” ニーズが見える ” ID-POS分析
以前 ドラッグストアを支える代表的利用目的24カテゴリー や 重点カテゴリー設定とカテゴリークーポン といったカテゴリーを題材とした記事を書きましたが、デモデータ提供元から「ウチのカテゴリーは小分類じゃ無くて中分類ですよ」と言われ、いつか中分類で分析した記事を書かなきゃなぁ〜と思っていました。
最近単品や個人といった細かい記事ばかり書いていた事もあり、「ライフスタイル」に迫る 〜 顧客も色々 も単品では無く中分類であればもっとライフスタイル的なものが見えて来るんだよなぁ〜という思いもありました。
厳密に言えば「ライフスタイル」と言うよりは「お店をおおよそ何屋さんと見做して利用している人/利用形態が多いのか?」という話になります。
顧客から見たお店の利用目的は様々です。皆が皆、常にお店の全てを求めて来店する訳ではありません。
例えばスーパーを「お弁当屋さん」として利用する人や、ドラッグストアを「化粧品屋さん」として利用する人が居ます。
ドラッグストアを「化粧品屋さん」と見做している人は化粧品を利用し、他のカテゴリーを余り利用しません=非併買。
ドラッグストアを「お酒屋さん」と見做している人はお酒を利用し、他のカテゴリーを余り利用しません=非併買。
「化粧品屋さん」と見做していても「資生堂」以外利用しない人も居ますし、「お酒屋さん」と見做していても「ビール」以外利用しない人も居ます=非併買。
それでも全体的には「資生堂とビール」よりは「資生堂とコーセー」、「ビールと発泡酒」を利用する人が多い事もまた事実です=併買。
このようなカテゴリー相互の顧客の利用関係を統計解析に掛ける事で、「我が店をおおよそ何屋さんと見做して来店している人が多いのか?」「何をお店の利用目的として来店している人が多いのか?」を類型化する事ができます。
今回解析に掛けたところ、売り場は大きく3つの利用目的(seg_f=f1〜f3)に類型化されました。
利用者の77.78%を占める seg_f=f1 は、その配下で 5つのより具体的な利用目的(seg_n=f1_n1〜f1_n5 )に別れました。
利用者の82.44%を占める seg_f=f2 は別れずに単独で存在(seg_n=f2_n6)し、利用者の97.94%を占める seg_f=f3 は、その配下で 3つのより具体的な利用目的(seg_n=f1_n7〜f1_n9)に別れました。
seg_f=f1〜f3の利用者率の和が100%を超える(258.16%)のは、類型化された利用目的間での重複=併買が発生するからです。
利用目的が化粧品屋さんだけに偏っている人も居ますが、その時々に応じて「今日は化粧品屋さんとして/お酒屋さんとして」と異なる利用目的を持って来店する人、一度の来店で化粧品屋さんとお酒屋さん双方のメリットを享受する人も居ます。
以下ではその類型化された具体的お店の利用目的=9つの seg_n の内容と、”重点”と目されるカテゴリーについて見て行きましょう。
※.以下、一部不都合なカテゴリーを非表示としています。
酒類のほとんどと産直の全てがこのセグメントに集結しており、メイクも幾つか見られます。
強引な解釈ですが、おおよそこんな買い周りをしている人と考えると、顧客属性的にシルバーっぽさが感じられる利用目的です。
若いと酒は買わないという訳では無いのですが、実際に30代以降、中でも60代以降の利用が顕著な顧客接点です。
各利用目的に一つでも競合他店を圧倒するカテゴリーを持っていれば、幅広い顧客の来店の動機付けに繋がります。
この中から重点カテゴリーを一つだけ選ぶとすれば、当該接点利用者のカバー率が最も高い「スピリッツ」となります。
部門の売上も重要ですが、「より多くの顧客に店に来てもらう」「より多くの顧客にとって関心がある」事が店の売上にとってより重要だからです。
理屈上は図中の「採用順」昇順で利用者率累計が100%前後になる迄を”重点”としたい所ですが、多すぎても「実行不可能」に陥ってしまう為、やめておきましょう。
出費(金額)が多い「大人用おむつ」、利用者は少ないが個人出費(ID金額)が高い「ウィズアウト」を低価格で提供する事も、家計が助かり利用動機に直結する可能性があります。
ギフト券やサービスっぽいもの、調剤のついで買い的な要素が集積された利用者極小の利用目的です。
未取扱店が多い場合や、極端に売れていないものに関しては非併買者の割合が多くなります。また取扱店内だけで相互の併買が発生しますので、このような顧客接点が表出します。
〜40代迄、中でも20歳未満(多分ギフトカード利用)と40代(多分調剤/メイク利用)が卓越するセグメントですので、2つの利用目的がこの中に混在している可能性もありますが、分ける意味に乏しい利用者率です。
重点カテゴリーとしては「アルージェ」の利用者率が50.50%と卓越します。
この利用目的中でNo.1とは言え、部門内の売上や粗利から”重点”を決めていたら「アルージェ」が重点カテゴリーに位置づけられる事は無いでしょうね。
100均を目的に買い物に来て、ついでにすぐに食べられるものを買って帰るという分りやすい利用形態ですが、こちらもある程度は未取扱店の多さに起因して表出している可能性が考えられます。
当然、取扱店ではそれなりに来店目的となっているからこそ表出して来る訳で、このようなクラスターが出て来る事が無意味という訳ではありません。
20代〜60代、中でも50代が卓越する顧客接点です。
