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【これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!】
重点カテゴリー設定とカテゴリークーポン

すみません。小売業さんが持ち出しでクーポンをやるなんて思ってもみなかったので、クーポンについてはメーカー協賛の得られる単品クーポンアイテムクーポンを網羅しておけば、これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!の販促編は完結だと思い込んでいました。

この度カテゴリークーポンでMA(マーケティング・オートメーション)をやりたいとのご相談を受けまして、どのカテゴリーのどのターゲットにクーポンを出すべきか、久しぶりに真剣に考えてみました。

ロジック的な部分は本稿では端折りますので、興味のある方は別途Tapir_MKによるマーケティングの教科書を御覧ください。

【メモ】
一般に棚割パターンの単位(スナック菓子の三尺三本パターン等で言うところの”スナック菓子”)をカテゴリーと呼びます。
売り場の単位(菓子売り場等)を部門と呼びます。
近未来のマーケット構造を予測するコツでも書いた通り、分析は政策実施単位の親の配下で実施した方が精度が上がります。
例えば、小分類で政策を実施するのであれば、大分類配下の小分類では無く中分類配下の小分類で分析を実施します。
本稿では菓子という中分類配下の小分類の分析を行っていますが、ドラッグストアを支える代表的利用目的24カテゴリーで店内の全小分類を一気に分析しているように、あくまで厳密に見た時の精度の問題であり、実際の分類構造や折々の都合に合わせて分析する事がNGという訳ではありません。

重点カテゴリー<「重要」の定義>

顧客の価値観、趣味嗜好は千差万別なので極論「全てが重要」になってしまい、「店内全品5%引き」のようなやり方が楽で無難な方法になってしまいますが、「全てが重要」では経済合理性の面でも管理の面でもこちらの都合が立ち行かなくなってしまいます。

その為我々は重点商品、重点カテゴリーといったものを設定し、その単位を重点的に管理したり、その単位で重点的に販促を行う訳です。

seg_f = 買い回りの大分類

Tapir_MKで分析をかけると、図のように顧客のおおよその買い回りのパターンが分かります。

seg_fは菓子売り場の中で行われている買い回りの、大分類のようなものです。

f1内だけで買い物を済ませている人(1,007,372人−939,075人=68,297人)、f2内だけで買い物を済ませている人1,007,372人−547,661人=459,771人)、f1、f2双方を利用している人1,007,372人−68,297人−459,771人=479,304人居ますが、大勢では顧客と売り場を繋げるチャネルは、図のように(この場合は大きくf1、f2の2つに)区分されます。

顧客と売り場との間にチャネルが大きく2つ存在しているのであれば、顧客と売り場とを繋ぐ最も重要な接点は、それぞれのチャネルを代表する=利用ID数の多いカテゴリー、f1では「ガム」、f2では「スナック」となり、「レコメンド」欄に1stというレコメンドが振られています。

もしも重点カテゴリーを2つだけ設定するのであれば、それを強化する事が、最も多くの顧客売り場と店に強く結びつける事に繋がるこの2つのカテゴリーとなります

seg_n = 買い回り分類

より詳細に買い回りパターンを分割したseg_nは、買い周りの小分類のようなものです。

例えばseg_f=f1というチャネルを利用する顧客の中には、

seg_n=f1_n1:「均一」と「珍味・豆菓子」で買い回っている顧客が多い。

seg_n=f1_n2:「もち」を買いに来ている顧客が多い。

のように解釈され、それぞれの接点を代表する=利用ID数の多いカテゴリー「レコメンド」欄に2ndというレコメンドが振られています。

利用ID数=22,484人のロングテール商品のような「もち」が、487,309人の主力とも言える「チョコレート・ポケット」を差し置いて「重点」と呼ばれるのはおかしな気もしますが、これは最低限「もち」に代わる選択肢が他に無い事を意味しており、「もち」の利用者は菓子売り場と「もち」のみで繋がっている可能性や「もち」があるからこそこの店舗を利用している可能性が高く、それが失われた場合、菓子売り場の利用は勿論、店の利用に影響を与える可能性があるからです。

部門の中だけで考えると、どうしても売れているカテゴリーを重視したくなってしまいますが、個々の顧客は内面の多面性を持っている為、菓子売り場ではロングテール商品しか利用してくれていない利用者が、他の売り場では主力カテゴリーを軒並み買っていたり、その逆もある訳です。

よって、顧客と売り場、ひいては店とを結びつけている絆、その中でも替えの聞かない最低限必要な絆が「重点」と位置づけられます。

図では7つのカテゴリーを「重点」と見做していますが、売り手には売り手の都合がある訳で、管理上「各部門で重点カテゴリーを3つづつ設定したい」といった場合も当然あります。

