ID-POS意思決定支援クラウドサービスBiZOOPe
メーカー営業/ベンダー営業ID-POS提案必勝ノート
インサイトは”行動”から推し量る!
” ニーズが見える ” ID-POS分析
インサイトは”行動”から推し量る!
メーカー、卸、小売を問わずID-POSを理解している流通事業者さんは多くはありません。
ID-POSデータ活用の現場においてさえ、多くの流通事業者は「商品に付いている顧客」では無く「商品そのもの」を見ています。
また「顧客の利用を増やす」では無く「部門/商品の売上を増やす」事を考えています。(その象徴が 併売=併せ売り という言葉であり、本ページでは 併買=併せ買い と表記しています。)
その為「その小売業を利用している顧客」に目線を合わせ「利用を増やす」事に焦点を当てれば、提案は革新的なものとなり得ます。
ここでは、BiZOOPeの現実的メインユーザーであるメーカー、ベンダーの営業マンさん、マーケターさんから特に多く頂いた、提案に関するご質問を題材に、ID-POS提案の考え方について詳しく解説して行きます。
考え方自体は事実と常識から導き出されたものですが、ことID-POSという点から言ってほとんどの人が知らない常識ですので、いち早く提案に取り入れて頂く事で、強力な破壊力をもたらすものと思います(但しほとんどの人が知らない=組織に馴染みにくいと言う事でもありますorz)。
以下、目的とする箇所を個別に読んで頂いて結構ですが、全体としては順を追う事で理解がより進むように書かせて頂いています。
【自+相:マーケットは大きい程望ましい】
まず、「自+相」が、差し当たって提案で狙って行くマーケット=働きかけの対象 となります。
買った経験のある顧客に働きかけるには多少なりとも足がかりがありますが、一切買った経験の無い顧客に働きかけるには何の足がかりも無いからです。
例えば図では「青椒肉絲の素+ピーマン」マーケットは33,974人から構成されています。
マーケットは大きければ大きい程望ましい提案になります。
「マーケットを理解する」とはマーケットを分割(マーケット・セグメンテーション)解釈する事で、以下のように解釈されます。
【非併買顧客(自/相):誰の為に、何を売り込む提案か?】
「青椒肉絲の素+ピーマン」マーケットで言えばまず大きく、自側の非併買顧客(青椒肉絲の素は買った事があるが、ピーマンは買った事が無い130人)、相側の非併買顧客(ピーマンは買った事があるが、青椒肉絲の素は買った事が無い33,022人)、共通顧客(どちらも買った事がある計822人)に分かれます。
購買経験のある共通顧客が動くのは「当然過ぎる」ので、この場合敢えて訴求したいのは相互の非併買顧客になります。
よって、自側の非併買顧客の方が多ければ、顧客としては主に自ユーザーに向け、展開場所は主に自売場を想定した方が有効性が高くなり、提案としては主に相手商品に資する提案となります。
相手側の非併買顧客の方が多ければ、顧客としては主に相手ユーザーに向け、展開場所は主に相手売場を想定した方が有効性が高くなり、提案としては主に自商品に資する提案となります。
上図「青椒肉絲の素+ピーマン」の例ではマーケット中、ピーマンユーザーで青椒肉絲の素非併買の顧客が97.2%も居ますから、青椒肉絲の素からすれば大変肥沃な市場と言えます。
その為「ピーマンユーザーの為に、ピーマン売り場において、まずは主役であるピーマンの優れた利用メリットをきっちり示す(選択する利用者の彗眼を持ち上げる)。
その上でそのメリットを更に高める/取り入れ易くする為に、自商品の利用メリットが如何に有効か(栄養の吸収を高める/お子さんがたっぷり食べられる等)を示して補強する」というのが提案の本質となります。
提案にあたってはまず、ここをきっちりとブレずに押さえておく事です。
【共通顧客(同時/非同時):異質利用メリットのクロスMDか? 同質利用メリットの集積訴求か?】
夕食を青椒肉絲にしようと考えた場合ですら、必ずしも青椒肉絲の素とピーマンを同時に買って行く訳ではありませんが、ある程度長期間(本図の場合13週集計)で見て行けば、同時に買う顧客が高い確率で現れて来ます。
共通顧客中の同時顧客とは、期間中に同時購買を一度でも行った事のある顧客、非同時顧客とは、期間中の同時購買を一度も行った事が無い顧客を指します。
同時>非同時の場合「双方の商品を利用する事によって得られるメリットは、それぞれ異質なものである」と捉える顧客の割合が多い商品の組み合わせ(非選択購買)であると考えられ、非同時>同時の場合「双方の商品を利用する事によって得られるメリットは、ほとんど似たようなものである」と捉える顧客の割合が多い商品の組み合わせ(選択購買)であると考えられます。
