ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
<顧客接点を活かしたアンケート>あなたがその食品スーパーを選ぶ理由

店舗という売り物=顧客接点単位の特異性とアンケート

は売り物と顧客との接点に働き掛けるマーケティング、中でも顧客ID付レシート明細データ(以降ID-POSデータ)の分析手法の研究をしています。

部門やカテゴリーといった売り物顧客接点単位の改善は、つまるところ商品政策に帰着しますので、ID-POSデータで改善が可能です。

ところがこと店舗という売り物顧客接点単位の改善については、商品政策がその多くを占めているものの、接客クリンリネスといったレジで記録される事の無い”売り”を、その店を利用する事で得られるメリットとしている人が多い事もまた事実です。

私たちが商品に限らず「それを利用する事で得られるメリット」を求めて来店しているのであれば、接客もクリンリネスも価額が0円であるというだけで、変わらずその店を利用するメリット、動機づけであり売り物です。

例えば「接客」が大事と皆口では言っても、それは顧客の利用店舗決定において何番目の比重を占めるものなのか?経営資源をまず真っ先に投下すべきなのは「接客」よりも寧ろ「駐車場の停め易さ」だったりするのでは無いか?
或いは「近さ」や「安さ」に対抗し得る、顧客にとっての店舗を利用するメリットは何なのか?

マーケティングを研究している立場からすれば、そういった売り物と顧客との関わりの構造や優先順位(何が重点政策か?)について知っておきたいところです。

レジから得る事のできないデータは、アンケートから得るしかありません。

従来のアンケートの問題点

従来のアンケートでは回答者が複数の設問項目に対し、一票を投じたり投じなかったりした結果が集計され、多数決により優先順位化されます。

その為従来のアンケート集計結果を見てみると、多少の順位の前後はあれ図のように「近くて安くて新鮮」という買い手から見れば都合の良い”買い物パラダイス”、売り手から見れば”身も蓋も無い”ような集計結果となります。

常にアンケート上位を占める「近さ」については現場の努力で変えようもありませんし、「安さ」についても額面通りに受け取れば、バイイングパワーに勝る大手にしか勝ち目は無いのか?と暗澹たる気持ちにさせられます。

ところが、全体の96%が支持した「近さ」であっても、ほとんどの人が時に遠くの他店も利用するでしょうし、メイン使いの店舗が最近隣店且つ最安店であるというような幸運な人は、寧ろ少数派です。

私自身に関して言うならば、メイン使いの店舗の利用メリットは「停めやすい駐車場」、給油や古紙回収の「ついでに行ける」事にあり、サブ使いの店舗の利用メリットは「近い」事と「営業時間」にあります。

逆に言えばメイン使いの店舗は相対的に遠く、営業時間が短いにも関わらずメイン使い、サブ使いの店舗は相対的に駐車場が停め辛く、ついでに行く場所も無い為サブ使いに落ち着いているという訳です。

「近さ」や「安さ」に対抗し得る何らかのヒントが得られそうなこれら相対的な情報が、ごった煮状態で順位化されているの従来のアンケートとその集計結果です。

私たちが知りたいのは「近くて安くて新鮮」な事が一番重要!などという身も蓋もない話では無く、「近くの顧客を引き止めて置く為に、重点的に押さえておかなければならない利用メリットは何か?」「遠くの顧客を引き込む為に、重点的に押さえておかなければならない利用メリットは何か?」「それらの内私たちに実行可能なものは何か?」にあります。

アンケートを設計してみる事にした

顧客の価値観も置かれた状況も人それぞれです。
そのそれぞれの個人にしても、何を優先的メリットとして享受したいのかは時々の気分や状況で変化し、時にそれは相反するメリットであったりもします(質を捨てて量を取る/価格を捨てて今を取る)。

本来個人の中において選択的で相反する事項を、ごった煮のように混ぜこぜにしてしまわないようにする為には、アンケートをその収集段階から選択的、相対的な形にしておく必要があります。

