” ニーズが見える ” ID-POS分析
フロアレイアウト 、 ゴンドラレイアウト という流れで来て今回はエンド陳列についてです。
自分にとっての利用メリットが無ければ、顧客は売り場/店舗を利用しません。
気づかれなければ、それは存在しないも同然ですし、買い忘れられれば他店利用の機会(自店の客数減)を生みます。
役割的に、チラシは商圏に向けた「実はウチにはあなたにとっての利用メリットがあるんですよ」という気づきのきっかけを、エンドは店内顧客に向けた「ここにあなたの利用メリットがありますよ!買い忘れていませんか?」という気づきのきっかけを生み出すものと言えます。
最近は定番売場と連動しないエンドが増えて来ましたが、顧客にとっての利用メリットを考えると、エンドの主たる役割は、優先度順に以下4点と考えられます。
役割1:そこが何の売場か?何が置いてあるのか?利用メリットの存在を視覚的に訴えかけ、買い逃しを無くす誘導看板的役割
役割2:極力多くの人が買い物をエンドだけで済ませる事ができれば楽♪(店側も楽♪買上点数も増えそう?)
役割3:マーケット創造に繋がる新商品は無いか?多くの顧客にいち早くトライアルしてもらう為の場
役割4:季節感、催事、チラシといった演出、提案、売場の鮮度維持と言った顧客の「楽しさ」という利用メリットを創出する役割
以上4つの役割をまず念頭に、エンド陳列について真剣に考えてみたいと思います。
エンドを仮に8SKUで構成する事とし、下図のような導線と配置を想定した際にー
・原則進行方向斜め前方の売場から代表的利用メリットを選抜し、エンドに配置、引き込みを狙う
・エンドの強さは 想定主導線沿い > 想定副導線沿い とする
・壁面に面した売場についてはこれによらず、主通路から見えにくい裏側の売場を優先する
とすれば、おおよそ以下のようなエンドの構成パターンが考えられます(当然他にも色々考えられますが)。
ここでは前出「役割1」に最も適合し、作る側からも買う側からもルールがわかり易い「パターン3」をエンドの構成方法として選択してみたいと思います。
何なら壁面側のルールも一律パターン3にしてしまっても特段差し支えは無いですし、「役割3、4」については「内2SKUについては新商品やチラシ商品とする」と言ったようなルールを設けてもいいですし、週によっては完全に催事エンドにしてしまってもいい訳です。
全てそうですが「絶対にこうしなくてはならない」なんて法は無い訳です。
今回については、前回ゴンドラレイアウトで組んだ図の菓子売場を題材にします。
上のエンドが主通路側、下のエンドが中通路側に面している設定です。
分析手順は以下の通りです。
1)左側の売場の小分類全てを選択し、配下の単品をクラスター分析にかける。
2)採用順上位8SKUを選抜する。
3)右側の売場の小分類全てを選択し、配下の単品をクラスター分析にかける。
4)採用順上位8SKUを選抜する。
5)2)、3)のデータ中上位4SKUづつを合わせ、上のエンド上での配置やフェイシング数を検討する。
6)2)、3)のデータ中下位4SKUづつを合わせ、下のエンド上での配置やフェイシング数を検討する。
以降この図に倣い、上のエンド、下のエンド、右の売り場、左の売り場という呼称を使って行きます。
※.SKU数については、あくまで仮のルール設定です。
利用メニュー:BiZOOPe の Tapir_MK(テンポラリーTapirにおいても利用可能なメニュー)
期間:2018年5月28日 〜 26週間
店舗:静岡地区の複数店舗
商品:デモデータから「一般食品 > 菓子」配下の「吊り下げ」を除く小分類の単品
右の売場、左の売場で分けて二回分析します。
表示:一部の列を追加/削除/非表示しています。
表の主要な項目について説明します。
(表をクリックで開きます)
【seg_f】
セグメントfar(遠い)の略で、顧客にとっては漠然とした売場の利用動機です。棚割的には「ゴンドラ(台)が分かれても良い位異なっている=当然ゾーンは分けるべき」、顧客にとっては「利用時の精神モードが異なる」もしくは「利用顧客が異なる」と解釈されます。
【seg_n】
セグメントnear(近い)の略で、顧客にとってはより具体的な利用動機、需要の塊、選択の範囲を指します。この塊中の単品同士は「利用目的が近い=代替可能である」転じて「カニバリゼーション/ブランドスイッチが起こる間柄である」とも解釈されます。
【並び順】
ざっくりと「より数字が近いもの程、顧客にとっての利用メリットが近い/商品同士の関連性が高い」事を表す指標です。