本図からも農産品と中華調味で、その傾向がきれいに分かれている事が分かります。
その為、前者は「メニュー提案」のようなクロスMD提案に向いた組み合わせ、後者は「中華調味フェア」のように、同質利用メリットの集積効果によって売上向上を図る組み合わせと言えます。
併買提案にはこの二種類が存在しており、自分が行うのはどちらの提案なのか?ハッキリした認識が必要です。
マニアックな事を付け加えるならば、マーケットに占める非同時顧客の割合は ”カニバリゼーション率”とも捉えられます。
表中の中華調味はいづれも、青椒肉絲の素と概ね同質な利用メリットと捉えている顧客が多いですが、よりカニバリゼーション率が高い回鍋肉の素(4.7%)は、よりカニバリゼーション率の低い豚肉ともやし炒めの素(2.0%)に比べ、利用メリットがより青椒肉絲の素に近い(一緒に食卓に上りづらい)と言えます。
カニバリゼーションと言うと良くないものと捉えられがちですが、回鍋肉の素は、青椒肉絲という嗜好を持った人たちにとっての最良の2ndチョイス、求められている選択肢であるという事も示しています。
よって「中華調味フェア」のような集積提案においては、一般的によりカニバリゼーション率の高い組み合わせ同士を選抜、集積させた方が、顧客が目にした際の利用メリットが明確に際立つ事から、全体として好結果をもたらします。
この考え方は、棚割提案(プラノグラム)においても有効です。
Liftとは「自商品の利用者中、相手商品を利用した人の割合(併買率)」が、「一般の顧客中、相手商品を利用した人の割合(購買率)」に比べ何倍にあたるか?という指標で、利用率の自然利用率比での特異性を表します。
上図の「細切たけのこ水煮」の例で言えば、一般の来店者(136,145人)を母数とした場合、「細切たけのこ水煮」の利用者(763人)は763人 ÷ 136,145人の0.6%に過ぎませんが、こと青椒肉絲の素(を利用するという嗜好性を持った)の利用者(952人)に限定すれば「細切たけのこ水煮」の利用者(193人)は193人 ÷ 952人の20.3%となり、20.3% ÷ 0.6% で一般利用者率の36.17倍も利用者率が高い ⇨ 相性がいい と言ったものです。一般にこの併買率を「期間併買率」、このLiftを「期間併買リフト」と呼んだりします。
相性には、メニュー提案のように「それぞれの商品を利用する事で得られるメリットが相互に異なる」からこそ良い、という恋人同士のような相性と、中華調味フェアのように「それぞれの商品を利用する事で得られるメリットが相互に近しい」からこそ良い、という同好の士のような相性がありますが、期間併買リフトは、これらを一緒くたにして共通利用者率の特異性として、相性を計る指標です。
この青椒肉絲の素の利用者に占める「細切たけのこ水煮」の利用者を、更に同時利用者のみ(165人)に限定したものが、同時併買の併買率とLiftで、一般に「同時併買率」、「同時併買リフト」と呼んだりします。
こちらは「それぞれの商品を利用する事で得られるメリットが相互に異なる」からこその相性の良さを示す指標です。
順番としては、まず共通利用者率の特異性の高いものを抜き出し > その中から同時利用者率の高い/低いものを提案に応じて抜き出す という形になります。
どちらのLiftも「一般の人の利用者率と変わらない」=1倍となりますので、最低限1超で無ければ「相性が良い」とは言えません。
統計的に言えば1超か1以下かは50:50ですので、期間併買リフトが1超の相手は当然のように出て来ます。その為、異常性をもって良しとする指標の性格からすれば「確かに異常と言えるよね」というレベルに迄商品数を絞り込む=期間併買リフトの閾値は高めに設定する 必要があります。それに対して、条件が更に厳しい同時併買リフトが1超の相手はそれ程出て来ない為、閾値は多くの場合で1超で問題無いでしょう。
併買率もLiftも、自商品(分母)や相手商品(共通分子)の利用者が少ない場合、過剰に大きな数値が出る場合があります。
前出1-1のようにマーケットサイズを勘案せず、相性だけに着目してしまうと矮小な提案となってしまう為、注意が必要です。
一般的に併買分析では、自商品をキーとして物事を見ます(併買率の分母=自商品利用者)。計算上リフト値はどちらの商品から見ても同値となるのですが、こと顧客の見方としては「自商品を利用している顧客は」という一方的な見方になります。
例えば1-2の図の青椒肉絲の素とピーマンの関係で言うと、「青椒肉絲の素を利用している顧客の中には、ピーマンを利用している顧客が多い」となり「青椒肉絲の素とピーマンの相性は良い」という論法になりますが、逆もまた真と言えるでしょうか?
