ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
【ID-POSカテゴリー研究】
ワインカテゴリー

ID-POS分析ってどんなものが出て来るのか?どんな役に立つのか?

実際に自身が業務で携わっているカテゴリーを例にしてくれないと、人間なかなかピンと来ないものですよね。

そこで、不定期に色々なカテゴリーをつまみ食いしながら、ID-POS分析結果の一例として、クラスター分析結果の5図表を例示してみたいと思います。

顧客政策だけで無く、商品政策をご利用、ご来店に繋げるのがID-POS分析であり、その意味ではマーケティングそのものです。

毎回文章構造はほぼそのままに、掲載する図表(図表クリックでダウンロード可能)を替えて連載して行くつもりですが、図表を開いて「自分だったらどうするか?」を想像しながらお読み頂ければ幸いです。

回目は ワイン カテゴリーです。

尚、主に業務に使う図表は「明細表」以降の図表となります。

集計のレギュレーション

集計には実データを用いていますが、見易さと提供元への配慮から、以下のような仕様で集計を行っています。

現状や、真実を反映している訳では無い点にご留意下さい。

また、勘違いされる方が居らっしゃいますが、サイバーリンクスでは市場データの販売は行っておりませんので悪しからずご了承願います。

利用メニューBiZOOPeTapir_MKテンポラリーTapirにおいても利用可能なメニュー)

期間:2018年5月28日 〜 26週間

店舗:静岡地区の複数店舗

商品:デモデータのカテゴリーの一つから、PBを除いたID数トップ50商品(デンドログラムの見易さ重視)

表示:一部の列を追加/削除/非表示しています。

※.全く同じ商品で集計しても、期間や店舗によってマーケット参加者である顧客とその利用行動が変化しますので、
  分析結果も異なります。(故に時宜に適した、各チェーン/地区等で固有の
完全に差別化された政策立案が可能です。)

1.距離行列表(.csv)

図表の說明

この表が全てのスタートです。
(表をクリックで開きます)

全ての商品間には「距離」=「顧客にとっての、商品を利用する事で得られるメリットの近さ/遠さ」があります。

距離行列表は縦軸と横軸に同じ商品が、同じ順番で並んだクロス集計表で、中身の数字が商品相互の「距離」になります。

先頭行の商品と先頭列の商品は同一商品 = 同一利用メリットなので、距離=0 のように、自分自身との距離については0となっています。

距離は顧客による相対的利用行動の相違から算出されますが、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

距離行列表_ワイン

図表の用途

業務への利用と言うよりは主にロジック、根拠を示す為の図表と言えます。

これ以降の図表はこれを業務に使えるよう、クラスター化したものになりますが、商品間の距離は実際三次元的なものですので「この商品を最も脅かすライバル商品は何か?」を厳密に知りたいといったケースにおいては、この表が役立ちます。

2.デンドログラム(.png)

図表の說明

前出の距離行列表をクラスター分析(クラスター = 塊を作る為の分析)にかけた結果です。

近い商品同士の組み合わせから順繰りにくっつけて行き、全商品が一つの塊になる迄これを繰り返します。

図表の各商品名の位置から、トーナメント表のような結合部迄の”高さ”が距離を表しています。

距離行列表中、最も遠い商品同士の距離と同じ高さで、デンドログラムを水平に切った際にできる塊(後述のseg_f)が、青と緑の線の交互で表現されています。

距離行列表中の商品間距離の平均と同じ高さで、デンドログラムを水平に切った際にできる塊(後述のseg_n)が、赤と黄の線の交互で表現されています。

デンドログラムが作られる過程で、商品が関連する順序に並びますので、図表の右から左、もしくは左から右の商品の並びが、後述する明細表の「並び順」になります。

図表の用途

距離行列表と同じく、主に「何故、そのようなセグメントが作られたのか?」のロジック、根拠を示す為の図表と言えます。

同じセグメント内の商品同士にどの程度の距離の違いがあるのかを目視したいと言った場合にも使えます。

(ご覧頂く相手に対して「ウケが良い」という話もありますw)

3.明細表(.xlsx)

図表の說明

最も業務で使う最重要帳票です。

主要な項目について説明します。
(表をクリックで開きます)

【seg_f】

セグメントfar(遠い)の略で、デンドログラム上で青と緑の線の交互で表現されていた塊を表し、この塊中の商品同士は「最もかけ離れた商品同士程には離れていない」という解釈になります。

顧客にとっては漠然とした来店動機もしくは売場の利用動機として捉えられます。

【seg_n】

セグメントnear(近い)の略で、デンドログラム上でと黄の線の交互で表現されていた塊を表し、この塊中の商品同士は「選択利用されている ≒ 類似利用メリットである」という解釈になります。

