クロスMDの技術と実務

定常的な業務でも、企業に大きな売上をもたらすような政策でもありませんが、クロスMDは興味を持たれる方が多い事、Tapir_MKのロジックの基礎にもなっている事から、まず手始めに書いてみたいと思います。

BiZOOPe 商品併買|AnemoneFish(マニュアルが開きます)を使って解説して行きます。

分析条件についてはID-POS分析の勘所 に準じます(併買できない人が少なくなるような店舗選択が必要です)。

一般論と余談

自商品の利用者における、クロスMDの相手となる商品の利用者率(併買率と言う)が、相手となる商品の一般の利用者率(併買率に合わせ下図では購買率と呼称)の1倍超である時、自商品を買っている利用者は、相手の商品を好む(相性が良い)と判断します。

これをLiftと言いますが、一般利用者の1倍+α 程度では「特異に好む」と迄は言えませんし、倍率高くとも、利用者率が極端に低くては自身にとっても顧客にとっても有益な政策にはなりません。

ですから Lift ≧ 2倍 且つ 併買率≧1% と言うのが、一般論的な相性のしきい値となります。

クロスMDの主流とも言える同時併買については、単品間ではかなり稀な事象である事もあり、上記を満たした上で更に 同時Lift > 1 を「相性が良い」と見做します。

【余談】

BiZOOPeへの問い合わせで「併買分析をしたのに何も出て来ない」というものがあります。

それは一般論に適う相性の商品を導き出せるよう、BiZOOPeのオプション設定のデフォルトが、図のようになっている為で、何も出て来ないという事は「一般論的に相性の良い商品は無かった」という事です。

このしきい値を甘くする事で、幾らでも相手となる商品を出力する事ができますが、独自解釈で無理繰り「相性が良い」を作り上げるのもどうかと思います。

自商品にはそれなりのマーケットサイズが欲しいところ

そもそも併買者数が少ない事もあり、まずクロスMDのキーとする自商品がそれなりのID数を持って居なくては、極めて矮小な政策となってしまいます。

また、相手商品のマーケットサイズ次第では相手商品におんぶに抱っこの政策となってしまいますので注意が必要です。

今回の例では「のどごし生350ml✕6本」を自商品とし、全商品との間で併買分析に掛けてみました。

結果50商品が一般論的に相性の良い相手商品として出力され、内26商品が自部門内の商品でした。

以降特徴的な12商品について見て行きます。

どちらの売場で実施すべきか?主にどの顧客に向けた提案か?

併買分析は自商品、相手商品の2商品から成るマーケットを、顧客の利用態度で分割する分析です。

双方の商品にとって共通の顧客が併買顧客です。

既に併買経験のある顧客に再度併買してもらうのも、売り手としてはボリュームも小さく面白くありませんので、クロスMDが狙うのは非併買の顧客となります。

自商品、相手商品双方の売場で政策が展開できれば良いのですがどちらか片方でしか展開できないケース(主に自商品の売場)の方が多いでしょう。

となれば自商品しか買った事の無い顧客(図の青フォント)と、相手商品しか買った事の無い顧客(図の赤フォント)の人数を比較し、より人数の多い方の売場(もしくは自商品の人数の方が多い相手商品)で政策を実施します。

図の例では全ての相手商品に対して、自商品しか買った事の無い顧客の方が多かった事から(温度帯の相違で難があるものを除き)自商品の売場で政策を展開するのが基本となります

この場合の提案は自ずと「自商品の顧客に対して、相手商品を利用する事で得られるメリットを紹介する」形が基本となり、嫌らしい話どちらかと言えば「相手商品の方が得をする」提案となります。

異質メリット同士の組み合わせ提案か?同質メリット同士の集積提案か?

相性が良いと一口に言っても、双方の商品が異質が故に併買されるケースと、同質が故に併買されるケースがあります。

一般的に同時併買という利用行動は、双方の商品が異質であるが故に起こります。それに対して非同時の併買という利用行動は同質であるが故の選択的利用行動と解釈されます。

同時併買>非同時併買 のケース(図の青フォント)についてはメニュー提案やライフスタイル提案といった組み合わせ提案が、同時併買非同時併買 のケース(図のフォント)については「◯◯フェア」のような同質メリットの集積による訴求が、クロスMDの基本政策となります。

同時併買、非同時併買間の人数差が大きい商品程、それぞれの政策により適した商品と考えられます(図の12商品は、自部門/他部門、同時/非同時それぞれの人数差順で、上位3件づつを抽出して来たもの)。

他部門の商品との非同時の併買が、選択的利用行動とは言い難いのはID-POS分析の勘所 に書いた通りですので、他部門商品との非同時併買という相性については、特段深い意味は無いと捉えて下さい。


さて、異質である事を商品特性として”遠い”、同質である事を商品特性として”近い”と捉えると、自部門内における併買は、図からも販促と言うより定番棚割に使えそうな事にお気づきでしょうか?

この考え方をベースにした”併買分析のお化け”が本ホームページでも再三取り上げられているTapir_MKになります。

まとめ

ざっくりと、自部門内での併買は定番棚割で実現すべきものとしてしまえば、私たちのイメージするクロスMDの勘所は以下5項目に絞られます。


1)自商品には充分なマーケットサイズのあるものを選ぶ(相手商品のマーケットサイズも大きい事が望ましい)

2)相手商品として自部門の商品は避けて分析する

3)「同時併買 ー 非同時併買」の正差が大きい相手商品を選ぶ

4)自/相のどちらか非併買者が多い方の売り場で展開する(もしくは自の非併買者の多い相手商品を選ぶ)

5)展開する方の売場顧客に思いを馳せた提案とする


一点付け加えるならば、接点を大きく跨いだ他部門とのクロスMDは、かなりの拡大解釈となりますので、政策は顧客個々人の判断に委ねられる売場やチラシといったマス販促に留め、クーポン等個人へのターゲットマーケティングには安易に用いない方がベターです。

以上、クロスMDの技術と実務でした。