通常青椒肉絲の素を利用している顧客(952人)は、ピーマンを利用している顧客(33,844人)に較べ遥かに少数であり、ピーマンを利用している顧客にとっての青椒肉絲という選択肢は相性は良くとも、無限ピーマンや肉詰めと言った数ある相性の良いメニューの中の一つに過ぎません。
Lift=3.47は、青椒肉絲の素から見れば高いLiftかもしれませんが、ピーマンから見れば、他にもっと高いLiftを持った商品が沢山あるかもしれないのです。
よってこのような場合「遥かに大勢居らっしゃるピーマンの利用顧客にとって、青椒肉絲というメニューは何番目の選択肢に当たるのだろうか?どのようにご提案をしたら、ピーマンの顧客の生活に資する事ができるだろうか?」といった視点が必要となります。
その為提案の際には、提案を想定した相手商品をキーとした「逆引き」でも併買分析を行う事をおすすめします。
これはターゲットである相手商品のマーケット、利用顧客を知る事だからです。
従来は商品視点でしたので「商品の相性が良いから」「隣に置きましょう」でまかり通って来ましたが、特に生鮮品とのクロスMDは「あなたの商品の売れ行きの為に」品出しやPOP管理に煩わされる現場からは嫌われて来ました。
現場からしてみれば「売れて当たり前でしょ!」程度の提案、成果しか出て来ませんでした。
これを顧客視点、現場視点で「あなたのお客さま、あなたの商品の利用顧客の為に」を発想の起点とする事で、顧客だけで無く、現場からも喜ばれる提案になるのではないでしょうか?
BiZOOPeには、最初から逆引きを前提とした「逆引き併買|Gourami」というメニューもありますので、こちらも使ってみてください。
「逆引き併買|Gpurami」で青椒肉絲の素をキーにした逆引き結果を加工した画面例(指標はID数。一ヶ月集計)。
青椒肉絲の素は全商品の中で細切たけのこ水煮が一番好きだが、細切たけのこ水煮にとっての青椒肉絲の素は全商品の中で2番目に好きな相手 といったような(相性が良いと言っても、相手の中で何番目かは分からない=恋のようにままならない)事を表している。残念ながらピーマンにとっての青椒肉絲の素は、相性が良いと言っても下位のようで出力対象外だった。
図中の網掛けは、自分本位で見た時より相手本位で見た時の方が良好な数値。
提案かどうか、顧客指向かどうかは?ですが、ID-POS界隈でブランドスイッチは、特にメーカーさんにとって最も関心の高いテーマの一つかと思います。
BiZOOPeには「顧客動態統計(ブランドスイッチ)|Umaoi」というブランドスイッチ向けの分析メニューがあるのですが、ここでは前段に引き続き「商品併買|Anemonefish」を使って、ブランドスイッチについてマーケティングの観点から考えてみたいと思います。
「顧客動態統計(ブランドスイッチ)|Umaoi」の操作マニュアルはこちら。
まず、下図に①「自」ですが、アサヒビールさんのスーパードライSKU群を「自」と定義しています。
次にマーケットの定義ですが、スーパードライとそのライバルとなる各ビール飲料(相)で構成されたマーケットが下図「自+相」で表されているマーケットです。
このマーケットを、異なる利用メリットを感じている価値観の異なる顧客の購買行動でセグメンテーションしたものが本表です(指標はID数。13週集計)。
【マーケット・セグメンテーション】
マーケットは上図のように「自+相」=①+②+③+④で構成されます。
各セグメントの解釈は以下のようになります。
①「自」しか買っていない顧客
スーパードライに特別の価値を認めている”スーパードライ派” とでも言うべき顧客です。
②「自」と「相」を同時に買った経験のある顧客(同時併買)
双方にそれぞれの異なる利用メリットを認めている顧客です。個人消費であれば「常飲はスーパードライ、特別な日にはプレモル」、世帯消費であれば「お父さんはスーパードライ、私は一番搾り」のような形で双方に異なる利用メリットを見出しています。
ある程度長期で集計を行わないと、③中に埋没します。
③同時は無いけれど、「自」も「相」も買った経験のある顧客(期間併買ー同時併買)