ID-POSデータに対するPOSデータと同じく、既存の集計済みデータには手の加えようも無い為、苦肉の策としてアンケート自体を自分で一から設計してみる事にしました。

アンケートの設問項目を価額が0円の売り物すなわち商品と見做した設問とし、データのごった煮状態をその商品間における併買関係と見れば、何の事は無い!アンケートデータを、私の専門分野であるID-POSデータ同様に扱える事に気付きました。


【気付き】
)商品とは利用メリットのこと
2)ID-POSもアンケートも同様に接点記録である
3)通常のアンケートは回答者の利用行動(併買/非併買)をごった煮状態にしてしまっている


そうなればしめたもの!我がサイバーリンクスが誇るID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe(ビズープ)の分析メニューTapir_MKの出番です!


※.このようなイレギュラーケースにおいて実際にはテンポラリーTapirを用いました。

図は一人の顧客(アンケート回答者)の中において、利用店舗に一時に求めている価値は何か?=同時併買、メイン店舗とサブ店舗はその時々に求める利用メリットの相違によって、選択的に利用されている=期間併買 という今回アンケート上の関係をレシート明細に例えて表現したものです。

思いついたはいいものの、何のインセンティブも無い素人設計のアンケートに、何らかの個人識別可能なIDを入れてもらい、統計的に有為な程度の回答数を得る事が果たして私にできるのでしょうか?。。。

そこで、社員番号というユニークIDを持つ弊社サイバーリンクスの全社員※1に縋ってアンケート※2を実施、304名の有効回答を得る事ができました。

この場をお借りしまして、サイバーリンクス社員のみなさまの善意と温かいお気持ちに感謝致します。


※1.男性比率が73%と高い事、本社所在地である和歌山市周辺の在住者が多い事に留意する必要があります。
※2.設問設定者が私というアンケート素人である事にも留意が必要です(設問粒度と網羅性、設問数のバランスに苦慮)。
以上から以降のアンケート結果については「結論」では無く「傾向」として捉えて頂けましたら幸いです。
但し人間が設計し、人間が回答するアンケートに「完璧」は無いものと言え、それなりの統計的「傾向」を得て後、それを「やるか/やらないか」が全てではないかと考えます。

人の目、Tapir(テイパァ)の目

Tapir_MKを使うと、顧客の利用行動(併買)をクラスター分析に掛け、利用メリット(設問項目)をそれを共通して求める人の多寡から、大小2種類の利用目的の塊(クラスター)に分類する事ができます。

今回アンケートの46の利用メリット(設問項目)からは、互いに相反する大きな利用目的の塊3つと、共通する利用メリットの小さな塊16が得られました。

更には各塊毎の利用メリットと接点を持った人の数(ID数)から「優先順」を振り、大きな利用目的の塊を代表する利用メリットには”1st”、小さな利用目的の塊を代表する利用メリットには”2nd”の「重点レコメンド」を行っています。

図はクラスター分析の結果であるデンドログラムと呼ばれるもので、大きな利用目的の塊と小さな利用目的の塊が交互の色分けで表現されています(興味のある方は拡大してご覧下さい)

最も強力な来店動機である「近さ」を含むのが図の左の塊で、他の来店動機の塊とは大きな隔たりがありそうな分かります。

※.アンケートの集計である為、以降含め本来のTapir上の項目名や用語を置き換えて解説しています。
※.集計ロジックについて本項では割愛させて頂きますが、知りたい方は簡単にはQ2)なぜID-POSなのか? を、詳細にはTapir_MKによるマーケティングの教科書 を御参照下さい。

アンケート集計結果の概観

アンケートの集計結果を、集計により表出して来た利用目的の大分類であるf1、f2、f3、3つの塊毎の、設問項目と顧客との関係として概観して行きます。

まずは最も強力な利用メリットである「近さ」を価値観として含む利用目的f3、次いでその対極に位置する利用目的f1、最後に少数派にとって重要な利用目的f2の順に見て行きます。

f3:近隣住民にとって重要な利用目的(普段はこれを重視)