重点としては利用者率、R率(この場合2回以上利用者率)ともに高く、当然この中ではメインの来店目的であろう100円均一が軸となります。
如何にもベビーです。
利用者がより限定されるカテゴリーだからこそ、全体では非併買の人の割合が多くなり、限定された利用者の中では併買の割合が多くなる事でこのような利用目的が明らかとなります。
20代、30代が卓越します。
重点カテゴリーを一つあげるならば利用者のカバー率が最も高く出費も多い「おむつ」となります。
seg_f=f1中で個人出費が最も高く、「採用順」でも「おむつ」に次ぐ「ミルク」を低価格で提供する事も、家計が助かり来店動機に直結する可能性があります。
ペットに加え、補助食品系やメイクと言った”美”、鎮痛、胃腸と言った”健康”の要素が見られる如何にもドラッグストア的な、seg_f=f1中で最も利用者率の高い顧客接点です。
これをもってリキュールを除く酒、風邪薬、目薬、外用薬を除く医薬品、バイネームのメイク類全てといったカテゴリーが全てseg_f=f1という利用目的中に網羅されましたので、seg_f=f1は大きく酒・HBC系の来店目的と言って良いかと思われます。
重点カテゴリーはseg_f=f1中で利用者のカバー率、出費共最も高い1stレコメンドの「ペット」となります。
個人出費が高い「資生堂」を低価格で提供する事も、家計が助かり来店動機に直結する可能性があります。
唯一seg_f=seg_nの独立した利用目的で、主に風邪予防、雑貨、バイネームで無い一般化粧品といった雑貨っぽさがあるものから構成され、顧客属性的に何処となくパーソナルな感じ、男性っぽさも感じさせます。
20代〜満遍無く利用されています。
最も解釈し難いセグメントでしたが、seg_f=f2は大きくお一人様系利用目的と言えるかもしれません?
重点カテゴリーは、利用者率、R率共に高い「デリカ・惣菜」です。
出費が多い「風邪薬」、個人出費が高い「ドリンク剤」を低価格で提供する事も、家計が助かり来店動機に直結する可能性があります。
実はドラッグストアで利用者の最も多い、ドラッグストアを食品スーパー/コンビニ替わりとしているような利用目的です。
食品スーパーの雑貨売り場で売られているような住居、台所周りの雑貨類もここに含まれますので「なる程!食品スーパーにおける雑貨の利便性とはこういう事か!」って感じです。
ほとんどの顧客がこの配下のカテゴリーのいずれかを利用しており、50代以下の各年代で満遍なく利用されています。
重点カテゴリーは利用者率、出費、個人出費の全てが seg_f=f3 中No.1の「菓子」です。
利用者数についてはセグメントを越えた全体の中でもNo.1のカテゴリーです。
衣洗、紙、オーラル、一般食品と、如何にもドラッグストア業態な最寄品です。
ドラッグストアらしさと言っても、これらはHBC系では無くどちらかと言うと食品系利用者寄りの利用目的として位置づけられるのですね。
チェリーピッカーが多いかも?とも思いましたが、いづれの利用者率、R率も50%を超え、近隣住民の利用動機において重要な接点と言えます。
30代以降で満遍なく利用されています。
重点カテゴリーは利用者率、R率、出費、個人出費の全てがセグメントNo.1の「一般食品」となります。
ここも解釈が難しい所ですが、生理用品に加え、強いて言えば屋外活動を想起させるような名前のカテゴリーが並びました。
30代以降で満遍なく利用されています。
このセグメントの存在で seg_f=f3 という利用目的の総括が難しくなりましたが、乱暴にまとめてしまえば「食と生活」みたいなところでしょうか?
重点カテゴリーは利用者率の最も高い「生理用品」です。
出費が多い「殺虫剤」、個人出費が高い「外用薬」を低価格で提供する事も、家計が助かり来店動機に直結する可能性があります。
あくまでも類型化ではありますが、理論上はこのような利用目的単位で売り場を構成すれば、利用目的の異なるそれぞれの人にとって自然な「見つけ易く、選びやすい、あれもこれも」売り場となる筈です。
f1_n1〜f5_n9の各単位及び表中の「並び順」も数字が近いもの程関連性が高い=近くにあった方が良いという事になります。
重点カテゴリーについては売り場のマグネットとして、またそれぞれに異なる幅広い利用目的に対して訴えかけるチラシ/クーポン対象として用いる事ができます。
利用目的は部門を跨ぎますが、流石に現実の売り場で部門を跨ぐのは顧客にとっても突飛過ぎる為、実際には部門毎に分析を行った方が良いでしょう。
【これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!】フロアレイアウト
【これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!】ゴンドラレイアウト
重要なのはこのような全体状況を「知る」事です。
また利用目的は部門を跨ぐ為、重点カテゴリーの選抜は部門内からのみならず、利用目的単位の中からも見定めるべきだと言うことです。
ここ迄のロジック詳細に興味のある方は Tapir_MKによるマーケティングの教科書 を御覧ください。
図表中の「採用順」「レコメンド」は利用ID数に基づいた項目ですので、特に判別にあたってカテゴリーの粒度が問題になります。
適切な分類粒度の考察については 【これからのID-POS活用を真剣に考えてみよう!】商品分類体系(カテゴリー) を御覧ください。