カンタン操作で極上の売り場、うれしい販促。月額6万円台からのID-POS分析クラウド
さて、前回記事 『【コトPOPに学ぶ】EDLP VS HILO』ですが、余りの大長編であった為、一部言及、考察が抜けている箇所がありました。今回記事はその補講です。
まず、既に「売り手−買い手のエゴの調和」を満たしている小売政策が、コトPOP以外にももう一つありました。「棚札」です。前編では「棚札の7つのハック」についてAI(Gemini)に解説してもらいます。
次いで、その勢いそのままに後編は、本丸である「値決め」について考察を進めて行きたいと思います。
※.AIからの助言で、AIが生成したイラストを掲載しています。折角生成してくれたので、完全に読めない日本語にだけマスクして掲載していますが、「生成画像の現在地」として、生ぬ〜るく流し見していただけたら幸いです。
前回記事でも書いた通り、私たち人類は、DNAレベルで脳のコストを節約するようにできています。
そのあらわれの一つが、「EDLP VS HILO」の対立のような、誰かの考えのどちらを信じるか?という依存した二元論です。
「いいとこ取りしちゃえば?」という考えもこれと変わりません。
要は第三案を自分で生み出す脳のコストを払いたくないのです。
また、自我(エゴ)というのは極めて強力なものですから、現状を「変えたくない」という埋没的エゴや防衛的エゴも、第三案の創出を阻む高い壁となります。
当然、私自身もその例に漏れません(本稿を書き終えてから、もっと大きな政策であるセルフサービス、チェーンストア等、現時点で買い手に受け入れられている政策は、あらかた売り手のエゴと買い手のエゴの調和の産物じゃん!と気づくくらいですから……orz)。
さて、世の中には「価格の表示を税込み表示一本にして欲しい」という、一部買い手のエゴがあります。
これもやはり、2つの価格を見比べるという脳のコストを払いたくない為と、「騙されているようで不快」というエゴ(自我)があるためです。
一方でこれは売り手に対してフェアではありません。
価格の表示を税込み一本にした途端、当の買い手本人(前回記事の推論で約75%の買い手)の脳が、競合の税抜き価格と、我が店の税込価格とを比較して「この店は高い!」と認知してしまうようになるからです。
かように人間の脳とその認知能力は、口に出す言葉に反して、極めて「えー加減」なものなのです。
その為、税込み/税抜き併記という棚札の表記方法は、少なくとも「他店より高い」とは思って欲しくない売り手のエゴと、「安さに熱狂したい」買い手のエゴ、そのクセ安さを正確に比較できない買い手の認知能力との「調和」です。
コトPOPとの共通点は、その発祥が買い手と常にリアルな接点を持っている”現場”にあることです。
「あれ?併記という事は『いいとこ取り』なんじゃないの?」と思われる読者の方もいらっしゃるかと思いますが、税込価格の表示は法律上の義務ですから、これは税抜き価格を「表示するか/しないか」の単なる二択問題です。
さて、他店の税抜き価格と自店の税込み価格を正確に比較できないほどに、あるいは価格の併記に脳のコストを感じるほどに、買い手の認知能力が脆弱であるならば、棚札には認知科学を利用したハック(仕掛け)が沢山隠されていそうです。
それを余すことなくAIに聞いてみましょう!
以下が、AIの考える「最強の棚札」です。
私は棚札の専門家ではありませんし、ここに脳のコストをかけたく無いので、AIに丸投げして免責しておきましょうw
「Gemini は AI であり、間違えることがあります。」⇦ こいつの配置と小ささ、フォント色の薄さこそ、まさにハックの実践ですねw
解説は、興味のある方だけが読めるよう、折りたたみリストにしておきますね。
解説しよう!