ここには「近くの顧客を引き止めて置く為に、重点的に押さえておかなければならない利用メリットは何か?」近隣住民に対する戦略上のヒントが隠された最も重要な大分類と言えます

「利用目的(大)」>「利用目的()」となるに従って、相互に投票している人の割合(併買率)が増えて行きます。
またざっくりと「関連順」の数値が近いもの程相互に投票している人の割合(併買率)が高くなっています。

※.ポイント特典のように「お得」だけでは無く中には「楽しさ」を感じる人も居るでしょう。品揃えがワンストップで「便利」と思う人も、豊富で「楽しい」と思う人も居るでしょう。本アンケートでは同じポイントや品揃えに関するものであっても、そのような設問項目については分けて設定してみました。

最も強力な利用メリット=1stレコメンド「近さ」に代表される利用目的)=f3_n15は、「近さ」に価値を置く人たちの間に最も共通して見られる価値観であり、f3_n15の5つの設問だけでアンケート回答者全員を包含した程強力な利用目的です。

「近さ」の下に並んだ「ついでに行ける」事は、その関連順から「近さ」に近似する利用メリットである事が分かります。
「品揃え」や「安さ」「美味しさ」については、”身も蓋も無い話”と言うでは無く、同一小分類である「近さ」や「ついでに行ける」事を大前提とし、「近さ」や「ついでに行ける」事とトレードオフ可能な最低限それと理解されます

逆に最低限のそれすら満たせていない場合(特に「近さ」と最も関連性の高い最低限の「品揃え」や、「近さ」に次いで求めている人が多い最低限の「安さ」が無ければ)、さしもの「近さ」も苦しい事を示唆しています。

利用目的(大)=f3の中でも「近さ」と区分された利用目的(小)=f3_n16は、「近さ」重視しつつも、営業時間、美味しさに留まらない無い品質、最低限を超える豊富で楽しい品揃え、汎用ポイント等、最低限+αを求める価値観と言えます。

中でも「品質」は食品スーパーのアンケートだけあって、利用目的(小)=f3_n16中最も多くの人が求めているものであ最低限+αを代表する重点的利用メリットです(レコメンド=2nd)。

f1:「近さ」を越えさせる利用目的(時に/人によってはこれを求め

「近さ」を含む利用目的f3の、関連順的に対極に位置する利用目的f1には「遠くの顧客を引き込む為に、重点的に押さえておかなければならない利用メリットは何か?」という戦略上のヒントが隠されており、そのものズバリ「停めやすい駐車場」が1stレコメンドを得ています。

その他にもレコメンドされた代表的価値観には「安心・安全」、「見つけ易い・探し易いレイアウト」、「賑わい」、「クリンリネス」、「広々とした店内」、「使い易いカート」、「お得なチラシ」、レジ運用に関わる「決済手段」「ストアポイント」「チェックアウト手段」と言ったより高い快適さへの要求が数多く見て取れます。

これらを満たす為、時に/人によっては近くの店が素通りされます。

f2:なかなか汲んでもらえないニッチな私の拘り、利用目的(近かろうが、遠かろうが。。。

既出の通り顧客の価値観も置かれた状況も人それぞれです。
近くに住んでいる顧客共通点は近くに住んでいるというだけの事であって、その価値観は千差万別です。

ですから単に多数決の上位をカバーする事が、顧客のニーズをなるべく漏らさずにカバーする事には繋がりません。

f1、f3の両極端の大分類に挟まれたf2は、正にそういった隠れた顧客ニーズの様相を呈しました。

ニッチとは言え経済合理的な人数が揃うのであれば、価値観の偏りを避け、無意識のニーズへも働き掛ける重点政策の一翼を為すと考えられます。

1stレコメンドの「綺麗なトイレ/授乳室」は、近かろうが遠かろうがそこは譲れない一定数の人が居る、という最たる例と言えるでしょう(トイレ/授乳室の綺麗さがクリンリネスや安心・安全といったお店の精神性を特に印象付けているのかもしれません)。
他にも2ndレコメンドの「マイバスケット」「ネット注文/お取り寄せ」がこれらニッチなニーズを代表する価値観と言えます。

