ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
「ライフスタイル」に迫る 〜 顧客も色々

「併買分析を使って、特定商品群を購入している顧客のライフスタイルが知りたい。」というお問い合わせを頂きました。

【研究】個人の来店動機(カテゴリー/単品) でも書いたように、人というのは十人十色です。それが特定商品を購入しているという縛りだけで、顧客間に共通するライフスタイルなんて見いだせるんでしょうか?調べてみました(ちょっと長くなりますw)。

■ 併買分析

私事、丁度ペヤングソース焼きそばを食べていたので、特定商品群=「カップ焼きそば」を買っている人を対象に、併買分析を使って全商品の中で特異に買われている商品を抽出してみました。

特異に買われている=一般的な顧客(全顧客)の購買率に対して、「カップ焼きそば(自)」の顧客の購買率(併買率)が何倍か?を示すLiftが1.5倍以上、極一部の人の特異さを避ける為、併買率を1%以上と定義してみました(いづれも図の「相性分析」中の数値)

45品の商品が出力されましたが、掲載しきれない為、併買Lift降順で10件の商品を掲載させて頂きます。

結論から言いますと、全商品からサルベージしたにも関わらず、45品は全て「カップ麺」カテゴリーの商品でした(毛色違いとして「カレーメシ」が一品ありましたが、「袋麺」すら出て来ませんでした)

要はその他の商品については、一般の顧客と比較した際に、何ら特異では無い買い物(ライフスタイル)ですよという事です。

カップ麺計で見ると併買率75.20%、Liftも2.64ですので、「カップ焼きそば」を好む人のライフスタイルは「カップ麺ライフ」と言えそうですが、どうでしょうか?期待してたのと違いますか?w

ではもう少し深掘りしてみましょう。

商品名から共通する文字列を抜き出してみると、以下のようになりました。


うどん×4
カレー×3
カレーうどん×2
スーパーカップ×2
金ちゃん亭ぶっかけうどん×2


「カップ焼きそばを買う人はカップ麺が好き、中でもカップうどんやカレー味が大好き」と言えそうですが、どうでしょうか?

でも一寸待って下さい。例えばLiftトップの商品ですが、それを好むのはカップ焼きそばを買う人の1.30%の人に過ぎません。

これ「秘密のケンミンSHOW」と同じで、県民の1.30%の人しか好まなかったとしても、全国平均が0.20%であったなら、実に6.02倍もの人が好むのですから「〇〇県民は〇〇が大好き」となる訳です。

店頭等マスでやる分には問題無いでしょうが、クーポンみたいに個別にやってしまうとケンミンSHOWと同じで「?」となる人の割合の方が当然多いので、つまらないですがライフスタイル的にはカップ麺を好む人が多い程度の認識に留めておいた方が良さそうです。個別政策に適用するならばカテゴリークーポンのように守備範囲の広さが必要となります。

【余談BiZOOPeの併買分析で商品が表示されない

冒頭の質問者さんに併せて問い合わせ頂いたのが掲題の質問です。

BiZOOPeの併買分析(Anemonefish)メニューの条件入力画面最下部にあるオプションは、デフォルトで図のように指定されています。

これはかつての「ID-POS協働研究フォーラム」において定めた特異性の条件に依拠しており、利用者の1%以上が併買している ∧ その利用は一般利用率の2倍以上である  という事を意味しています。

よって、商品が表示されないという事はこれに該当する有意な商品が存在しなかったと捉えて下さい。

この基準を下げる事で商品は表示されるようになりますが、「ID-POS協働研究フォーラム」では「3倍超えないと」という意見もあった位ですので、有意性は落ちているものとお考え下さい。

個人で見てみる

次はカップ焼きそばを買うのはどんな人が多いのか?個人の側面から見て行きましょう。

折角ならという事で、安定して来店しているFrequencyランク=F1の人、年代・性別の登録がある人の中で、カップ焼きそばの年間購入金額が高い=カップ焼きそばが来店動機の一つとなっていそうな顧客を抜き出して来ました。

これもやはり膨大な件数ですので、全てのランク、年代、性別(20歳未満は42位が最上位なので除外)が一通り網羅されたカップ焼きそば年間購入金額トップ12人迄を掲載してみます。※.ランクは店舗利用に基づくもの、数値はカップ焼きそばに関する数値です。

