お客様のニーズが見える ID-POS分析
9月または10月の月次エンハンスにて、「シン・商品併買」と「顧客セグメント×顧客セグメント」の2つの新メニューをリリースする予定です。
これに伴い、既存の「商品併買|Anemonefish」のサービスは年内をもって提供を終了させていただきます。
つきましては、今回はまず、先行して「シン・商品併買」をご紹介いたします。
図は、既存の「商品併買|Anemonefish」のオプション設定画面です。
旧商品併買のオプション画面とデフォルト設定。
バイヤーやメーカーの皆様から「リフト値とは何ですか?」「どの値を設定すれば良いですか?」といったご質問をよくお受けします。
「デフォルト設定のままで問題ありません」とお答えしていますが、指定する商品によっては、全く併買対象が出力されなかったり、逆にハードルが低すぎて、出力結果からどの組み合わせを選べば良いか判断に迷うケースも少なくありません。
バイヤーの皆様が理解・指定できず、メーカー様からの提案の妥当性も判断できないような指標は、正直なところ使いたくありません。
私たちは、リフト値を指定しなくても「誰もが有用な結果を得られる」仕組みを、模索してきました。
併買率は、対象となる商品(商品A)を買っている人を母集団とした、比較商品(商品B)の利用者率で、商品による利用者率の特異性を知る為のものです。
併買率の大きさは、ボリュームの大きさとは無関係で、特異性を表すもの。
リフト値は、その利用者率(併買率)を、一般の利用者率と比較する事によって、何倍位特異な利用者率か?を表す指標です。
リフト値の大きさは、ボリュームの大きさとは無関係で、特異性を表すもの。
併買率もリフト値も、共にその組み合わせの特異性を示す指標であり、取引量(ボリューム)の大きさとは直接関係ありません。
しかし、私たちが本当に求めているのは、特異性の高さよりも経済効果の大きさ、つまり、より多くの顧客に喜んでいただくことです。
なぜ併買分析は、このように特異性の高い組み合わせに拘っているのでしょうか?
1992年12月の『ウォールストリート・ジャーナル』で、データマイニング技術の可能性を示す伝説的なエピソードとして、「おむつを買う人は同時にビールを買う傾向がある」という分析結果が報じられたとされています。
この組み合わせが、非常に突飛であったため、以来、「おむつとビール」は、クロスMD分析やマーケットバスケット分析の、代名詞となりました。
しかし、30年以上経った今も、これほど突飛な事例はほとんど聞かれません。
「おむつとビール」に次ぐ代表的な併買事例は、「ポテトチップスとコーラ」や「パンと牛乳」のように、顧客のライフスタイルや習慣に基づいた、ごく当たり前の組み合わせです。
このことから、併買分析は必ずしも特異な発見を要求するものではないことがわかります。
おむつとビールは、アメリカの消費者のライフスタイルや習慣に基づいた組み合わせ(消費者にとっては決して突飛では無い事でも、ライフスタイルや習慣は、変化して行くものです)。
特異性に拘る背景には、「当たり前すぎて提案しづらい」「上司に『そんなの当たり前だろ!』と言われるのでは?」といった、私たちの心理も大いに関係しているでしょう。
しかし、本当に寄り添うべきは、より多くの顧客のライフスタイルや習慣です。そして、提案すべきは特異性ではなく、経済効果の大きさなのです。
システムが為すべきことは、経済効果の大きな組み合わせを抽出することであり、「当たり前」の妥当性を数値で証明することに他なりません。
商品Aと商品Bの両方を購入する共通顧客が多いほど、その組み合わせを好む顧客が多く、併買施策に喜んでくれる顧客も多いことになります。
これだけでも、特異な組み合わせを追うよりも大きな経済効果が期待できますが、共通顧客が喜ぶのはある意味「当たり前」です。
経済効果をさらに高めるには、より大きな市場に働きかける必要があります。
共通顧客の割合は、通常、最大でも25%程度にすぎません。
つまり、75%以上の非共通顧客という未開拓の市場が、双方の商品に対して残されているのです。
共通顧客の多さが鍵。
共通顧客が多い商品の組み合わせを抽出することは、この大きな未開拓の市場に、共通顧客と同時にリーチできる事を意味しています。
そこで、「シン・商品併買」では、共通顧客の人数が平均以上の組み合わせを抽出し、人数順に順位を振っています。
これにより、リフト値のような専門的な指標を指定しなくても、誰もが簡単に、経済的に有意な組み合わせを、そのボリューム順で抽出できるようになりました。
シン・商品併買画面例。図中の併買者率は、共通顧客中の同日併買者の割合を表しています。
結局のところ、「当たり前を恐れず」「特異でないことを恥じない」ことで、「誰もが分析でき」「誰が提案しても効果が期待できる」方向に舵を切ったのです。
商品Aと商品Bの両方を購入する共通顧客は、その商品のどちらも好む人々です。この共通顧客はさらに、同日利用顧客と非同日利用顧客に分けることができます。
商品を近くに陳列するという行為は同じでも、この割合の違いによって施策の狙いは大きく異なります。
しかし、この点が明確に理解され、実際の施策に反映されることはほとんどありません。