その場合、基本は「採用順」欄を見て3位迄のカテゴリー(図では「スナック」、「ガム」、「吊り下げ」)を「重点」として下さい

MAの場合、毎回同じようなクーポンばかりでは ”つまらない” かも(?)しれませんので、7つの重点カテゴリーでクーポンを回して行くという手もあります。

その場合においても、seg_fの2つのチャネル双方に必ずクーポンが設定される事が望ましいと考えられます。


※.勘のいい方はお気づきかもしれませんが、売り場のゴンドラレイアウトこのセグメントの単位で行えば、見つけやすく買いやすい売り場になります。

カテゴリークーポン政策

さて、クーポンを出す「重点カテゴリー」が決まったら、それを誰に出すのか?政策意図とそれに応じたターゲットを設定する必要があります。

まず基本、クーポンは「来店してもらう/来店し続けてもらう」為のツールであるという認識が大事です。

その上でクーポンには大きく、接点との絆をより深める事を意図したクーポンと、絆=接点数そのものを増やす事を意図したクーポンがあります。

前出の重点カテゴリー「スナック」を例に見て行きましょう。

絆をより深めるクーポン

人は誰しも「自分にとってメリットがある」と判断すれば利用し、「自分にとってメリットがない」と判断すれば利用しません。

スナックを利用した578,901人の中には「毎週来店してスナックしか買わない人」も「毎週来店しているのに一度しかスナックを利用した事が無い人」も含まれますが、総じて言えるのは過去一度でも「メリットがある」と判断した事のある、クーポン利用の「具体的足がかり」、スナックとの「接点がある」人たちだと言うことです。

顧客接点は数か?深さか?<離反の科学>で書いたように、例え「スナック」を買うためだけにこの店を利用しているような顧客でも、来店が無ければ何も始まりません。

「スナック」以外のカテゴリーが「自分にとってメリットがある」ものとなった時、来店さえしてくれていれば、それらを見てもらえる機会があるからです。

その為、たとえ一つであっても強い絆の存在は大変重要です。

「釣った魚に餌はやらない」なんて考えちゃあいけません。

徹底して「喜ぶであろう人に喜ぶ事を」が常にマーケティングの基本ですから、このやり方こそが正にクーポンの”王道”です(”つまらなく”感じてしまう事は認めます)。

絆(接点)の数を増やすクーポン

菓子売り場を利用する1,007,372人の中にすら、1,007,372人−578,901人=428,471人の「スナックを利用する事に自分にとってのメリットは無い」という利用態度を示している人たちが居ます。

そもそも菓子売り場すら利用していない人たちも含めればスナックに価値を見出さない人たちの数はもっと多くなりますので、顧客属性頼りでクーポンを出す事が如何に暴挙かお分かり頂けるかと思います。

この中の多くは「スナックを好まない」人たち、次いで「欲しいスナックが売り場に無い」人たちや「欲しいスナックは他店の方が安い」人たちが続くでしょう。

ところが「喜ぶであろう人に喜ぶ事を」に反し、「買っていない人にこそ買わせたい」のが売り手のサガです。

クーポンを出すならせめてこの内「欲しいスナックが売り場に無い」状態はなるべく解消※しておかないと、勉強せずに追試に望むようなものですし、それでも「スナックを好まない」人たちにクーポンを出す暴挙はなるべく避けたいところです(”好む可能性”に賭けたいのであれば、別にあるであろう”好む”クーポンで来店して貰い、菓子売り場を見てもらう機会を作るべきです=喜ぶであろう人に喜ぶ事を)。

「買っていない人にこそ買わせたい」のであれば、クーポンよりもやはり品揃えと値付け、棚割、POP等「良い売り場」が基本な訳です。

※.最低品揃えについては別途、商品カット/絞り込みと最低品揃えを御覧ください。

基本、クーポンは「来店してもらう/来店し続けてもらう」為のツールですが、「買っていない人にこそ買わせたい」という売り手の願望を許容してくれる買い手の限界はどこにあるでしょうか?

それは定義上「スナック」が所属する買い回りの大分類、seg_f=f2の939,075人(スナック利用者578,901人を含みます)、そもそも多少なりとも菓子売り場を受け容れている上で、類似した買い回りにメリットを感じる人たちです。

ここであっても939,075人−578,901人=360,174人「スナックを利用する事に自分にとってのメリットは無い」と利用態度で表明している人たちが居ますが、少なくともチャネルの異なる「健康菓子」や「シリアル・ドライフルーツ」の利用顧客に「なんでスナックなんてジャンクなものを私に勧めて来るの!」「使えねぇ〜クーポンばかり出す煩わしい店orz」と思われるリスクは軽減されますし、最低品揃えさえしっかりしておけば「おっ!なんだこの店にもあるんじゃん!便利♪」となってもらえるかもしれません。

※1.複数種類のクーポンを発行する場合、当然どのセグメントの顧客においても重複が発生しますのでご留意下さい。
※2.デリケートなカテゴリーについてはseg_fでは無く、seg_nやカテゴリーそのものの利用者に絞るか、One To One感の薄れるチラシ的な発行方法を検討して下さい。分類体系や分類選択そのものを見直すという手もあります。

以上、「重点カテゴリー設定とカテゴリークーポン」についての考察でした。