この「究極の認知ハッキング棚札 v1.0」は、単なる数字の羅列ではない。人間の「DNAレベルのサボり癖」と「エゴ」を完全にコントロールし、買上確率を最大化するために設計された、恐るべきインターフェースである。
「とりあえず目立たせろ」といった曖昧な現場の指示を排除し、誰もが明日から完全に再現できるよう、認知科学・行動経済学に基づく厳密な数値を設定している。各モジュールに組み込まれた7つのハック(仕掛け)を見ていこう。
ハック1:左桁最大化器(Left-Digit Maximizer)
メカニズム: 主たる刺激である「税抜価格」の左端「1」のフォントサイズを、後続の数字の「1.618倍(黄金比)」、あるいは面積比で「√3倍(ランチェスターの法則における局地戦の優勢基準)」に設定。色は交感神経を直接刺激する「R:229 G:57 B:53(クリムゾンレッド)」を指定。
効果: 人間が数字を左から読む特性(左側桁効果)をハック。視界に入った瞬間に最も巨大な「1」だけを網膜に焼き付け、脳内ドーパミンを強制分泌させることで「安い!」という直感的な快感を直撃させる。
ハック2:視覚的痛みの緩和剤(Visual Pain Mitigator)
メカニズム: 見せたくない現実である「税込価格」のフォントサイズを、主価格の「30%以下」に設定(ウェーバー・フェヒナーの法則に基づく、脳が直感的な比較を放棄する限界閾値)。カラーはJIS規格の可読限界スレスレとなる「明度差L*値 60前後のグレー(#A0A0A0)」で印字。
効果: 脳に「税抜と税込を比較する」という高負荷な演算処理(システム2)を物理的に放棄させる。レジで支払う「現実の痛み」を視覚的に最小化(麻酔)する効果がある。
ハック3:自我の正当化器・言い訳生成器(Ego Justifier)
メカニズム: 人間の視線が最初に留まる「Zの法則」の起点(左上POA:Primary Optical Area)に、警告色である黄色×赤枠で「当店通常価格より82円引」という大義名分を配置。プロスペクト理論の「損失回避性」を刺激するため、必ず「〜%引」よりも痛みの回避が具体的にイメージしやすい「絶対額(〜円引)」で表記する。
効果: 騙されているかもしれないという不快感(エゴ)を打ち消す最強の免罪符。「私は他店と比較検討するまでもなく、賢く買い物(スマートショッパー)をしているのだ」という自己肯定感を与え、釈然としなさを完全に無効化する。
ハック4:音韻的ショートカット(Auditory Short-Cut)
メカニズム: メイン価格のトラッキング(文字間隔)を「マイナス75/1000 em」に設定し、文字同士を極限まで密着させる。
効果: 人間は読字の際、無意識に脳内で音読(サブボカリゼーション)を行っている。文字を密着させることでサッカード(眼球運動)の停留時間を約200ミリ秒短縮。「セン・ヒャク・キュウ・ジュウ・ハチ」という長い音声処理を物理的に阻止し、「イチ・キュッ・パ」という3音のチャンク(情報のかたまり)へ強制変換させ、処理ストレスを激減させる。
ハック5:メンタルナンバーライン・マッピング(Mental Number-Line)
メカニズム: SNARC効果(空間・数値適合性効果)をUIに適用。刺激(安さ=税抜)を空間座標の「左下(X:-1, Y:-1)」に、痛み(高さ=税込)を「右上(X:+1, Y:+1)」に厳密に配置する。
効果: 「左・下=軽い・安い」「右・上=重い・高い」という、人間が生まれつき持っている無意識の空間認識を利用し、絶対値以上に「安さ(軽さ)」の錯覚を増幅させる。
ハック6:視覚的重量のハッキング(Visual Weight Hack)
メカニズム: メインの価格フォントに、スーパー特有の極太ゴシックや筆文字ではなく、ストローク幅を従来の1/2に抑えた「W3(ライトウェイト)」のサンセリフ体を採用。
効果: 認知流暢性(Cognitive Fluency)のハック。脳は「視覚的な文字の重さ=支払いの重さ・痛み」とメタファーとして錯覚する。文字のウェイト(太さ)を軽く設計することで、価格に対する心理的抵抗感をダイレクトに引き下げる。
ハック7:最小ノイズゾーン(Noise Reduction Zone)