顧客の売場の利用目的、利用行動はある程度パターン化して来ます(大体何を買うかが人と時期によって決まって来る)ので「時にこれを利用メリットと捉えて買い回りしている顧客の一群が居る」と解釈され、顧客にとってのより具体的な利用動機選択の幅と捉えられます。

【並び順】

ざっくりと「より数字が近いもの程、顧客にとっての利用メリットが近い/商品同士の関連性が高い」事を表す指標です。

【採用順】

デンドログラムをその最上部付近、2本の垂直線と交わる位置で水平に切ると、2つの塊(クラスター)が生まれます。

これは売場をデンドログラムの左と右、顧客にとって大きくかけ離れた2つの利用メリットの塊に分けた事を意味します。

それぞれの利用メリットを代表する(= ID数/加重平均ID数が最も多い)商品を一品づつを選抜し、これに1位、2位と順位を振ります。

これを「売場を3つの利用メリットに分けて」から、最終的には「売場を商品数に分けて」迄繰り返しながら順位を振って行ったのが採用順です。

より離れた利用メリットを代表するものから順に採用されて行くので、採用商品にバラエティーが生まれ、より多くの顧客に重複無く響く順序となります。

【レコメンド】

各seg_fを代表する商品に一品づつに「1st」、各seg_nを代表する商品一品づつに「2nd」と振られます。

レコメンドがついた商品が、顧客、売場に必要とされる「最低品揃え」=最低限利用メリットの代替、吸収が可能な1商品と考えられます。


これらの算出ロジックについて詳しくはこちらをご覧ください。

明細表_ワイン

図表の用途

棚割り(プラノグラム)とフロアレイアウト/ゴンドラレイアウト

利用メリットの存在に気づいてもらえなければ、そこに利用メリットは存在しないも同然です。

まずseg_fで大まかにゾーニングする事で、遠目に利用メリットが塊として目に飛び込んで来る「気づかれ易い」売場になります。

次いでseg_nでゾーニングする事で、棚前迄近づいた際に、自分の選択範囲が固まっている「選び易く、手に取りやすい」売場になります。

最後に並び順を参考に最終的な商品配置を整える事で、結果として「買い逃し ≒ 他店利用機会の少ない」売場になります。

セグメントも並び順も、どんな一個人にも当て嵌まるという話では無く、多数決の結果であり確率の問題です。

本表を単品では無く、部門やカテゴリーと言った集計単位で作成した場合、同じように床割り(フロアレイアウトやゴンドラレイアウト)に用いる事ができます。

単品クーポン

図表1列目の「サントリーデリカメゾン 白720ml」の単品クーポンを出すと仮定した際に、発行対象の顧客はヒット率順に

「サントリーデリカメゾン 白720ml」の利用顧客 :189

「サントリーデリカメゾン 白720ml」が所属するseg_n=f1_n1内のいづれかの利用顧客: 199

「サントリーデリカメゾン 白720ml」が所属するseg_f=f1内のいづれかの利用顧客:395

となります。

定義上、seg_fの範囲を超えると「かけ離れた利用メリット」となり、ヒット率が低下しますので、予算に応じてこれらいづれかの単位の利用顧客にクーポンを発行します(ある意味seg_n内の商品群がブランドスイッチのターゲット、seg_f内の商品群がブランドスイッチの限界と言えます)。

個々の顧客の価値観はまちまちですので、ここを超えて大勢の顧客にクーポンを発行するよりも、同じような方法でなるべくバラエティーに富んだ(別セグメントの)クーポンを発行する方が、より多くの人来店頻度を効率的に高める事に繋がります。

商品カット/品揃え絞り込み/全店品揃え

採用順が下位のものから差し支え無さそうなものをカットして行きます。

来店動機は「他店では得られない利用メリット」(最も強力なのは”近さ”)に起因しており、その一部は「他店では売っていない商品」に起因しています。

何故他店では売っていないのか?と問われれば、それはしばしば「売れていない」からです。

ID-POS分析では商品単体が売れているか/いないかよりも、その商品を来店動機としているかもしれない顧客の一群から、来店動機そのものを奪ってしまう事を恐れます。

最低限レコメンド=1st〜2ndの商品は、ロス等で余程の支障が無い限りカットせず、最低品揃えとして全店扱いした方が良いと考えられます。

【チラシ/エンド陳列】

採用順上位で、レコメンドがついた商品をチラシ/エンドに採用してあげれば、店舗/売場に利用メリットが存在する事を、幅広い顧客に、重複無く明示、気づきを与える事が可能です。

