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売場効率とID-POS

前回重点カテゴリーについて書いたところ、「売場効率について書いて欲しい」とのリクエストを頂きました

やっぱみなさん販促よりか、MDっぽいテーマの方がお好きなんですね。

「販促の前に、何はともあれ良い店あってこそ!」良いですねぇ〜♪

以前一度「”頻度”の無い世界」という記事でも簡単に取り上げたテーマではありますが、今一度深掘りして考えてみたいと思います。

1.3つのレイヤー:品揃え、ディスプレイ、在庫

「店舗全体が利益を生み出す量とスピードを最大化する」のが売場効率す。

利益の三要素は売上、在庫、作業経費ですが、売上の無い在庫に意味は無く、在庫の無い作業に意味は無い為、その従属関係は

売上 > 在庫 > 作業

となります。

よって売上をベースに限られた売場スペースを割振り、在庫>作業を従属させる事で、最大の売り場効率を得る事ができます。

スペース割振りの最少単位が、SKUとそのフェイシングです。

売場のスペースを規定するものには以下3つのレイヤーがありますが、ID-POSのホームページですので、これを従来のように売り手視点からだけで無く、買い手視点を交えながら見て行きたいと思います。

品揃え レイヤー

スペースを規定するはじまりの単位であり、売れている/いないに関わらず、品揃えが増える程多くのスペースを要します。

買い手視点では品揃えが豊富だと嬉しいものですが、限度を越えれば逆に見つけ難く、選び難くなります。

一般に利用者が多い程、その好みは多岐に渡りますので、より多くの品揃えが必要となります(利用ID数に比例)。

売り手視点では、品揃えは作業種に比例するので、品揃えが増える程作業量が増え、欠品のリスクも高まります

ディスプレイ レイヤー

要は”看板”の大きさです。

未利用の買い手に「ココにあるよ!ウチの店にもあるよ!」と認識してもらう為、利用する買い手が「見つけやすく」する為のプレゼンテーション層です。

”看板”なので頻度に関わらず、基本はマーケットサイズ ≒ 利用ID数に比例します。

買い手一人が一回買う事で、客点数分の陳列が剥がされて行く為、”看板”効果を維持するバッファとして、フェイシングが行われます。

フェイシングは在庫の一翼でもある為、副次的効果として売り手の作業頻度を減らし(一度の作業点数は増えます)、欠品のリスクを下げる事にも繋がります。

在庫 レイヤー

このレイヤーからは買い手には”見えない”世界売場効率の”売場”スペースを越える世界なります。

ディスプレイに「奥行き」を持たせる事で、在庫を買上げ点数に一致させる事ができれば、利益的に望ましいバランスとなります。

「奥行き」からはみ出す頻度の商品については、はみ出す「奥行き」分をバックルームに持たせ、品出し作業を行います。

更にはみ出す/バックルームが持て無い商品(店舗)については発注・品出し作業を行います。

リードタイムの関係上、それでも追いつかないものに関しては、DCを持つ事を検討します。

結局、在庫で耐えるか/作業頻度で耐えるかという話ですが、いづれも買い手から”見える”ディスプレイを維持する為に従属するものであり、前出し作業は(毎日?)発生します。

品揃えにせよ、ディスプレイにせよ、在庫にせよ「何の為に、誰の為にそうするのか?」という認識が、まず大切です。

2.在庫作業とID-POSの関係

在庫と作業の関係

買い手に対するディスプレイを維持する為に「在庫で耐えるか/作業頻度で耐えるか」と書きましたが、これらは表裏一体、在庫を増やせば作業減らす事ができ、作業を増やせば在庫を減らす事ができるという反比例の関係(−1)を持っています(但し、在庫の存在あってこその作業なので、作業は在庫に対して従属的です)。

これは以下のような比例/反比例の関係を持つ各項からなる方程式で表す事ができます。

在庫=(SKU数 ✕ フェイシング数) ✕奥行き
−1   ∝               ∝−1   
作業=(作業種 ✕ 作業点数 )               ✕作業頻度