こうなると「カップ焼きそば大好き人間」大集合!ですから、何がしかの共通項、ライフスタイルが見えて来るかもしれません。

Aさんは年間438個も何らかのカップ焼きそばを買っています。Bさんは年間218回も店に来て何らかのカップ焼きそばを買っています。

凄いですね!顧客って本当に色々ですね。

ランクはMonetaryランク=M2が多く、年代は特に若い方が/お年寄の方がという傾向は無さそうですが、性別では男性が多いですね。

そうなるとライフスタイルと迄は言わずとも、ターゲットとしては「Monetaryランク=M2の成人男性」となりますが、これではAさん、Bさん、Cさんのトップ3がターゲットから漏れてしまいます。

結局のところ「カップ焼きそばが大好き」な嗜好にランクも年代も性別も関係ない訳で、これらの顧客は「カップ焼きそばと接点がある」というただ一点、一つの側面でのみ類型化できると考えるべきでしょう。

それにしてもAさん、Bさん、Cさん気になりますね。

この三人の「カップ焼きそばと接点があ」以外のライフスタイルは類型化できそうでしょうか?

ちょっと買い物内容を覗かせてもらいましょう。

Aさん、Bさん、Cさん

来店動機と目される年間投下金額トップ10商品に加え、併買分析で導き出された「カップ麺ライフ」に該当するのか?の検証の為カップ麺の利用と、三名共通の利用があればそれを追記してみました。

その内年間の全明細中3人に共通した商品に水色の網掛け、3人の内2人に共通した商品にその他の網掛けを施しています。

カップ焼きそばで3人共が買っている商品はありませんでしたが、奇しくも3人が共通して好むカップ焼きそばブランドは「マルちゃんごつ盛り」シリーズで、3人ともここに突出した出費を行っています。

また、「にがり仕込み絹とうふ」(Bさんの利用は年間1回ですが)、「マルちゃんごつ盛り ワンタン醤油ラーメン」については嗜好の共通性があるように見受けられます。ワンタン麺の存在で、辛うじて3人ともが先の併買分析の結果である「カップ麺ライフ」に該当しました。
三人の心を共通して動かせる単品クーポンがあるとしたら、この2品のクーポンだけですが、「とうふ」は勿論「ワンタン麺」も、先の併買分析の深掘り考察と一致しません。

※.同一条件の併買分析を「カップ焼きそば」⇨「マルちゃんごつ盛りカップ焼きそば」とすると、当該ワンタン麺のLift順位が25位⇨17位となりましたが、それでも10位外ですし、やはり「カップ麺」以外は出現しませんでした)。

一人ひとり見て行くと、Aさんは3人中唯一年間投下金額の1ー2位をカップソース焼きそばが独占するガチのカップソース焼きそば好きです。それもマルちゃんか明星の二択でしかありません。二択は販促状況に応じた選択購買でしょうか?とは言え、塩焼きそばのチラシもクーポンもAさんの心を来店へと掻き立てる事は無さそうですAさんの来店目的で特徴的に見えるのは「めかぶ」でしょうか?ですがこれは併買分析には表れない個人的嗜好のあらわれです。

Bさんはカップ焼きそばは「ごつ盛り塩焼きそば」一択で、ソース焼きそばのチラシもクーポンもBさんを来店へと掻き立てる事は無さそうです。年間店舗利用金額の高さにも現れていますが、Bさんの際立った来店目的は医薬品」関連です。これも個人的な事情と嗜好ですから、それがマスである併買分析に表れる事はありません。

Cさんは最も併買分析の結果に沿った「カップ麺ライフ」な人(多数派)の代表格ですが、やはり中でもカップ焼きそばは突出しています。ソース焼きそばは三種を買っていますが、マルちゃんごつ盛りが圧倒しています。塩焼きそばはBさんと同じくマルちゃんごつ盛り一択ですので、マルちゃんごつ盛りブランド以外のカップ焼きそばでCさんの心を来店へと掻き立てる事ができるのは、「一平ちゃん夜店の焼きそば」位でしょうか?Cさんの来店目的上位3品は個性的(?)ですが、それ以外は割と普通で、掲載商品中での共通する特徴はカップ麺の中にしか見いだせません。ごつ盛り、どん兵衛、まる旨、焼きそば、味噌、ワンタンといった嗜好が伺えますが、これも先の併買分析の深掘り考察と一致しませんし、カップ麺の中では「マルちゃんごつ盛りコーン味噌ラーメン」が圧倒的です