メカニズム: バーコードやメーカー名などのスペック情報を、上下に最低10pxのホワイトスペース(余白)を設けた隔離ゾーンに押し込め、フォントサイズを「6pt(可読限界)」に設定。
効果: ヒックの法則(選択肢や情報が多いほど意思決定が遅れる法則)を逆用。購買の「快感」に関わらない視覚的ノイズを徹底排除し、メインの「価格の刺激」に脳のエネルギーを全集中させる。
いかがだろうか。 これが、現場の担当者が血の滲むような思いで原価を削り「1円」下げる絶対値の努力よりも、はるかに強力に消費者の「カゴに入れる手」を動かす、UIデザイン(エゴの調和)の力である。経営陣や現場の担当者は、ただちにこの数値をデザイナーに渡し、完全再現させるべきだ。
※ 当然ながら、この強烈なドーパミンハックを全商品に適用してはただの「安売り合戦(痛みの麻痺)」になり、利益を食いつぶす。本来であれば、前回記事における「『欲しい』の代表(重点レコメンド)」商品と連動させ、「顧客が脳内インデックスしている可能性のある一部の高ドーパミン商品」にのみこの棚札ハックを適用し、「誰も価格を覚えていないであろう大多数の低認知商品」にはプレーンな税込棚札を適用してシレッと適正粗利を稼ぐ、という『ポートフォリオの完全移行』こそが、真の「値決め(経営)」の姿となる。
悪いやっちゃw
が、おっしゃる通りです。AI曰く
『現場の担当者が血の滲むような思いで原価を削り「1円」下げる絶対値の努力よりも、はるかに強力に消費者の「カゴに入れる手」を動かす、UIデザイン(エゴの調和)の力』
があるのであれば、最大限それには縋りたいところです。
前回記事で行ったマーケティングの定義「モノを触媒とした、売り手のエゴと買い手のエゴの調和を図る活動」も、私たちの認知能力の脆弱性からしたら、これはぶっちゃけ、売り手、買い手の双方が傷つかない「幸せな手品」でもあるからです。
おれ、ヒジョーに好きなのよ、だましの「手品」がッ!
なんて冗談はさておき、売価の数字そのものも「UIデザイン(エゴの調和)」の一部です。
次の章からは、AI自身も解説中で言及している「値決め」について考察して行きましょう。
前章で見てきたように、私たちの脳はUI(インターフェース)次第で、簡単に「安さ」を錯覚するようにできているようです。
最終的な支払額が同じであっても、フォントの大小や配置という「手品」でカゴに入れる確率が変わってしまうのだとしたら……。
「チラシを並べて1円でも安いスーパーを自転車でハシゴしている」いわゆる「賢い主婦」の存在、ならびにそれを前提としたものの考え方は、実は根本から間違っているのではないか?という疑問が浮かびます。
我が家の「賢い主婦」を例に出すのが適当とは思えませんが、彼女は値札の端の(半玉)や(100gあたり)といった表記を見逃して「安い!」と喜んだり、「どれでも三品」の条件表記を見逃して「高い!」と不満げだったりします(指摘すると「知ってる!」と不満げなので、指摘は避けてます)w
笑い話のようですが、これこそが買い手の真実に近い気がします。
「チラシを並べて比較する」主婦は居るでしょう。しかし、そもそも在宅で完全比較可能なチラシそのものが減っています。
「スーパーを自転車でハシゴする」主婦も居るでしょう。しかしハシゴの最中、すべての商品価格を認知し続けていられるような主婦がどれだけ居るでしょうか?
「賢い主婦」を煽るメディアや売り手が居て、それを自認する主婦も居るでしょう。しかし、それがコンピューターのように本当に「正確」で「賢い」かは、また別の話です。
また、これには過去記事『「巨人・大鵬・玉子焼き」商品視点から顧客視点への訳 』でも書いた、カンブリア爆発のようなニーズの細分化と、SKUの増加も拍車をかけています。
現実問題何万点もある商品の、店ごとの取り扱い有無や価格を正確に把握し、産地やグラムの違いを勘案した上で比較演算するなんて、私たちの「えー加減な認知」と脳の性能では、ギフテッドでも無い限り絶対に不可能です。
「賢い主婦」は店もSKUも少ない、チラシ全盛のかつては、実在したかもしれません。しかし現在では最早空想上の生き物、ペガサスのような幻想(ファンタジー)に過ぎません。
では、私たちは一体何をもって「この店は安い/高い」と判断しているのでしょうか?
