” ニーズが見える ” ID-POS分析
「分析レポートの明細行のID数の和が、合計行のID数と一致しないのですが、何故ですか?」という質問を頂きました。
折角ですので、マーケット理解を絡めながら解説して行きます。
本項では図のような500mlスパークリングウォーターマーケットというものを想定してみます。
合計行はマーケットそのものであり、合計行のID数はマーケット参加者数を表します(マーケットサイズとも言えます)。
この人たちは一般に平均的な買い物をしますので、単純に言ってこのマーケットへの参加者数が増えれば増える程、店の売上も上がります。
明細行はこのマーケットの内訳であり、マーケットを何らかの項目でセグメント(分割)する事によってその内訳を示すもの、すなわちマーケットセグメントです。
明細行のID数は各セグメントが如何に多くの人に支持されているのか=マスであるのかを示します。
マスなマーケットセグメントに注力する事は、マーケットそのものの利用は勿論、来店をマスに保つ/広げる為にも重要です。
合計行のID数と明細行のID数の和が一致するかしないかは、マーケットを何でセグメントするかによって決まります。
ID数とは顧客そのものを表す数値ですので、顧客そのものをセグメントした場合の明細行のID数の合計は、合計行のID数に一致します。
図はR/Tでセグメントを行った例ですが、一つのマーケットにおいて一人の顧客が、2回以上利用 ∧ 1回利用という状態はあり得ない(必ずどちらか一方のセグメントに計上される)為、このような結果となります。
年代、顧客ランクと言った顧客に対して一意に設定される項目によるマーケットセグメントは、全て同様です。
【結論】顧客セグメントは明細行と合計行が一致する。
マーケット参加者の63%がマーケット1回利用者、所謂一見さん、37%がリピーターです。
マーケットの内訳を知る為に、期間/店舗/商品と言った顧客以外の項目でマーケットセグメントを行った場合の明細行のID数合計は、合計行のID数に一致しません。
期間であれ店舗であれ商品であれ、顧客は併買をしますから、一人の顧客のID数が複数のセグメントに対して計上され得るからです。
図のマーケットは12の単品でセグメントされていますので、一人の顧客のID数=1が、人によって1〜12セグメントに対して計上されます。
よって図のように通常明細行のID数合計①は、合計行のID数合計②を上回ります。
【結論】顧客セグメント以外のセグメントは明細行と合計行が一致しない。
明細行はマーケット内訳として切り離して見るべき。
明細行はマーケット内訳として切り離してみるべきと言いながら、明細計と合計の差分は何を意味するでしょうか?
もし誰も3品以上の併買をしていないのであれば、これは併買者数となりますが、それには少々無理がありそうです。
但し明細計②を分母とした差分率であれば、併買者率としてはニアイコールと捉えられるかもしれません。
それを正とするならば、マーケット参加者の78%が非併買者、22%が併買者です。
図はマーケットを顧客(横軸)、単品(縦軸)の両方でセグメントした例です。
顧客でセグメントされた横軸の単純和が合計に一致し、単品でセグメントされた縦軸の単純和が合計に一致しないのはこれまで見て来た通りですが、先述の「通常明細行のID数合計は、合計行のID数合計を上回ります」がR顧客において成り立っていない事が分かります。
顧客が併買をするにも関わらず、明細計が合計を下回るなんて事があり得るのでしょうか?
図の合計行のR顧客はマーケットを2回以上利用した顧客、明細行のR顧客はその単品を2回以上利用した顧客です。
マーケットを2回以上利用するのに必ずしもその単品を2回以上利用する必要はありません。
これはT顧客についても同様で、ある単品と別の単品の2品を1回づつ利用した顧客は、明細行においてはT顧客として各2行にID数=1が計上されていますが、合計行においてはマーケットを2回利用したR顧客にID数=1が計上されます。
また稀な確率とは言え、実際にマーケット利用回数が1回のT顧客であっても併買(同時併買)は可能です。
よってR顧客にも同じものだけを2回以上買っている非併買顧客が存在し、T顧客にも併買顧客が存在する事から、R顧客とT顧客におけるそれぞれの併買率をここから掴む事はできません。
ここまでの理解をまとめると、マーケットは大なり小なり以下のような構造を呈しています。
リピートと併買の構造は本来個別のものであり、組み合わせられるものではありませんが、一見さんの同時併買が無視できる程度に小さいと考えるならば、下図のように見る事ができます。
※.選択的利用者の中にも固執している単品がある人が居ますが、リピーター∧非選択的利用を「単品固執」と定義してみました。
ここで重要なのは、やはり顧客は併買をするという事です。
各マーケットの売上構成比は2:8の法則や3:7の法則と言われるように、リピーターに大きく偏り、このグラフに反比例するものと思われますが、こと店舗売上の構成比に関して言うならば、このグラフそのままにID数比例します。
マーケット構造自体は、母数によらずおおよそこのような構成を取るものなので、その意味でも何よりも利用ID数を増やす/減らさない事に注力する事が肝要です。
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