ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
【これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!】
チラシ商品選抜 <”ハネる”商品とは何か?>

【2023/05/08 追記】

実際の運用を繰り返した結果、単品レベルで”ハネる”を捕まえようとする事は、商品の入れ替わり等の要因から実務上難が多い事が分かって来ました。

以下分離線以降の文章は原文のまま残しておきますが、現状”ハネる”については小分類レベルでの予測による運用を行っています。

興味がある方は、やや難解ですが 近未来のマーケット構造を予測するコツ を併せて御覧ください。

チラシ/webチラシは具体的利用メリットをグラフィカルに提示しつつ、未利用者に対してもリーチ可能な稀有なメディアです。

品揃え政策と併せて、未利用者に「おっ!あの店にこの商品あったんだ!だったら行ってみよ!」と気づいてもらう事にも利用できます。

利用メリットに当然  ”価格” は含まれますが、特に二番手以降の企業についてはそれだけでは無く、極力多くの人にとっての利用メリットとなる商品、しかもそれが極力重複せず様々な価値観に響く商品が掲載されている事が、顧客のお店を利用するメリットへの気づき ⇨ 集客 の鍵となります(売れ筋の商品ばかり、他店と同じような商品ばかりでは駄目という事です)。

チラシ対象商品の選抜方法については、以前にこれからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!掲載したエンド陳列同様、分類の特性や取扱に応じた任意の期間、任意の店舗で任意の商品群(分類指定等)をTapir_MKで集計したものを「採用順」昇順に並び替え、「レコメンド」が付いているものの中から、プロの都合や感性のままに折々に応じた商品を選抜してくれば、考え方は簡単ですし、ほぼ間違いない結果をもたらしてくれる筈ですが。。。

例)「菓子」の2019年10月チラシ商品レコメンド例(594単品)。
(表をクリックで開きます)

菓子_チラシ商品レコメンド

「毎回同じような商品が採用順上位に並ぶ。」(これは当然です)、「選べない。」、「”ハネる”商品をレコメンドして欲しい。」のように、その中でも更にレコメンドが欲しいと言ったご意見を多く頂く事から、この度真剣に考えてみる事にしました。

以下BiZOOPeに標準で実装された機能では無く、Tapir_MKで5回集計を行い、それらをEXCELで加工して考察しています。

予測と集計のレギュレーション

目的:バイヤーがより当たりそうなチラシ商材を簡単に抽出できるようにする。

   (将来的にバッチによる画一的な処理も想定。も、想定計算量凄いんで別料金設定にしないと無理だなw)


期間:バイヤーが分かり易いよう月単位での集計としておく(実務サイクルに合わせた今後の研究課題)。

   当然月では集計期間が十分で無い商品も存在するが、何の足がかりも無い状態よりはマシと見做す。


店舗:バイヤー実務を考え、ざっくりと全店を集計対象とする。


商品バイヤー実務を考え、担当部門単位で抽出して来る事を考える。

   (今回は大分類=「一般食品」では大きすぎると考え中分類=「菓子」としてみた。)

   商品の取扱有無を考え、直近月で実績のある単品をキーとし、考察を進めて行く。


チラシ対象商品の定義:従来通りより多くの人にとっての 来店目的(1stレコメンド)、

           もしくは 売場の利用目的(2ndレコメンド

           となる商品をチラシ対象商品と見做す。


”ハネる”の定義※1:時系列に伴い顧客の利用目的変化が生じる事。

              中でもより強い利用動機方向へと変化する事。


              2ndレコメンド(売場の利用目的)→1stレコメンド(来店動機)

              レコメンド無し→1stレコメンド(来店動機)

              レコメンド無し→2ndレコメンド(売場の利用目的)


