” ニーズが見える ” ID-POS分析
Googleマップのようなwebサービスが、多くの提供者と利用者という「第三者の力を使う」事で、巨大なビジネスを成立させている様を私たちは目にしています。
このようなモデルを提案すると多くの人に拒否反応を示されるように、これは一見不思議な事のように思われます。
なぜ第三者は自ら進んでこれらプラットフォーマーに利をもたらすのか?ウチでそんな事が成立する筈が無い!と。。。
自ら進んで参加するのは当然第三者にも利があるからで、提供者よし、利用者よし、プラットフォーマーよしの三方よし、互いのエゴが調和するように御されたビジネスモデルだからです。
利がある提供者、利用者が多ければ多い程、プラットフォーマーの利も大きくなります。
この概念を提供者 = メーカー、利用者 = 顧客、プラットフォーマー = 小売と見做して流通業界に当て嵌めてみたものが次の図です。
私たちと一緒にプラットフォーマーを目指す小売業さん、いらっしゃいませんか?と私 かちょー が抱き続けている拙い夢想の一つが、掲題のクーポン市場(仮称)です。
小売業にとっては単品一品の売上が上がったところで「誰得?」って感じかもしれませんが、「明日から!本商品お買い上げ時◯ポイントプレゼント」のような単品クーポンを発券すると、利用者平均の来店回数が0.3〜0.4回/月 程度増える事が実証実験から分かっています。
この時客単価は変わりませんので、たかだか数ポイントの単品クーポンでまるっと 「 利用ID数 ✕ 0.3〜0.4回 ✕ 客単価 」分の月間売上が増える算段になります。
単品クーポンはメーカーだけが得する政策では無く、小売にとってもお得な政策だったのです。
ここが発想の始まりでした。
※.クーポンはレジクーポンでもアプリクーポンでも構いませんが、来店増の為に何で発券すべきかは各販促チャネルの位置付け をご参照下さい。
※.敢えて”単品”クーポンとするのは、多くの参加者の参加へのハードルを下げるプラットフォームとしての単純性を狙っての事です。
それならできるだけ多くの顧客にクーポンをばら撒きたいところですが、来店回数が増えるのはクーポンの利用者に限っての話です。
発券コストもさる事ながら、「使えないクーポンばかり出して来る煩わしいお店」と思う人が無いように、顧客にとってもお得なクーポンにする為には、可能な限り「喜んでくれそうな人」に発券をしたいところです。
これに適った形で図の「一番搾り生350ml」のクーポンを発券しようとした際のターゲットは、「一番搾り生350ml」が所属する seg_f=f1 の3,370人 です(黄色セル = 指標の意訳参照のこと)。
※.分析条件についてはID-POS分析の勘所 に準じます。
※.ターゲットが「おおよそ」分かるとしたのは、扱いがデリケートなカテゴリーにおける年代や性別による足切りを必要とする小売業さんが居る為です。
※.図の帳票が成立する背景について簡単には Q2)なぜID-POSなのか? を、詳細にはTapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧下さい。
ほぼ確実に喜んでくれる顧客は該当商品と直接、しかも2回以上の接点を持っている図の413人ですが、これでは小売業的にもメーカー的にも(ご愛顧に感謝を示せ、喜んでもらえるとは言え)如何にもボリュームに欠けます。
顕著な併買の塊であるseg_n=f1_n2 の2,544人には、ほぼ確実に販促効果が見込めますが、図にも見られるように自社競合し勝ちな塊ですので、やはりメーカー的にはブランドスイッチの面白みに欠けます(とは言え顧客は併買をする存在ですから、帳票上見えてはいませんが、この2,544人の中にはスーパードライやプレモルとの併買者も含まれています)。
以上から、定義上も販促効果限界である seg_f=f1 の3,370人 にクーポンを発券する事が、小売的には最大の来店可能性、メーカー的には感謝とリピートとブランドスイッチを合わせた最大の売上可能性を見込め、顧客にとっても 嬉しいもしくは煩わしく無い 最適解となります。
「喜ぶ人に喜ぶ事を」がマーケティングの原則であるならば、三方よし もその拡大解釈であり、やはりマーケティングの原則です。
協賛を前提とする以上、「メーカーが喜ぶ」商品を発券すべき = メーカーに選んでもらうべき(既取扱の前提で)です。
メーカーが売りたいもの、営業マンが駆け込みで予算達成したいものを”マス”に向けたエンドに大陳する事は、小売の利、顧客の利に反しますが、ターゲットクーポンという形でプラットフォーマーたる小売業が、前出の ”誰に” の制約を設けさえすれば、メーカーのエゴもすんなり通す事ができます。
一定のエゴが通るからこそ「大勢に」「喜んで」参加してもらえるプラットフォームたり得ます。
※.商品をロジック的に選ぶ事が幻想に過ぎない事は真に”マス”であるために で書いたとおりです。
そう考えるならば、今後の狭小商圏化に向けた来店回数増やファン化といった政策課題に沿ったクーポン政策の在り方は、一単品のターゲット顧客の深耕や拡大にあるのでは無く、対象単品数すなわち企画数の拡大にあります。
クーポン企画が満遍なく顧客をカバーする程に迄増えれば、単純に言ってより一層の客数増を見込めます。
またAIでは無く、人のエゴと思い付きが生み出す多彩な企画は、差別化に乏しいマスな商品による多数派への還元という偏りを解消し、差別化に富んだニッチな商品による少数派への還元を行き渡らせる事、店舗のファン化にも繋がるでしょう。
現状企画数を増やせない要因として想定されるボトルネックは以下2点です。
1)一人あたりのクーポン同時発券枚数の制約
2)事前の商談負荷
三方よし=ヒット率優先とすれば、1)については、各顧客が接点を持ったのが商品そのものなのか?seg_nなのか?seg_fなのか? はたまた2回以上利用か?1回利用か?によって、加えて後述する入札ポイントの過多によって発券優先度が決められそうです。
2)については帳合先が、web上で自由に入札できるプラットフォームを設ける事で解決するのでは無いでしょうか?
web上で希望するJANを入力すれば、(既取扱の前提で)最大発券枚数はseg_fのID数で決まりますから、予算に合わせて協賛可能な入札ポイントを入力します。
当然記載以外にもシステム上や、運用上の問題はありますが、乱暴ながらこれが小売業をプラットフォーマーとする「クーポン市場(仮称)」のフレームワークになります。