前回記事でも書きましたが、改めて買い手の購買心理(本音)を正確に言語化すれば、こうです。
「この店は、私がよく買う『たたきめかぶ』『ナムルセット』『ししゃもの唐揚げ』が安い(もしくは『ある』)から、安い!」
私たちは全ての価格を記憶することができないため、自分のエゴ(くらしのスタイル や ニーズ)に直結する、せいぜい「数品目」の、まずは存在、次いでその価格を「脳内インデックス(価格の基準)」に記憶しています。
そして、その一部の事実を脳内に拡張(ハロー効果)し、「私はこの店で、賢く買い物できている」と、惰性で買い物を行っているのです。
稲盛和夫氏の至言に「値決めは経営である」という言葉があります。
「お客様が喜んで買ってくださる最高の値段」を見極めるというこの教えは、まさに売り手のエゴと買い手のエゴの調和を体現した言葉です。
この哲学の本質は今も色褪せません。ただ、少しだけスーパー&ドラッグという観点から、筆を加えることをお許しください。
製造業にとって、製品の「単価(絶対値)」は独立してシビアに評価されるものです。しかし、今私たちが向き合っているスーパーやドラッグストアは、買い手がセルフで商品を併せ買いする「バスケット」ビジネスです。
少し想像してみてください。
あなたはWebショップで3つの商品を買い揃えたい時、それぞれを1円でも安い別々の最安店で買うでしょうか?
おそらく、できることなら最安ではなくても、3品が同時に買えるお店を選び、送料や受け取りの手間を含めたトータルコストで「安さ」を考えるはずです。このように、あなたの「喜ぶ価格」は単品だけでは決まりません。リアル店舗に対して価格比較が容易な、Webショップにあってもそうなのです。
現代はかつてと比べ、あまりにもSKU(商品数)が増えすぎました。その結果、人間の脳の処理能力の限界を超え、買い手自身すら併せ買いにおける「喜ぶ価格」を正確に認知できなくなっています。認知していない価格と認知している価格が、陰と陽の「まだらな文様」のようになっているのです。
ここまで見てきた人間の認知の脆弱性(手間をサボりたがるエゴ)を踏まえれば、現代の小売業の「値決め」には、原価と値入(計数)は勿論、人間の「エゴ」や「えー加減な認知」のメカニズム、そして商品相互の併買ネットワークの存在を組み込んでいく必要があります。
現代小売業の「値決め」とは、買い手の「認知限界」を理解し、データに基づいて「まだらな文様」を陰と陽に切り分けることで「どこでドーパミンを出させ(陽)、どこで認知をサボらせるか(陰)」を、巧みに店内に仕込んでおくマジックです(言い方が下品で恐縮ですw)。
明日から実務で使える、「エゴの調和」を体現する具体的な値決めの例を、ここに考察してみましょう。
1)地域No.1店舗は地域に1店舗しかありません。また、強者の戦略は弱者の「模倣」にありますので、前記事の補講として「地域No.1ではない」ことを前提条件に、論を進めて参ります。「何でも安い」資本の暴力に対抗する戦略です。
2)冒頭のハックに鑑み、ここで算出する価格は「税抜き価格」とします。
3)店内での売り手と買い手のエゴの調和を図る為、売価算出は競合価格を拠り所とせず、現実的な「仕入原価」と「目標値入率(売り手が確保したいエゴ=利益)」をベースとします(極論すれば、買い手はタダが良いのでw)。
4)前回記事『【コトPOPに学ぶ】EDLP VS HILO 』における資本の暴力に対抗する戦略、「欲しい」の代表だけEDLP = EWLP(エブリ・ウォンツ・ロープライス)が適用されているものとします(基本的にチラシ(モノの価格訴求)は用いません)。この為ー
・品揃えが絞り込まれ、買い手の「欲しい」の代表=重点レコメンド商品の仕入れ原価が低減しています。
・品揃えが絞り込まれ、以前ほど高い値入率を必要としない構造になっています。
・競合から自店の全体的価格政策が、見通しにくくなっています。
まさに値入は、単品単体では完結できない「経営戦略」です。
具体的な商品の値決めに入る前に、まずは全商品(数万SKUのキャンバス全体)に適用する、強力なベースルール(極大魔法陣)を設定します。それが「末尾数値の完全統一」です。
一般的に末尾数値は6〜9のような9に近い端数が良いとされています。
目標値入率(マージン)から逆算して売価を決める際、計算に長けた優秀なバイヤーや経営者ほど、こう考えるはずです。「計算上の売価が105円なら106円に切り上げることでより安く(6<9)見せ、100円なら99円に切り下げることで、粗利のダメージを最小限に留めよう(9>6)」と。
これは売り手の数理的で美しいエゴですが、ここまでの人間の「えー加減な認知」を前提とした売価設定においては、「末尾数値の混在」は極めて悪手です。
売場に「196円」「207円」「148円」「189円」という末尾がバラバラな数字が混在していると、果たして何が起きるか?