予測・仮説※2:前年前月→前年当月の顧客の利用目的(レコメンド)の変化が、

          当年前月→当年当月と同じである場合、

          当年来月の利用目的は前年来月と一致する。


          前年前月→前年当月の顧客の利用目的(レコメンド)の変化が、

          当年前月→当年当月と異なる場合、

          当年来月の利用目的は当年当月の延長にある。


※1.レコメンドの算出原理についてはこちらをご覧ください。
ID-POSならではの本項におけるミソです。”ハネる”を利用目的の月変化と定義し、利用ID数という量的変化からだけで無く、クラスターデンドログラム上の位置づけ、クラスターデンドログラムの形の変化という質的変化からも捉えています。
これにより、閾値やパラメータ設定に頭を悩ます事無く、バイヤーが単純明快に”ハネる”を認識できます。
利用行動の変化=顧客の心理的変化をベースに当てに行っている為、顧客に”響く”チラシ商品選抜になる筈です。


※2.本項はこれからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!中の1項なので、予測に用いる材料はID-POSのみです。
対象の性質にもよりますが、時に予測は単純であった方が望ましいと言えます。予測については巻末に「予測の本質」という戯言も掲載しておりますので、興味があればお目通し下さい。

以上を踏まえ、以下のように集計を行いました。

利用メニューBiZOOPeTapir_MKテンポラリーTapirにおいても利用可能なメニュー)

期間:2018年   9月(前年前月) 2019年   9月(当年前月)
   2018年10月(前年当月) 2019年10月(当年当月)
   2018年11月(前年来月) をそれぞれ集計

店舗:静岡地区の複数店舗(これを”全店”と見做している)

商品:デモデータから「一般食品 > 菓子 」配下の単品
    集計後EXCEL上にて当年当月の商品をキーに各月のデータをVLOOKUP/SUMIFで結合

表示:一部の列を追加/削除/非表示しています。

菓子(単品)のクラスター分析結果

1stレコメンド:その月内における顧客の強い利用目的 ≒ 来店動機

2ndレコメンドその月内における顧客にとっての売場の代表的利用目的

当年来月予想

前年同期間における利用目的としての変遷(図の黄色網掛け部分)が、当年同期間における利用目的としての変遷(図の色網掛け部分)と一致する場合、来月における予想利用目的は、単純に前年のものと一致するであろうと見做しています(前年〜当年にかけて、顧客の価値観、顧客にとっての商品の利用メリット認識に変化なし)。

また一致しない場合、前年と当年では顧客の利用目的としての認識、位置づけが変化して来ていると捉え、利用目的を単純に直近月の延長に位置づけています(前年〜当年にかけて顧客の価値観、顧客にとっての商品の利用メリット認識に変化あり。直近における顧客の認識が最も信用できる≒来月を当月の延長と位置づける

チラシは「来店客数」の伸びを狙ったものですので、まずは当年来月予想のレコメンドが 1st > 2nd の順で採用が優先されます。

(表をクリックで開きます)

菓子_ハネるチラシ商品レコメンド

【ハネる?】
前出レギュレーションに記載の通り、当年来月における予想レコメンドが、当年当月における予想レコメンドを上回る(利用目的度が上がる)場合、且つそれが前年来月から実績が立ち始めた新商品では無い場合に「ハネる」と予想しています。
これはある意味顧客心理の ”ハネ” とも言えます。
表では19商品が該当しており、11月にはざっと「のど飴」「チョコレート系」「ラーメン丸シリーズ」等がハネそうです。

【新商品?】
当年当月よりも過去に実績が立っていない商品については”ハネる”とは違うだろ? とは言えチラシには掲載したい特性と言えるかな?と考え「新商品」とレコメンドしています。
採用後すぐに顧客にとっての利用目的を形成した商品と言え、表では27商品が該当しています。

【鉄板?】
ハネる19商品+新商品27商品=46商品では、一月の毎週のチラシ掲載には数的に心許ない場合もあるだろう/適切な判定と思えないケースも出るだろうと考え、前年来月と当年前月〜当年来月にレコメンドが立っている商品 ≒ 通年通して顧客の利用目的化している商品で、少なくとも当年来月のレコメンドが、当年当月から落ちていない商品を、選んで間違いの無い「鉄板」とレコメンドしています。
表では271商品が該当していますが、内「ハネる」にも該当している商品は「龍角散ののどすっきり飴」だけです。