SKU数を増やせば作業種が増え、フェイシングを増やせばSKUに対する一度の作業点数が増えます。

これは上式括弧内が概ね一回分の「作業ユニット」である事を意味し、式全体では「作業ユニット」奥行きを増やして行けば、従属する作業頻度減らせる事を意味しています。

また、前項のレイヤーに則れば、「作業ユニット」はディスプレイに相当します

ID-POSとの関係

買い上げ点数 ∝ 在庫を売場効率の理想とすれば、在庫にID-POSの買上げ点数方程式を突合する事で、品揃え、ディスプレイ、在庫のそれぞれに、買い手主導の新たな理解を見いだせる筈です。

ID-POSの革命的なポイントの一つは、従来売り手視点で曖昧にしか語られて来なかった文脈買い手視点を突合し、解釈し直す事ができる点にあります。

さて、在庫も作業も畢竟売上の為にあり、売上に対して従属的なものです。

売上も畢竟買い手がもたらすものである事から、在庫も作業も、買い手に対して従属的であるべきす。

そこで、ID-POSの買上げ点数方程式を加えてみると以下のようになります。

点数=(ID数 ✕客点数)                           ✕ID回数
  ∝            ∝
在庫=(SKU数 ✕ フェイシング数) ✕奥行き
−1   ∝               ∝−1   
作業=(作業種 ✕ 作業点数 )               ✕作業頻度

ID数も客点数もID回数も、買い手がもたらすものなので、在庫作業の関係のように「増やせば/減らせば」と売り手が意図してコントロールできるものではありません(寧ろ全指標が”増やしたい”指標でしかありません)。

例えば、敢えて在庫の奥行き=1としてしまえば、作業頻度はID回数に従属せざるを得なくなり、作業頻度∝ID回数となります。

この関係を主に在庫の側面から、イメージし易いよう図示したものが下図になります。

3.売場効率において割り振るべき”スペース”とは?

買い手からフェイスの欠落は見えても、棚の奥行きもバックルームもDCも見えません。

これらは魅力的な舞台=ディスプレイを維持する為の、観客からは見えない舞台裏/舞台装置です。

また、奥行きに在庫があろうと無かろうと、什器が専有する奥行きは、回転によらず一定です。

その為フロアレイアウト図で明白なように、売場スペースの割振りというのは、奥行き/バックルーム、ましてやDCを除いた”面”の割振りとなります。

床POWERによるフロアレイアウト図

”面”を図示したものが下図で、スペースの割振りとは、”体積”である在庫の割振りでは無く、ID数✕客点数に比例する”面”、ディスプレイ面積の割振りである事が分かります。

正に”頻度”の無い世界、奥行きの無い世界であり、頻度(ID回数)が分かるID-POSだからこそ可能なものと言えます。

4.売場へのスペース割振り

ここまで理路整然と説明して来たように見えますが、全体的に=よりも、∝(比例)が連発されている事に気づかれたでしょうか?

売場面積、什器の奥行き、バックルームの有無等買い手をも屈服させざるを得ない制約条件の存在により、(所謂スペース”アロケーション”なんで当然とは言え)最終的には既存の枠内での「構成比による分配」という何処かモヤッとした形に決着させざるを得ないからです。

まあ、制約条件はそもそも”存在するもの”ですし、それ無しでは理屈野放図に発散して行ってしまうので、コントロール上、寧ろ必須のものったりします。

理屈上ディスプレイを表す「ID数✕客点数」にしても、額面のまま捉えれば「売場利用者一人あたり1SKUの品揃え ✕ それの一回あたりの買上点数」ですので、構成比で相対化しない限り、余りに過剰な理論値です。

スペース構成比

さて、スペース = ID数 ✕ 客点数 を構成比化したスペース構成比で、各売場への面積割振りを行ったのが下図です。

制約条件を250坪とし、点数(在庫)比例で割り振った場合と、スペース構成比で割り振った場合を示してみました。

点数(在庫)比例では一般食品66坪に対し、くすり7坪という割振りが、スペース構成比では一般食品56坪に対し、くすり10坪という割振りになっており、特に回転の低い売場の品揃えディスプレイをきっちり確保する傾向となっている事が分かります。

品揃え構成比(ID数構成比)

「品揃えする」と決めたなら、回転に関わらずその瞬間1SKU=1フェーススタートですので、品揃えは単純に各売場の利用ID数に比例するものと捉えられます。

利用ID数を構成比化※した品揃え構成比で、各売場へのSKUの割振りを行ったのが下図です。

制約条件を20,000SKUとし、点数(在庫)比例で割り振った場合と、品揃え構成比で割り振った場合を示してみました。

点数(在庫)比例では一般食品5,242SKUに対し、くすり534SKUという割振りが、品揃え構成比では一般食品3,248SKUに対し、くすり1,597SKUという割振りになっており、やはり回転の低い売場の品揃えをきっちり確保する傾向となっている事が分かります。

