ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
ID−POSでドミナント戦略?

ドラッグストアのようにドミナントの密度の高い業態になると、複数店舗を掛け持ちで利用する顧客の割合も多くなります(カニバリゼーション)

そうなると競合の大型店がドンと出店して来た際に、当然複数店舗が影響を受ける事となりますが、逆に言えば複数店舗での一斉チラシやクーポン等のキャンペーン、品揃え差異を用いる事で、競合の大型店を少しづつ削って行き、最終的にジリ貧に追い込むという事も考えられる訳です(大型店程ドミナントの密度を高く出来ず、標準化にも抗い難い筈ですから)。

「距離では無く、実際の店舗併買という視点からドミナントを可視化出来ないか?」とのお問い合わせを受けやってみます。

但し、今回分析に使うのはBiZOOPeでは無く、卸・メーカー向けID-POS提案ツールテンポラリーTapirになります。

※. テンポラリーTapir のジャーナルの商品コードカラムを店舗コードに置換(サマリー不要)し、商品名称データを実質店舗マスタにしてしまい分析に掛けるという離れ技で実現しています(部門やカテゴリーのクラスター分析も同様の方法で実現可能)。

今回分析方法のメリット・デメリット

店舗併買を基軸に、店舗をカニバリゼーション境界である広域ドミナント、カニバリゼーションしている局所ドミナントの2つのドミナントグループに分けてみます。

実際にやってみて分かったメリット、デメリットは以下の通りです。

今回の方法に関する計算上の理屈については(単品を例とした解説ではありますが)Tapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧ください。尚対象が店舗同士である為、所謂「同時併買」は計算上発生しません。

メリット

実際の併買行動に基づいている為、橋によるドミナントの断絶、バイパスによるドミナントの拡大等があった場合でも、それが自然と加味される形となります。

地図ソフト要らずというのもメリットでしょうか?但しあくまで本分析は「ドミナント分析」であって、「商圏分析」ではありません。

メリット

やはり併買行動に基づいている為、

①他店との併買が一切発生し無い店舗同士(例えば利尻島店と石垣島店)が、共に併買率0%で同じドミナントグループに振り分けられるという事が起こり得ます。

②旅先での利用等の影響があります(利尻島店利用者が旅行時に石垣島店を利用し、それ以外の顧客が一切の他店併買を行わなかったとした場合、計算上は利尻島店と石垣島店が最も”近い”ドミナントを形成していると判定される)。店舗展開が極めて疎で①のケースのように併買率0%が頻発し勝ちなケース程、たった一人の併買が ”近い/遠い” の判定に影響を及ぼします。特にドミナント間の「並び順」=関連順に乱れを生じさせているように見受けられました。

①のようなケースはドミナントでは無く「孤立店グループ」と解釈して頂ければ良いかと思います。

②のケースについても、チラシエリアや品揃え標準化にも寄与するかと思い今回は全店で集計してみましたが、実際にはある程度地域を絞って分析する事の方が多いでしょうし、小売業にお勤めの方であればそれなりに解釈可能な結果になっているかと思われます。

分析結果

413店舗が52の広域ドミナント、132の局所ドミナントに別れ以下のようになりました(一部抜粋)。

店舗名は改竄してありますが、少なくとも店舗名中の「葵」の文字「駿河」の文字の部分には、元データにおいても同じように共通の都市名(隣接する二市)が振られていましたので、それなりの解析精度では無いかと思われます。

ドミナント広域40のユニーク利用者数46,828人に対して、配下の店舗の利用者数の単純和が77,672人ですので、30,844人、65.87%の顧客が広域ドミナント内で複数店舗を利用している事が分かります。

同じくドミナント広域40_局所106の利用者数20,202人に対して、配下の店舗の利用者数の単純和が25,520人ですので、5,318人、26.32%の顧客が局所ドミナント内で複数店舗を利用している事が分かります。

「レコメンド」が付いている店舗がドミナント内における重点店舗、中でもレコメンド=1stは広域ドミナントにおける旗艦店と捉えられます。

例えば図の葵大岩店の近隣に競合大型店が出店して来た場合、戦略的には「分けて/絞り込む」ランチェスター戦略を用います。

重点店舗を手厚く守りつつ、ドミナント広域40_局所107で、もしくは「並び順」的に葵大岩店と近い広域40_局所108も巻き込み、このドミナントに絞り込んで徹底抗戦を続ける事で、相手をジリ貧に追い込む戦闘仕掛けます

管理を容易にする為に、広域ドミナント単位で手を打つ(この場合広域40)と割り切ってしまっても良いかもしれません。

これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう! にも書いたようなID-POSによるチラシクーポンと言った販促も大事ですが、それだけで戦い続ける事は出来ませんし、いづれ顧客にも飽きられてしまいます

元も子もありませんが、やはり各店の根本的な力、MD力で劣っていては競合には勝てません。

売れなくとも来店動機となっているような、競合には無い品揃えによって来店機会を失わない。

・一度来店して頂いたからには極力買い逃しを起こさせないゴンドラレイアウト棚割

等、競合の襲来は限られたドミナントという実験場の中で、店そのものの力を否応なく練り直す事の出来る絶好の機会と捉える事ができます。

【おまけ】ドミナントを年代別で見てみる

折角なので年代別でも見てみると、ドミナント広域40は30代〜60代の割合が平均よりも多く、ドミナント広域41は〜50代の割合が平均よりも多く、双方とも特に40代の割合が多い事が分かります。

とは言えこれは各局所ドミナントの割合がミックスされたもので、ドミナント広域40_局所106と107では広域では少なかった20代の割合が、ドミナント広域40_局所108では70歳以上の割合が平均より多くなっている事が分かります。

当然の事ながら絞り込んだ方が周辺居住地特性はより顕著に出ると言えます。

余程極端な特性で無い限り、標準化を旨とするチェーンストアにとっては「だから何なの?」という話ではあるのですが「おまけ」という事でご容赦下さい。

2023/11/22追記

先般本データをお問い合わせ頂いたお客さまにお披露目したところ「凄い!合ってる!」「バイヤーの価格政策に使って欲しい。」「ホールディング全体でこの分析を掛ければ、スーパー、ホームセンター、ドラッグストアの3業態で競合に対する包囲網を築けるかも?」とご評価頂きました。