カップ焼きそば以外にもAさんならではの個性的来店目的、Bさんならではの個性的来店目的、Cさんならではの個性的来店目的があり、特定商材、期せずして「マルちゃんごつ盛り」ブランドで縛って尚、3名のライフスタイルは三者三様で、全員に共通する商品はカップ焼きそばでは無い2品に過ぎませんでした。

たった3名でこれですから、やはり導き出せる共通プロファイル「カップ焼きそばと接点があ「カップ麺を好む人が多い」なります

「偏った3人を挙げて来るからだ!」と思われましたか?

実は私たち一人ひとりも、ことお気に入りや来店目的としている商品については思っている以上に偏執的です(そう言えば私もカップ焼きそばはペヤングソース焼きそばしか買いませんw)。が、そうで無い商品は普通に買い物します。

私が来店目的としている商品を来店目的としていない人たちにとって、その商品は普通の買い物の中の一部に過ぎません。

この一部の”偏り”と大多数の”普通”が混じり合って算出されたのが、マス政策に耐えうる併買分析の結果という訳です。

【余談】単品クーポンのヒット率

これはクーポンのヒット率についても同様と言えそうです。

単品のクーポンを、その利用者に発行してすらヒット率が統計的確率である50%を超えないのは、その商品を来店動機とする人の割合が、その商品を普通の買物の一環の中で手に取った人の割合に対して半分未満だからと考えられます。

単品の購入者の50%超が年一回利用である(50%超に執着が無い)事、クーポン利用者の来店頻度が上がる(来店動機とする人が使っている?)事等もここに符合して来ます。

商品は類似性、顧客は多様性

そもそも顧客を類型化しようという試みは、完全に「当てに行く」One To One政策では無く、特定顧客セグメントに対して極力マスで確率の高い共通施策を実施する為です。

ところが、先の3名はせいぜい
「カップ麺(焼きそばを含む)」 > 「カップ焼きそば」 > 「マルちゃんごつ盛り」 或いは
「マルちゃんごつ盛りワンタン醤油ラーメン」「にがり仕込み絹とうふ」
にしか類型化できませんでした。

One To Oneクーポンを打つとしても(それが協賛/持ち出しで実現可能であるならば)響き易い順に、
「三者三様の来店目的とする単品」 > 「ごつ盛りブランド焼きそば」 > 「カップ焼きそば」 >「カップ麺(焼きそばを含む)」
とせざるを得ません。
「三者三様の来店目的とする単品」以外は、One To One政策では無く、特定セグメント政策です。

気付かれましたか?そうです!これは顧客の嗜好に基づく商品の類型化であって、顧客の類型化ではありません。あくまでも顧客の多様な嗜好のあらわれの一端です。

嗜好のあらわれの一端として商品の類型化はできても、顧客という存在全貌の類型化はできないのです。

だとすれば、併買分析は自カテゴリーの顧客の他カテゴリーの利用状況(ライフスタイル)を探る事よりも、自カテゴリーを嗜好する顧客による商品の類型化(顧客の接し方/接する顧客の違い)に使った方が実りが多そうです。

先の3人を見てみると(たった3人ではありますが)、マルちゃんごつ盛りの2品は商品として類型化されそうな予感がしますね。

実際にTapir_MKを使って見てみましょう!