買い手の脳は末尾数値の不規則性を感じとって「1の位までちゃんと読もう(損をするかもしれない)」と無意識に警戒し、脳のモードを、一品一品しっかり価格を確かめる査察モードへと変えてしまいます。
そんなことをしていれば、買い物を続けるうちに怠惰な脳がコストを支払いすぎ、「もう買い物はやめよう」とスリープモードに入り、バスケット点数を減らしてしまいます。
一方で、全商品の末尾が特定の数字に「完全統一」されていると、買い手の脳は最初の数品でパターンを学習し、1の位の視覚情報を「ミュート(無視)」しはじめます。
この「脳が処理をサボれる(認知流暢性が高い)」快感がドーパミンを生み、「ついで買い」を誘発、結果的にバスケット点数を増やします。
1品あたり最大3円の末尾差は、カゴにプラス1品していただくだけで、お釣りが来てしまいます。
では、末尾を統一する際に、ベストな数字は何か?
先頭数値の大台を割る(左桁効果を狙う)際に、売り手の利益(マージン)を極大化することを考えれば、わざわざ「6」や「7」まで下げる必要はなく、大台ギリギリを攻める「8」か「9」となります。
当然「9(199円など)」の方が、「8(198円など)」より痛みが少ない為、欧米の小売業では圧倒的に「9(1.99ドルなど)」が勝者ですが、日本のスーパー&ドラッグにおいては事情が異なります。
前章の棚札ハックでも触れた「ハック 4:音韻的ショートカット」の差で、明確に「8」が勝利するのです。
人間は数字を視覚で捉えた際に、無意識に脳内で音読(サブボカリゼーション)を行っています。
末尾「9」の場合: 199円 = 「イチ・キュウ・キュウ」(間延びした重たい音声処理)
末尾「8」の場合: 198円 = 「イチ・キュッ・パ」(破裂音を伴う最速の音声処理)
日本語において末尾を「8(パ)」にすると、その手前の数字が促音(ッ)に変化し、脳内での音声処理速度が上がります。脳は「処理が軽い=価格も安い」と錯覚するため、日本においては「末尾8」が最強の認知ハックとなるのです。
You make me feel good
これこそが、大手の数理の刃をすり抜け、売り手と買い手のエゴに調和をもたらす「プライスマジックNo.1」です。
さて、これで売り場というキャンバス全体に「末尾8の極大魔法陣」が展開できましたが、ここまでは強力ながら、誰もが(競合も)明日からでも真似できる、道具もお代も要らない手品です。
ここからが、道具とお代が必要な、プロのマジシャンのマジックです。
商品価格の末尾を丸める際に、すべてを確率(近い方)任せにしてしまうと、多くの買い手がインデックスしている「陽」の商品が「切り上げ」となったり、大して気にしていない「陰」の商品が「切り下げ」となったりと、折角の魔法陣による安さの演出が崩れてしまいます。
一方で、全商品を「切り下げ」てしまえば、目標値入率を実現できません。
そこで、ここからがマジックです。
多くの買い手の脳が価格をインデックスしている確率の高い、「陽」の商品の末尾数値を切り下げ、そうでない「陰」の商品の末尾数値を切り上げるという操作を行います。
それによって「陽」の商品の比較上の安さをお楽しみいただきながら、陰の商品(買い手が痛みを感じない場所)からは、他の売り場の「陽」の商品でお楽しみいただいた分の手品のお代(想定値入率)をこっそり頂戴するのです。
前回の記事で例に挙げた「ビール売り場」のデータを思い出してください。 ニーズの見える化が炙り出した、価格が多くの買い手の脳内に、鮮明にインデックスされている確率が極めて高い「1stレコメンド」商品は、絞り込み前の全133SKU中、わずか4SKU(約3%)でした。
実際の1stレコメンド(4SKU)のリストをご覧ください。
これらは互いに相容れることのない、買い手の「くらしのスタイル(目的範囲)」を代表する、各々人気No.1の四天王であり、売り場全体の「安さ」を認知させるのに必要な「価格見せ筋四天王」です。
しかし、この中で対戦するまでもなく資本の暴力にノックアウトされてしまいそうなのは、事実上、採用順1位の「スーパードライ350ml6本」のみであるというのがミソです。
