” ニーズが見える ” ID-POS分析
前回記事では、期間というものが曜日によって大きくセグメントされる事を示しました。
セグメントされるからと言って、曜日間で全く併買が発生しないのか?と言えばそうではありません。
日付を曜日という形に拡大解釈する事で、日付の分析からは見えなかった曜日間の併買関係をデフォルメして見る事ができます。
曜日はたった7つしか無い為、ここで取り上げる分析結果は、多分直感に適った単純なものです。
しかし単純だからこそ、なぜマーケットをセグメントしなければならないのか?を理解するには格好の材料になると考え、記事にしてみました。
ユーザーさまより「年代別の利用曜日傾向」という質問を頂いた事が本項のきっかけですので、それについても巻末に書かせて頂きます。
図のような表を見て「何故わざわざ7つしか無い曜日をセグメントするの?」「マーケットは既に曜日で7つにセグメントされてるじゃないか!」と思われる方も居るでしょう。
曜日に限らず私たちが普段から見慣れている期間が縦軸の表、店舗が縦軸の表、単品が縦軸の表等、あらゆる表が、それらでマーケットをセグメントした表です。
曜日/日/店/単品と私たちは打ちたい政策の単位を主題に分析をします。
これらの政策主題をマーケットリーフ(葉)と呼ぶ事にします。
前図をよく見てみると、日〜土の各リーフの利用ID数の単純和が、マーケット計と一致しない事が分かります。
顧客は併買をするからです。
曜日同士であれ、店舗同士であれ、単品同士であれ、顧客はリーフ間を股に掛けて利用をします。
私たちも実際、店を水曜に利用したり、土曜に利用したりします(中には水曜にしか利用しない人もいます=非併買)。
マーケットをリーフでしかセグメントしない場合、「ベスト分析」のように数値が大きいもの順にリーフを並び替えた上位が、重要な曜日になると私たちは今まで考えて来ました(それ以外の手段がありませんでした)。
図で言うと一番重要な曜日が水曜、二番目に重要な曜日が土曜と言う具合に、重要な曜日は数値の大きい、私たちの利に適った曜日です。
ところが往々にして水曜と土曜の顧客の多くは重なっていて(併買)、最下位の火曜の顧客は重なっていない(非併買)といったような事が起こります(単品等他のリーフについても同様です)。
そこで、顧客の併買/非併買によりマーケットをセグメントしてみたものが次の表です。
相互に併買が余り発生しない固まり同士であるseg_fは、配下のリーフから顧客が大きく ”休日+お得な日※派” と、”平日派” に分かれる事を示しています。
※.水曜をポイント倍付デーのようなお得な日と推察
”休日+お得な日派”のseg_f=f1中の、併買が曜日間平均以上に発生している固まりであるseg_n=f1_n1を見ると、ベスト分析で1位、2位の水曜、土曜が、前言通り固まっているのが分かります。
私たちの利に適うように思えるベスト分析1位、2位のリーフだけを重視すると、”土曜+お得な日派” の顧客しか報われない(特に ”平日派”の利に適わない)という事です。
これは究極的には私たちの利をも損ねています。
そこでマーケット・セグメンテーションでは”休日+お得な日派”のベストである水曜を1位とした後、”平日派”のベストである金曜を2位とします。
”休日+お得な日派”の中でも水、土とは非併買な顧客の多い日曜を3位とし、”平日派”の中でも非併買な顧客の多い月曜を4位とします。
偏り無く多くの顧客の利に適う、重要な顧客接点となるリーフを探し出す為のツリー(木)が、マーケット・セグメンテーションです。
「月曜しか買いに来られない」という一部顧客の都合があったとしても、「毎日を大切になんか出来ない」という私たちの都合もあります。
全てが重要=全てが同じ(特に重視しているものはない)ですから、私たちと大衆(マス)の都合が最大限重なり合う部分を見つけ出す事が、双方の利に通じます。
それでは何曜を重点曜日とすべきでしょうか?
前述の通りseg_f/seg_nは配下のリーフ間で、ある程度/平均以上の併買がある事を示しています。
となれば、その配下で一番利用ID数の多いリーフを伸ばしてあげる事が、併買効果によりセグメント全体の業績を押し上げる事にも、多くの顧客の利にも通じます。
その為表にはseg_fのベストに1st、seg_nのベストに2ndという”重点”である事を示すレコメンドが振られています。
ランチェスターの弱者の戦略のようにNo.1となるマーケット・セグメントを絞り込むのであれば、seg_f=f1の1stと2ndのリーフ(水、日)を、そうで無ければ最低限seg_f数分(レコメンド=1st)のリーフ(水、金)を、大衆(マス)をカバーする為の重点顧客接点として位置付けます。
政策主題=マーケットリーフは、売り手視点では”売り物”、買い手視点では”利用メリット”に当たります。
ID-POSがあってすら、私たちにはマーケットを売り手視点の一方向から見る習慣が染み付いてしまっていますが、マーケットとは、売り物と顧客の価値観(利用メリット認識)との接点です。
接点である以上、マーケットを理解する為には売り物だけで無く、もう一方向にある買い手の理解、すなわち顧客の多様な価値観やライフスタイルのデフォルメが必要です(葉を見て木を見ず)。
売り手と買い手のWin-Winを双方向から知る事。
これがマーケットをセグメントしなければならない理由です。
最初に注意点ですが、年代構成は他の年代との相対的割合を示すものです。
例えば40代の利用が大きく伸びれば、20代の利用が伸びていたとしても、年代構成としては小さくなってしまいます。
また、以下では”大きい”、”多い”、”増える”といった表現を使いますが、それがどの程度のものなのかは、目安として平常時=マーケット計の年代構成との差で判断してみて下さい。
まずseg_fで見て行くと、”休日+お得な日” には30代以降の年代構成が、”平日” には〜30代の年代構成が大きくなる事が分かります。
〜30代は”平日” の年代構成の方が大きい事から”休日+お得な日” に拘わらず、必要な時に利用している人が多いと解釈した方が良いかもしれません。
そう考えると”休日+お得な日” に拘る人が相対的に増えるのは、40代以降と言えます。
次にseg_nで見て行きます。
土、水の年代構成の高い40代以降が、”お得”に拘る人が多いであろう事が見てとれます。
メイン年層でもある40代は日曜の年代構成も高い事から、最も”休み”の買い物に拘る人が多い年代とも解釈できます。
月曜に他の年代に対して相対的に年代構成の上がる〜30代は、やはり特に拘り無く必要時に利用する方が、それなりに多いのでしょう。
年代もマーケットをセグメントしますが、年代そのものは売り手から見た売り物でも、買い手から見た利用メリットでもありません。
よって双方の接点であるマーケットリーフでは無く、顧客接点をスライスするものです。
マーケットリーフ=政策主題ですから、スライサーである年代は更なる顧客理解と、政策主題の演出に使います。
先のレコメンドされた曜日での販促演出という視点で考えてみるとー
seg_f=f1の1stレコメンドである水曜は、特に40代以降の感じそうな”お得”に刺さる事を、
seg_f=f1の2ndレコメンドはメイン年層である40代の、明日に仕事を控えた日曜という利用シーンを、
seg_f=f2でレコメンドされて来た月、金は、将来のメイン顧客である〜30代のファン化を
意識したものにする(あくまでもまず政策主題ありき)というのが一つの考え方です。