表のseg_f、seg_nは顧客の嗜好に基づく商品の類型化グループで、顧客接点ともチャネルとも言えます。棚割であればゾーニングに用いられるものです。そのグループに対し、配下の商品いづれかを一度でも買った事のある人=一度は利用にメリットを感じた事のある人を紐づけたものが本表です。

表の一番下、seg_f = f4 に注目してみて下さい。Aさん、Bさん、Cさんの三人の利用行動が折衷案的に表出し、4商品が類型化されている事が分かります。

Aさんはマルちゃんと明星のソース焼きそばを選択購買していましたから、それぞれの利用顧客59,446人 と 38,385人の中に1人としてカウントされています。これはCさんも同じです。そういう選択購買をする人が多いって事です。

Bさんはごつ盛り塩焼きそばしか買いませんから、その利用顧客29,782人の中に1人としてカウントされており、この中にはCさんも含まれます。

Cさんだけは一平ちゃん夜店の焼きそばの31,450人中にも1人としてカウントされています。

今回はseg_f= seg_nとなりましたが、顧客接点であるseg_f = f4 の123,757人の中にはAさん、Bさん、Cさん3人ともが包含されています。

顧客の都合からしてみれば「欲しい物以外要らない(特にBさん)」訳ですから、seg_f、seg_nはそこに集う顧客全員の都合に叶った理想のクーポン単位とも言えます。ところが売り手側の都合からしてみれば、seg_f = f4のクーポンなんて相手から顧客を奪って市場を広げたい立場の明星もマルちゃんも嫌がりますよね?ヒット率を高めるという事は顧客−売り手双方のWinに繋がりますが、売り手の都合としてはそこに目を瞑ってでもヒット数が欲しい訳です。

ですからここは顧客に売り手の都合を飲んでもらいseg_f = f4 の123,757人に、出すのが容易なごつ盛りソース焼きそばの単品クーポンや、ごつ盛り焼きそばシリーズのアイテムクーポンを出させて貰います。これが顧客の都合と売り手の都合の折衷案す。当然Bさんのように微動だにしないであろう方、普通の買物の一環で手に取っただけの関心の浅いもいらっしゃいますが、ペヤングソースやきそばやモッチッチのクーポンを出すよりは「おしい!」と思って貰えるでしょうし、ヒット数も狙えます。

大事な事は一品一品のヒット率を突き詰めて行く事よりも、極力複数の接点を網羅する事=クーポン企画数にあり、カップ焼きそばの企画が「おしい!」だったとしても、別の部門/カテゴリーの企画が「分かってる!」となれば、競合のクーポン政策を上回れます。

※.Tapir_MKについての詳細はTapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧ください。

まとめ

・マス政策においては、併買分析で顧客の共通嗜好の一端を垣間見る事ができる。

・「〇〇を好む」事とランク、年代、性別はほぼ無関係。

・顧客という存在全貌の類型化はできない(顧客も色々)。

・類型化できるのは「〇〇を好む」という共通する嗜好の一端であり、それはつまり商品の類型化を意味する。

各顧客は個々に異なる商品を偏執的に好む為、単品にせよカテゴリーにせよOne To Oneには小売の持ち出しが必要(現状不可能)。

One To One=好む人に好むものを
 カテゴリー/単品クーポン=買った人に買ったものを
 セグメントクーポン=好みそうな人に好みそうなものを 

以上です。

【2023/12/05追記】ごつ盛り食べてみた【蛇足】

「特売用商品」と思い込み歯牙にも掛けて来ませんでしたが、今回分析で興味が湧いてしまい食べてみましたので、蛇足ながら追記ですw

調理しながら、具材分のコストを麺量に全振りした商品コンセプトと感じましたが、食べてみるとなかなかどうして!麺量だけで無くソース(スープ)にもコストかけてるんじゃ無いの!?と感じました。

もともとカップ麺の具材なんて大して美味くも無いんで、こりゃー良いコンセプトじゃ無いの?ファンが多いのも頷ける!

【ソース焼きそば】
ウスター派の私には甘すぎるソースでしたが、白眉のキューピーからしマヨネーズが全体を引き締めてくれ、なかなか。

【塩焼きそば】
バジル入り特製スパイスで洋風な仕上がり。好みは分かれるでしょうが、ハマる人が居るのも頷けます。ウチの次男は「これがカップ焼きそばの中で一番好き♪」と申しておりました。

【コーン味噌ラーメン】
味噌にちゃんと酸味や渋みみたいな奥行きがあって、これが一番驚きました。出来上がりが結構なスープ量になるので、食べ終わりにライスダイブしてガッツリ食べたい人に向いていると思います。


分析したものを実際に食べてみるというのも(キリがありませんがw)より一層顧客理解が深まるような気がして良いですねw

以上、蛇足でしたw