売り場利用者の ”ニーズが見える” ID-POS分析
BiZOOPeをご利用のお客さま先でお聞きしたPB商品開発のお話です。
PB開発をお考えの小売業さんにも、PB開発を提案するメーカーさんにも、大変示唆に富んだ内容と感じた為、掲載させて頂きます。
掲載のデータは一昔前のものですが、考え方は同じです。
冷凍パスタのPBを開発する事になりました。
このチェーンの冷凍パスタ売り場への顧客ニーズをTapirで見える化してみると、以下のようになっていました。
単品の一番人気※は「和風たらこ340g」です。
※.人気=利用ID数の多さ
ここでは単純化の為、顧客が利用目的としている商品の範囲である目的範囲に着目して行きましょう。
目的範囲は、その範囲内の商品の選択だけで冷凍パスタの買い物を完結している人が多い事を意味しています。
図の冷凍パスタマーケットの中には、8つの異なるニーズがあり、顧客によって8つの異なるマーケットが作られているという事になります。
各目的範囲が示しているニーズを要約してみます。
各範囲の単品群を比較した際に、相対的に一番際立った特徴が顧客が共通して、象徴的に求めているものです。
例えば図の目的範囲=f1の「生パスタ」の利用者の多くは、「生パスタ」を利用目的とし、冷凍パスタの買い物を「生パスタ」の範囲内だけで済ませています。
図のデータ中にPB商品は存在していませんが、一般にPB商品が存在した場合、多くのケースで独立した目的範囲を形成します。
これは「PBを選ぶ人の多くはNBを選ばない」「NBを選ぶ人の多くはPBを選ばない」という傾向を意味します※。
となればPB開発においては、下図のようにPBというマーケットの配下に、NBのマーケット構造をある程度なぞって行けるという事になります(一段安価に)。
※.「二番煎じによる食い合い」のように思われるPBですが、目的範囲として独立する限り、PB開発は未存在のマーケット/ニーズの追加となりますので、利用ID数増に大いに意義があります。
これはPB開発において※大いに参考になる考え方です。
※.NBの場合、この行間または行外に、新しいマーケット/ニーズを見出さなくてはなりません。
さて、あなたがPB商品開発を任されたとして、あなたならどんなPB商品を作るでしょうか?
単品人気No.1のたらこスパでしょうか?
図(再掲)にたらこスパという「目的」は見受けられませんので、たらこスパは「目的」中の「選択肢」の一つです。
1SKUだけ開発という事であればたらこスパなのですが、本件バイヤーは「生パスタ」のPBを作る事にしました。
その中には「たらこ生パスタ」も含めました。
あなたならどうしたでしょうか?
Tapir的正解は、まずは最もマーケットサイズの大きな(利用者率58.18%)「大盛り」のPB開発に着手する事です(図は再々掲)。
人口減少、競合激化の時代、私たちは競合に負けない「人気店」を作らなくてはなりません。
「人気店」は「人気の売り場」が、「人気の売り場」は「人気の単品」が作ります(人気No.1のたらこスパも「大盛り」配下の単品でした)。
単純により多くの利用者のお役に立てるからこそ、開発する意義があるのだとも言えます。
では、本件バイヤーは何故「生パスタ」のPBを作る事にしたのでしょうか?
商品として考えれば「大盛り」よりも「生パスタ」の方が粗利率が取れそうです。
「大盛り」というと如何にも凡庸で、差別化に繋がり難い気もします(上司からいちゃもん付けられそうな気もしますw)。
さて、下図は冒頭の単品表示の再掲です。
今度は右隅の列「顧客店舗利用金額」に着目してみて下さい。
これは各単品の利用ID数が、冷凍パスタという枠を超え、店に総額で幾らのお金を落としているのかを示しています。
「大盛り」の目的範囲で見てみると、利用人数の桁が違いますから、店に落としているお金の総額も桁違いである事が分かります。
これが粗利率よりも差別化よりも人気、言い換えるならばカテゴリーよりも部門よりも店舗である理由の一つです。
もしも競合のバイヤーが、「人気よりも粗利率」、「大盛りなんて凡庸過ぎる」と考えていたのならば、「大盛り」のPB開発は却って差別化に繋がります。
結局ポピュラーなメイン所での勝負を避け、粗利率や差別化に逃げていては、大勝ちは望めないのです。
※.本件バイヤーの名誉の為に付け加えるならば、各目的範囲中に「生」の要素がちょくちょく顔を覗かせていますので、その判断も理解はできますし、生パスタの利用者率は第二位の34.43%でしたので、次善の策ではあります。
そう考えると冷凍食品中PB開発をすべきだったのは、そもそも冷凍パスタだったのでしょうか?
図は冷凍食品配下のカテゴリーへの顧客ニーズを見える化したもので、冷凍食品売り場利用者の43.33%が「弁当惣菜」を利用目的としている事が分かります。
「弁当惣菜」にPB商品が無かったとするならば、まず開発すべきなのは人気No.1である「弁当惣菜」のPBです。
図の採用順※を見れば少なくとも、冷凍パスタは12カテゴリー中11番目の優先度のカテゴリーに過ぎません。
※.「判断基準は常に”人気”」と言いながら、採用順が人気(ID数)順では無いのは何故か?厳密には「判断基準は常に”ニーズ”」なのですが、本稿では単純化の為、詳細割愛させて頂きます。
では、日配食品中PB開発すべきは、果たして冷凍食品だったのでしょうか?。。。と続いて行きますが、考え方は同じですので、ここ迄とさせて頂きます。
以上、顧客ニーズに基づくPB商品開発の考え方についてでした。