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マーケティングとは
「買い手が喜ぶ事をし、嫌がる事を避ける」事と見つけたり

買い手が喜ぶ事をし、嫌がる事を避ければ、買い手に好かれ、商売繁盛間違い無し!でしょう。

それを阻んでいるのが「買っていない人に買わせる」という売り手の儚い願望です。

ここでは単品クーポンにおけるターゲティングを例に、この当たり前の事が、本当に当たり前なんだという事を再発見して行きたいと思います。

ターゲティングの必然

下図では単品クーポンにまつわるメーカーの都合と小売の都合をベン図にしてみました。

対象商品については、小売が自前でNBのクーポンを出す事など考えられませんから、協賛を前提とした「メーカーが今売りたい商品」でほぼ決定と言えます。

その流れで発行枚数についてもメーカーの予算が基本的な制約となり、互いの経済合理性との兼ね合いから発行上限が決まります。

・対象商品は売り手(主にメーカー)が決める。
 (レコメンドは出来ても、条件も考慮せず機械が勝手に商品を決める事は商習慣上(未だ)有り得ない。)


・買い手とは無関係に発行上限決まり、自ずと何らかのターゲティングが必要となる。
 (こちらも同じく機械が勝手に発行対象を決める事は商習慣上(未だ)有り得ない。



この政策をマーケティングとするには、売り手都合で決めた商品・枚数を、最後に如何に買い手に寄り添わせるか?が鍵となります。

この最後の鍵がターゲティング=寄り添わせるべき対象顧客なのですが、ベン図を見るとここだけメーカーの都合小売の都合の折り合いが宜しくない事が分かります(実際問題何も気にしていない小売さんが多いんでしょうけど。。。)。


メーカーが何故単品クーポンに協賛するかと言えば、当然自社商品の売上(シェア)を上げる為です。

小売にとっては単品一品の売上が上がっても、カテゴリー内の食い合いで相殺されてしまう為、余り旨味はありません。

小売の本当の旨味は クーポン利用者の来店回数が上がる(0.4/月程度) 事(クーポンが動機付けとなり他店で無く自店を利用)にあります。

誰に寄り添うべきなのか?

折り合いが悪い「対象顧客」に関してのみメーカー、小売それぞれの都合を抜き出し、対立解消図※にしてみました。

まず①の「何をする?」の相違=対立を書き出し、②のそれがそれぞれ「何の為?」にそうで無くてはならないと主張するのか、個々の目的とする所を書き出します。

対立と言うのは、あくまでも共通の目的にアプローチする際の考え方の相違として顕現する為、③で個々の目的が結局「何の為?」なのか共通の目的を書き出し、対立構造を円環的に俯瞰できるようにします。

※.ザ・ゴール2中でエリヤフ・ゴールドラット博士が使った「思考モデル」の一つ。


理屈上、図のボックス同士を繋ぐ線のいづれかを断ち切る事ができれば対立は解消します。

【マーケットドリブン経営】ID-POSは死活問題 中でも書きましたが、一見完璧に見えるロジックが結果を誤つのは、この線が繋がると見做す背景にある、仮定の誤り、思い込みによります。

それを考察してみたのが下図です。


【仮定の誤り1】単品の売上が増えると小売の売上が増える

まず、単品一品の売上増は小売の売上増にほとんど貢献しません。

メーカーは何をもって小売の売上に貢献するのかを見直すべきで、結論を言ってしまえば前出の「来店客数増」になります。

「来店客数増」なる顧客=クーポンを利用する顧客 ⇨ クーポン利用(単品売上)の最大化ですので、ここを見直せば間違いなく双方の利益(Win-Win)となります。

【仮定の誤り2】単品の売上を増やすには「買っていない」顧客にクーポンを発券する必要がある

【マーケットドリブン経営】ID-POSは死活問題 も書きましたが、買っていない買い手というのは実に広大な市場に見えますが、「何故そうなるのか?」という根拠がどこにも無い売り手の儚い願望に過ぎません

ここが最大の誤りと言えます。

売り手は不要なクーポンを配られる買い手の気持ちを「お得でしょ?」と度外視しています。

前出の記事にも書きましたが、願望に過ぎない年代やランクでは無く、買い手から見た対象単品の利用メリットと、買い手との間の直接/間接の接点の有無が鍵となります。

【仮定の誤り3クーポンを受け取っても「使わない」=裏で来店を減らすかもしれない遥かに多くの顧客が軽視されている

対象商品と直接的接点を持っている買い手であっても、そのクーポン利用者率は発行枚数の30〜40%に留まります。

より重要なのは残り60〜70%の多数派である、不要なクーポンを配られる買い手側の気持ちです。

従来のチラシであっても、願望としての”お得”や高粗利品の押し売りで「使えない店だなぁ〜」と感じている買い手は居るでしょうが、ターゲティングを行う場合、買い手が受け取るその感覚は、より一層鋭敏なものとなります。