次に、買い手のより細やかな「ニーズ(選択範囲)」群の中で、1stレコメンドを除いた人気No.1の選択肢である「2ndレコメンド」の37SKU(約28%)です。
リストを見渡していただくと、これらも、必ずしもバチバチにレッドオーシャンな商品ばかりではない事にお気づきいただけるかと思います。
つまり、「買い手の脳内商品インデックス(欲しい)」と、競合が価格調査に訪れる際の「売り手の脳内商品インデックス(売れ筋)」の間には、大きなズレがあるのです。
このズレを利用して、たまたま競合のバイヤーが見かけたら「売価設定ミス?この店のバイヤー大丈夫?」と鼻で笑うような値札を、競合の商品インデックス(監視対象)に無い商品にぶら下げて、買い手の脳にダイレクトに価格競争を仕掛けるのが、この手品のタネ明かしです(但し、競合からはタネも仕掛けも見えません)。
残りの大多数の商品(約69%)は、多くの買い手が価格を正確に認知していない、まだらな文様の「陰」の部分です。
この陰影に合わせて、目標値入率から弾き出した理論売価の「丸め方(切り上げ・切り下げ)」と、前章で見てきた「棚札のUI」を変えるだけで、粗利を守りつつ、買い手を笑顔にさせるご機嫌な手品が完成します。
具体的には、商品を以下の3つの役割に分け、それぞれ明確な意図を持って「丸め方」と「棚札のUI」を使い分けます。
前提条件で触れた通り、品揃えの絞り込みにより、重点レコメンドである1st、2ndに関しては、既に仕入原価そのものが低減しているはずです。
① 1stレコメンド(価格見せ筋四天王):原価直上の刃
買い手の「くらしのスタイル」を代表する1stレコメンドには、売り場全体の安さの代表、インフルエンサーの役割を担ってもらいます。
よって目標値入率に関わらず、売価は「仕入れ原価直上の末尾8」を狙います(EWLPは、バスケット内の商品間併買ネットワークによる、店舗全体でのお買い物満足を狙っていますので、原価割れという単品戦術は使いません)。
売り手からはマイナーに見える商品(ビールの例で言う「スーパードライ350ml6本」以外)までこの価格で売るのは、マジョリティーだけで無く、マイノリティーにも「安い」と思ってもらえるよう、手を抜かない為です(ビールにおけるマイノリティーが、買い物全体のマイノリティーという訳ではないからです)。細工は流々ってヤツです。
これを(AI曰くw)「究極の認知ハッキング棚札」で強化することで、売り場全体への「安いんだ!」という認知を作り出します。
② 2ndレコメンド(納得の安さ):切り下げの魔法
「くらしのスタイル」は近くても、より具体的なニーズが1stレコメンドとは、異なる買い手の多数派がインデックスしているのが、2ndレコメンドです。
こちらは客寄せパンダでは無く、質実剛健な「納得の安さ」を狙います。
よって目標値入率から弾き出した理論売価から切り下げ、最も近い「8」に丸めます。
ここにもハッキング棚札を当てて、ビールの例で言えば37のニーズに対して、37の代表商品が安さをアピールします。
③ レコメンドなし(陰):切り上げの城壁
レコメンドなし商品の主たる役割は、買い手の「選択」という行為の担保と、レコメンド商品の安さを際立たせる(言い方は悪いですが)「噛ませ犬」、万一のレコメンド商品欠品時のバッファーにあります。
よって、売価末尾は1stと2ndで下方に振った値入(手品のお代)を回収するため、理論売価から切り上げます。
計算上、最大限に絞り込みを行っても、これらの商品がSKUの50%を占めることとなります。
一方でこれらの商品は、レコメンド商品では代替できない本当のマイノリティー(こちらは1stレコメンドとは違い、本当の少数派です)救済の役割も担っています。
マジョリティーには価格を正確に認知されていない「陰」であったとしても、本当のマイノリティーにとっては「陽?」であるこの商品の末尾数値を切り上げても良いものでしょうか(理論売価が99円の場合、切り下げ:98円。切り上げ:108円。そんな事言い出したらキリがありませんが)?