【採用順】
商品の採用すべき順番です。重複なく、より多くの顧客の価値観に響くように順番が振られます。
【レコメンド】
seg_fの利用メリットを代表する商品に「1st」、seg_nの利用メリットを代表する商品に「2nd」と振られます。
いづれも採用順に基づき、需要の塊であるseg_nから最低一商品には振られています。
レコメンドがついた商品については全店で採用すべき「最低品揃え」と言えます。
1st:seg_fを代表する=売場を代表する正に超最低品揃え
2nd:seg_nを代表する=顧客の各需要を代表する最低品揃え
これらの算出ロジックについて詳しくはこちらをご覧ください。
左右の分析結果を「採用順」で昇順ソートしたものが下図になります。
(表をクリックで開きます)
特に冒頭の「役割2」の効果に照らせば、「レコメンド=1stチョイスの商品全てを陳列する」というのが、科学的には最大の効果を得る方法となります。
そうするとこの菓子売り場の場合、右側の売り場から5SKU、左側の売り場から6SKUの計11SKUがエンド陳列の目安となります。
この11SKUを上下のエンドで分けて陳列すると言った方法も考えられますが、主通路沿いである上のエンドに、この11SKUを全て陳列してしまうというのが最も効果的な方法ではありそうです。
但し商品サイズ等の都合もありますし、エンドを固定し続けるのも得策では無いでしょう。
肝心なのはこの後の「選抜の考え方」であって、この辺はあくまでも参考という事で、一般論や感覚に従って頂いて良いかと思います。
業務的には「3SKU以上8SKU迄」等、単純なルール化をしてしまった方が楽かもしれませんね。
今回はエンドに陳列する商品を8SKUとしてみます。
主通路沿いの上のエンドを強くしたいので、左右からそれぞれ採用順1〜4位の商品を上のエンドに、5〜8位を下のエンドに計8SKUづつ(前表中の色付きフォント)採用します。
商品をつまみ食いしながら選んで行くよりは、連続する採用順の範囲で選んで行く方が、より重複しない人ないしは価値観に、より重複しない売り場の利用メリットを訴求する事に繋がります。
2ndレコメンド迄の商品が右の売り場で191SKU、左の売り場で212SKUありますので、新商品や季節商品、チラシ商品を織り交ぜつつ、この商品群を折々で回して行けば、売り場の鮮度も保って行けるでしょう(棚割作成時に半期=26週分程度のエンド陳列の雛形を決めておいても良いかもしれません)。
上のエンド、下のエンド共に陳列の考え方は同じですので、以降では上のエンドを題材に、陳列方法について考えて行きたいと思います。
ゴンドラ(棚)を正面から見て、図のようなエンドを想定します。
(売場を店舗天井から俯瞰した際の右と左でしたので、ゴンドラ正面から見ればこのような表記になります。ややこしくてすみませんorz)
実際様々な分析手法や陳列方法が考えられますが、簡単の為右の売り場と左の売り場に均等な面積を与え、列中央を境にきっかりと2つに分けて考えてみます。
また見栄え良く陳列する為に「1商品に対して、棚段何段を与えるか?」を基本の考え方とします。
尚、あくまでも「考え方」ですので、商品のサイズや重さ、色についてはここでは考慮しません。
実際エンド程度の顧客が容易に認識可能なSKU数であれば、感覚で割り振って並べてしまっても構いませんので。。。
この割り振りで、「極力下段にフェイシング数の多い商品を持って来たい」「並び順(関連順)を活かす」というおおよそ2つの方針に従って陳列しようとすれば、棚の下から順に、並び順昇順で段を埋めて行く事となります。
今回はたまたま右の売り場も左の売り場もこの順序となりましたが、実際にはどちらかが降順になる場合もありますし、ゴールデンゾーンに採用順最上位の商品を並べて、その上下にその他の商品を並べるといった方法もあります。
これもたまたま段数=1の商品が各2SKUありましたので、図ではそれを横方向では無く、縦方向に陳列しています(感覚的に)。
以上で売場の代表的な利用メリットが並ぶ「気づき易い/買い忘れしにくい」エンド陳列が完成します。
多くの人が利用している商品を重複なくカバーしている事から、エンド売上の向上効果も期待できます。
(チラシで同様の選抜方式を取った際の買上点数増実績から想定すると140%程度。)
次回はプラノグラム(定番棚割)に行こうと思いましたが、その前段階としてまずは商品カット/絞り込みについて真剣に考えてみたいと思います。