極端に言えば「どちらも一緒」、「大した違いはない」、「その時安かった方を買う」、「その時の気分次第で」という選択購買顧客です。
④「相」しか買っていない顧客
相手商品に特別の価値を認めている”一番搾り派”、”プレモル派”、場合によっては”アンチスーパードライ派”とでも言うべき顧客です。
マーケット・セグメンテーションを前提としないブランドスイッチ政策においては、多くの場合②、③の顧客が、一時自商品を買う事で「ブランドスイッチが起こった」としてしまっていますが、これは殆どの場合スイッチに値しない自然な購買行動の一端と考えられます。
単に一旦買ってもらうだけであれば、②、③の顧客は購買経験がある分、比較的低エネルギー(販促費等)なきっかけで購買行動に至りますが、同じエネルギーで完全に「スイッチ」をさせたり、たとえ一旦ではあっても④の顧客に買ってもらうのは至難の業です。
そこで、セグメントを絞り込む事でエネルギー(予算等)を集中させるブランドスイッチ戦略として、顧客一人あたりの必要エネルギーが低いもの順に、以下のような戦略が考えられます。
セグメント③
元々が極端に言えば「どちらでも良い」選択購買顧客と考えられますので、ここを非選択購買顧客①へと遷移させる政策が、最も単純且つ低エネルギーで可能な政策と言えます。
但し、当然単発では無くある程度継続的な政策=リピート戦略が必要となります。
セグメント②
一応購買経験がある分、次にスイッチさせようのあるセグメントと考えられます。
個人であれば「特別な日もスーパードライ」、世帯であれば「お父さんがスーパードライだから、私もスーパードライにしてみようかしら?」等と思えるような、気付いてもらえていない利用メリットを訴求/新たな利用メリットを付加する政策が必要となります。
セグメント④
このセグメントに向けての政策こそが真の意味でのブランドスイッチです。
ある意味アンチをなびかせる訳ですから、他のセグメントとは比較にならない強力なエネルギーを要するセグメントとなりますし、強力なエネルギーを要するからこそ、セグメントの絞り込みが必要です。
まずは高いエネルギーを掛けて一度でも買ってもらう事=トライアル戦略によりセグメント③に遷移させる事がスタートです。
アンチと言えども、①+②+③+④のマーケット外の顧客、ビールの購買経験の全くない顧客にトライアルしてもらうよりは、遥かに容易なのかもしれません。
このように各セグメント毎に「どの位のエネルギーを掛けると、どの位の割合で遷移が起こるか?」「それは経済合理的か?」「どのような政策が響くのか?」を探り、知る事は、政策そのものの成否はもとより「マーケットを知る」という意味合いで、メーカー各社のマーケティングや製品開発にとって貴重な知見となる事でしょう。
マーケット・セグメンテーションにあたって重要なのは顧客の”利用行動”です。
ブランドスイッチを誘引する政策として、セグメントの顧客に直接リーチできる強力な一手が単品クーポン/アイテムクーポンです。
顧客にとっては使途が明確な為、少額であっても動機づけとなりやすいクーポンと言えます。
メーカーにとっては販促の為にも有用な飛び道具ですが、小売業にとっては単品一品の売上が上がったところで大勢に影響は無い為、特にレシートクーポンが強力とは言え、紙、印字、オペレーションコストの面で面白くありません。
そこに販促費を供出するメーカーにとっても、よりコストパフォーマンスの高い施策が求められるところです。
以下のような面白い事が分かっています。
・単品クーポンを利用した顧客は、来店頻度が増える(平均で0.4回/月程度)。
・来店頻度が増えた顧客の客単価は変わらない(クーポンを使う為だけに来店が増える訳では無い)。
⇨ 自店の売上増、競合他店への来店機会の喪失
また、ここまでのように併買提案であれ、ブランドスイッチであれ「マーケット・セグメントに狙いを定める」事が重要である事は充分お分かりいただけたかと思います。
マーケットを適切に定義し、それを適切にセグメントする事が出来、そのセグメントに絞ってクーポンを発行する事ができれば ー
