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真に”マス”であるために

チェーンストアの狙いはあくまでマスマーケットにあります。

業態やエリアをニッチなマーケットに置いたとしても、産業としては当然 当該マーケット内における ”マス”を目指します。

”マス”という事、その真義

マスとは集団、集まり、多数、大量、大衆等を指しますので、より大衆的な商品で、より大勢の人を惹き付けるのがマスマーケティングです。

マス=大衆的であるという事は、ID-POSの利用ID数の多さが示します

単純ながら図の商品2と商品3では、商品2の方がより”マス”であり、品揃えしたり、チラシに掲載した際により大衆に響き易く、大きな効果を期待できる商品と言えます。

はマスマーケットと言いつつ、チェーンストアが狙っているマーケットは一般に食品スーパーマーケット、ドラッグストアマーケット、ホームセンターマーケットのように当初より業態でセグメントされており、全大衆の全側面を狙ったものではありません。その意味でチェーンストアはセグメントマーケティングを展開しているとも言えます。

セグメントに関わらず、人は容易くマーケット間、セグメント間を行き来しますので、その間には併買が発生します。

前図に商品1を加える事で、併買状態を表したものがの図です。

商品1が最も”マス”である事は自明ですが、最小の商品数でより大勢の人=”マス”をカバーする為には、前図で商品3より”マス”とした商品2ではなく、商品3を採用した方が良い事がこの図からは分かります。

この採用の判断は決して「ニッチな政策を採る/ニッチな商品を置く」という奇を衒ったものでは無く、あくまでも「より”マス”である為には?」にあります。

同時にこれは本来 大衆とは、必ずしも一つの集団に括れる存在では無い 事も意味しています。


これが”マス”という事の真義です。

競合状態と差別化

一方で商品1のように大衆的な商品であればある程、競合が発生します。その為”マス”を目指す上において、同業間/異業態間の競合を避けて通る事はできません。

競合状態 ⊂ 併買

他店のID、データは取れませんので、あくまでも概念図とはなりますが、店という枠を取り払ってしまえば、併買という利用行動の一端は、図のような競合状態を意味します(分かり易くする為に前図迄の「商品2」をそのまま「他店商品1」に置き換えました)

非併買は逆に非競合状態を意味します。

Aさんの非併買の要因は、主に価格もしくは「近くて便利」にあると推察されます。

Dさんの非併買の要因は、主に品揃えにあると推察されます。

レッドオーシャン/ブルーオーシャン と 差別化

異なる業態を選択しながらも多くの業態が、競合する食品部門を品揃えするのは、各業態間でカニバリゼーションする程大きな”マス”からの、主に来店の恩恵を狙っての事です(相対的レッドオーシャン)。

一方で食品スーパーが生鮮三品を、ドラッグストアがHBCを、ホームセンターがDIYを押し出すのは、業態とのカニバリゼーションが少ない”マス”からの、主に粗利の恩恵を狙ってのです(相対的ブルーオーシャン)。

生鮮三品の個店品揃え等の政策は、その中でも更に、同業者とのカニバリゼーションが少ない”マス”を狙ってのものです。

となれば差別化とは、レッドオーシャンの戦いであれば図の+Aさん、ブルーオーシャンの戦いであれば図のDさんのように、いづれもより非併買”マス”の取り込みを狙ったものと言えます

図の他店がシェアNo.1企業だった場合、単純に言って価格政策によりBさん、Cさんの併買状態を解消し、非併買状態にし向ける事を志向します。ドミナント政策と併せてこれを確固たるものとする事で、Aさんの非併買という選択肢も消されて行きます。

フォロワー企業は品揃え政策により、Aさん、Dさんのような非併買な大衆をプラスして行こう考えます。
正面切った避けようの無いレッドオーシャンについては、マーケット・セグメンテーションにより顧客にとって最低限代替可能なマスSKUを炙り出し、一品大量仕入れによる価格政策+「近くて便利」を武器に戦う事を考えます。

文字通りマーケット・セグメンテーション = ランチェスターの弱者の戦略で戦って行こうという訳です。

※.ここまでの図の商品1、商品3のような存在。商品1については自明な場合が多いが、商品3のような商品についてはID-POSが無い限り競合にも気付かれ難い。

マスマーケティングの真髄

他店のデータが分からない中、レッドオーシャンとブルーオーシャンのようなそれぞれ異なる戦略が必要とされるマーケットセグメントを知る事ができるでしょうか?

