やりがいのない「忙しさ」を捨て、「商い」に調和を生む
レシートに印字される、顧客が直接的に選択している顧客接点(売り物)の中には、単品、年月日(曜日)、店舗、レジNo.、売価等があります。
一方でレシートに印字されない、顧客が間接的に選択(?)している「拡大顧客接点」の中には、部門、カテゴリー、プライスライン等があります。
「拡大顧客接点」は、売り手の意志で恣意的にその粒度が決定されており、その粒度(所属単品数)もまちまちです。
意思決定単位、政策実行単位としてカテゴリーというものを捉えた時、税制上やLSP上の役割もある為一概には言えませんが、少なくとも分析上では粒度が大き過ぎるカテゴリーも、粒度が小さすぎるカテゴリーも扱い辛いものです。
何より商品分類のような形で「分ける」という行為には、前提として分ける事によってもたらされる経済合理性が求められます。
ここではカテゴリーの粒度について、ID-POSデータでの考え方を示します。
BiZOOPe の 『ニーズの見える化(シン・Tapir−1.0) 』を使ったものですが、BiZOOPeをお使いでないみなさまにも、大いに参考にしていただけるものと思います。
※.本稿では触れませんが、脳科学的に一人のバイヤーが認知可能な「数」にも留意する必要があります。
「客点数」が 2点以上となるカテゴリーについては、一度の買い物で、2個以上の商品が手に取られています。
これはまとめ買いが明白なカテゴリー(牛乳等)を除き、2つ以上の「顧客にとって異なるニーズ」を持つ商品が、一つのカテゴリーの中に混在していることを示しています。
顧客にとっての一つ一つの「ニーズ」を、解像度高く取り扱う事で競争力を高めようと考えるならば、図では客点数2.30の「ポケット」カテゴリー(次点で客点数1.65(四捨五入して2)の「スナック」カテゴリー)を、2つのカテゴリーに細分化する事を検討します。
※.どのようなカテゴリーであっても、客点数は必ず1以上です。
部門内各カテゴリーの平均利用者数を1とした時に、各カテゴリーの利用者数が何倍になるのかを示しているのが、図の「利用者倍率」です。
顧客は店全体を何度も繰り返し併買する存在であるため、各カテゴリーに対して掛ける労力(手間暇)は、カテゴリーの売上や粗利ではなく、店全体の繁栄を握っている利用者の数に比例させるべきです。
これを前出の客点数と合わせて考えれば、四捨五入してではありますが、利用者倍率が2以上となるのは、「ポケット」カテゴリーのみです。
よって、顧客視点、経済合理的視点の両面から、カテゴリーの細分化を検討する余地があるのは、「ポケット」カテゴリーだということになります。
逆説的には、四捨五入した利用者倍率が 1未満のカテゴリーについては、業務に不具合の無い範囲で、他のカテゴリーと統合して扱う事も検討します。
「なぜ利用者倍率を使うのですか?」
「利用者倍率という事は『全ての顧客の価値は同じ』として扱うという事ですよね?」
「『ポケット』の利用者より、『催事・ギフト』の利用者の方が価値(ロイヤル比率)が高く無いですか?」
前出の通り、顧客は店全体を何度も繰り返し併買する存在です。
各カテゴリーに計上されているID数は、そのカテゴリーだけの利用ID数ではありません。
それを示しているのが、図の「顧客店舗利用金額」であり、各カテゴリーの利用者が、当該カテゴリー含め分析条件の範囲内で落とした、すべてのお金の総額です。
計算してみれば分かりますが、「ポケット」カテゴリーの利用者が、分析期間内に落としたすべてのお金の総額は、「菓子」部門の全利用者が、分析期間内に落としたすべてのお金の総額(マーケット計)の、実に71.22%に達します。
一方でこれも計算してみれば分かりますが、「顧客店舗利用金額」の単純和は、マーケット計の「顧客店舗利用金額」を上回ってしまいます。
それは何故か?
顧客が併買をしている = 一人の顧客のIDが、複数のカテゴリーに対して計上されているからです。
その「併買のネットワーク」の中で、最大人数が共通して利用している結節点、謂わば「ハブ」が「ポケット」カテゴリーです。
部門は当然ながら、店舗全体/企業全体の利用を考えるのであれば、ここを他より大事にしないという手はありません。
顧客に貴賤はありません。店/企業にとって問題なのは、人数(マス)なのです。
一方で「ポケット」カテゴリーの利用者率は58.04%に過ぎません。
「菓子」部門の利用者の内、41.96%は「ポケット」カテゴリーを利用していない(= 非併買(他のカテゴリーを利用している))のです。
これは、「菓子」部門の併買ネットワークのハブが、「ポケット」カテゴリーだけではないことを意味しています。
図の「目的範囲」は、併買/非併買から算出された、大きな併買ネットワークの塊(くらしのスタイル)です。
端的に言えば、大きく「日常的に菓子売り場全般を併買しながら利用する人(f1)」と、「通常菓子売り場を利用することはない(非併買)が、『催事・ギフト』用途では菓子売り場を利用する人(f2)」といった、菓子売り場に対する「異なる利用スタイル」を持った人たちが居るということです。
よって、それぞれの併買ネットワークを代表するハブである、「ポケット」と「催事・ギフト」両方の「重点レコメンド」に「1st」が振られています。
「催事・ギフト」を菓子売り場との接点にしている人たちにとって、「ポケット」は接点とはなり得ないため、マスな顧客との接点をカバーするためには「どちらも大事だ」ということです(相互の優先順位は「採用順」で見ることができます)。
一方で図の「選択範囲」は、平均以上に併買されていることを示す、小さく強い併買ネットワークの塊(ニーズ)です。
ここからは、前出の「ポケット」が、「和焼き菓子」〜「洋焼き菓子」までの4カテゴリーで形成される併買ネットワーク(f1_n1)における、ハブであることが分かります。
「選択範囲」で見れば、「目的範囲」における「催事・ギフト」と同様、「季節(その他)」も「珍味・豆菓子」も、それぞれ菓子売り場内で、「独立したニーズ」であるという事が分かり、双方の「重点レコメンド」に「2nd」が振られています。
マスな顧客との接点を極力カバーするための、すべてのハブに「重点レコメンド」が振られます。
最後はカテゴリー粒度の問題から脱線してしまいましたが筆者個人的には、顧客一人ひとりの価値を区別するという考え方は、マスマーケットを目指すチェーンストアとしては、いただけない考え方だと捉えています。
顧客は併買をする存在であり、そのニーズは「ポケット」一辺倒でも「スナック」一辺倒でもありません。
また同じく「高質」一辺倒でも「ディスカウント」一辺倒でもなく、そのくらしのスタイル、ニーズは、個の中においてすら、この2つが「まだら」に入り混じったものだからです。
この個々に異なる「まだら」なニーズに如何に対応して行くのか?がマスマーケティングです。
以上、カテゴリー粒度の検討についてでした。