ニーズが見える ID-POS分析
本来は顧客の利用行動を追いかける為の分析メニューですが、”商品の指標”であるトライアル率/リピート率を手っ取り早く認識できるよう、期間推移と言うよりは期間比較で見て行きます。
その為分析期間は図のように、月で二期間とします。
トライアルに該当するオプションの「初購入」の定義は図のように、デフォルトで「過去365日購入履歴なし」となっています。
「3ヶ月も利用が無ければトライアルも同然だろ!?」といった担当者の感覚や、商品特性に応じてこの日数は変更する事ができます。
その他の分析条件は、全店舗、「おむつ」の全商品としてみました。
※.操作について詳しくはマニュアルをご覧下さい。
まず解説を簡単にする為に、以降では図の2017/06を当月、2017/07を翌月と読み替えます。
図中で最も売れている「花王メリーズパンツL44枚」に特に着目して行きます。
リピート推移は「当月利用者が、翌月以降どうなって行くのか?」利用の変化と行く末を追うものですので、図の「花王メリーズパンツL44枚」で言えば、当月購入者の2,225人が翌月以降も引き続き分析における主題=母集団です。
この母集団が翌月から購入者と未購入者に分岐し、月を経る毎に減耗して行く事を図は暗示しています。
以上から、母集団中翌月購入の987人、43.77%が、世に言うリピート率に該当します(本質は翌月購入者の母集団に対する構成比です)。
分析結果画面右上の「詳細」をクリックすると、図のように購入者が「再購入」と「初購入」に展開されます。
先のオプション設定上、当月以前の365日の間に購入が無かった人が「初購入」ですので、「花王メリーズパンツL44枚」の母集団中当月初購入の623人、27.63%が、世に言うトライアル率に該当します(本質は当月初購入者の母集団に対する構成比です)。
当月以前の365日の間に「花王メリーズパンツL44枚」の購入があった再購入者1,632人中の翌月購入者807人が、リピーター中のリピーター、購入が無かった初購入者623人中の翌月購入者180人がトライアラー中のリピーターです。
計算の必要はありますが通常、リピーターのリピート率※1と、トライアラーのリピート率※2には乖離があります。
前者の方が「根強い人気」のようなアピールに使うには向いていますし、後者の方がトライアルを増やし、かつ定着してもらうという政策の検証には向いています。
このようにリピート推移という分析メニューは、当月利用者という母集団の行く末を、翌月以降も構成比という形で、整合性を保ったまま追い続けて行くマトリクスであり、その経過中の構成比の一つとしてリピート率、トライアル率が表出しています。
※1.「花王メリーズパンツL44枚」で言うと、807人÷1,632人=49.45%
※2.「花王メリーズパンツL44枚」で言うと、180人÷632人=28.48%
子どもの成長に伴い、翌月にはMサイズのおむつの未購入者となり、Lサイズのおむつの初購入者になるといった事は自然にあります。
これによってMサイズがリピートされなくなる事は、メーカー視点においても小売視点においても何ら問題ありません。
家庭の状況や価値観の変化に応じて、顧客が翌月にはあるブランドの未購入者となり、別のブランドの初購入者になるといった事もあり得ます。
ブランドスイッチはメーカー視点では問題ですが、小売視点では自社の売り場内でのスイッチでさえあればリピートと同義ですので、大した問題ではありません(寧ろ顧客がスイッチしたくなった際の、受け皿となる品揃えが存在している事が重要)。
小売にとって深刻なのは、「おむつ」の利用を自社の売り場から、他社の売り場にスイッチされてしまう事です。
それが如実に現れるのが、本分析の本質である合計行です(特に店舗の指定を”全店”とした際の)。
図からは43.87%の顧客が、翌月には非継続利用化している事が分かります。
これを”商品の指標”としてでは無く、本来の利用推移で見てみると、利用翌月度だけが二桁%レベルと桁違いに非継続利用化しており、以降は一桁%以下である程度緩やかに減耗が進んで行っている事が分かります。
バラつきはありますが、単純に翌月以降の非継続利用化の平均である1.86%を、おむつ卒業や引っ越し等による自然減耗平均と仮定すれば、利用翌月度に発生した43.87%−1.86%=42.01%を自然でない減耗と捉える事ができます。
「おむつ」は通常毎月必要なものですから、自然減耗を除いた42.01%の人たちは、おおよそ翌月には他社の売り場を利用したのでしょう。
多くのメーカーさんがリピート率という指標を、主に商品固有の”強み”と見立て、チャチャッと取得したいのでしょうけれど ー
・そもそもその商品は、顧客に他社の売り場にスイッチされない程度の競争力(主に価格)があったのか?
・顧客が商品をスイッチしたくなった際、受け皿となる品揃えがちゃんと売り場には存在していたのか?
・顧客が商品をスイッチしたくなった際、スムーズに次の受け皿に気づき、スイッチし易いような陳列になっていたのか?
といった事の方が、顧客(と小売)にとっては桁違いに重要です。
トライアルしてもらう/リピートしてもらう/スイッチしてもらう/併買してもらう事も必要でしょうが、してもらう ばかりで 応える 事をしなければ、顧客は商品どころか、売り場からも離れて行ってしまいます。
因みに単品についても、次の図のように売り場と類似した傾向を示します。
一般に言われる”リピート率”は、2017/07の43.77%という、推移中では最好調時の構成比を切り取って来たものに過ぎません。
また、商品のトライアル人数が多い事は集客にとってプラスであり、リピート人数が多い事は再来店にとってプラスです。
どちらか片方の”率”が多い事をプラスと見るのは間違っています。
トライアル/リピートどちらの人数もプラスであるならば、単純に言って利用人数=ID数が多い事をプラスと見てしまえば良いのです。
以上、BiZOOPeにおけるトライアル/リピートの見方と扱いについてでした。
「ではメーカーは具体的にどうすれば良いのか?」
「売り場は卸や小売の範疇では無いのか?」
「顧客にしてもらう ばかりで無く 応える とはどういう事か?」
なんだか元も子もない話になっちゃいましたが、この続きは シン・Tapir−1.0を使ってGW明けに考察してみたいと思います。
商売の方も、お休みの方も、どうか共に”良い”GWをお迎え下さい。