【別件
網羅性の為にアンケートの設問粒度を細かくし過ぎたのでは無いか?それでも回答者率10%下回る設問が無いのだから、寧ろ他の設問の粒度が荒すぎたのでは無いか?とは言え設問数が多くなり過ぎると回答とアンケートの信憑性が疎かになるし。。。と困惑した利用目的(大)=f2です。

アンケート集計結果の順位:選ばれる食品スーパーになる為に、血路を開く重点政策16選

「全てが重要」=「全てが重要でない」と同義ですし、優先事項を絞らずにビジネスで勝つ事は出来ません。

顧客にしても、誰もが全て満たされた理想の店舗を利用している訳では無く、妥協の中で、その時その時の自分にとってよりベターな店舗選択を行っています理想の店がStew Leonard'sであったとしても、アメリカには行けませんもの)。

だからこそ人は、最低限を超えて特に力を注ぐべきポイントである「重点」政策や「重点」商品を見つけ出し、そこに重点的に働き掛ける事で勝機を見出そうとします。

図は16に分かれた顧客の利用目的/価値観を満遍なく満たす為に、Tapir_MKの振った優先度順に16の各利用目的/価値観を代表する(多くの人達がよりんでいる)利用メリットを抽出して来たものであり、多数決だけによらない全く新しいアンケートの順位です。

1stレコメンドに絞って乱暴に言えば、近くて、駐車場が停めやすく、綺麗なトイレ/授乳室があれば、あとは最低限を満たしているだけでほぼ盤石、逆に言えば駐車場が停めにくく、清潔なトイレ/授乳室が無い事は、例えかったとしても、選択肢から外れる最大の要因になるというのが、この集計結果から読み取れる大枠の筋になります。

概観して各利用メリットの位置付けを見るために、敢えて出店政策のようなほとんど実行不可能な項目を入れていますが、これを見ると如何に出店、インフラ、システムといった経営計画が重要であるかが伺えます。

「編成を増やせば統制が減る」

誤った編成を統制で取り戻す事はできません。

とは言え現に無いものを嘆き続けるのでは無く、ボトルネックの存在を前提として何に、どのような優先順位で取り組むべきかが、この集計結果からは明確に分かります

小売業さまの場合、今回アンケートのメインを自店に、サブを幾つかの競合店に置き換えたアンケートとすれば、今回とはまた違った情報/視点が得られるのでは無いかと思います(当然アンケート設計についてはプロに任せるものとして)。

私どもが提供しているID-POS分析は、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターと言った比較的商品の回転が早い業態に適用が限られていますが、アンケートであれば少なからず「比較」が発生する業態全てにおいて適用できそうです。


<IDアンケート完全版>あなたがその食品スーパーを選ぶ理由 に続きます。

参考資料

今回記事の元とした資料です。

個人情報を含みませんので、いづれも、どなたにでも自由にダウンロードして頂けます。

【Tapirアンケート_集計結果(.xlsx形式)

本項の全ての数値の元となった集計結果です。

Tapirアンケート_集計結果

【アンケート速報(.pdf形式)

単純にアンケートソフトなりに集計を行った数値です。
今回アンケートにおいて想定するメイン店/サブ店は回答者次第である為、メイン/サブ別の集計にほとんど意味はありません。
巻末に本項では複雑になり過ぎる為に取り上げなかった、部門別の利用目的の集計結果を掲載しています。

アンケート速報.pdf

【サンプルアンケートページ

実際に使用したアンケートページの複写サンプルです。
今回アンケート設計について細々と解説する代わりに、実感を掴んで頂く為、実物の複写版を掲載させて頂きます。

以下のリンクをクリックする事で開きます(Google Form製)。

【複写サンプル】あなたがその食品スーパーを選ぶ理由