPOS=マス・マーケティングとID-POS=セグメント・マーケティングの本来最大の違いです

という事でPOSとID-POSの一般論的違い、レガシーなID-POSとマーケティングとしてのID-POSのパラダイムの違いについて書いてみました。

ここ迄では、点数PI値上位商品間のカニバリゼーションの問題は?クーポンは未だ分かるけど、売り場はどうすればいいの?接点=単品と考えると管理できないのでは?等の疑問が積み残ったままかと思います。

さて、顧客は何故その売り物(商品/売り場/店舗)と接点を持ったのでしょうか?

それはそれが只一度であったとしても、それを利用する事によって得られるメリット=利用メリットをその時感じたからです。

顧客は各々がそれぞれ感じる利用メリットと接点を持つ事を選択します。

以降詳しくは Tapir_MKによるマーケティングの教科書 にて解説していますので、是非ご高覧頂けましたら幸いです。