” ニーズが見える ” ID-POS分析
ID-POS分析ならではの基本指標「ID数」と「ID回数」について解説します。(2024年10月8日全面改訂)
小売業は売上の根源に近づく為、売上を分解して理解しようとして来ました。売上方程式は一貫して 平均値 ✕ 根源となる量 の形で表されます。平均値はPOSデータ中の量と量の割り算から算出されるものですので、平均値を増やそうとして量を減らすのは本末転倒で、あくまでも量のあり方の副産物が平均値です。
POSデータの粒度が日別店別単品別サマリー以上の時の、第一レベルの売上方程式は以下です。
売上 = 点単価 ✕ 点数
このレベルでは点数があるからこそ売上も点単価も生まれると捉えられます。
⇨ 点数を増やす事とその増やし方が基本政策。
POSデータの粒度がジャーナルの時の、第二レベルの売上方程式は以下です。
売上 = 点単価 ✕ 客点数 ✕ 客数
このレベルでは客数が点数の根源であり、ひいては売上の根源です。レシート枚数が計算できるようになって分かる量が客数であり、それと共に生まれた平均値が客点数です。
⇨ 客数を増やす事とその増やし方が基本政策。
因みに 点単価 ✕ 客点数 = 客単価 で、客単価も平均値です。
POSデータの粒度が顧客ID付ジャーナルの時の、第三レベルの売上方程式は以下です。
売上 = 点単価 ✕ 客点数 ✕ ID回数 ✕ ID数
このレベルではID数が客数の根源であり、ひいては点数、売上の根源です。ジャーナルに顧客のカードIDが付く事によって分かる量がID数であり、それと共に生まれた平均値がID回数(頻度)※です。
⇨ID数を増やす事とその増やし方が基本政策。
式をIDに応じて(年代等で)スライスする事は出来ても、式そのものをこれ以上分解する事はできませんので、ID数は全ての平均値を剥がし切った後に残る、売上の根源量です。
第一レベルの売上方程式における根源的な量である点数は、単品の点数を積み上げれば部門の点数に、部門の点数を積み上げれば店舗の点数になります。
ところが第二レベルの客数※、第三レベルのID数についてはそうはなりません。
これは第一レベルが完全に商品の方程式であるのに対して、第二レベル以降の方程式には顧客の利用の仕方が表れ始めるからです。そして顧客は併買をするからです。
※.部門客数の和が来店客数超となる事が良く知られています。
併買をすると言う事は、ID数は従来の数字のようにその商品の中だけで閉じた数字ではありません。商品との接点数であると同時に、全体との接点数(開いた数字)でもある事を理解しておく必要があります。
共に三個売れている図の商品1と商品2は、従来同等として扱って来ました。どちらかをカットしようと考えた時、よしんば商品1の方が値入※が良ければ、商品2がカットされていたことでしょう。
※.値入で無く、客単価、頻度等としても同様です。
このようにID数は商品利用と店舗利用の共通接点です。
図の商品の利用ID数の多さは、そのIDが店舗にもたらしている利用金額の多さに一致しています。そして、商品の利用金額と店舗の利用金額では遥かに桁が違うのです。
商品売上で図中最下位(12位)の商品カットを判断する事は、第3位のID数がもたらしている店舗利用金額の欠落リスクを孕んでいます。
※.但し、やはり顧客は併買をする事から、ベスト分析のように量の多さだけでは判断できない(顧客が重複する)事はなぜID-POSなのか?なぜBiZOOPeなのか? 等で示す通りです。
ID数が従来の量と違うのは、それを構成する個々のIDがそれぞれ異なる主体性を持っているという点にもあります。
そもそも何を利用するか、どのように利用するかは選択主体である個々のIDの価値観に委ねられており、謂わば顧客の勝手です。
提案は大事ですが、価値観にそぐわないものの利用を強いたり、まとめ買い派に頻度買いを、頻度買い派にまとめ買いを強いる事でID数そのものを減らしては(平均値を上げる為に根源量を減らしては)本末転倒です。
主体とその選択を尊重し、顧客満足を通じて ID数を増やす事が基本的な考え方となります(喜ぶ人に喜ぶ事を)。
余談となりますが「顧客満足を通じて ID数を増やす」と口では簡単に言っても、どのような手立てを考えたら良いでしょうか?
選択の類似性から、商品マーケットを現実問題手が打てるだけのグループ数に分ける、もしくは分かれたグループの中からID数順に手が打てるだけの数のグループを採用し、その中での顧客満足を追求するというのが妥当な考え方であり、量のあり方 = 商品マーケットと顧客接点のあり方を考える指針となります。
ID以外全ての個人情報を剥ぎ取っても残るID-POSデータの本質は接点記録であり、時系列的には利用行動記録であるという点に尽きます。
一つでも強い接点があれば来店時にはそれなりの買い物をしてくれますし、一つの接点をきっかけに今後店全体を気に入ってもらえる可能性も残されますので、一つであってもその顧客との間に現に接点があるという事実が大事です。
以上、ID-POSの基本指標 ID数とID回数についてでした。