カテゴリー粒度の検討

政策実行単位としてカテゴリーというものを捉えた場合、税制上や作業上の役割もある為一概には言えませんが、少なくとも分析上では粒度が大き過ぎるカテゴリーも、粒度が小さすぎるカテゴリーも扱い難いものです。

何より「分ける」という行為には、前提として分ける事によってもたらされる経済合理性が求められます。

ここではカテゴリーの粒度についてID-POSデータでの考え方を示します。

以下、分析条件についてはID-POS分析の勘所 に準じます。

使っているのはBiZOOPe商品✕KPI|Monkey(マニュアルが開きます)です。

客点数 ≒ 売場から手に取る異なる価値の数(分析の観点)

四捨五入した客点数が 2以上のカテゴリーについては、売場から2つ以上の商品が手に取られる事が常態化している事を意味しています。

一度の買い物あたりで必ず2つ以上の商品を手に取ると言う事は、単品のまとめ買いが明白なカテゴリーを除き、2つ以上の異なる価値/メリットを持つ商品が、一つのカテゴリー中に混在していると考えられます。

顧客にとっての一つ一つの価値を大切に扱おうと考えるならば、図ではスピリッツとリキュールをそれぞれ2つ以上に分割する事を検討します。

利用者率:顧客一人辺りに掛ける労力(経済合理性の観点)

平均的な利用者率に対して掛ける労力を1とした時に、各カテゴリーに掛けられる労力が幾つになるのかを示したのが図のLiftになります。

図ではスピリッツには3倍の労力を掛けても良い = 3つに分けて扱っても良い事を、リキュールには5倍の労力を掛けても良い = 5つに分けて扱っても良い事を示しています。

客点数と合わせれば、スピリッツを2〜3にリキュールを2〜5に分ける事を検討します。

それに対してLift≦1のカテゴリーについては、不具合の無い範囲で他のカテゴリーと統合して扱う事を検討します。

カテゴリーの単品をTapirに掛け、セグメンテーションから単品の分け方を検討する事もできます。
しかしこの手の場合、往々にして異なる価値が入り混じり過ぎている事に加え、単品数も多く解説が複雑になってしまう為、ここでは割愛させて頂きます。


ビールの顧客は発泡酒の顧客より価値が高い?

「なぜ利用者率を使うのですか?」

「利用者率という事は全ての顧客の価値を同列として扱うという事ですよね?」

「発泡酒の顧客より、ビールを買ってくれている顧客の方が価値が高く無いですか?」

顧客は併買をします。

その為、商品の顧客と言うのはその商品だけの顧客ではありません。

・発泡酒の顧客の中にはビールの顧客も、ウィスキーの顧客も居ます。

・生鮮3品をカゴいっぱい買って行ってくれる発泡酒の顧客も居れば、珍味豆菓子しか買わないビールの顧客も居ます。

食品スーパーというマーケットに投下する金額が、世帯一人あたり換算でそれ程大差無いと仮定するならば、極端な話ロイヤル以外の顧客は他店併買の他店のロイヤル顧客です。

そういった意味では当該カテゴリーと接点を持った事のある(少なからず一度はメリットを感じた事のある)顧客というだけでしかありません。

ただ単に接点を利用すれば、顧客の愛顧に報いる事、他店のロイヤル顧客に振り向いてもらう事の二つが同時に可能です。

データで見てみると実際、発泡酒のロイヤル比率の方が若干高かった(雑種なんてロイヤル比率100%でw)のですが、これが「発泡酒を好むから」なのか?という因果関係迄は分かりません(と言うか多分因果関係はありません)。

ロイヤル顧客のボリューム自体はビールが勝りますし、いわんやリキュールをやです。

結局のところ私たちに実行可能なのはマス、もしくはマス・セグメント政策であり、マスとは何を隠そう人数を指すのですから、顧客の価値は平等と考えるのが実は吉です。

最後は少々粒度の問題から脱線してしまいましたが、筆者個人的には顧客一人ひとりの価値を区別するという考え方は、チェーンストアとしてはいただけないものだと考えています。

その商品だけを買っている訳では無い事を考えれば、特に「カテゴリーの優良顧客」「商品の優良顧客」といった考え方は、更に視野を狭めるものだと考えています。

以上、カテゴリー粒度の検討についてでした。