次の図は実際にドラッグストアの店内部門を、ID-POSによ併買/非併買の多さから分類したものです。

ここまでの論と符合するかのように当該ドラッグストアマーケットが、一般食品を含む事により相対的レッドオーシャンと目されるseg_f=f1と、その業態を決定づけている相対的ブルーオーシャンのseg_f=f2の大きく2つのマーケットセグメントに分類されている事が見て取れます

seg_f=f1は、その下で全ての部門が個別のseg_nを形成している(相互にも非併買が多い)事から、それぞれが個別に競合に晒されている事が推察されます。

seg_f=f2の「ベビー・シルバー」はドラッグストアマーケット参加者中において、競合によらずとも相対的に非併買が多いマーケットであり、基本的には「ベビー・シルバー」という単一マーケットセグメントとしてマーケットをキャッチアップし続ける事で、”マス”の確立を目指します。全マーケット中最大利用人数(63,780人)併買の塊 seg_n=f2_n4、この店を”マス”に認知させているコアマーケットです。

※.seg_fは計算上併買の起こる限界の範囲(カニバリゼーション限界)、seg_nは計算上平均以上に併買の起こる範囲から定義されています。


真のマスマーケティング = セグメントマーケティング

”マス”を単に利用人数の多さと見てしまえば、政策は利用人数トップ3の部門から構成されたseg_f=f1のレッドオーシャンに偏り、コアマーケットを外してしまいます(とは言え客数が呼べるseg_f=f1は重要ですし、f1f2のセグメント間においても相応の併買、ついで買い発生します)

この意味でも、真に”マス”を追い求めるマスマーケティングには、マーケットのセグメンテーションが不可欠であり、真のマスマーケティングとは、各マーケットセグメントがそれぞれ異なる戦略の上で”マス”を追い求め続けるセグメントマーケティングと同義であるという事が分かります。

マスマーチャンダイジングやマス販促と言った業務にセグメントマーケティングを適用する具体的な方法についてはID-POSの技術と実務 を、マーケット・セグメンテーションの理論について簡単にはQ2)なぜID-POSなのか? を、詳細にはTapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧下さい。

言葉の整理:◯◯マーケティング

ここからは長目の蛇足です。

真のマスマーケティング = セグメントマーケティング と定義して来ましたので、その他の紛らわしい◯◯マーケティングについても整理して行きます。

One To Oneマーケティング

セグメントの究極、もしくはマスの対極がOne To Oneであるならば、マーケットはそこ迄切り刻むべきでしょうか?

そもそも商品棚や紙チラシのような、非デジタルな顧客接点をOne To Oneに変化させる事は出来ません。

One To Oneに変化させる事が可能なデジタルな顧客接点にしても、小売業の持ち出しと予算化、非デジタルな顧客接点との連動が制約条件となります。更に言えば、顧客自身が最も非デジタルな存在とも言えます。

要は「どの商品を」という定義が先に来無ければ、政策が成り立たないのです。

商品があって人が集まるというマーケットの定義上も、商品(店/部門/単品)が1に対して顧客が多である方が自然です。


図を見ても”マス”な商品(共通顧客接点)で働き掛ける(一例としてクーポンを出す)事は一品で三人に影響を及ぼしますが、Bさんに働き掛ける事は(どの商品のクーポンを出すかはさて置き)一人にしか影響を及ぼさず、どちらが”マス”に適っているのかは明白です。

「商品1マーケット」はあっても、「Bさんマーケット」が無い以上、One To Oneマーケティング見える政策の実際は、ターゲットマーケティングと言えます


ターゲットマーケティング

それではターゲットマーケティングとは何でしょうか?

前出の商品1の顧客に商品1のクーポンを出す事や、seg_n=f2_n4というマーケットの顧客にその配下「酒・みりん」のクーポンを出す事は、マーケットセグメントと接点を持っている顧客をターゲットとした政策ります。

よって、ターゲットマーケティングはセグメントマーケティング中に包含されています。


乱暴にまとめればー

・マスマーケティング ▶ セグメントマーケティング へ

・ターゲットマーケティング ⊂ セグメントマーケティング

・One To Oneマーケティング は理論上存在しない?

という感じです。

以上、「真に”マス”であるために」でした。