” ニーズが見える ” ID-POS分析
本稿は ID-POSのすゝめ の続きですので、未読の方はまずID-POSのすゝめ をお読み下さい。
ID-POSのすゝめ は導入部故に、書いてある事自体は もっともで簡単そうに見えてしまうのですが、その理屈を実際に商品のカット/採用に使おうとすると、「もうPOSでいいじゃん!」「騙された!」って位実行不可能な現実が待ち構えています。
その為、BiZOOPe のメニュー Tapir_MKにこれを代理処理させる事で、ID-POSの美味しいとこだけを簡単に享受して頂こう!と考えたのですが。。。
何だかんだみなさん、その理屈が「腹落ち」しないと、やっぱり使って頂けないようですorz
一方で腹落ちして頂く為に理屈の説明をすると「難しい」って嫌われちゃうのが辛い所でして。。。
今回はID-POSのすゝめ の続きとして、カット/採用に使う商品の採用順に絞って、「これ以上簡単になんて出来るかッ!」っていうレベルに迄平易化した理屈を書いてみます。
カット/採用だけでも常にこの数字を使って頂けたなら、競合に徐々に大きな差をつけて行く事ができる筈ですから。。。
平易化の為ID-POSのすゝめ に引き続き3商品と4人の顧客との接点にデフォルメしており、生々しい説得力には欠けると思いますが、想像力を働かせてご覧頂けましたら幸いです。
併買が分かると言う事は非併買が分かると言う事です。ID回数(頻度)が分かるという事は”頻度”の無い世界 が分かるという事です。
目に見えるものばかりに拘泥するので無く、こういう発想大事です。
ID-POSのすゝめ では「ID数が分かる」「併買が分かる」事がID-POSの二大メリットである事を解説しました。
またこの2つを利用して、商品を採用すべき順番/カットすべき順番が振れる事に触れました。
図はID-POSのすゝめ の最後に掲載したものです。
図で顧客Aは商品1と商品2を併買しています。
これはどちらの商品を利用する事で得られるメリットも、自分にとっては割と近しいものと考えているからです。
売り手視点からは本当に近しい(代替可能な)商品同士なのであれば、在庫・作業を減らす為にどちらか一方をカットしたいところです。
顧客Dは商品3以外の商品は非併買です。
これは商品3を利用する事で自分が得られる独自のメリットは、他からは遠く離れているものと考えているからです。
これは商品2に対する顧客B、顧客Cについても同様です。
遠く離れている=距離ですから、顧客B、C、Dのような非併買顧客の割合が、商品間の距離になります。
売り手視点からは近しい商品同士を販促に掛けても、顧客がカニバリしますから、遠く離れている商品同士を採用したいところです。
2つの商品から構成されたマーケットにおいて、いづれかの商品を買っている人をマーケット参加者とします。
マーケット参加者中、どちらか片方の商品しか買っていない人を、双方の商品の関係を”遠い”と感じている非併買者とします。
マーケット参加者中の非併買者の割合が多ければ多い程、この2つの商品の関係を”遠い”と捉えている顧客が多数派である事を意味します。
ここに前図の商品1〜3と顧客A〜Dを当て嵌めて行くと図のようになります。
例えば商品2と商品3で構成されたマーケットには、顧客A〜Dの全員が参加しており、誰もがどちらか一方の商品しか買っていない(一方を選択対象としていない)事を図は示しています。
薄いピンクで網掛けされた分母(マーケット参加者)の人数と、分子(非併買者)の人数を数えると図のようになります。
引き続き商品2と商品3で構成されたマーケットで言うと、マーケット参加者4人中4人が商品2と商品3の関係性を”遠い”と判断しているという事になります。
この割り算を計算する事で、図のようにマーケット参加者に占める相互の非併買者の割合=非併買者率が求められます。
これがマーケット参加者である顧客から見た各商品間の距離に当たります。
※.商品1−商品2と商品2−商品1では、視点が逆になっただけで、商品間距離は同じ値を取ります。
※.自分と自分の距離は”近い”どころか”一致”する訳ですから、商品間距離=0%です。
※.基本的な考え方はこの通りですが、当然プロである我々の計算には、競合他社には思いもつかない一手間二手間が加えられていますw
※.この表を専門的な用語で「商品間距離行列表」と言います。
前図から商品1と2はどちらも67%の人が互いを”遠い”と感じており、商品3と商品1、商品3と商品2はどちらも100%の人が互いを”遠い”と感じ利用していない事から、これを可視化すると、図のトーナメント表のようなものとなります=マーケット構造図。
※.この図も専門的な用語で言うと、商品間距離行列表のクラスター分析結果=「デンドログラム」と言います。
マーケットが可視化/構造化できると言う事は、従来漠然と1つにしか見えていなかったマーケットというものを、1〜商品数迄任意の数に、顧客視点から分割できるようになる事を意味しています=マーケット・セグメンテーション。
マーケットが1つにしか見えていない流通事業者(POS分析)と、同じマーケットを2つにも3つにも分けて手を打つ事の出来る流通事業者(ID-POS分析)、最終的にどちらが勝つと思われますか?
