” ニーズが見える ” ID-POS分析
売り場は文字通り”場”ですので、分析においても”点”の組み合わせでは無く、商品相互が影響し合う”面”として取り扱う必要があります。
併売 と 併買 において質問の多かったこの二つの売り場づくりの違いについて、今一度詳しく解説します。
図の売り場の8SKUを、都合により半分の4SKUに絞り込まなければならなくなったと仮定します。
私たちは通常「売れていないからカットしよう」或いは「値入が良いから残そう」「全国では売れているから残そう」等と考え、商品の採用/不採用を行っています。
これは商品を売上、値入、全国等の力を持った個別の”点”として捉え、点と点を組み合わせて行く売り場づくりです。
一貫して拠り所とする力が無い事、組み合わせにそれに合わせた方法論※が無い事が問題です。
※.近いものとして相乗積による粗利ミックス、商品構成グラフがあります。
売上という商品力だけで採用/不採用を決めた場合、図の青の網掛けの4SKUが残り、赤の網掛けの4SKUがカットされます。
都合が良い事に全指標※トップ(赤フォント)の商品が網羅されるだけで無く、採用/不採用がヌードル、うどん、そば、やきそばの一品づつに綺麗に分かれました。
※.図の指標についてはID-POSの基本指標:ID数とID回数 をご覧下さい。
この時私たちが感じた「綺麗に分かれた」の半分が”線”の発想から来るものです。
ヌードルとヌードル、うどんとうどん、そばとそば、やきそばとやきそばという点と点を繋げて同一用途・機能という線で捉え、どちらかが一品づつ残る→代替が効く→綺麗に分かれたと感じる訳です。
線の発想では「こっちがあるから、あっちはまあいいや」※1と考えます。
問題は私たちと顧客の「こっちがあればまあいいや」にミスマッチがある事です。
私たちが発想した線はヌードル、うどん、そば、やきそばの4本でしたが、8SKUの売り場には計算上※2商品相互に引かれた28本の見えない線(相互作用)が存在します。
売り手個人の発想よりも、買い手による実際の採用/不採用に基づいた※3線に従った方が、俄然良い結果が期待できそうです。
※1.売り場という制約がある以上「まあいいや」と考えざるを得ません。今回はSKU数が少ない為「まあいいや」とするには抵抗を感じるかもしれません。
※2.EXCELのCOMBIN関数で計算できます。今回の場合の式は8つの中から2つの組み合わせの数を計算する為、=COMBIN(8,2)となります。
※3.以降も同様ですが、売り場を全ての個人に合わせる事は出来ませんので、あくまでも人数による多数決となります。
「こっちがあればまあいいや」は、片方が欠品していたらもう片方を買い、片方が特売だったらもう片方は買わない、或いは今日は気分的にこっち♪という顧客の利用行動に表れ、「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」商品間の相互作用の強さと捉えられます。
価値観の発露である顧客の利用行動で、線を切り分けるのが併買分析です。
※.以降、各図は28本の線の中からの一部抜粋です。
利用行動には非併買、同日併買、非同日併買がありますが、非併買は線のどちらか片方しか買わない「こっちじゃ無きゃ駄目」という利用行動です。
非併買な人が多い程「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」という相互作用が弱い点と点の組み合わせです。
併買は線の両端どちらも買うという利用行動ですが、中でも同日併買は、同日中にどちらも入り用だという利用行動になります。
双方同日に売れてしまうのですから「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」には該当せず、同日併買する人が多い程相互作用が弱い点と点の組み合わせです。
反面「あちらが売れたら、こちらも売れる」尺度では相互作用が強い点と点の組み合わせです。「こっちがあればまあいいや」では無く、両方必要なんだという顧客の意思表示と捉えられます。
それに対して非同日併買は、日によってあっちの点を買ったり、こっちの点を買ったりという利用行動になりますので、「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」相互作用が強い点と点の組み合わせです。
全利用行動中「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」相互作用が強いのは非同日併買だけですので、非同日併買を点と点を結ぶ具体的な線の長さと捉える事ができます。
私たちの感覚的には相互作用が強い=線が短い(近い)方が合っていますので、「100%−非同日併買」を線の長さとし、これを商品間距離と呼びます。
「非併買+同日併買」も同値です。
8SKUという点を結ぶ28本の線の距離全てを計算し、距離の近さ順、すなわち「あちらが売れたら、こちらが売れなくなる」相互作用の強さ順に並び替えたものが図になります。
当初私たちは「金ちゃんヌードルが売れるとカップヌードルが売れなくなる」=「金ちゃんヌードルはカップヌードルの代替となる」ヌードルという線を発想しましたが、図を見るとどうもそうでは無いようです。
多くの顧客が金ちゃんヌードルとカップヌードルに見出している価値は別物、もしくは金ちゃんヌードルを買う顧客とカップヌードルを買う顧客の多くはほとんど別人という事が言えそうです。
さて、長くなりましたがここで冒頭の仮定「8SKUの売り場を、都合により半分の4SKUに絞り込まなければならなくなった」に立ち返ってみましょう。
現実問題私たちが採用/不採用としなければならないのは、線では無く点ですので、28本の線の距離を羅列されたところでどうにもなりません。
点で売り場を作ってしまった方がよほど単純明快です。
8点間の距離が分かると言う事は、各点の座標が分かるという事です。
ところが実際の売り場では、座標に対して制約があります。
座標が近いからと言って金ちゃんヌードルのフェイスの前後に赤いきつねを配置する事はあり得ません。必ず上下左右といった”面”での配置となります。
そこで商品間の座標を階層クラスター分析で平面化し、売り場を点や線では無く、面(文字通り”場”!)として扱えるようにしたものが次の図です。
詳細は避けますが、この売り場を利用する人にはf1とf2という2つの大きな利用目的があり、その中に各々2つづつの選択範囲(ニーズ)がある事が見て取れます。
目的やニーズが失われれば、顧客そのものが失われますので、非同日の併買効果に期待して、目的/ニーズを代表する利用者数の多い商品に重点レコメンドが振られています。
図の採用順に則れば採用する4SKUは、売り場の利用目的を代表する金ちゃんヌードル→緑のたぬき、残された選択範囲を代表するペヤングソースやきそば→カップヌードルとなります。
予想に反して「日清のヌードルかうどん」、「日清以外のヌードルかうどん」という選択をする顧客が多かった結果、うどんが1SKUも残らない事に抵抗を感じられるかもしれませんが、解説の為に選択肢数を1に絞った、極端な例とお考え下さい。
そもそも商品相互が影響し合う売り”場”ですので、面で捉えるべきだった事は明白なのですが、それ故にこれができれば採用/不採用に限らず棚割り、チラシ等様々なMD/販促用途に使う事ができます。
データ量、計算量共に膨大ですが、そこはBiZOOPeが処理します。
以上、”点”の売り場づくりと”面”の売り場づくりの違いについてでした。