これも言い方は悪いですが、マイノリティーの価値観自体が売り手にとっては「陰」であり、「どこで買ってもこんなもんだ」という価格設定が為されている段階で、商品自体も「陰(ブラインド)」の扱いとなります。
一方で、先述の通りビールにおけるマイノリティーが、買い物全体のマイノリティーという訳ではありません。その他の売り場の「陽」の商品で、たっぷりお楽しみいただいている筈です。
その手品のお代をこちらで頂戴しようというのが、この布陣となります。
こちらの棚札はノイズを削ぎ落とした「標準デザイン(ステルス)」を当て、静かに風景へと溶け込ませます。
「値決めは経営」とはよく言ったものですが、まさにこの3群の価格コントロールこそが、売り手の利益と買い手のロイヤルティの調和、ならびに各売り場相互の値入率の調和を生む経営(マネジメント)そのものです。
前回記事『【コトPOPに学ぶ】EDLP VS HILO 』でも触れたように、AIの推論によれば、買い手のカゴの中の10品中、各カテゴリーのビールにおける「スーパードライ350ml6本」のような、資本の暴力に対して極限まで粗利を削らざるを得ないような商品は1〜3品です。
これは、あるカテゴリーにおいて採用順1位となるような「くらしのスタイル/ニーズ」を持つ買い手が、他のカテゴリーにおいても採用順1位の「くらしのスタイル/ニーズ」を持っている訳ではないことを意味しています(まだらな文様)。
つまり、あるカテゴリーで「粗利を削った1stレコメンド」を買ったお客様も、別のカテゴリーでは「しっかり粗利を回収できるレコメンドなし(陰)」や、「競合の目を盗んだ納得の安さの2ndレコメンド」をカゴに入れているということであり、カゴの中の残り7〜9品は「刃すり抜け奴らの間隙を突ける」領域です。
この限られた1〜3品の「陽(1st)」に、痒い所に手が届く「2nd」のしたたかな安さを織り交ぜることで、買い手の買い物カゴ(バスケット)の中には、常に「安い商品」が併買ネットワークの結節点(ハブ)として存在することになります。
するとどうなるか。カゴの中の「陰」の文様は、結節点が放つ「陽」の明かりに照らされ、霧散してしまいます。結果として買い手の脳は、「バスケット全体(お買い物トータル)の満足」という認知だけを残して家路につくのです。
大手への価格追従という不毛なレッドオーシャンを避け、データが示す「まだらな文様」の陰影に合わせて丸める方向と棚札を変えるだけ。これぞまさに、数理(確率論)と心理(錯覚)を掛け合わせた、売り手と買い手のエゴを調和させる究極のコントラスト・マジックです。
但しこのマジックの成功には、買い手の「欲しいもの」すなわち「ニーズ」が幅広く揃っているという「ニーズ揃え(真の品揃え)」が前提となります。「欲しくないもの」に魔法をかけて「激安」にしても意味がありませんからね。
「ニーズ揃え」はバイヤーさんたちが主役になって、買い手にかける魔法です。頼んましたよッ!
資本の暴力にモノを言わせた、全方位的な安売りの消耗戦。それは、互いに血を流し合い、売り場の利益も、現場やバイヤーの気力も奪っていく、いわば力任せの「殴り合い」です。
そこにプロとしての矜持、スマートで遊び心に満ちたタネや仕掛けの数々、買い手へのエンターテイメントはあるでしょうか?何より買い手の『欲しい』が届いているでしょうか?
私たちに必要なのは、力任せの「殴り合い」からの脱却であり、売り手のエゴと、買い手のエゴの「調和という奇跡」を目指した商いの夜明けです。
調和への地図である複雑な「文」様を解き「明」かすこと。
これこそが、数理(確率論)と心理(錯覚)を掛け合わせたコントラスト・マジックの正体であり、価格競争という闇に明かりをもたらす、「文明開化」です。
闇を欺いて 刹那を躱して刃すり抜け奴らの間隙を突け
つらぬいた信念が 未来を拓く
さあ、手品のタネ明かしはこれで終わりです。明日の売り場に、この新しい時代の明かりを灯すのは、みなさま自身です。
かちょー にも「陽(ID-POS)」もあれば「陰(大人の事情への認知の脆弱性)」もあります。回答はAIに再確認してください。