マーケットが1つ(POS分析の世界)の時、1つのマス・マーケットを代表する=支持ID数最多の商品に採用順1位を振ります。
もしも図のカテゴリーから一品だけ商品を採用するのであれば、ID数的に最も多くの顧客に響く商品2を採用すべきだという事です。
売上でも粗利でも無く、ID数で採用順1位を振るという部分だけが、ID-POSならではの考え方となりますが、このレベルで戦っていては、ID-POSが競争力と迄は言えません。
ID数から採用順を決定する事に疑問を感じられる方はお手数ですが、再度ID-POSのすゝめ から読み返してみて下さい。
ここからがID-POSのID数、併買が分かる事の本領です。
図のようにマーケットが2つに分かれる”距離”でマーケット構造を分断した時、一方のマーケットが、商品が一品も採用されていない空白マーケットとなります。
その為、その空白マーケットを代表する=利用ID数最多の商品(と言っても図の場合、商品3だけになりますが。。。)に採用順2位を振ります。
ここ迄の採用で、一人残された顧客Dを加えた全顧客を一通り網羅しました。
マーケティングですから、経済合理性の範囲内で接点、チャネルが確保されている事が重要です。
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これをマーケット数=商品数になる迄、マーケットの分断数を一つづつ増やしながら、都度表出して来る空白マーケットの、利用ID数最多商品に採用順を振るという作業を繰り返して行きます。
ID-POSのすゝめ で例示したように、これらはいすれも売上高3万円/月の商品です。
それでもチラシに一品載せるなら商品2、一品カットするなら商品1である事を採用順は示しています。
ID数と併買が分からなければ、感覚でしか商品の採用/カットは出来なかった事でしょう。
よしんばID-POSを導入していたとしても、年代やロイヤルと言った情緒的分析にかまけて居たら、それもやはり感覚の延長に過ぎません。
長くなりましたが、以上が商品をカット/採用する為の採用順の振り方の理屈であり、ID数、併買が分かる事の強力な側面です。
究極は「一品一品に顧客が付いている」為、商品カットという売り手の都合を通す為には、どのような方法であろうと一部の買い手の都合に背かざるを得ません。
採用順はマスボリューム(ID数)を求める売り手の都合と、デンドログラムの形(併買)に現れる「商品3しか欲しくない!」といった買い手の都合を利用した折衷案であり、少なくとも「粗利率が高いから」「ロイヤル顧客だから」と、売り手/買い手どちらか一方の都合によるものではありません。
背かざるを得ない顧客を最小限に、喜ぶ顧客を最大限に、が採用順の本質であり、マーケティングの本質でもあります。
今回はID数と併買から得られるものとして、採用順に絞って解説しましたが、その他にもマーケット・セグメンテーション(seg_f & seg_n)や並び順、レコメンドといったものがあります。
興味のある方はTapir_MKによるマーケティングの教科書を御覧ください。
理屈は響かなくとも、事例には響き腹落ちする方も居らっしゃるかと思います。
Tapir_MKは同じロジックで店舗のドミナント戦略から重点カテゴリー選定、商品のカット迄カバーし、実際に棚割、チラシ、クーポンと目覚ましい事例を挙げています。
これらに興味のある方は(ユーザさま保護の為大分デフォルメされていますが)これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう! 内の幾つかの記事をご参照頂ければ幸いです。
いづれにせよ「理屈は分からんかったけど、こんだけ説明したり色々書いたりしてるんだから、まぁ信じてやっか!」位に思って頂けると有り難い限りですw