1)小売業にとっては単品のクーポンが来店、店舗売上へと繋がる
2)メーカーにとっては単品売上の向上、ブランドスイッチに繋がる
3)小売業、メーカーの双方にとってコストパフォーマンスの極めて高い施策となる
単品クーポンは、WinーWinの政策になり得ます。
このマーケット・セグメンテーションを実現するのが、BiZOOPeの「マーケット・セグメンテーションMK|Tapir_MK」です。
「マーケット・セグメンテーションMK|Tapir_MK」の操作マニュアルはこちら。
エンドユーザーの皆さまが実際に計算を行う必要性も、極端に言えば理解する必要性も無い為、本稿に関してはあくまでも「納得」を得たい方向けのものである事をご理解願います(内容についても「本当では無いが嘘でも無い」程度にデフォルメしてあります)。
ここまで見てきたように、2つの商品に共通の顧客の内、非同時利用顧客は双方の商品を選択購買している顧客になります。
これは双方の商品の利用メリットを「近い」と感じる価値観を持った顧客の一群と考えられます。2つの商品の顧客から、この一群を差し引いた顧客が、双方の商品の利用メリットを「遠い」と感じる価値観を持った顧客となります。
「遠い」と感じる顧客の構成比が、この2つの商品間の「距離」と言えます。
定義されたマーケット内で商品相互の距離を計算し、クラスター分析にかける事によって、下図のような商品分類図(デンドログラム)を作る事ができます(簡単の為一部切り抜き)。
マーケット内の顧客にとっての利用メリットが遠いのか?近いのか?を明確にする為に、Tapir_MKでは遠い=セグメントf、近い=セグメントnの2つのマーケット・セグメンテーションを行っています。
※.「近い」「遠い」はマーケット内において相対的なものである為、分析者のマーケットの定義(上図の場合「ビールマーケット」なのか「酒」マーケットなのか等)によって変化します。
いよいよ本題です。
下図は対象マーケットを「ビール」とした際のTapir_MKの分析結果画面です。マーケットを構成する商品が、遠いセグメント=seg_fと、近いセグメント=seg_nの2つに分けられている事が分かります。
以降、図中①のスーパードライ350mlの単品クーポンを発行する場合を例にして話を進めて行きます(13週集計)。
最小のターゲットセグメントは①の「その商品を買った事のある顧客(15,602人)」になります。
ここにクーポンを発行する場合が最もヒット率が高く、多少のインセンティブでもそのヒット率は40%前後になります。
次にヒット率が高いターゲットセグメントが②の「その商品と比較購買対象となっている商品のいづれかを買った事のある顧客(22,822人)」になります。
ターゲットセグメントを大きく取れば取る程、当然ヒット率は下がりますので、より多くのインセンティブが必要となって来ます。
図では「納得感はあるが、つまらない」結果となってしまっていますが、マーケットを「酒」のように大きく取れば結果はまた違って来ます。
また、図上の項目「並び順」は商品同士の関連性を二次元表現している為、本セグメントの前後を挟む「一番搾り生で構成されたマーケット=f1_n8(15,408人)」、「一番搾り糖質ゼロで構成されたマーケット=f1_n10(11,802人)」等をターゲットとしても良いでしょう。
解釈として「かけ離れている訳では無い」利用メリットの商品群や、「かけ離れている訳では無い」価値観を持った顧客群によって構成されたマーケットが③のf1マーケット(77,169人)になります。
ほぼクーポンに有効性の認められる限界と捉える事もできます。
予算によっては④のマーケット全体(149,438人)にクーポンを出しても構いません(人為的ですが、一応「ビール」というマーケットにセグメントはしている)が、理想的にはクーポンのマークダウン率を
①の顧客 < ①の顧客を除いた②の顧客 << ②の顧客を除いた③の顧客
の順でダイナミックに設定し、予算を集中させる事で、メーカーは現実的な売上増/ブランドスイッチを、小売業はより多くの来店を享受する事です。
