” ニーズが見える ” ID-POS分析
数値には大きくボリュームに関する数値と、ボリュームの内訳を示す数値があります。
例えばPOS分析で商品選定を行う際に、ボリュームである粗利高で商品を選定する事はあっても、内訳である粗利率で商品を選定する事はありません。
幾ら粗利率が高い商品でも、顧客に望まれていなければ粗利高を望めないからです。
これはID-POS分析においても同じ事ですが、内訳であるID金額(利用者一人平均総支出)を重視する方が意外に多く見られる為、一筆執ってみたいと思います。
金額 = ID数 ✕ ID金額
= ID数 ✕ ID回数 ✕ 客単価
= ID数 ✕ ID回数 ✕ 客点数 ✕ 点単価
商品選定としてはレアなケースですが、例えばOne To One政策でクーポンを出す場合、個客はどの商品のクーポンを一番喜ぶでしょうか?
肉が好きか、魚が好きか、野菜が好きか、個人の好みはそれぞれ違います。
何を都度買い、何をまとめ買いしたいのかも商品特性こそあれ人それぞれです。
夫婦二人暮らしか、家族四人世帯か、はたまた収入等によってもID回数、客単価は変わります。
よって、個人で見れば各人毎の期間内支出が一番多いものこそが好み/クーポンで家計が助かり喜ぶものと見做すのがおおよそ妥当と言えるでしょう。
この時確かに「ID金額が一番高い商品を選定すべき」という文法が成り立ちますが、このケースにおいてはID数=1人である為、ID金額=買上金額となり、最早ID金額は平均値ではありません。
やはりボリューム(この場合買上金額)で商品を選定するという事となります。
販促商品を選定したり、カット商品を選定したり、ほとんどのケースにおける商品選定は商品視点の政策、マス政策です。
如何にID-POS分析と言えども、この際顧客はID数という数字として十把一絡げに束で扱われます。
しかし、販促商品を選定する時どんな商品を選定したいでしょうか?販促の本義として「極力多くの人に響き、極力多くの人に来店してもらえる」商品では無いでしょうか?カット商品を選定する時どんな商品を選定したいでしょうか?「極力多くの人をがっかりさせず、極力多くの人を店舗離反させない」商品では無いでしょうか?
そう、私たちが競合と実質奪い合っている何にも増して重要な根源は、単品売上でも部門売上でも無く、店を利用するID数そのものであり、あとの指標は従属的なものです。
これがあってはじめてID回数=1と客単価が生まれ、それを改善して行く余地が生まれます。
経営者視点/店長視点で見た場合、各部門政策/商品政策においては何より店舗の利用ID数が増える/極力減らない配慮をお願いしたいところです。
顧客視点から見ても、ID回数が少なかろうと、客単価が低かろうと「必要なものは必要」なのですから、多くの顧客が支持している商品程カットしてもらいたく無いところです。
必ずしも売上金額と比例しない根源的指標である利用ID数というボリュームが分かる事が、年代でもランクでも無いID-POS分析の第一の意義です。
(商品と顧客の接点サイズを示すID数に着目する事こそが、マーケティング視点です。)
さて、顧客は併買を行いますので、各商品間でカウントされているID数は一部重複します。
その為、図のようにID数第三位の商品の方がID数第二位の商品よりもユニークID数は多いと言ったケースがままあります(同一カテゴリー内の単品同士であれば、重複の多さは代替可能性の高さを表します)。
複数商品を単にID数順で選定してしまうと、一部の顧客の一部の用途機能に偏り「極力多くの人に響き、極力多くの人に来店してもらえる」商品選定になりません。
この利用ID数の重複(併買)が分かる事がID-POS分析の第二の意義です。
この段に及んで政策は、ようやくOne To One政策でも、マス政策でも無い実行可能∧実効性のあるセグメント政策(マーケット・セグメンテーション)となります。
根源的指標である利用ID数というボリュームを活かしつつ、利用ID数の重複(併買)に配慮した商品選定、セグメント政策を行うのが BiZOOPe の Tapir_MK です。
ご興味頂けましたら Tapir_MKによるマーケティングの教科書 を併せて御覧ください。
利用者一人、ID金額十万円の商品の売上金額は十万円です。
利用者十人、ID金額一万円の商品の売上金額も同じく十万円です。
POS分析からすればどちらも同じ売上の商品としか見えませんが、どちらの商品を選びますか?
十人の顧客は店内で「その商品だけ」を買っている訳では無いのです。