小売業の立場としては、そもそも全員が「使ってくれる」訳では無い事から、せめて「使えない」と不快を感じる買い手へのクーポンの発行は控えたいところです。

※.ID-POSは「使えない」と思われない「チラシの改善」も可能です。

「買ったことがある顧客」こそが製販共通の最重要ターゲット

「買っている」顧客と言っても、「その商品しか利用した事の無い」 顧客ではありません。

単に「その商品を1度でも利用した ≒ 利用メリット を感じた事のある」 、そういった価値観を持った顧客です

また「買っている」と言っても、年二回以上の利用者が半数を占める単品はありません。



「買った事がある顧客」と言うと、どうも盤石のように感じられ「釣った魚に餌はやらない」的な発想から、「買った事が無い顧客」に夢と浪漫を求め、年代だ性別だと切り刻んで手を打ちたい願望も分かりますが、現実問題は「買った事ある顧客」こそー


・類似利用メリットを持った競合の脅威に常に晒され続けている現実的な顧客
 ⇨ 常にコミュニケーションを深め、関係を確かなものとして行くべき顧客


・過去に利用メリットを感じた事がある」という、売上/客数増という目的に繋がる現実的接点、足がかりのある顧客


・クーポンを不快に思うリスクが最も低い顧客


と言え、まずいの一番にターゲットとすべき顧客です。

一人ひとりの顧客の内面的多様性というものは決して「Aが好きな人はBも好き」「50代男性はAを好む」と類型化できる程単純なものではありません。

ですから現にある、顕在化された接点、自己申告済みの接点をこそ大事にすべきです。

つまらない」という感情、「ライバル」という誤謬

とは言え「買った事が無い人」の中に「買う可能性がある人」が居る事も、「買った人」にクーポンを出すのがつまらない(社内的にも理解を得られにくい)事もよく分かります。

ベン図に買い手の都合も重ねてみると、もしかしたら ”つまらない” については、買い手の都合とも重なる都合なのかもしれません。


そうなると、多少外したとしても「おしい!分かってるね!」と思う「おしいと思う位のライバル商品を買っている顧客」もターゲットに含めた方が、買い手のつまらないもメーカーのつまらないも解消し、更にはメーカーのブランドスイッチへの野心にも適う事になります。

ここでも仮定の誤りに気をつけて下さい。

そもそも「おしい!」と思うのは買い手ので、何と何がライバルかを決めるのは売り手では無く、買い手であるという事です。

以前、ブランドスイッチは幻か?<ペプシ VS コカコーラ>も書きましたが、買い手から見たペプシコーラとコカコーラはかけ離れた存在で、実際にペプシコーラのライバル関係にあったのは、コカコーラゼロやジンジャエールでした。

それをID-POSデータから seg_f や seg_n という形で視覚化するのが Tapir_MK です。

結局のところ売り手の都合、買い手の都合の双方を満足させる ターゲティングの限界点 はどこにあるのか?と言えば、下手にデータをこねくり回さずとも、定義上  Tapir_MK の seg_f※ そのもの なのです

(seg_f=「遠からず」の利用メリットを利用した事のある=価値を感じた事のある買い手)

※.本稿でseg_fやseg_nについての直接的な解説はしません。
 seg_fseg_nをはじめとするマーケティングの技術については Tapir_MKによるマーケティングの教科書
 その精神については 【マーケットドリブン経営】ID-POSは死活問題 を御参照ください。

対立解消!マーケティングは「三方良し」の”商売そのもの”

ここ迄の考察から、対立解消図の「仮定の誤り」を正して行くと、下図のように対立が解消されます。



「買ってない人に買わせる」 から脱し、

「喜ぶ買い手に喜ぶ事をする」

「嫌がる買い手に嫌がる事をしない」 ようにすれば、当然「買い手よし」

メーカーは単品の売上と現実的ブランドスイッチが最大化され「メーカーよし」

小売は来店が最大化され「小売よし」


結局マーケティングというものは、

「三方よし」商売そのもの であるという事が再発見できました。

【蛇足】MA(マーケティングオートメーション)への道

単品クーポンで言うと、小売業としては顧客の不快を避ける事さえ出来れば、一つ一つ接点のヒット率に拘るよりも、常態的に様々な顧客との間の様々な接点に働き掛け続ける事(数)が重要となります。

買い手としても、自分がターゲットにならない事は勿論、「惜しい!」ばかりでも「実用的」ばかりでも面白くありません。

要は有意義である事を前提に、それなりに多くのクーポン企画(数)を走らせておきたいところです。

それを協賛(商品、発行枚数はメーカーが決める)という制約の下で、マンネリを避け、小売側に負荷無く、買い手側に不快無くオートメーションに近い形で走らせ続けるにはどうしたら良いか?

詳しくは単品クーポンの技術と実務譲りますが、将来的にTapir_MKのロジックを利用した「クーポン市場(仮称)」のようなものを実現できたら良いなと考えています。


【おしまい