実際この用途で用いる場合には、カテゴリーよりも来店動機となりそうな商品群/売場の構成商品群を分析にかけてやる事が適当です。

4.seg_fサマリ表(.xlsx)

図表の說明

seg_fのサマリ結果です。
(表をクリックで開きます)

seg_fは、顧客にとって利用メリット認識がかけ離れている商品群/価値観の異なる顧客群(またはその時々の顧客の利用目的の違い)を表しています。その為 ー

一方のマーケット分野における価格変化が、他方のマーケット分野における価格変化を誘導しない場合、この二つのマーケット分野は互いにセグメンテーションされている。

マーケティングとは、新しい策を打ち出す事ではなく、マーケット・セグメンテーションのメリットを活かすことにある。

というゴールドラットの定義に基づけば、この表は正に「ワイン」というマーケットをつに分けたマーケット・セグメンテーション表、マーケティング戦略表と言えます。

地味な割に重要な表です。

seg_f_ワイン

図表の用途

【新商品の開発/投入】

マーケティングにおいて最も強力な打ち手の一つは「マーケット創造」です。

明細表と見比べながら、seg_f=f1〜fのセグメントの範囲に収まり切らない価値、利用メリットは無いか?もしかしたら顧客にとっての新たな価値、利用目的となるのでは無いか?といった視点を持つ事が重要です。

既存のマーケットセグメントに新商品を投入する際には、seg_f=fのような構成商品数の多いレッドオーシャンのマーケットについては、カットもしくは、追加では無く入れ替えによる売場の鮮度維持という考え方になります。
商品の追加であれば、マーケットサイズ(ID数)に対して商品数の少ないセグメントを狙って行くのが得策です。

商品の入れ替え、追加はマーケット創造の可能性だけで無く、「面白みのある売場」という顧客にとっての来店動機を生み出す事にも通じます。

【マーケット/売場理解】

年代構成比を添える事で、各マーケットセグメントの顧客が持つ価値観、求める利用メリットへの理解を深め、売場全体への理解を助けます。

間違ってはいけないのは年代毎の政策立案では無く、あくまでもマーケットセグメント毎の政策立案でなくてはならないという点です。
(例えば20代全員が子育て世代という事はあり得ません。20代の利用が多いセグメントであり、そこに子供向け商材が多く見られるという事実から、”若い夫婦の為の”、”小さな子供向けの”といった価値観と求めるメリットの接点=
マーケットが存在すると仮説できます。)

中でもランチェスターの弱者の戦略よろしく、どのマーケットセグメントにおいて圧倒的No.1になるのか?を決め、徹底的に理解する事が重要です。

5.seg_nサマリ表(.xlsx)

図表の說明

seg_nのサマリ結果です。
(表をクリックで開きます)

顧客はそれぞれのseg_nを"異なる利用メリット"として認識していますが、seg_f間の場合と異なり、同一seg_f内にあれば、一方のマーケット分野(例えばf1_n1)における政策変化が、他方のマーケット分野(例えばf1_n2)における利用の変化を誘導する程度には”近い”セグメントです。

同一seg_n内の商品同士は通常カニバリゼーションの関係にあり、類似利用メリット、代替可能品と見做されます。

ところがカテゴリーに登録された品種が、一つのマーケットとして捉えるには広範に渡っており、特にその回転も遅いようなケースにおいては、seg_n内の商品同士が必ずしも同一利用メリットとはならず、同一の価値観を持った顧客群にとっての主たる利用目的買い回りの範囲のように解釈される結果となる為、留意が必要です(例えば「和風調味」カテゴリーで、砂糖と醤油が同一seg_n内に分類されるといったケースがありますが、砂糖と醤油が代替可能であるという事はあり得ません。このような場合、「砂糖または醤油をその売場の主たる利用目的としている顧客群が居る」と解釈されます)。

seg_n_ワイン

図表の用途

【品揃え検討】

seg_nに所属する商品の数は、同一利用メリット内で利用者に対してどこまでの選択肢、バラエティーを提供するか?を表します。

利用メリット(seg_n)毎最低限1商品を基本に、マーケットサイズ(ID数)に応じた選択肢をバランスよく備える事が重要です。

ID数とその合計について

同じ売場であっても、その時々(気分やイベント、ライフステージ)で顧客の利用目的は変わります。

その為、顧客の一部はセグメント間の(主に期間)併買も行います。

例示されている図表群のID数を合計すると合計行の値を上回るのはその為ですが、腑に落ちない方は併せて「ID-POSの基本指標:ID数と客数(ID回数)」をご覧ください。