” ニーズが見える ” ID-POS分析
前回 年代、顧客ランク/生活史の中の状況とニーズ の中で、顧客ランクを生活史的に見て行きましたが、顧客PFVでもやってみて欲しいとのご意見を頂いた為、記事にしてみます。
顧客PFV:クラスター分析の例
システム管理者は各PFV(図の同一色の塊)に20文字以内で任意の名前を付ける事ができ、付与されたPFV名は、顧客セグメントを用いた分析画面上に表示されるようになります。
以降ではPFVが利用行動であるという事を鮮明にする為に、ID回数、客点数、点単価をデフォルメしたPFV名を使用し、データを見て行きます(本来のPFV名の表示のされ方とは異なりますが、悪しからずご了承下さい)。
また、解説の為各PFVにはNo.を振らせて頂きました。
データはドラッグストアのものを使用し、PFVの構成比で降順に並び替えています。
年代部分では前年代の構成比を上回るものを青フォント、下回るものを赤フォントとする事で、生活史的な増減を表現しています。各年代毎の平均を上回るセルに網掛けをし、中でも最大構成比を太字にしてみました。
表を見て行く上で大事な事は、全てのPFVと年代の組み合わせに値が入ったという事実です。
生活史的にその年代に入るとそういう状況に置かれ、そういうニーズを持つ人の割合が増えるであろう傾向は読めても、「30代ならこう」という論法は成立しないという事です。
大きく3つのタイプの利用行動が見られますので、それぞれについてデータを概観して行きます。
論点となるPFVを太枠で囲っています。
【構成比20%以上のPFV(No.1+2=45%)】
ドラッグストア利用者の約45%が月1〜2回、雑貨、一般食品、一般化粧品を1カゴ利用するスタイルで、一般食品を扱う300坪店が増えて来た頃のドラッグストアニーズを彷彿とさせます。
No.1は20代以下の割合が、No.2は30代、40代の割合が増えていますが、世帯人数の差が利用頻度に現れているのかもしれません。
人口が減少している昨今、構成比最大のこれらのPFVを持つ顧客の維持/増加は極めて重要な事に思われます。
【点単価2倍以上のPFV(No.3+8=20%)】
ドラッグストア利用者の約20%が月1医薬品と一般化粧品またはカウンセリング化粧品を利用するスタイルで、薬粧店的ニーズを彷彿とさせます。
構成比増がほぼ最終年代迄続くという際立った特徴を示しており、いづれも業態の中心年代である30代、40代の構成比が平均を下回るPFVである事も特徴です。
ここまでのPFVを同業態との競合状況を抜きに、顧客が持つ特性としてそのまま素直に受け入れるならば、スタイルこそ違えはっきりとした業態の使い分けを好む顧客と推察されます。
オールドスタイル的ではあるものの若年層の構成比がしっかり立っている事からも、こういったニーズは今後も存在し続けるものと思われますので、これらのニーズに応え続けて行く事もまた重要です。
【全般利用のPFV(No.4〜7=35%)】
ドラッグストア利用者の約35%が売り場部門全般を利用する顧客です。全般を利用する事から、週1以上の利用や、2カゴ以上の利用が目立つ事が分かります。
食品スーパーとも競合する今日的※なドラッグストアへのニーズがここにあると言っても良いでしょう。
週1〜3の1カゴ利用(N0.4+7=21%)が比較的幅広い世代に受け容れられたポピュラーな利用の仕方に見える一方、2カゴ以上の利用(No.5+6=14%)については主に30代、40代が中心を占めている事が分かります。
前回の年代、顧客ランク/生活史の中の状況とニーズ 中で見られた通り、30代中の23%、40代中の20%が、生活史的にロイヤルたらざるを得ない状況にあるというのはここからも伺えます。経済的にも心情的にもここにはしっかりと寄り添って行きたいところです。
※.2024年10月29日時点
これも顧客が持つ特性としてそのまま素直に受け入れるとするならば、週3で1カゴを利用する事(頻度買い)も、月2で3カゴを利用する事(まとめ買い)も、顧客の置かれた状況/ニーズが異なるのだという事になりますので、一概に頻度を増やせば/点数を増やせば或いは単価を増やせば良いというものでもありません。
No.4〜7のPFVを持つ顧客以外がロイヤル顧客となるのは、置かれている状況、求めているニーズが異なるものを同じ物差しで評価するのですから、至難の業です。
図はここまでと同じPFVを縦軸に、横軸を顧客ランクとして構成比を取ったものになります。
例外はありますが大枠では、構成比の低下と共にランクの構成比が その他 → プロスペクティブ → ロイヤル と上がっている構造が見て取れます。
また、やはりロイヤル顧客のほとんど(77%)をNo.4〜7の顧客が占めている事が分かります。
そもそも一人ひとり異なる全員の状況/ニーズに個別に寄り添う事が不可能なのは自明な為、セグメントを行うと言う事は ー
1)なるべく全員に寄り添う状態に近付けるよう、状況/ニーズを慮れる数(PFVの場合8つ)に類型化する
2)場合によっては更に経営資源を集中し、徹底的に寄り添うセグメントを絞り込む(例えば図のNo.4〜7)
という二つの意味を持ちます。
業態として、8つのPFVそれぞれに寄り添って行くのか、No.5のPFVに絞り込んで徹底的に寄り添うのか、はたまたその中間かという話になりますが、絞り込めば絞り込む程マーケットサイズは小さくなってしまいます。
いづれにせよ「ロイヤルに寄り添う」でも「30代に寄り添う」でも無く、顧客が置かれた状況と、その状況下でのニーズに寄り添うというのが基本となりますので、それが顧客が持っているたった8つのPFVによっても大分異なるのだという事をご理解頂ければ幸いです。
以上、顧客PFV ✕ 年代 についてでした。