チラシ採用順
主に「鉄板」商品を採用にするにあたって、中でも何を優先的に採用すべきか?の目安とする為、改めてチラシ用に採用順を振り直しています。
今回は「 当年来月予想レコメンド > ハネる? > 新商品? > 鉄板? > 当年当月採用順 」の優先度で振り直してみました。

来店動機足り得るか?

さてここ迄のレコメンドで大分商品も絞られましたから、後はバイヤーの感性のままに各週毎のチラシ商品を選抜して頂ければ良いわけなんですが、特に「鉄板」レコメンドオンリーの商品に付き纏い勝ちなのが「来店動機足り得るのか?」という疑問です。

例えば「もやし」はスーパーでもドラッグでも、「鉄板」の最上位にレコメンドされ勝ちな商品なのですが、チラシに載せた所で来店動機に結び付いていないように思われるケースが多々あります。

コモディティー過ぎるものや、単価が安すぎるものは来店動機足り得ず、チラシ掲載には相応しくないのでは無いか?と幾分研究した事もあったのですが、「もやし」もチラシの売価設定が「1円」であったとするならば、強烈な来店動機になったりもする訳です。

”ハネ”を顧客心理の変化と捉えたように「来店動機足り得るか否か?」も商品特性と言うよりは、顧客が感じる周辺競合との相対的売価インパクトに依拠するもののようです。

よってやはり最後は「想定し得る売価設定において」「来店動機足り得るか?」というバイヤーの感性からチラシ商品を選抜して頂くのが良さそうです。

【戯言】予測の本質

書いている中で一寸思うところがあったので、不躾ながら以下「戯言」かまさせて頂きます。

予測と確率と自動化

身近で代表的、故に最も進んでいると目される予測は天気予報でしょう。

天気予報では降水確率が何%かを予測します。


みなさんよく「100%正確で無ければ意味が無い」とおっしゃいますが、他の多くの予測でも実際に予測の裏にあるのは確率です。

天気予報ですら「30%の確率で雨が降る。」としか言いません。


降水確率30%で傘を持つか持たないかは個々人の「意思決定」です。

「降水確率30%以上であれば、太陽が燦々と照っていようが傘を持たせる」ようにするのが「自動化」です。

命やお金に関わる重大な事項程その 閾値 は低く設定されます(確率が低くても「起こる」事を前提に自動化します)。


天気予報では降水確率<5%の場合、降水確率=0%として扱われます。

これも 閾値 の問題です。

よって降水確率0%でも雨が降る事はあります。


それでも大事なのは「役に立つ(立っている)」という事です。

何を当てたいのか? = 定義

天気予報であれば降水確率を予測しますが、そもそもここで定義されている「降水」とは何でしょうか?

ここが無いのに「当てて欲しい!」と言う人多すぎますorz


天気予報では「1時間内に深さが1mm以上となる量の雨または雪が降る」事を降水と定義しているようですが、深さの末尾は切り捨てなので、ここにも 閾値 の影響はあり、降水確率0%でも雨が降る事はあります。


「ハネる商品を当てて欲しい!」の「ハネる商品」とは全くの新製品の事なのか?tweet等で ”バズる” 既存商品の事なのか?季節変動等の要因によるものなのか?それらはどのような数字から掴み、どのような閾値によって制御されるものなのか?を定義する必要があります。


もう一つは「場所」です。

ある一つの観測地点から得られた結果を拡大解釈するからです。

よって当然降水確率0%でも雨が降る事はあります。


「ハネる」商品の場合でも本来は「A店で起こったなら全店で起こり得る」のか?「静岡地区でこの傾向ならばA店もその傾向だ」なのか?といった定義が必要となります。

定義と言うと厳密に聞こえますが、ある意味「割り切り」の事です。

当てられるだけの”材料”はあるのか?