本件の最重要ポイントは、予算豊富な大企業が一律の値引き率で効率の悪いばら撒きを行うのでは無く、
・顧客毎にポテンシャルエネルギーに応じた予算を集中的にかける事ができる
・規模の小さなメーカーでも予算に応じた参画が図れる(多くのメーカーが参画できる)
という点です。
各社の身の丈に応じた施策が高確率で各社の売上増に結びつくと共に、小売業の来店増にも繋がって行きます(理想は「クーポン市場」の設立によるMA化)。
尚、BiZOOPeでは図中リンク表示となっている人数の顧客コードをダウンロードする事が可能です。
また「①の顧客を除いた②の顧客」のような抽出を可能とする為に、「ベン図でポン!」を実装しています。
ここまで「1−1.まずマーケットを理解しよう:併買提案(クロスMD)」で相互にカニバリゼーション率の高い商品同士を選抜、集積させた方が顧客から見た利用メリットが際立ち、隣接する事で選択も容易になる事から、売上に貢献する事を書かせていただきました。
次いで「2−1.マーケットの定義とセグメンテーション:クーポン提案」で、マーケットをそのような商品の分類毎にセグメンテーションできる事を示しました。これを棚割(プラノグラム)に応用する事で、定番棚平均で1%前後の売上増を見込む事が出来ます。
これを支援するのがBiZOOPeの「マーケット・セグメンテーションMD|Tapir_MD」です。
棚割には当然新商品の導入と、棚落ち商品の決定(商品カット)が伴いますが、商品カットについてはこちらをご参照ください。
「マーケット・セグメンテーションMD|Tapir_MD」の操作マニュアルはこちら。
【はじめに】
本表は、純粋に顧客の買い周り、利用/未利用から導き出された計算上の結果であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
商品は顧客から見た関連順に並びます。そこに意味が汲み取れるか否かは別にして、マーケットは顧客の購買行動によって、おおよそメーカー/ブランド別や規格(容量)別、フレーバー別のような形にセグメントされます。
これは、セグメントを何個にして欲しいだとか、セグメント配下を何SKUにして欲しいといったこちらの都合とは無縁のものです。
商品には顧客の求める利用メリットを代表するもの順に採用順が振られ、カット等のレコメンドが行われます。
それに対して現実の世界には、品出し作業の効率性、重量やサイズによる上下位置、人間の視線特性に基づく上下左右位置、色を揃えたい/天の高さを揃えたいといった嗜好性、リベート対象の優先等の現実問題があります。
よって本表は単に真に受けるのでは無く、まずは棚割の骨格を作って行く為の「たたき台」として利用してください。
たたき台がそのままで行ければ結構なのですが、現実の世界に合わせて変更を施す事を厭わないで下さい。
その上で、迷った時には本表を是非「参考」にして下さい。
本結果はあくまでも、あなたの意思決定をより簡単なもの、より良い結果をもたらすものへとする”支援”を行うものです。
「マーケット・セグメンテーション|Tapir_MD」の画面例(26週集計)。
1)並び順
商品の関連する順序を二次元表現したものです。
おおよそ「並び順1に利用メリットが近いものは2。2に近いものは3。」のような形で数値が近いもの程関連性が深いと捉えていただけます。
乱暴ですが陳列位置の上下左右の関係が無ければ、この順番で棚板に沿って商品を這わせて行ってあげれば、陳列は完了してしまいます。
その意味では「陳列順」とも言えますが、現実的にはゾーニングにおけるゾーン同士の位置関係、ゾーニング内での商品陳列順や、「この商品の隣にどちらの商品を置こうか?」と迷った際に、より数値の近い方を置くといった意思決定にお使い下さい。
2)採用順とレコメンド
詳細説明は避けますが、顧客の求める利用メリット順に採用順が振られます。
これにより極力顧客にとっての利用メリットそのものが売り場から失われる事(用途・機能欠落)がないよう、自然に配慮が為されます。
例えば台(ゴンドラ)が3台あれば、採用順で3つに均等割りしてあげる事で「3本」等のレコメンドを行っています。