※.売場間でID数は重複します(併買)ので、通常、ID数を構成比化した数字を用いる事は無く、「利用者率」を用います。
  その為、ここでは敢えてイレギュラーに作られた数字として、品揃え構成比、スペース構成比と言った造語を用います。

そもそも各売場は、店の利益や買い手の利用に役立てる為にラインナップした訳で、「回転が遅い売場は品揃え/面積は少なくてもいい」という訳ではありません(売場は在庫の為に存在する訳では無い)。

その為売り場から、売り手の都合であるバックルームとその作業に関わる指標 ≒ 回転を一旦廃し、各売り場が尽くすべき買い手一人の価値を同等と見做し、それを構成比で割り振る事が、店舗として最も生産的であるというのが基本の考えとなります。

この基本と制約条件に対して、奥行き:作業頻度のバランスを従属させる事が売り手の技術であり、利益の最大化に繋がります。

同様に、単価の高い品揃えを増やし、その売場を広げれば売上が上がるというものでもありません。

店舗全体としてまずは、如何に来店/利用して貰えるバランスを作るか?が売場効率です。

強い来店動機/弱い来店動機の、頻度ミックス/単価ミックスにより来店・利用を途切れさせず、ファン化を図る事がスーパーマーケット、ドラッグストアのビジネスモデルだったのでは無いでしょうか?

これが「スーパーマーケットの雑貨売場はなぜ必要?」「ドラッグストアが食品特化しないのは?」といった疑問に対する答えになります。

5.既知の課題

商品サイズ

商品サイズを考慮に入れていません。

集計期間

在庫の方程式が、集計期間によらない静的場面の切り取りである理論式であるのに対して、それを比例させる買上点数方程式は、実績値で構成されている為、集計期間の長さに応じてID数が増加して行きます。

回転の異なる売場のある中で、利用ID数がある程度出揃い、ID数構成比が落ち着くのを待ちたい事から、ある程度の長さ※の集計期間が必要です。

その為、本稿では集計期間として一般に落ち着くと言われる13週を採用していますが、「これがベスト」だとは言い切れません。

※.こと点数構成比については1日と1週間、13週の間で1%を越えるような大きなブレは殆んど見られません。
  客点数が比較的落ち着く事から、ID数単体、ID回数単体の構成比が短期では落ち着かなくとも、ID数✕ID回数=客数の構成比が短期でも落ち着く為と考えられます。

類似利用メリットを持つSKUの重複と来店動機/利用目的

品揃えはSKUの数を揃えれば良いというものではありません。

売り場には買い手にとって利用メリットの重複した複数の商品がありますし、来店/利用の動機付けとなっている商品、そうで無い商品があります。

また、売り場に割り振ったSKU、ディスプレイは、カテゴリー > SKU へと割り振って行かなくてはなりません。

今回は理解を容易にする為、単純に売場の構成比で割振りを行いましたが、実際にはTapir_MKのクラスターとその構成比、採用順を用いた割振りが使えると考えています。

実証実験

まず実証実験を行えるのが、効果検証の事を考えれば改装時のみと極めて限定的です。

よしんば機会があったとして、店舗全体の利益に関わるような事、おいそれとは変えられないような事を果たして実験させてもらえるでしょうか?

13週集計/26週集計どちらが良いのか?構成比による単純割振りとクラスターを用いた割振りはどちらが良いのか?比較実験ともなれば尚更です。

6.関連ページ

【簡易版】

”頻度”の無い世界


スペース割当

フロアレイアウト

ゴンドラレイアウト

エンド陳列

 棚割(プラノグラム)

チラシ商品紙面配置


【SKU割当】

基本”頻度”の無い世界にしか記述がありませんが、

近未来のマーケット構造を予測するコツ(主に最終項<まとめ>)及び、書庫にある「販促商品割振テンプレート」が基本的なロジックの考え方になります。

スペース割振りについても同様のロジックにて進めて行こうと考えています。


【基本理論】

Tapir_MKによるマーケティングの教科書