統計にしろAIにしろ料理に例えるならば「与えられた材料で、最善のレシピを作る」のが仕事です。

多くのAIはこれを飽くなき組み合わせの繰り返し=学習によって達成します。

最善の配合を導き出す事に関してAIは名手です。


クリームシチューを作るとして、材料に牛乳やローリエが含まれていないならば、それなりの最善を導き出します。

含まれていない材料をロジック自ら買い出しに行くなんて言う事を期待してはいけません(現実問題からすればレシピサイト等からデータを引っ張って来るといったロジックは考えられます)。


天気予報であれば降水量、気圧、気温、湿度、風向、風速といったような材料が過去何年間分にも渡って用意されています(全ての予測は”過去データ”に依拠しています)。

自然現象等の再現性が高い事象の場合、過去データは「あればある程」予測の精度が上がります。


再現性が高い自然現象と異なり、商品関連の予測で難しい点は、「商品そのものが移り変わって行ってしまう」為、降水確率30%で言うところの「10回に3回」が算出できるだけの10回分の過去、材料ですら得難い点、よしんば10年存在し続けた商品だったとしても、それを取り巻く環境そのものが変化してしまう(まさかカールやピックアップが無くなってしまうとはッ!)事により、再現性が極めて期待薄な点です。


言ってしまえば、昨年データが存在するものに関しては「昨年起こった事は今年も起こる(100%)」、昨年データが存在しないものに関しては「直近の傾向がそのまま続く(100%)」と見做すしか無いような世界です。


「類似した商品には同じような事が起こる(100%)」ともしたい所ですが、今度は”類似”の定義と、結局は環境変化という問題に突き当たります。

であるならば少なくとも”環境”なるものを予測の材料に加えたい所ですが、それが何なのか?どこまで必要か?そもそも手に入るのか?がよく分からないのです(例えばTVの視聴率一つをとっても、全国/ローカル、放映時間、発信者のタレントパワー等々と、考えて行くと難しいものです。また前年流行った「タピる」という言葉が、翌年には死語になっているように、顧客心理とはあっという間に移ろい行くものです)。


大事なのは「役に立つ」という事です。

手に入る範囲の材料で最善を尽くす、その最善を上手く利用するというのが予測の本質になります。


※.例えとして料理を出してみましたが、蛇足ながらこれは以下の二点において結構困難です。

 1)炒めてから煮る、アクを取る、追い鰹、落し蓋をする といった調理法によって変わる影響の点

 2)「◯%の人が美味しいと感じた」のように正解データを迅速、大量、容易に取得できない点

前提条件(思い込み)や運用を見直すのも一つの手(特にリードタイム)

どうしても「最善を尽くす」にばかり目が行ってしまい勝ちですが、「上手く利用する」事はそれにも増して重要です。

それがチェーンのメリットとは言え、店舗数に対するバイヤー数の比例のしなさ具合は気の毒な限りで、上手く利用できない理由として、どこもが昔から「忙しい、忙しい」「人が居ない、人が居ない」「難しい、難しい」と言い続けているかのように見受けられます。

失礼ながら人を雇ってみたら如何でしょうか?


中でもリードタイムが短ければ短い程良い(明日の天気より1時間後の天気の方が/来週の天気より今週の天気の方が当たる)というのは予測における真実で、予測に充分な材料を得られない事が自明な小売業は、特にここに着目すべきです。


webチラシをはじめとした各方面での技術の進歩もありますし、「今までと同じような紙面で無くてはならない」という従来からの印刷物のクオリティー、入稿期限に由来する前提条件も見直されるべきかも?とも考えます。


前提条件や運用を検討する事も無いままに、只ひたすらに「当たらない」と嘆き続けるのも何か違う気がしますね。


戯言はここまでにしときます。

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