あくまでも均等割りであり、商品サイズ等には配慮していません。
この例の「3本」は「3本パターン以上から採用して下さい」という意味になります。レコメンド「cut」についてはこちらを御覧ください。
3)seg_f
fは ”far = 遠い” を意味しており、顧客から見た利用メリットが、マーケット内で相対的に(この範囲を超えたら)遠いと捉えられる塊(セグメント)です。
簡潔で概念的な解釈としては「台(ゴンドラ)を分けるもの」となりますが、現実的には構成SKU数等の問題もある為、大まかなゾーニングを決定する為に使います。
例えば図中seg_f=f2の主にアサヒ生ビールから成るセグメントでセールを実施しても、図中seg_f=f3の静岡麦酒にカニバリゼーションは及ばない程に、互いのセグメントは(マーケット内で相対的に)かけ離れている※と解釈する事ができます。
4)seg_n
nは”near = 近い”を意味しており、顧客から見た利用メリットが、マーケット内で相対的に(この範囲内であれば)近いと捉えられる塊(セグメント)です。
簡潔で概念的な解釈としては「ゾーンを分けるもの」となり、ゾーニングの決定に使います。
現実世界に合わせつつ、seg_fとseg_nを骨格としたゾーニングを行う事が「見つけ易く、選び易い」売場づくり=売上アップの鍵となります。
こちらは、同一セグメント内のいづれかのSKUがセールを実施した場合、セグメント全体にカニバリゼーションがダイレクトに及ぶ程に、同一セグメント配下のSKU同士が(マーケット内で相対的に)近いと解釈する事ができます。
※.「一方のマーケット分野における価格変化が、他方のマーケット分野における価格変化を誘導しない場合、この二つのマーケット分野は互いにセグメンテーションされている。」|エリヤフ・ゴールドラット
ここで行ったマーケット・セグメンテーションの結果は、マーケットの一側面である ”売り物” の分析者による定義(分析に掛ける商品群)と集計期間に応じ、マーケットに参加して来る顧客、商品が変わる事で変化します(マーケットは売り物と顧客の接点です)。
集計期間については、多数決に掛けるに足るマーケット参加者が、利用行動と言うに足る利用を行うだけの期間が必要です。
営業マンとして着目すべきは、チェーン/店舗によっても変化するという事で、同じ商品、集計期間であっても、異なるチェーン/店舗で全く同じセグメント結果になるという事はありません。
何故ならそのチェーン/店舗に来るお客さんの、買い回りそのものが、これらの表の結果だからです。例えばチラシ依存が高いチェーンであれば、多くの場合seg_fにチラシ商材が集まったマーケットセグメント(チラシ商材中のみでの買い回り)が顕著に発生します。
各チェーン/店舗の ”あり方” そのものが、自ずとそこに集まる顧客を規定し、その購買行動に働き掛けるからです。
これは、ここから生み出される提案が他の誰の為でも無い、そのチェーン/店舗と、そこに集まるお客さんの為の提案となる事を意味しており、そのチェーンの競合とも、自社の競合とも完全に差別化された提案になるという事です。
「3.クーポン提案」、「4.棚割提案(プラノグラム)」で使ったTapirついて詳しくは、Tapir_MKによるマーケティングの教科書 をご参照下さい。
BiZOOPeユーザーであるメーカーさま、卸さまからのよくある質問に答える為という意図の他に、本ページ作成に至った下心が2つあります。
1つ目は、ご担当の小売業さまがID-POS開示を行っていなかった場合「良い提案しますから、サイバーさんからBiZOOPe入れて下さいよぉ〜」と言ってもらう事。
2つ目は、ご担当の小売業さまがBiZOOPe以外でID-POS開示を行っている場合、
そこから入手可能なID-POSテキストデータを「3.クーポン提案」で使ったTapir_MKと「4.棚割提案(プラノグラム)」で使ったTapir_MDのクラスター分析に掛ける事ができるメーカー・卸向けID-POS提案ツール|テンポラリーTapir を御社にご利用頂く事です。
テンポラリーTapirは月額16,500円から始められます。