ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
そんなに違う?売上順と採用順

ID-POSの研修会で掲題のご質問を頂ました。日常業務で最も頻繁に Tapir_MK を利用するであろう用途が、商品採用/不採用(差し替え)ですからもっともです。

以前 商品選抜方法による品揃え差異  でも書いた内容ではありますが、POS分析では売上の観点から、多くの場合売上順によって商品の採用/不採用を判断します。それに対してID-POS分析ではより多くの顧客に便宜を提供する/利用・来店して欲しいという観点から、ID数順を用います。

これだけで両者に大きな違いは生まれませんが、利用用途の重複した商品同士は期間内で併買(選択購買)される為、単なる売上順/ID数順ではターゲット顧客/利用用途の偏りが生じます(ex.食用油の売上上位はメーカー違いのキャノーラ1Lに独占されます)。

要は ”単純にボリュームだけでは測れない” という事なのですが、POS分析における”用途”は売り手が決めた商品分類(例えば「冷凍食品」)である為、この場合「勘と経験」が無いバイヤーであれば、冷凍食品の中からボリューム順で商品を採用する以外手立てがありません。

ID-POS分析では顧客の選択状況から、冷凍食品における買い手にとっての”用途”を1〜商品数迄任意の数に分割(マーケット・セグメンテーション)できる為、一つづつ順に分割ながら、分割された”用途”を代表する=利用ID数の多い商品に順位を振って行ます。これにより、POS分析の数値からは決して窺い知る事のできない、ベテランバイヤーの「勘と経験」をミックスしたような順位を得る事ができます。BiZOOPeではこれを採用順と呼んでいます。

販促に採用する商品を想定したトップ5、商品カットを想定したワースト5の双方で、売上順と採用順が実際にどれ位違うのか?を以降で見て行きたいと思います。

採用順について詳しくは【ロジック】商品を採用すべき順番とは? を、ロジック全体の詳細についてはTapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧ください。

トップ5比較

冷凍食品カテゴリーに売上順、採用順の双方を振り、それぞれトップ5商品を抽出してみました。

マーケットをセグメンテーションしてみると、大きくseg_f=f1〜f4の4つのセグメントに分かれましたので、各商品の所属セグメント情報についても併記してみました。

各セグメントの用途を代表する商品には1st、次に代表する商品には2ndのレコメンドが振られています。

売上順では所属SKUが23SKUと最も少なく、利用者率が69%と最も高いセグメントf1にトップ5商品全て偏っているのが見て取れます。これは主要来店客である主婦層の「家庭の食卓の一品としての冷凍食品」という用途への偏りと推察されます。採用順では97位でレコメンドが付いていない「ニチレイフーズ特から415g」については、より売上は低いが、より利用者の多い代替可能品が売上トップ5外に居る事を示唆しています。

マーケットを一つと見た時のID数一位=採用順一位も売上順と同じく「味の素ギョーザ12個」となっていますが、利用者率の高い順にf1→f4→f2→f3→またf1と、各マーケットセグメント(用途)からレコメンド=1stを優先しつつ、満遍なく商品を採用している事が分かります。満遍なくと言いつつ、いきなり採用順1位と2位に用途が重なるように思える”餃子”が現れていますが、セグメントNo.が最も離れている事からも「味の素ギョーザ12個」を利用する人は日本ハム肉餃子12個」を決して利用せず、「日本ハム肉餃子12個」を利用する人は「味の素ギョーザ12個」を決して利用しないといった位、利用する顧客層そのものが異なっている事が考えられます。

売上順トップ5位迄の商品をチラシに採用した場合、100%−69%=31%の顧客にとっては一切関わりがありませんが、採用順の場合、全ての顧客に満遍なく関われるように商品を採用して来ようとします。

顧客には食卓の一品を求める人も居れば、お弁当用の一品を求める人、自分用の個食を求める人も居ます。

一人の顧客の中にも食卓の一品、お弁当用の一品、自分用の個食とカニバリしない多様なニーズがあります。

「なるべく多くの買い手に喜んでもらう」為に、商品を含む”売り物”に対して打つ政策がマーケティングです。

ワースト5比較

採用順の方が、所属SKUが109SKUと最多で重複用途SKUが多いと目されるセグメントf4に偏って、商品をカットしようとしています。

冷凍食品238SKUから10%の商品をカットしようと考えれば、215位以降がカット対象となりますが、売上順では採用順では残る「オマール海老の贅沢クリームコロッケ8個入」「井村屋製菓ふんわりどら焼 つぶあん4個」が、採用順では売上順では残る「ニッスイ具だくさん 鶏ごぼうごはん450g」「味の素やわらか若鶏から揚げじゅわん鶏もも275g」がカットされる事となります。いづれの商品にもレコメンドは付いていない事から、用途欠落には繋がらず、大した影響上の違いは無いと考えられますが、この商品名からも採用順がカニバリゼーションしないバラエティーを重視している事が伺えます。

微差に思えるかもしれませんがなるべくがっかりする買い手を少なくする」為に、商品を含む”売り物”に対して打つ政策がマーケティングです。

本来カットすべきで無い「最低限代替可能な用途」である事を表すレコメンド付の商品に絞って、売上順、採用順の下位商品を見てみると以下のようになります。

売上順では211位の日本製粉パンケーキ&ホットサラダ200gにややカットの危険性を感じますが、「売れてはいなくとも独自の利用用途を持つ」という点において、売上順と採用順の順位の乖離がより顕著に認められます。

決定的な違い

「結構違うんだ」と思われましたか?

「そんなに違わないな」と思われましたか?

この辺は人それぞれの感覚もあるでしょうから皆さんにお任せしますが、決定的な違いは順位の乖離の程度にでは無く、そのスタートにおける精神にこそあります。

売り場面積や労務費と、売り手には売り手の都合が当然ありますが、そのような制約条件の中においても「なるべく多くの買い手に喜んでもらう」「なるべくがっかりする買い手を少なくする」=マーケティングの為に振る順位が採用順です。