同日利用は、顧客が同じ日に両方の商品を必要とする「非選択的利用」です。
このタイプの組み合わせは、クロスMDが目指す「プラス一品」施策に適しています。
例えば、「カレールー」と「福神漬け」のように、同時に消費されることを想定した、まさに「今夜のメニューはこれで決まり!」のような組み合わせです。
共通顧客は、同日利用顧客と非同日利用顧客から成る。
一方、非同日利用は、必ずしも同じ日に必要ではない「選択的利用」です。
これらの商品をまとめて陳列する施策は、「プラス一品」を狙うのではなく、相互の商品がお互いを盛り立て合う「互助販促」にあたります。
これは、ある意味で棚割りの考え方に近いものです。
例えば、家庭内の在庫状況によって同日に購入する必要がない「カレールー」と「玉ねぎ」の組み合わせ、あるいは、その日の気分や価格によって選択される「カレールー」か「スパゲティ」か「麻婆豆腐の素」といった簡便調理の組み合わせです。
「毎日の献立、どうしましょうか?」といった緩やかな提案は、そのものズバリの刺激的な提案よりも、確率的に受け入れられやすい提案と言えます。
双方の狙いは異なる事から、どの組み合わせで、どんな施策を打つか、を明確に理解しておくことは、立案から実施、検証まで、すべての局面において重要です。
「シン・商品併買」では、とるべき施策の違いを明確にするために、より特異性の高い同日併買施策への適性にフラグを立てています。
共通顧客に占める同日利用者の割合が50%以上であれば「◯」、平均を上回っていれば「△」を表示することで、誰でも簡単に最適な施策を認識できるようになります。
シン・商品併買画面例(再掲)。本来同日併買は◯(同日利用者≧非同日利用者)が理想ですが、広く好まれる施策の割には特異な条件である為、△(平均以上の同日利用者数)を敢えて加えています。◯を見ると、カレーは、主にカレーと同日併買されている事が分かります。
商品Aと商品Bの組み合わせがあった際、両方の売り場で施策を展開できれば理想的ですが、オペレーション上の問題などから、現実的にはどちらか一方の売り場に絞って施策を展開することがほとんどです。
では、どちらの売り場で施策を展開すべきでしょうか?
それは、より大きな市場(非共通顧客)が残されている方の売り場です。
この未開拓市場は、より多くの顧客にアプローチできる可能性を秘めています。したがって、経済効果を最大化するためには、非共通顧客の数がより多い方を選ぶべきだと言えます。
商品Bしか利用した事の無い顧客に、商品Aをおすすめした方が、経済効果は最大化される。
「シン・商品併買」では、この考え方に基づいて、対象商品と比較商品、どちらの売り場で施策を展開すべきかまでを示唆するように作られています。
これは同時に、どちらの顧客に寄り添うべきかを示しており、施策のPOPイメージや、おすすめの仕方にも影響を与えます。
シン・商品併買画面例(再掲)。画面右端が施策の展開適地を示唆しています。
ここで、知っておいていただきたいポイントがあります。
施策は当然、関係する双方の商品にプラスの効果をもたらしますが、もし施策の展開適地が比較商品の売り場だった場合、その恩恵をより大きく受けるのは、対象商品である自社商品の方(適地の逆)です。
しかし、自社商品よりも比較商品に利をもたらすような提案は、メーカーの、シンプルな経済合理性に適わないこともまた事実です。
これは、自社商品を提案するメーカーの方々も、その提案を受けるバイヤーの方々も、覚えておいていただきたいポイントです。
商品の組み合わせを選ぶことは、単に「特異だからやってみましょう!」というものではなく、施策のコンセプトや成否の規模、そして精度を決定づけるものなのです。
裏を返せば、これは顧客理解そのものであるとも言えます。
「シン・商品併買」は、以下の3つの点で、これまでの併買施策の課題を解決します。
1.専門知識不要で、誰でも簡単に分析可能
リフト値のような専門的な指標に頼らず、誰もが簡単に効果的な施策の優先順位を把握できます。
2.施策手法が一目でわかる
同日併買による「プラス一品」施策か、非同日併買による「互助販促」か、それぞれの組み合わせに適した販促手法をひと目で判断できます。
3.最適な施策展開場所とターゲットが明確に
施策を展開すべき場所と、アプローチすべき顧客(未開拓市場)が明確にわかるため、より精度の高い施策立案が可能です。
「当たり前」を恐れない、三方良しのご提案をどうか宜しくお願い致します。
以上、エンハンスリリース予定の「シン・商品併買|Actinia」のご紹介でした。
私事の蛇足です。
鮮魚売り場でカミさんに「今晩サンマにしない?」と言われました。
「青果売り場まで大根取りに戻るのメンドイから、サンマじゃ無くていいよ!」と答えたところ、カミさんから「大根そこにあるよ」と言われました。
結果、サンマと大根が私たちのカゴの中に入りました。
そのままであれば、サンマ、大根の双方がカゴに入らなかった訳ですが、0が2に変わりました。
これが同日併買施策ってヤツです。
丁度本記事をアップした翌日の事であり、「当たり前、施策ボリューム、同日or非同日の選択、展開適地」の全ての要素が揃っていた為、且つそれにまんまと引っ掛かった為w、蛇足ながら追記させて頂きました。